どうせなら、笑っていようぜ。 作:インチネ・ズィ・マゼタルーノ
今さらですが、ここの先生は割と
デカグラマトンの追加エピソードも、新イベントも全部好き。
楽しいよね、今回はそれらと、何も関係はありません。
“おはよう、リオ。突然の呼び出しだったけど、何かあったの?”
ついさっき、これから朝の書類をさばいていこうって気合を入れたところで、ヒマリからメッセージが来た。とても焦って書いたのか、記載されていたのは住所だけ。それもヒマリにしては珍しく誤字があったんだ。
だから、急いで来た訳だけど…
やって来た建物の前には、なんとなく機嫌が悪そうなリオが待っていた。ヒマリからの呼び出しで、案内にリオ。これは緊急事態かと、私は少し気を張っていた。
「来たわね、先生。案内するわ」
案内された先で私はピンと来た。
本人達からしたら大問題なのかもしれないが、傍から見たらとても他愛ない話なんだな、と。
なぜなら、今とても不機嫌ですと言わんばかりのヒマリと、呆れ顔のチヒロ。そして、すっごくいい笑顔で正座してるトグロを見たからだね。
これで深刻な悩みだったら私、もう先生やっていける自信がなくなっちゃうよ。
何があったか知らないけれど、たぶんトグロが悪いんじゃないかな?
「おはようございます、先生。お待ちしておりました。さっそくですが聞いて下さい!トグロが、トグロがひどいんですよ!!」
“おはよう。まあまあヒマリ、落ち着いて”
そう捲し立てるヒマリを宥めて、ひとまずは現状把握。このままヒマリの話を聞いても良いのだけれど、経験上、この状態のヒマリは感情が先走って話の内容が散らかっているからね。少し待てば、誰にでも分かりやすく説明できるのだけど…まあ、今は他にも居るから。
と言うわけで、取り敢えず諸悪の根源っぽいトグロに話を聞いてみよう。
“はい、トグロ。説明”
「なんか雑じゃね?別に良いんだけどさ…あー、なんだろうな?ワタシ達がミレニアムを卒業した後、どうすっかって話ではある」
“進路相談だね!バッチこい!”
なんとも『先生』って感じだ!
これだよこういうの、私が思う先生像ってこういうのだよ!間違っても銃撃戦の指揮を取るなんて選択肢は無かったはず、はずなんだよなぁ…
いやね?別に今の立場に不満があるわけじゃないよ?生徒達の役に立てるなら、指揮なんていくらでも取るし、迷子だって探すし、悪い大人にはコブラツイストだってコブラクラッチだって掛けるし毒霧だって吹くさ。
でもね、私だって時々思うんだ。
先生ってこういうのだっけ?って…
降って湧いたまともな先生としての相談に、私は少しテンションが上がっていた。当然、蔑ろにするつもりなんて無い。先生として、全力で相談に応えようと思っている。
「相談って言うか…いや、相談で合ってるのかな?まぁどちらにせよ、私とトグロは悪くないよ。ヒマリ達が言い掛かりを付けてきてるだけ」
「言い掛かり?これは正当な主張ですよ、チヒロ。いくら心清らかで深い慈悲を持つこの私でも、到底見過ごせるものではありません」
「そうね。チヒロ、貴女の意見を否定はしないわ。けれど、勝手に話を進めたのは…その、私が言えた事では無いのだけれど、あまり褒められる行為では無いはずよ」
「は?そんなの知らないし。どうせ『言わなくても分かってる』とか甘ったれた事を勝手に思ってただけでしょ?ちゃんと話をして、準備をして、
「んなっ…!いくら私達の仲だとは言え、通すべき筋はあるでしょう!大体、チヒロは日頃からそういった行為が目立ちます。抜け駆けしている自覚があるからこそ、一言も無かったのではありませんか?この前だって──」
「この前?それは今関係ないよね。論点を逸らさないで。…それを言い出すなら、ヒマリもリオも人の事を言えた義理じゃないし」
な、なんと言うか…珍しい組み合わせで衝突してるね。
チヒロが悪くないって言うなら、トグロは悪くないのか。意外だ…トグロには申し訳ないけど、前科が多すぎるのが悪い。
普段なら、こういった小さなイザコザにはトグロが割って入って仲裁してくれるんだけど…
「でへへへ…」
だめだ、口角上がって顔が溶けてる。
知ってたけどね?私が呼ばれてる時点で、トグロは当てにならなかったのだろう。
でもトグロ、それで良いの?君の大切な幼馴染達が喧嘩してるんだよ?止めないの?
“皆。まずは落ち着いて。何があったのか、始めから教えてくれるかな?”
「はぁはぁ…私は少し頭を冷やして来ます。リオ、任せても構いませんね?」
「分かったわ」
「あっ、飲み物はいつもの場所に補充しおいたぞ。そんで戻ってくる時にワタシ達の分もよろしく」
あのさトグロ。君は空気とか読めないタイプだったかな?今のヒマリ、そんな状態じゃないよ。来たばかりの私でも分かるよ。ていうか、悪くないだけで元凶だよね?
凄く言いたい事はあるけど、私は大人として、先生として飲み込んでおこう。生徒どうしの喧嘩の仲裁だって、立派な仕事だからね。
部屋から出て行ったヒマリを見送って、私はリオの言葉を待つ。
「そうね…さっきもトグロか言っていた通り、原因はミレニアムを卒業した後の進路について。一言で表すのなら、トグロを取り合っているわ」
「うへへへへ…」
“なるほど。それじゃあどうして、こんなにも言い争っているのかな?トグロを取り合うにしても、トグロの進路はトグロが決めるべきだよ”
分かるよ?彼女達が自分の事を取り合ってるのが嬉しいんだよね?それは理解するけど、この場でそのテンションは間違ってると思うなぁ…
私はひとまず、トグロの事は置いておこうと思う。
「それは私が説明するよ。元々、私とトグロは卒業後に一緒に起業するって約束をしていたんだ。その為に色々と準備もしてるし、本当に後一歩ってところまでは進んでる。それこそ、やろうと思えば今からでも出来るぐらいにはね」
“うん”
そうだったんだ、凄いね!?
しかもそれを聞いて普通に納得出来るってのが凄いよ。真剣な相談だって言うなら、私だって真剣だし、場合によっては厳しい事も言う。実際に、もう少し考えるべきだとか、足りないものが多いとか、そういった言葉を言った事もある。
それらを踏まえて私は、チヒロの言葉に納得したし、彼女なら大丈夫だと思った。
「それを今更になって、2人から難癖付けられてる」
「そんなつもりは無いわ。ただ、その様な決定をするに当たって、もう少し情報の共有が必要だったのではないかと言っているのよ。完全に無関係なら兎も角、今回の件は私達の今後にも影響するわ」
「リオに言われたくないんだけど…でもまあ確かに、何も相談しなかったのは事実だから認める。ただ今の今まで、ミレニアムに入学後に限ったとしても、2人がトグロに声を掛ける時間は十分にあったはずだよ。それをしなかったのはそっちの判断でしょ」
「トグロの性格よ?決定が覆る事が無いのは、私もヒマリも理解しているの。ただ、チヒロが声を掛けていると知っていれば、私達だってそうしていたわ」
「ほら。じゃあそれが答えじゃん。だから私は2人に言わなかったし、言う必要も無いと思ってたんだよ」
“はいストップストップ!”
またヒートアップしそうだから、一旦止める。
チヒロもリオも、ココまで攻撃的になるなんて珍しい。2人とも、話し合いに感情は持ち込まない様にするタイプだから、本当に珍しい。と言うか、こんな言い争いになるところ自体始めて見るよ。
なんと言うか、普段落ち着いてる子が感情的になると独特な雰囲気が出るよね。
私がこうやって心の中で余裕を持ってるのは、コレが痴話喧嘩だから。いや、本人達からしたら大問題かも知れないよ?でもさ、一度冷静になって客観的に見てごらんよ。痴話喧嘩だよコレ。仲が良いから出来るタイプの喧嘩なんだもん。
トグロがいい笑顔で眺めてるのも納得だよ。
なんて言えるはずもない。
さて、なんと言って場をおさめるべきか…
「ただいま戻りました。どうぞ、飲み物も用意してきましたよ」
「サンキュー」
“ありがとう”
ちょうどヒマリが帰ってきて、ペットボトルのお茶を配ってくれた。喧嘩してても全員分をしっかりと持ってくる辺り、良い子ではあるんだよね。
「さて、先生。チーちゃんを説得していただけましたか?」
“ん?してないよ”
「なぜですか!?リオ!!」
「…頼んでいないわ。…まさか貴女、今更どうにかなると思っていたの?…ごめんなさい、私と同じ様に一言言いたいだけだと勘違いしていたわ。先生、そう言う訳なのだけれど、チヒロを説得してくれるかしら?」
「リオ!?」
“それはちょっと…”
「先生まで!?」
「えっと…どんまいヒマリ、元気出しなよ」
「チーちゃん…どうもありがとうございます。…あ、あれ?」
まぁヒマリの事だから、落ち着けばこうなるよね…怒りが長続きする性格でもないし、本気だとしても冷静にはなれる。君の良いところだと思うよ。こんな場面だと、ギャグみたいにしかならないけど。
さて、みんなだいたい言いたい事を言って落ち着いたみたいだね。改めて、この状況を整理してみよう。私、何も知らなかったからね。
もめてる理由は、卒業後の進路について。それもそれぞれがトグロを当てにしてたのかな、チヒロが既に話を通してたのを最近知ったのが原因。
なるほど、トグロの意見が必要だね。
“トグロはどうなのかな?”
「ワタシか?」
正直、私が来なくてもトグロがはっきりと『こうする』って言えば解決するよね、この話。多少は今みたいに言い争いになるかも知れないけど、この子達ならそれも乗り越えられるだろう。
それでも私が、先生が呼ばれたのはちょっと嬉しいね。こう…私がやってきた事が実を結んだんだって言う実感がね…生徒達の信頼を得られたんだってのがね…こう、嬉しいよね。
「ワタシは約束通り、チヒロと一緒に起業するぞ?」
「そ、そんなッ!」
「ほらね、もう諦めなよ」
ショックを受けて涙目になってるヒマリに、勝ち誇った顔のチヒロ。今日は珍しいものがよく見れる日だ。普段はこの逆が多いからね、割と仕返しされる事も多いけど。
「ナニも言われなきゃヒマリに着いて行こうと思ってたけどさ、ヒマリもリオもなんも言わなかったじゃん?それにオマエ等はもう、ワタシの手が無くても問題なく立って歩けるワケだし、だったら声掛けてくれたチヒロと楽しくお仕事しようかなって」
「そう…トグロが言うのなら、それを尊重するわ。手間を取らせたわね」
「悪いね、もう予約は埋まってんのさ。でも呼ばれりゃ飛んでくし、呼ばれなくとも会いに行くから心配すんな。今まで通り呼び出す時もあるから、カクゴしとけよ〜」
リオは元々、文句は言いたかったけど否定をしたかった訳では無いらしい。この前シャーレで話をしていて思ったんだけど、この子、自分の感情を表現するのがすごく不器用なんだよね。いや、会った時から分かってたんだけど、改めてそう思ってね。
それがさ、この子達の前でなら言いたい事が言えるってさ…もう、ね。分かるでしょ?
私の胸に広がるこの温みッ!!
「ぐぬぬぬ…」
残るはヒマリなんだけど…
なにそれ、どういう感情なの?
「分かっていた事ですが、実際にそれを言われると何も言い返せないのと、声を掛けてさえいればトグロは私の側に立っていたと言う事実。そして全て私が『しない』と選択してしまった後悔に苛まれています」
「知ってるヒマリ?それ、自業自得って言うんだよ」
「チーちゃんがぁ…チーちゃんがいじわるを言う!先生!」
チヒロ…もしかして君も、この状況を楽しんてたりする?
幼馴染だとは聞いているし、互いに遠慮のないやりとりも見てきてはいる。
そうかなるほど。今さらだけれどヒマリ、どうやら君は、このメンバーだとからかわれる側の子らしい。
“はいはい。チヒロ、ヒマリをからかうのはそのくらいにしてあげて”
「ふふっ、やっぱり分かってたんだ」
“気付いたのはたった今だけどね。ヒマリも、トグロが決めた事なんだから、あまり無理強いはしないであげてね”
きっと、私が来なくても円満に解決しただろう。
この子達は、私が思うよりもずっと聡い。
あ、そうだ。
“それなら、ヒマリもチヒロの作る会社に入れば良いんじゃないかな?”
「なるほど!チーちゃん!」
「えっ、嫌なんだけど…トグロは?」
「能力あり、人柄も知っている。ふむふむ…慎重に選考を進めさせていただいた結果、誠に申し訳ございませんが、今回は不採用とさせていただきました。今後のご活躍を心よりお祈り申しあげます」
“あっはは!……コホン、なんでもないよ?”
この日の仕事は、何も進まなかった。
これからはもう少し、思い付きで喋るのは止めよう。気を付けようと思った。
そして、思わず笑ってしまった件については、後日きちんと謝ろう。
ケイちゃんさ、なんだろうね。
まともに喋ってる姿を見るのは初めての筈なのに、性格やら話し方やらを私は『知っていた』んだ。スゲーよ公式、あんたオタクの心を理解し尽くしてるよ…
ジュリは最初からずっと良い子だし、フウカは可愛い。セナは天使。ゲヘナは天国だな間違いない。
なんも思い付かないから、参考までに……
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