どうせなら、笑っていようぜ。 作:インチネ・ズィ・マゼタルーノ
フェンス・オブ・ガイアァァァ!
「やりにくい」
こちらから頼んだとは言え、思わず口に出してしまったのは少し申し訳ない。けど、実際にとても戦いにくいのだから許してほしい。
「ねぇキミ可愛いね。どこ住み?てかモモトークやってる?あ、今ひま?お茶しない?」
「そこ」
『ざんね〜ん、ハ・ズ・レ★』
私の周りを旋回し続けるドローンから、声が聞こえる。それも肉声と遜色のない声。偽物だと思ってそれを無視すれば、無視出来ない威力の弾丸が飛んでくる。
物陰を移動したりスモークを焚いて、徹底的に姿を隠して、私の視界の外から攻撃。かと言って私の意識が視界外に集中すれば、目の前に手榴弾を投げたりドローンが自爆する。
本当に、心の底から、やりにくい。
「…これは確かに、彼女達が名指しする訳ね」
「考えゴトとはナメられたもんだぜ、ヒナちゃん?」
「そう、かしら!たった今、貴女への評価が変わった所よ。赤蛇トグロ」
執拗なまでの牽制と視界外への注意の強制。
的を絞らせなければ自分に弾は当たらないし、相手の意表を突けば自分の攻撃は当たる。誰でも思い付く様な、ありふれた作戦。それを戦術として扱い、実行できるのは果たしてどれだけ居るのだろう。少なくとも、私は、このレベルまで仕上がった戦いをする存在を見たことがない。
噂には聞いていた。
実際に戦った子の話も聞いていた。
シャーレでの戦闘記録も見せてもらった。
その上で、ここまでだとは思ってなかった。
ゲヘナの風紀委員長として、私が居ることで抑止力になると理解している。それだけの戦力が私にはあると理解している。私に迫る、あるいは同等の実力者は数える程度だと思っていたし、事実としてそうなのだろう。その中に、彼女を含めて居なかっただけで。
驕っていたつもりも、慢心していたつもりもなかった。いや、言い訳は止めておこう。私の認識が甘かった。無意識に、自分は常に制圧する側だと思っていただけの事。
ただ、そうはならなかっただけ。
だから
「少し、本気でやらせてもらう」
「…マ?」
「もっと広く、大きく」
周囲の建物への被害は……その、ごめんなさい。
でも最初に良いって言ってたから、遠慮はしない。
「ニギャァァー!!」
ドローンを薙ぎ払うついでに、周囲の建物ごと崩壊させて更地に変える。これなら、姿を隠される心配もない。
今だけは、この風紀委員の腕章を外しておこう。
ただの空崎ヒナとして、彼女…赤蛇トグロと戦って、勝ちたい。
「見つけた。覚悟して」
「ヤ〜だね」
「ッ!」
この模擬戦が始まった時からずっとそう。彼女の言葉と行動がまるで一致しない。逃げると言って攻撃するし、掛け声を上げて何もしない。
今もそう。逃走する為に背後へ動いたと思ったら、腰から生えてる機械の脚を使って前進して来た。
私達の周りには居ないタイプ。
そして対人戦闘の技術は、きっと私よりも上。
「なんでその銃で近接できんの?あと、建物壊しすぎ。風紀委員じゃないの?」
「近付けば勝てると思ってる?あまり舐めなないで。…あと、今はただのヒナだから」
…やっぱり、建物ごと壊すのは良くなかった…?
後で謝っておいた方が良いかな…
「言葉に揺さぶられすぎだね。キミ、素直とか優しいとか言われない?」
「痛っ!この…」
まずい。
ペースを握られ続けてる。
せっかく隠れる場所を奪ったのに、何も上手くいかない。
最近、ホシノと模擬戦をするようになって分かった事として、どうやら私は一対一での戦いの経験が少ないらしい。今まで気にしていなかったのだけど、確かに普段の活動で一対一になる事は少ないし、仮にそうなった所で困った事もなかった。
何より、私の前に立つ相手は大抵、戦うよりも逃げようとする。こうして今のトグロみたいに、勝ちに来る相手との戦闘経験が少なかった。
だからなのかな…めんどくさいと思っていた模擬戦だけど、今は、少し楽しい!
「忠告には感謝する。でも、この程度なら問題ない」
デストロイヤーの取り回しが難しい近接に、密着す────
──ん、挨拶?さっき録ったんじゃないの?機材トラブル…そう、分かった。うん、大丈夫。
こんにちは。
ゲヘナ学園、風紀委員長のヒナ。
今日は私が語り部をさせてもらう、よろしく。
これでいい?
えっと…台本、どこまで読んだかしら…?
うん、分かっ…へ?待って、ちゃんと編集してくれるんだよね!?先生!トグロ!
大丈夫って…それ、理由になってない……
はぁ…まあいい。どうせ録るまで終わらないんでしょう?ならさっさと終わらせて、そのあとにする。
それで、えっと…確か、ここだったっけ…
デストロイヤーの取り回しが難しい近接に、密着するような立ち回り。正直言って、その距離感を意識されるだけでもかなり私の動きが制限されるのに、しっかりと実行までされるのは始めての経験だった。
トグロを間合い外へ弾き出そうにも、照準を向けるより速く接近されるし、そもそも弾き出す為の動作が当たらない。あの高身長と長い機腕で、よくもまあ回避を続けられるものだと今になって感心する。
戦闘中は、そこまで気が回らなかったけど。
「うっとうしい」
「なんでワタシの攻撃を受けた感想がソレなの?え?そんな威力ない感じ?対物ライフルよりデカいんだが?」
「そう…しつこいから離れて」
羽根で地面と空気を殴りつけて、全力で後ろへ跳ぶ。流石に空を飛ぶ様な真似は出来ないけれど、この程度なら造作もない。
今まで見せた事のない動きだったから、トグロの動きが間に合わなかったようね。なんとか距離を……って、うそでしょ!?
「キミ達みたいなのと、正面から戦うワケなくない?」
いつの間にかは知らないけど、銃の安全装置がロックされていた。銃を触らせた覚えはないのだけど…
「おーい!トグロ相手に考えんのは止めた方がいーぞー」
「そ~だね〜そんな事しなくても、ヒナちゃんなら正面からゴリ押しした方が有効だよ〜」
観戦席からネルとホシノの声が聞こえた。
そうね。ちょうど私も、同じ事を考えた所だ。
「避けるなら、避けられない範囲で…上から圧し潰す!」
「クッソ!!これだから強ぇヤツってのはナぁ!」
再度、安全装置を解除。まったく撃たせてもらえなかったおかげで、弾丸は充分に残ってる。
トグロの居る空間ごと纏めて、撃ち抜く!
「弾き出せ、鱗の鎧と尾の撓り──簡易解釈:一と二の浪漫そんで…浪漫式2番、ブッ飛ばせ!槌の赤熱!」
まさか正面から受け止めようとするなんて、意外も良い所。てっきりすぐに離脱すると思ってた。これは模擬戦だから、訓練なら、張り合わずに私も一度離脱してから攻めたほうが確実。無駄な消耗は避けるべきだろうけど…
訓練だから、私もちょっとくらい、遊んでみてもいいよね?
「ふふっ…なら、もっと!」
「ですよネェ!飛行配列式変更:破蛇、全弾ブッパァ!」
「いくよ」
さらに火力を上げて、トグロと、ドローンの弾幕ごと全部を圧し流す。
こんなにも全力で攻撃するなんていつぶりだろう。そもそも、相手に勝ちたいと思う事自体が久し振りな気がする。
だって皆、負けて当たり前みたいな顔をするから。イオリですらどこか、いい勝負をして、せめて道連れ。勝てなくて当然、勝てなくても仕方ないって態度をとる。
今のトグロみたいに、本気で私に勝ちに来る相手は珍しい。
今日まで何度か、この模擬戦に参加して、ホシノやネル、ツルギの様な実力者とも戦った。戦ってる姿も見た。トグロの戦績は全戦全敗。客観的に見るなら、この中でも実力は下の方。
けれど戦った子皆が、模擬戦以外で戦いたくないと口を揃えて言ってすぐ、いつならまた戦えるのかと聞いていた。
なるほど、毎回このメンバーが揃う理由が分かった。
素直に楽しいんだ。
トグロの実力は、この中でも下の方。
私達は
でも次は?トグロは本気で勝ちに来ている。トグロと戦ったのは今回が初めてだったけど、ネルやホシノが言うには毎回新しい戦い方をするらしい。
「少し焦った。お疲れさま、トグロ」
「はぁ…はぁ…負けたぁぁ〜!面制圧ヤバすぎ、普通に単発も強ぇし。あっ、ヒナちゃん!ワタシの攻撃、マジで効いてないの?」
「そんな事ない。1回だけならびっくりして痛いけど、何度も…そうね、短時間に何度も撃たれれば普通に効く。私からも聞きたいのだけど、トグロの攻撃はなんと言うか、こう…身体に響くの。どうなってるの?」
「そのへんはワリと切り札だから、まだ内緒にさせておくれ。次回から1つずつ答えてやるぜ?」
「なら次の日程を教えて、来るから」
私達は、
────ふぅ、こんなに長く喋るとは思わなかった。
別に、嫌だった訳じゃない。先に伝えて欲しかったってだけだから。
うん。確かに楽しかった。
まぁ…煽られたのは許すけど、アレはかなりペースを乱されるから止めてほしいわ。それは分かってる、使えるなら使った方が効果的だもの。だけど、容赦はしない。
トグロ、何度でも圧し潰してあげる。
あれ?まだ光ってる…え、まってマイク止めて!?
うわぁぁぁ!!?
ヒナちゃん視点でした。
まだ?いいえ、トグロが勝てる日は当店には入荷しておりません。良い所まで行く事はあるかも知れませんが、勝つ事はありません。
基礎スペックに、どうしようもない差がございますので。
ヒナの口調あってる?話す相手が先生じゃないから、少し雑な対応をイメージしてるんだけど…読み返す度に不安が増していくので、読み返すのを辞めました。そんな日もある。
なんも思い付かないから、参考までに……
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トグロだけの小話
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本家イベント
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オリジナルイベント
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先生視点
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別キャラ視点
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よく名前の上がるキャラとの小話
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その他