大豊訓練生「え!?俺がC&Cコールサイン05!!??」   作:西中タニシ

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2話

スマホがネットに繋がってるのを確認し情報を集める。

あまり気は進まなかったがスマホ内の写真やモモトークと呼ばれるチャットアプリの履歴も確認したものの、どうやらこのスマホにのりかえたのかわからないがこれと言った写真や履歴は無かった。

わかったのはモモトークのグループ的な集まりからクラスメイトの名前くらいだった。

 

案外検索すれば情報はポロポロ出てくる。

技術はルビコンの時と比べれば時代遅れのような物も多い気がするが、ネットワークを使った情報社会な部分は変わりない様だ。

 

「学園都市『キヴォトス』...数えきれない程の学園が集まりできた都市...」

 

自分が所属しているミレニアム、セリナから名前の出たトリニティ...他にゲヘナ、百鬼夜行、ヴァルキューレ、レッドウィンター...他にもまだある様だ。

そしてそんな学園の集まりを指揮する『連邦生徒会』...

 

調べると学園によっては事細かに生徒会や部活動の活動記録などを掲載している様だが、内容がかなり行政寄りに感じる。

 

「まるで学園の生徒がこの都市を仕切ってる様な...いや、まるで、じゃなくて本当に生徒が仕切ってるのか...!?」

 

どうやらシャーレに先生と呼ばれる存在はいる様だが、どの学園を調べでも生徒会長的な役割の生徒のお偉いさんはいるが、学園長などの詳細が一切出てこない。生徒会が学園の自治区の行政に関する活動に参加している記録がある以上、学園の生徒が学園とその周辺を仕切っているのだろう。

 

「とんでもないな...」

 

大豊ココがそう呟いたこは前述の行政だけでなく『不良生徒』の存在だ。

暴徒と化した生徒の鎮圧の様子なども記録に残っており、見てみると歳半ばの生徒達が皆銃を手に戦闘を繰り広げている。

 

しかもこう言った戦闘は日常茶飯事らしく、見ているうちにサイトの広告などで銃やその弾丸、果てには手榴弾などの販売が流れて来る。

 

「救護騎士団とかいう組織も大変なんじゃないかコレ...」

 

とは言ったが、戦闘記録を見ていると無力化され拿捕される不良生徒は多い物の、『死傷者』は一切出ていない。

映像を見るとライフルで撃たれても「痛ってえ!!!」で済まされている。もしかして銃自体はおもちゃなのかと疑いたかった。

だが発砲時の硝煙や排出される薬莢、壁にあたって壁に穴が開く光景からおもちゃとは到底思えなかった。

 

現実味のなさすぎる映像をに頭が痛くなりそうだったが、映像を見ているとセリナの様に翼が背中から生えている者や角や獣耳が生えている者もいる。天使の輪っかのような物、『ヘイロー』はこれまで見てきた生徒達全てについている。

もしかすると自分の知っている「人間」より彼女達は頑丈なのかもしれない。

 

「ってことは俺も...?」

 

と自分の体を見ようと視点を下げれば双子山。

大きい胸が目に入り思わず目を逸らす。

慣れない。やはり自身の体が女になっている事実に慣れない。

いやルビコンの訓練生時代って女遊びしてる暇も無かったし...

 

一旦自分の事はさておき、銃くらいでは死なないとは言えど日常的にドンパチが巻き起こっているほど治安はお世辞にも良いとは言えないのかもしれない。

学園の自治が行き届いていない場所には『ブラックマーケット』と呼ばれる闇市まで存在するほどだ。

 

(おっそろしい世界に来ちゃったなぁ...ほら、今もなんか銃声が...)

 

銃声。

聞こえてきたのはスマホからではない。

つまり今のはすぐ近くでトラブルが発生したと言う事。

 

(これ俺やばくないか...)

 

そう思った瞬間である。

銃声では無い爆発音が鳴り響いたと共に医務室が揺れる。思わず医務室のベットから飛び起きるとサイレンが鳴り出した。

 

「...エリアA24より所属不明の生徒が多数攻撃を仕掛けています。避難をお願いします。対応可能な生徒は...」

 

とアナウンスが流れている。

アナウンスの声は落ち着いているようでどこか焦りが見えた。もしかして学園に乗り込んでくる事は稀なのかもしれない。

ともかく非常事態だ、焦りや恐怖は無いがある生徒が脳裏をよぎる。

 

「セリナさん...!」

 

アナウンスの言っていたエリアが何処かはさっぱりだが、サイレンと共に鳴り響く銃声や爆発音の大きさからこの付近も戦闘区域になっているのだろう。

他の患者の為に、と席を外しているが遠くへは行っていないはず。

巻き込まれているのなら一大事だ。彼女も武装しているだろうが、恐らく自衛が精一杯ではないのだろうか。

 

混乱から意識を失ってはいたものの、別に動けないわけでは無い。

考えるよりも先に体が動き出し、医務室から駆け出していた。

 

--------------------------------------------------------------------------------------------------

 

大豊で訓練生になったのはレッドガンのリーダー、G1ミシガンの木星戦争での活躍を映像で見てからだった。

MTやACを率いて、並み居る敵を蹴散らす様は獅子奮迅とも言えるほど凄まじく、記憶に強く刻み込まれた。

大豊はベイラム系列企業ではあるが、良い成績を残せばレッドガンへの移籍も可能という話を聞いてから俺は一心不乱に訓練に励んだ。

その時に教官から言われ、座右の銘にしてきた言葉『できることをやれ』。

ルビコン解放戦線や傭兵に襲われる危険性もあった中、テスト用ACの輸送を役目を買って出たのもこの言葉の元に行動したからだ。

 

その結果は現状の通りだが、今度は失敗しない。自分のできる事を、最大限にやるだけだ。

...そう言い聞かせるしかなかった

 

--------------------------------------------------------------------------------------------------

 

「ユウカ!!すまない!開発中だった『新兵器』が入ったコンテナに連中がとりついている!」

 

「も~!!先生がいない時に!!」

 

すでにトリニティ内で激戦が繰り広げられている。

不良生徒は実力自体は高くない物の、物量作戦でトリニティの生徒相手に奮闘していた。

トリニティ学園セミナー所属の『早瀬ユウカ』は同学園のエンジニア部の『白石ウタハ』から支援を受けつつ戦闘に加わっている。

他生徒の支援もあり次々と倒れていく不良生徒達。しかし倒れた生徒の後ろから次々と不良生徒が流れ込んでくる。

 

「ヒャッハー!!撃て撃てぇ!!」

 

「『弾代は保証する』って話だ、撃ちまくれぇ!!ハハハハハ!!」

 

まるで暴徒。手当たり次第に発砲し、爆撃し破壊の限りと尽くしている。

倒れても、新しい暴徒が現れ襲撃に参加する。

 

「ウタハ!C&Cとの連絡はまだ繋がらないの!?」

 

「ヴェリタスが通信妨害を解除したようなのだが...つながる気配がないらしい。」

 

「こんな時に...ッ!ノアもコユキも不在だし...」

 

「エンジニア部も総力を出しているが如何せんキリがない、このままだとジリ貧だ...」

 

ここまでの大規模な襲撃は数える程しか起こったことがなかった。

襲撃があったとしてもC&Cにより秒で制圧していた。

どうして今ここまでの規模の襲撃が発生したのか、気になるがそんなことを考えている場合ではない。

しかし現在C&Cは不在、シャーレの先生に助けを求めようにも別件の事件に巻き込まれており手が回らないとのこと。

 

(このままだと圧倒的に不利...打開策は無いの!?考えるのよ...ユウカ!)

 

ユウカは思考をめぐらせ解決策を模索する。

こんな時先生ならどうした。こんな時C&Cのメンバーならどうした。

他学校の生徒なら...

 

そんな時だった。

 

「ミレニアムの物資...こいつは凄い!!新型のミサイルランチャーだ!!...うおぉ、重っ」

 

「でかした!!あいつらにぶちかましてやれ!!」

 

不良生徒がフラフラしながら自分の背丈ほどありそうな大型の兵器を持ちだす。

それを見たウタハの顔色が一瞬にして変わる。

 

「まずい!!あれはウチ(エンジニア部)で試作した『パニックミサイルランチャー』だ!!」

 

「っ!?」

 

対応しなくては。

そう思い顔を上げた時、すぐ近くの地面にミサイルの弾頭が着弾しようとしていた...

 

--------------------------------------------------------------------------------------------------

 

「...ッ、なんてこった...」

 

大豊ココが外に出た時、既に辺りは大惨事だった。

倒れている生徒、大量の薬きょう、爆炎。爆発でクレーターまでできていた。

まるで..

 

「まるでルビコンの激戦区だ...」

 

訓練生時代を思い出す。

ルビコンは新資源『コーラル』をめぐり星外企業と現地住民との戦争状態だった。

その悲惨な戦場と同じ場所にいるかのような嫌な感覚に襲われる。

 

「セリナさんはどこに...」

 

近くで銃声が聞こえる。

その場に慌てて向かう。

この時彼女は『重大な事』を見落としている事に気づいていなかった。

 

--------------------------------------------------------------------------------------------------

 

「ユウカさん!!動いちゃダメです!その怪我じゃ...」

 

「そんな事言っていられない...!」

 

「すまない...まさか試作品が奪われて利用...されるとは...」

 

「ウタハさんも!いま応急処置を...」

 

セリナが慌ただしく治療を行っている。

ユウカとウタハは不良生徒に強奪された兵器によって撤退を余儀なくされた。

ヴェリタスとエンジニア部を始めとした他の部活動の活躍により他方面の不良生徒は鎮圧されつつあるそうだが

いまだ不良生徒は健在らしく、エンジニア部から試作兵器を強奪した一段は特に猛威を振るっているらしい。

他生徒たちが近づけない状況にあるそうだ。

 

ミサイルの威力はすさまじくユウカもウタハも負傷し、これ以上の戦闘は不可能なのは明白だった。

 

「いざとなったら...私が...」

 

セリナが震える手で銃を握りしめる。

ここに不良生徒がなだれ込んでくればひとたまりもない。

しかも二人の治療の為に空き部屋という閉所に逃げ込んでしまった。

こんな時にエンジニア部の試作兵器を撃ち込まれたら。

 

そんな中怒号が外から聞こえてくる。

 

「どこかに隠れているはずだ!!『ターゲット』もそこにいる!!」

 

(きたっ...)

 

怒号と共に大勢の走る足音が迫ってくる。

覚悟を決めたその時、

 

「うおおおおおおおっ!!」

 

「何だコイツ!?あちょ、待っ、ぎゃああぁ!!」

 

廊下から聞いた事のある声と共に何かが壁に激突の様な、衝撃と砂塵が舞い、悲鳴が上がる。

不良生徒たちの悲鳴と混乱した声が聞こえる。

 

セリナがおずおずと廊下に顔をだし周囲を見渡すと、不良生徒達の中から大柄な体格の生徒が現れる。

その生徒をセリナは知っていた。先程自分が診療し、記憶喪失と言っていた生徒。

 

「ココさん...?」

 

ベッドで寝ていた時は気がつかなかったが、その身長はどの生徒もしのぐほど大きく、身長はおおよそ180cmを超えるだろう。

高身長だが細身、だがその威圧感はまるでそういう大型オートマタと言われても違和感ない程だった。

 

...そんな大豊ココだが額には冷や汗を浮かべていた。

不意打ちで体格を活かしたタックルを決めたが問題はここからだった。

 

(うぐ、失敗した...『丸腰』なのすっかり忘れてた...)

 

医務室からここに来るまでに『銃撃戦が行われているのに銃を持たずに行動していた』のだ。

大豊時代の訓練であれば教官からこれでもかとボッコボコにされお説教されていただろう。

だが今はそれ以上に大変な事になってしまっている。

 

「いたぞ!!『ターゲット』だ!!」

 

周りの不良生徒が一斉にこちらに銃を構える。

ターゲット、と言われた気がしたがそれを気にする暇はない。

 

(まずい...このままだと蜂の巣だ...!ん?)

 

ふと足元に目を向けると突進によって突き飛ばされた不良生徒が持っていたと思われるかなり大型の筒状の武器があった。

大きい。小柄な生徒まんま一人分程の大きさであり、不良生徒も扱いきれていないのか引きずって移動した跡すらある。

ココにとって生徒達が持っている銃には見覚えがないものが多かったがこれだけはなぜか見覚えがある。

 

(これ、発射孔が俺の乗ってたACに積まれてたミサイルっぽいような...)

 

そう思い武器を拾い上げる。

大きさに見合った質量が腕に負担としてかかったが自分の体格だったら問題なく持てる。

少々重いが肩に担ぎ上げると銃を構えていた不良生徒たちに同様が走る。

 

「おい!コイツなんなく持ち上げやがったぞ!!」

 

「あのクソ重いミサイルをか!?」

 

「くそっ、アレを使われる前に片付けろ!!...ッ!?」

 

「銃撃!!新手か!?」

 

再度不良生徒達が銃を構えた瞬間、横から射撃される。

目を向けると椅子型のドローンがそこにあり、その奥に包帯塗れの紫髪の少女がセリナの肩を借りやっとの思いで立っている。

 

「誰だか知らないが、キミがいま持っているのは新型のミサイルだ!!思いっきりぶっ放してくれ!!」

 

「わかりました!!」

 

ウタハがココに向かって叫び、ココがそれに呼応するように答える。

引き金を引くと迫撃砲弾のような大型のミサイルが発射され...あたりが爆炎に包まれた。

 

「ぎゃああああああああ!!??」

 

「くそっ、わかってたけどなんて威力だ...」

 

閉所での爆発の為、逃げ場の無かった不良生徒が一斉に倒れこむ。

しかし撃った本人も無事ではなかった。

 

「ハッ...ハッ...フーッ...」

 

ココも少なからず爆発に巻き込まれたものの大した怪我ではない。

しかしココの精神面に影響がでていた。ルビコンで見た最後の後継。

傭兵の駆るACのブレードに機体を切り裂かれ、爆炎に包まれたあの瞬間。

それがフラッシュバックしかけていた。

 

「クソッ、ふざけやがって!」

 

「やっぱ受けなきゃよかった...『C&Cの新人を排除』だなんて...」

 

「ひるむな!!アイツもまだあのミサイルを扱いきれてない!!ここで仕留めてしまえ!!」

 

不良生徒達がココに向かって発砲し、棒立ちだったココに何発か命中する。

しかしどの銃弾も大した傷にはならなかった。

 

「いっ...痛っ...このっ!!」

 

「まだ撃ってくるぞぉ!!うわぁぁ!!」

 

痛みによって正気を取り戻したココがもう一度ミサイルを発射する。

派手な爆発と共に不良生徒が倒れていく。

脅威を排除していく中でココは再び決意する。

 

「やってやる...俺だって...誰かに頼まれての襲撃かもしれないけど...お前らにやられてたまるか...!」

 

ミサイルを振り回し敵を蹴散らす様をセリナとウタハは呆然と眺めているしかできなかった。

爆炎はひろがり、悲鳴と銃声がこだまする。

 

「ははは...凄まじいね、不良達より暴れてるじゃないか。」

 

「ココさん...」

 

「ココ?ああ...じゃあ彼女が...C&Cの6人目...」

 

爆炎に包まれながらミサイルランチャーを振り回し、敵を蹴散らす様は正に獅子奮迅の勢いであった。

 

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「...どうなってやがンだ?」

 

「さ、さぁ...」

 

「うわー...治安悪いゲヘナでもここまでにならないよ?」

 

「大惨事どころじゃないな...」

 

任務を終え、ミレニアムに帰還したC&Cのメンバー達が目にしたのは、襲撃によって大惨事になっているミレニアムの一角だった。

火薬の匂い、散らばる薬莢、ボロボロの建物。

ミレニアムの学園を、その一角とは言え悲惨な状況になっているのを考えると相当激しい戦闘がおこったのは明確だった。

ただ既に戦闘は終わっているようで、安全ヘルメットをつけた生徒たちが修繕や事後処理の為に走り回っている。

 

「あーっ!!いた!!」

 

大きな声と共にユウカが駆けてくる。

腕や頭には血の滲んだ包帯がまかれており応急処置後の痛々しい姿ではあったが、大股で勢いよく迫り不機嫌な表情を浮かべていることから苦痛というより怒りが勝っているようだ。

 

「あんた達がいなかったせいで大変なことになったんだから!!」

 

「お、落ち着いて!!何があったんですか?」

 

アカネがユウカを窘める。

時間はかかったがC&C総動員で落ち着かせた結果ユウカから話が聞くことができた。

 

「...つまり不良生徒の襲撃はC&Cを狙った物であったと?」

 

「ありえねぇ、あんな規模の襲撃で...そもそもあたし達がいなくても対応できてる時点でC&Cを狙った所で結果は見えてたろ」

 

「いいえ、確かに貴女達なら苦戦しなかったかもしれない。」

 

ユウカの視線が後ろに臨時で用意された救護室に目を向ける。

 

「今日、C&Cに配属されるはずだったコールサイン『05』...彼女が狙いだったの。」

 

「「「「!!??」」」」

 

C&Cのメンバーに動揺が走る。

コールサイン『05』。今日配属予定だった『大豊ココ』に与えられるはずだったコールサイン。

その新人が狙いだったというのだ。

 

「まって?たしかココちゃんの配属って」

 

「そうよアスナ。外部には話していない。でも極秘事項にしていなかったし情報として何処かから漏れてたのかも。」

 

「ンでもよぉ、アイツを狙ったところで...」

 

「『名もない不良生徒、或いは戦闘グループが、C&C 1名を戦闘不能にした』。そんな話が流れたらそれこそC&Cの評判が地に落ちる。」

 

「なるほど...」

 

アカネが深刻そうに呟いた。

それを聞いたカリンが事情を悟り、口を開く。

 

「つまり不良生徒の目的は『C&Cの評判を落とす事』と『自身はC&Cを倒した!と評判を得る事』だったと。」

 

「あはは!カリンはリーダーと違って察しがいいね?」

 

「何だとぉ!?」

 

「...とにかく、投降した不良生徒から聞いた話から目的はそう言う事だと判断したわ。裏で不良生徒を支援し扇動した連中もいるみたいだけど後々割り出せると思う。あともう一つ。」

 

ユウカがC&Cを見渡したあともう一度救護室に目を向ける。

 

「今回の襲撃に対応したのはC&Cよ。」

 

「へぇ」

 

「なるほど~?」

 

「ハァ!!??」

 

「それってつまり...」

 

--------------------------------------------------------------------------------------------------

 

「う...」

 

爆炎に包まれた戦場で、多数の不良達が倒れている。

そんな記憶を最後に大豊ココは気を失っていたようだ。

 

目が覚めると今朝一度見た天井。薬品の香り。

一度自分が眠っていた医務室のようだった。

体を起こそうとするが、体が思うように動かない。

どうやら体が包帯塗れになっていてそれが体の動きを阻害しているようだった。

それにまだ体が痛むあたり、不良生徒達からの襲撃で負った怪我が響いているようだ。

 

「まいったな...」

 

動けない体で呟く。

ふと目を横に向けると...

 

「よぉ、何が参ったって?」

 

先ほど自分にC&Cの解雇通告を突きつけたネルがいた。

ネルだけでない、ネルの後ろに三人のメイド姿の生徒が立っている。

 

「大豊ココさんですね?」

 

「えっ、あっ、ハイ...」

 

眼鏡をかけたメイド姿の生徒が一歩前に出てココに話しかける。

真面目な表情の裏になにか含みが見えるが窺い知ることはできそうにない。

ココは生唾を飲んで話を聞くことにする。

 

「先程の襲撃に対応して頂いたそうですね」

 

「ハイ、私を助けてくれた他校の生徒を助けたくて...」

 

「...自分の身を守る為、ミレニアムを守る為、と言った理由では無かったと?」

 

「ねぇねぇカリン、今のアカネものすごい真面目モードじゃない?」

 

「アスナ先輩、黙って」

 

アカネの表情が険しくなる。

自分の身を守る為ならまだしも、『ミレニアムを守る為』ではないことが引っかかったようだ。

C&Cはミレニアムの生徒会、「セミナー」の直属組織。

ミレニアムに貢献できない事はC&Cに向かない、ということなのだろうか。

 

「...正直、自分の身に起きたことが整理出来ていない中での出来事で目の前の異変に対応するので精一杯でした。」

 

「なるほど...」

 

アカネは一切表情を動かさない。

終わった。ココはそう思った。

自分は今日C&C配属の予定だった。

自分が目覚めた時、ルビコンでの記憶や自分の肉体の変化に混乱してその話はナシという事だったがこれが決め手になったろう。

 

C&Cの所属がなくなった中、自分のこれからはどうなっていくのだろう。

そもそも学園生活を、身の回りの生活基盤を整えなければ今の問題に対応している暇すらない。

キヴォトスの生徒に帰宅部ってあるのだろうか。

そう思っていた中である。

 

「ですが、人のために自分を犠牲にできる奉仕の精神は評価しないといけませんね」

 

「えっ」

 

アカネがココに向かって微笑む。

そのままアカネは何処からかタブレットを取り出し資料を確認し出す。

 

「先程、トリニティから負傷者への対応できていた救護騎士団の応援の方から正式な『記憶喪失』のカルテを頂きました」

 

「正式な...?」

 

「そして、襲撃の際に助けていただけた事を感謝していました」

 

セリナだ。トリニティの救護騎士団で話をしたのは彼女しかいない。

もしかすると彼女は今回の件で情状酌量の余地の確保のため動いてくれたのかもしれない。

 

「セミナーのユウカからも、今回の襲撃の不良生徒のほとんどを制圧したとも聞いています。今回の一件で『C&Cの新人が一人で大勢の不良を制圧した』、そんな話が広がるかもしれませんね。」

 

「そ、そんな、他の方々も応戦していました。自分だけ持ち上げられているような...」

 

実際自分以外にも戦っている生徒を目にしている、自分だけが暴れたかのような話は少し違う気がする。

 

「まぁそんな謙遜しないでください。今回の活躍や、救護騎士団からの診断...それらの要因から『ある通告』をさせていただきます。」

 

「通告...?」

 

アカネは持っていたタブレットの画面をココに見せる。

そこには仮入部という文字が目立つ位置で存在を主張していた。

 

「あなたにはコールサイン『05』を貸与し、C&Cの仮のメンバーとしてこれから働いてもらいます。記憶喪失ではあると思いますが、その中でどこまでできるのか...それを評価させて頂きます。」

 

「仮入部...ありがとうございます!自分、何処までやれるかは分かりませんが、全力で頑張ります!!」

 

「オイ」

 

宣言した瞬間、ネルが足を思いっきりベットの上に乗せココを睨む。

その表情から不機嫌であることはほぼ確定していた。

 

「アタシはお前を認めてねぇ。リーダーはあたしだ。気に入らねぇと思ったら速攻で首を切る。覚えておけよ!!」

 

まるで今にも殴りかかってきそうな剣幕でネルから圧がかけられる。

ルビコンで大豊核心工業集団に所属した初日を思い出す。

これからはあの時以上に忙しく、苦労する日々が続く。

なんとなくだが、そんな気がした。

 

--------------------------------------------------------------------------------------------------

 

「ミレニアムに向かわせた娘達からの連絡が途絶えましたか」

「...せっかく手に入れた情報を売り、かなりの規模で動けるよう支援したのですが。まぁいいでしょう」

「あれが脅威になるとは考えにくい...計画への弊害にはなりえないでしょう。次のステップへ進みましょう」

 

暗い地下室で一人の人影がモニターを眺めながら独り言を呟く。

モニターからの光が怪しく室内を照らしていた。

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