『赤コーナーより、千草海来選手の入場です!』
ここは元々工場であった建物だが、既にその役目を終えて新たな役割を持つようになった。
真ん中にはリングが設置され、それを取り囲むようにパイプ椅子がいくつも並んでいる。
後方にはステージがあり、その上にあるスクリーンには1人の男の名前が表示されている。
「いけー!」
「やってやれー!」
プロレスやアマチュア格闘技の会場として使われるようになったこの建物内にいる人々を湧かせる男が1人いた。
それはステージからリングに繋がる花道を、歓声と入場曲を背に歩く千草海来という男であった。
金髪でツーブロックの髪型と、釣り目に整った顔立ちが特徴的である。ファイトパンツとグローブのみを身に着けたその肉体は筋骨隆々という言葉が相応しい。その背中には1羽の鷹を描いたタトゥーが入っている。
「ドリンクは?」
「貰うぜ。」
リング脇でセコンドを務める友人の三雲和樹が、手に持っているアクエリアスのペットボトルを海来の口に運んでグローブをはめていて物を持ちにくい彼の変わりにその中身を口内に流し込む。海来の口には既に黒と白のマウスピースがはめられている。
「さあ、稲妻落としてやるぜ!」
右腕を高く突きあげてリングに入り、対戦相手と顔を合わせてからその中を一周する海来の姿に観客が完成を上げる。
『これより、第10試合を始めます。青コーナー!伊能智弘!』
入場曲が止まると、今度はリングアナによって相手選手の名前がコールされて歓声が上がる。
『赤コーナー!千草海来!』
続いて海来の名前が呼ばれるとともに、会場中から歓声が上がる。
海来は何度かこの地下格闘技の興行に参加し、未だ無敗だからか常連客から人気があるようだ。
『なお、この試合は3分2RのMMAルールで行います。』
この試合は寝技もありの総合格闘技ルールで行われることが告げられ、リング上の選手2人が拳を合わせて距離を取る。
『ROUND1!ファイト!』
試合開始のゴングと共に、海来は左足を前にして拳を構えるオーソドックススタイルのファイティングポーズで相手選手との距離を測る。
「来たか!」
先に仕掛けたのは相手選手の伊能の方で、海来の足元目掛けてタックルを仕掛けるが…
「おおー!」
そこに合わせて海来が飛び上がって右膝を突き出して膝蹴りを繰り出すと、それを被弾した伊能の体制が崩れてしまう。それを見て客席からも歓声が上がる。
「パンチだ!パンチ!」
セコンドの三雲の指示に従うように、海来は伊能の顔面部目掛けて2発、3発とパンチを撃ち出していく。
「ストーップ!」
パンチの連打を浴びて倒れる相手選手に向けて、更に何度か拳を振り下ろす海来であったが、彼らの間に入って試合を止める。それと共に相手選手が戦意を喪失しているのを確認して海来のKO勝利を宣告し、それと共にゴングが鳴る。
「また勝ったぜ。」
「うん、お疲れ様。」
自身の勝利に笑みを浮かべる海来に、会場から歓声が浴びせられ、セコンドの三雲からは労いの言葉を賭けられる。
「やはり、あの人が…」
一方、客席にはその試合を静かに見つめる女性がいたのであった。
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「今日もありがとな~それじゃあ、お疲れさん。」
「うん、お疲れ様。じゃあまたね。」
大会を終えて、俺は三雲さんと別れて帰路に着く。
俺は酒は嫌いだから打ち上げとかは特にしねえし、試合終わって片付け終わったら大体お互いすぐ家に帰る。まあ、三雲さんは俺がプロだった時から世話になってるからなんか労いはしておきてえな。
(つーか、あれから2年か…)
俺がプロ団体を追放されてもう2年か…
戦いたくてずっと地下格闘技団体に出てるけど、中々芽が出ねえ…
俺はこのままで良いのか?こんなモヤモヤも、最近は試合に勝っても晴れはしねえ。
「見つけました!千草海来さん!」
そう思いながら道を歩いていると、1人の女の声が後ろから聞こえた。
俺の名前を呼ぶ声に反応し、後ろを振り返るとそこにはショートカットの髪型に、スレンダーな体型の所謂キレイなお姉さんって感じの人がいた。スーツが似合うような少しキリッとした感じの女だ。まさか逆ナンか?
「なんだ?この俺に何か用か?」
逆ナンしてくれんのはありがてーけど、よく見たらその女が着ている服は少し汚れてるところがあって、ボロボロって感じだ。これから遊ぶとはあんま考えられねえ感じの格好だ。絶対スーツとかの方が似合う…
「単刀直入に言います。私達のために戦ってください!」
「戦う?なんだ、ファンの人か?そういうことなら…」
どうやら俺のファンの人だったみたいだ。
これからもファンのために格闘技を続けて欲しいってお願いならまあ、受けるけど…
「そう言うことじゃなくて…」
「イー!イー!」
とその時だった。
甲高い奇声が俺の耳に入って来る。
その奇声を上げる黒タイツの集団が現れる。
「なんだよ、アイツら…」
「あれはショッカーです。さあ、こっちへ!」
「ちょ、おい!」
その集団から逃げようと、その女が俺の手を引いて裏路地の方に連れて行こうとする。
とりあえずこの女と…黒タイツの男達が何か関係あることは分かるが…
「なんなんだよアイツら!」
今はまずこの女と一緒に走って路地裏の方に向かい、ショッカーとかいう連中のことを問いかける。
「彼らはショッカー、私達の世界を支配した者達です!」
「世界を支配?どういうことだ!この世界は誰にも支配されてないだろ!」
世界の支配っつっても、この国は今も元気に総理大臣とかいう人らが抑えてるし、他の国もそんな感じだ。世界を裏から支配とかそう言うことか?少なくとも俺はショッカーとかいう奴らに支配された覚えはない。
「見つけたぞ!西連寺レナ!」
とそこで、俺の目の前に毒を持ったエリマキトカゲみたいな化物が現れる。
「ビックリさせやがって…誰だお前!」
思わず目の前に出てきた怪人の顔面を殴り飛ばす。
「いって!何するんだ!」
殴り倒されている怪人が棒の様な武器を俺に振るってくるが、それを避けて前蹴りで突き飛ばして再び地面に倒す。
「海来さん、これを使ってください。」
「これはなんだ?」
さっきの怪人に西連寺レナと呼ばれていた女が、俺にゴツイスマートフォンの様なものを手渡す。
「これはディクリードライバーです。これを使って戦ってください!」
「ただのスマホだろ?」
「良いからこれを!」
と言って俺はディクリードライバーとかいうスマホらしきものを手渡される。
「し、仕方ねえな!」
とにかく今はさっきの怪人とか黒タイツとかが追ってきててお互いの命が危ない。
ここはつべこべ言わず戦うしかねえ…
「クソッ!こうなったらもう、やってやるよ!」
再び起き上がり、俺らに向かってくるトカゲ怪人と黒タイツ集団をまずは吹っ飛ばす。
そのために俺はスマホ型デバイスのアプリを起動する。
『変身アプリを起動します。』
すると、俺の腰にベルトみたいなものが巻き付けられる。
「デバイスをベルトに装填してください!」
「おう!」
西連寺の指示に従い、ベルトにデバイスを装填すると横にあるカードホルダーから1枚のカードを取り出す。
「変身!」
『カメンライド!ディクリード!』
取り出したカードをディクリードライバーのスマホ画面部分に翳す。すると俺の身体は灰色のオーラに包まれていく。
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『カメンライド!ディクリード!』
ディクリードのカメンライドカードがベルトに吸い込まれると、その画面から20個のビジョンが飛び出してくる。それらは全て1人の戦士の姿を模した灰色のホログラムであり、それらが海来の身体と重なり、彼を1人の仮面の戦士に変化させる。
「仮面ライダーディクリード、あなたが変身する仮面ライダーの名前です。」
黒のアンダースーツの上に、バーコードを模したアーマーを胸部や肩に装備していて、体の多くは金色のパーツが付いている。紫の複眼が騎士の兜を模したバイザーの中から敵を覗き込む。
「ディクリード…今はよく分かんねえけど、まずはテメエらを倒す!」
「よく分からない間にやられてたまるか!やれ!」
「イー!」
ディクリードへの変身を遂げた海来を、毒トカゲ男が引き連れるショッカー戦闘員達が襲う。
「動きは…初心者以下だな!」
この状況を打破するため、戦う決意をした海来は腕を大きく振ってナイフを振るう戦闘員達の動きを次々と見切って避けていき、戦闘員のうち1体の腹部目掛けてパンチを打ち込む。
「ハアッ!トウッ!」
さらに向かってくる戦闘員達との間で距離を取りつつ、攻撃を避けてから、パンチやキックを繰り出して戦闘員を次々と倒していく。
「貴様!」
次々と戦闘員がやられていく様子に業を煮やした毒トカゲ男が、棍棒を手にディクリードに向かって走っていくが…
「そんなんじゃ俺は倒せないぜ!」
ディクリードが右ハイキックを撃ち、それを毒トカゲ男が自身の武器でガード。
だが、ディクリードがその右足を地面に着地させるとそれを軸に体を回転させ、今度は左足を突き出す。
バックスピンキックが毒トカゲ男の顎を捉え、攻撃を受けた怪人の身体が地面に倒れ伏す。
「イー!イー!」
「これじゃキリがねえな…」
ディクリードが毒トカゲ男に追撃を仕掛けようとするが、主である怪人の身を守るために、ショッカー戦闘員たちが彼らの間に立つ。
「海来さん!ライダーカードを使ってみてください!」
「おう!これか?」
多数の戦闘員を迎え撃つべく、ディクリードはレナに言われた通り新たに1枚のライダーカードをホルダーから取り出して、ベルトに翳して認証させる。
『カメンライド!龍騎!』
すると、カードに描かれていた仮面ライダー龍騎のホログラムがベルトから映し出されて、ディクリードの前に立つと、その幻影が彼の身体に入っていく。
「これは…」
すると、ディクリードの右手に龍の頭を模した籠手の様なものが装備される。
その形は、仮面ライダー龍騎の契約モンスターであるドラグレッダーの頭部と同じ形をしている。
「仮面ライダー龍騎の力を武装したものです。」
「龍騎?なんだそいつは?」
「仮面ライダー龍騎、あなたと同じ仮面ライダーです。」
「コイツも、仮面ライダーの力か…」
ディクリードは仮面ライダーのカードをカメンライドすることで、ライダーの能力を引き出し、自らに武装することができる。仮面ライダー龍騎をカメンライドすることで右腕に装備された龍騎・ドラグアームを構えながら、自身に迫る戦闘員達を見据える。
「これでも、喰らいやがれ!」
パンチを撃ち出すように、ディクリードが拳を突き出すと、龍の籠手から炎が放たれて戦闘員達を一瞬にして焼き尽くす。
「こいつは強い!」
龍騎・ドラグアームの力を絶賛しつつ、ディクリードは更なるカードを引く。
『カメンライド!フォーゼ!』
次はフォーゼのカードをカメンライドさせると、ディクリードライバーから仮面ライダーフォーゼのホログラムが映し出されて、ディクリードの身体に入っていく。
「おお、今度はロケットか!」
すると、龍騎・ドラグアームが仮面ライダーフォーゼの使うロケットモジュールに変化する。
「よっしゃ行くぜ!」
フォーゼ・ロケットモジュールのブースターから火を噴くと、ディクリードは毒トカゲ男に向けて加速しながら走っていき、ロケットの勢いを乗せたパンチを敵の胸部に叩き込む。
「これでも喰らえ!」
更にロケットモジュールのブースターで飛び上がりながら、右膝を突き出して、毒トカゲ男の顎を撃ち抜く。
『カメンライド!ブレイド!』
続けて仮面ライダーブレイドのカードをカメンライドすると、ベルトから仮面ライダーブレイドのホログラムが空中に映し出されて、ディクリードの身体に取り込まれる。
「今度は剣か!」
次は左手に仮面ライダーブレイドの得物である剣、ブレイラウザーが装備されている。右手に残ったロケットモジュールで火を噴きながら飛び立ち、毒トカゲ男に接近してその刃で切りつける。
「どれだけ能力があるんだ!」
毒トカゲ男も棒状の武器を振るうが、それをディクリードはブレイド・ブレイラウザーで受け止める。
「さあな…?俺も知らねえ!」
ディクリードの前蹴りが毒トカゲ男の腹部に蹴り入れられ、一度2人の距離が離れたかと思えば、ブレイド・ブレイラウザーが右上から左下に向けて振るわれ、毒トカゲ男の身体を切り裂き火花を散らす。
「さあ、稲妻落としてやるぜ!」
そして、目の前の弱った敵に止めを刺すべく、ディクリードは新たなカードをホルダーから引き抜く。
『ファイナルアタックライド!ディ・ディ・ディ・ディクリード!』
そのカードをディクリードライバーに認証させると、ディクリードは空中に向けて飛び上がると左足を突き出す体制になる。彼と怪人の間に並ぶ20人の仮面ライダーのカードのビジョンを1つ1つ通っていきながらディクリードの身体が毒トカゲ男に向けて突き進む。
仮面ライダー達のエネルギーをその身に溜めたディクリードの蹴りが毒トカゲ男の胸部に突き刺さると、吹き飛ばされた毒トカゲ男の身体はダメージに耐え切れず爆発四散。
自分達に襲い掛かってきた敵が全て倒されたと分かると、勝利を確信した海来は自身の変身を解く。
「まずは、初勝利ってとこか。」
「いいえ、まだ戦いは始まったばかりです。」
海来の下に、西連寺レナが歩み寄ってくると、彼の手に持つディクリードライバーを手に取る。
「おい、何するんだ?」
「あなたには今から私達の世界に来てもらいます。」
「お前らの世界って…ちょっ!?なんだあれ?」
レナがディクリードライバーを操作して、アプリを起動すると彼らの周囲に灰色のオーロラカーテンが現れて、海来とレナの2人を飲み込んでいくのであった。
千草海来:入場曲
https://www.youtube.com/watch?v=9O0ND_H98rk
千草海来 (ちぐさかいき)/仮面ライダーディクリード
23歳
CV鈴木達央
大阪府を拠点に活躍する地下格闘家。
目は釣り目で整った顔立ちをしており、髪は金色に染めている。
身長175cm、体重71kg(試合時)、体格は筋肉質で服の上からでも分かるほど筋肉が付いている。
背中には大きめの鷹のタトゥーが入っている。
熱くなりやすい性格で、正義感が強い。
テンションが上がりやすく、周りからうるさいと言われてしまうこともある。
喜怒哀楽が表に出やすく、割と素直。