勢いで書いてしまった。やったぜ。投稿者────
「神の目ぇ?もってる訳ねえだろふざけんな!」
ドンッ
どっかの酒場のどっかの呑んだくれが机を叩く。喧騒に包まれた酒場ではそんなのは誰も気にしない。見事に風景に溶け込んでいる冒険者風の男。何も特徴が無いようなつまらない男。………顔だけは特徴的だろう。嫌な意味で。
「おいおい少し飲み過ぎなんじゃないか?」
その対面に座るのは褐色に眼帯のイケメン。青い髪に酔いを感じさせない笑顔は正面の男と対照的と言えた。
「ははっ、すまん。それにしても兄ちゃん、あんた良い奴だなあ」
「ああ、俺はこのモンドで一番優しい男だからな」
「そうかい、そりゃ良いや。今日の俺はツいてるってことだなあ。さっきの任務の失敗もこれで帳消しだあ!あっはっはっ!」
少しだけ上機嫌になった男。しかしやけ酒は止まらない。
「へえ、任務?その話、俺に詳しく聞かせてくれよ」
「ええ?おいおい兄ちゃん。傷心中の俺にそんなこと語らせないでくれよ」
「まあまあ、俺に話したら楽になるかもしれないぜ?」
「………分かったよ。いや特に何かがあった訳じゃないんだよ。ドラゴンスパインの方で設置してほしい機械があるって言うから行ったんだがなあ。その機械を落として壊しちまったんだよ。全く、俺は昔から駄目だぜ。何も出来やしねえ」
どうやらこの男録でもない。本当に駄目駄目なようである。今までどうやって生き残ったのだろうか?
「へえ、そりゃ自業自得だな」
「うう……そんなこと言わないでくれよお。モンド1優しいんじゃねえのかよお!」
「はっはっはっ、優しいからこそだな」
「そうかあ?まあ良いや。それよりもだよ!その後ヒルチャールの群れに襲われちまってよお!スライムも出てきてたいへんだったんだ!」
「何?おいおいそれはどこら辺だったんだ?」
「え?……えーと、確か南の丘の辺り、清水町よりも南の所だったが………」
「成る程なあ。ありがとうな、良いこと聞けたぜ。これはお代だ。今回は俺が払ってやる」
「え、おいおい兄ちゃんそりゃあ……ってどこ行くんだよお!」
「ちょっと魔物退治に、な」
「いや待っ、て、行っちまった。無駄だと思うんだがなあ」
風のように去って行ってしまったイケメンの影を目で追いながら男はまた飲む。今度はビールのようだ。
「…………もう討伐しちまったし。……ま、飲み代浮いたしいっか!」
◆◆◆
「あー、飲み過ぎた」
いつの間にか草原で寝ちまってた。クソッ、どこだここ。
「あ、モンド城」
ああ、そうか。昨日あの後、月を見たいと思ってこんなところまで散歩に来ちまったんだった。それにしても昨日の兄ちゃんには悪いことしちまったなあ。
ありゃあ……ガイアだよなあ。
初めてのモンドキャラとの邂逅があんな形になるとは。モンドに来てから一年で一回も見かけなかったってのに……運が悪いぜ。出来るだけ良い姿を見せたいってのが転生者の気持ちってもんだが、まあ良いや。
もう明日にはモンドも離れようと思ってたんだ。モンドはどうも俺には会わない。この国に来てから俺は失敗続きだ。
ま、璃月でも失敗してたのは変わらないが。
この世界に来てから五年弱。俺はどうにも上手くいかない人生を送っていた。よくある転生話な訳だ。今まで色んな世界を渡ってきたが今回はテイワットに来たらしい。
気づいたら璃月に居て、原神の世界だって気付いて。生きるために必死になって、キャラ達と出会うなんてのは二の次三の次だった。それでも会うことが出来た人達は居たがな。
やっとこさ冒険者になって、今新米として頑張っているわけだ。
けど、どうにも上手くいかない。頑張っては居るものの成功率は芳しくない。どうにか金を貯めたら他のことやってみようかしら。狛荷屋なんて良いかもな。世界中を見て回れるかもしれないし、そうなると稲妻かあ。
取り敢えず依頼受けるか。
因みに俺は神の目を持っていない。悲しい。とても悲しい。本当に悲しい。大事なことだから三回言った。
俺に神の目の話は禁句だ。魔法とかなら使えるんだけどねえ。
「さて、行きますか」
ここはテイワット大陸。自由の国モンド。龍災はまだ起こっていない。
◆◆◆
「どうだったガイア」
騎士団団長の執務室にて、西風騎士団団長にして蒲公英騎士。代理団長ジンは調査の結果を訪ねていた。
部屋には図書館司書のリサ、そして先日のイケメン、西風騎士団騎兵隊長であるガイアもいる。
西風騎士団の核とも言えるメンバーが揃い踏みしているのにはやはり訳がある。その理由は─────
「ヤバいなあれは。全部藻抜けの殻だった。それも不自然なほどに」
「………やはりか」
(どうにも皆の顔が晴れないな。いや、当然か。彼はそれだけ得体がしれない)
「璃月の方でも散々ヤバいって言われてた奴だ。どれだけの物かって思ってたが………流石におかしい。戦闘の形跡は無かった。けどヒルチャール達の痕跡はある。スライムの跡もあった。けど、」
「「彼の痕跡だけが無い」」
リサと私の声が被る。ここ数ヶ月で何度も聞いた。流石にその報告にも聞きあきてきたように感じる。
「………ああ、その通りだ」
「どう思う?リサ」
「うーん、ちょっと耳を疑う話だけど、アンバーからの報告書あるしねえ。まるで彼だけが居なかったかのように痕跡が消されてるわね」
「ああ、あいつの証言から察するに自分の痕跡は消してるんだろうな。けど元素反応すらしないのは流石にな」
(昨日確かにガイアは彼がヒルチャール達に遭遇したことを聞き出した。場所も間違いない。今までと違って確たる証拠だった。この情報に間違いは無い。それはつまり)
「ガイアの言う通りだ。しかも彼は神の目を持っていない。それが正常だとでも言うように、全ての辻褄が合うかのようにだ」
(彼は元素の力無しに戦っていることになる)
「他にも討伐情報は数多くあるが、元素反応の情報は無しか。どうやら本当に技術だけでやってるらしい。」
「確かに、そういう人間が居ない訳じゃないわ。けど全て無傷で帰って来ていると言う報告もある。ちょっと人間味が無いわよねえ」
「まあなんにせよだ。これからも彼の動向は探っておこう」
「俺は疑いすぎだと思うけどな。あいつは何かやらかすような奴じゃないと思うぜ?」
(ほう、ガイアがそんなことを言うとは。リサも驚いているみたいだ)
「あら、ガイアがそんなこと言うなんて珍しいわあ」
「俺はあんな呑んだくれが悪事を働くとは思えなかったからな」
(成る程、確かに直接観察したガイアの感想は重要だ。しかし)
「しかし万が一がある。彼は現状モンドの不穏分子の一つとなっている。これ以上モンドを悪に犯される訳にもいかないからな」
コンコンッ
「ん?入ってくれ」
「失礼します!、って皆さん揃っていましたか」
「ああスワンか。しかし、そんなに急いでどうしたんだ?」
(門番の彼がどうしてこんなところに……かなり急いだんだろう。息も上がっている。何か起こったのか?)
「申し上げます!実は………彼が」
「彼?」
「田中が、モンドを出るそうです!」
「何だって!?」
「団長、急ごう」
「ああ、すまないがリサもついてきてくれ!」
(急がなければ!何故だ?何故いきなりそんなことに!私が行くのは悪手だろうか?いや、最後になるかもしれない。自身の目で見ておかなければ!)
「分かったわあ。スワン?彼は今何処にいるの?」
「ロレンスに足止めさせています」
「よし、直ぐに向かうぞ!」
◆◆◆
「ようロレンスさん。今日も頑張ってるねえ」
「ああ田中さん、お疲れ様」
「うん、おはよう。それにしても今日も大変だね。毎日立ってて辛くならない?」
「ああ……まあそれが仕事だからなあ」
「確かに、仕事ってのはそういうもんとして認識しちまうよなあ。あ、そうだこれ」
「これは?」
「ロレンスさん髪長いだろ?だからさ」
渡したのは髪止め。少し綺麗目の物だ。これでも俺にとっては贅沢品。結構金をはたいて買ったのだ。
「それにしてもどうして?」
うーん、驚いてくれたようで何より。手痛い出費だったが、このモンドで一番お世話になった人だ。それに
「俺今日モンドを離れようと思うんだ」
「え!?本気か?」
「ああ。だから今までお世話になったロレンスさんに少しでも恩返ししようと思ってね」
「そうか……なら少し話さないか?」
「ああ、思い出話はいっぱいあるからな。それにモンドで仲良くなれた人なんて片手で数えるくらいしかいないからなあ」
本当に片手で数えられる。料理店『鹿狩り』のサラさん。酒場エンジェルズシェアのバータンダー、チャールズ。冒険者協会支部長のサイリュスさん。………少ないなあ。
後は、まああの人は璃月の頃に出会ったからノーカンかな。それに仲良くもなれてないし。
「まあ旅なんてそんなもんじゃないか?」
「うん、その通りだな。ロレンスさん、もしこれから金髪の旅人に会うことがあったら………失礼の無いようにな」
いずれ来るだろう彼もしくは彼女。原神の主人公はこの国で、この世界で有数の英雄になる。一応伝えておいた方が良い。何かの手違いでロレンスさんが下手を打ったら大変だからな。
「え、何なんだそれ?」
「そのままの意味。もしかしたら、出会うことがあるかもしれないんだ。彼、ないし彼女はモンドを救ってくれるだろうからな。その時は門番のあんたが失礼だったら困るからね」
正直龍災とか起こりそうもないし、旅人とか来ないんじゃねえかなとか思ってるけど。
「どうしたんだ今日?予言者かよ」
「いやあ、どうなんだろうねえ。ま、元素とか存在してるんだし、予言くらいあっても良いんじゃね?」
ま、もしかしたら会うのが最後かもしれないからな。伝えたいことは全部話しておきたい。
「てきとうだなあ。自分が言ったことだろ?」
「まあそうなんだけどね。何となく、言っておいた方が良いと思ってさ」
「今日本当におかしいぞ。何かあったのか?神の目でも貰った?」
「黙れ」
「ああそこはいつも通り………」
俺に神の目の話は禁句。はっきり分かんだね。
それから俺は暫くロレンスと話した。しかしもう夕暮れが近い。そろそろ行かなくては野宿の準備が出来なくなる。
「そろそろ行こうかな」
「ああ、もう行くのか。………もう少しだけ待ってくれないか?」
「え?いやなん」
「すまない、少し良いかな?」
「………え?」
何でジンがおるん?
続かない(確信)