TSエルフが魔王になるまで 作:エタメイカー
異世界に転生した。転生先は
しかしながら、元は娯楽に飢えた現代人。精霊人の永い寿命からなる退屈な人生に耐えられるわけもない。
それに精霊人とは名の通り
前世の残滓で宗教に対して苦手意識が有ったのでこれも辛い。私はそういうのに耐えられなかった。
なので
残念ながら半精霊人というのは嘘で、精霊人の中でも高位の
なので、メレーヌ王国は、数百年後にはメレーヌ共和王国となり私の傀儡国家と化した。
メレーヌ共和王国は王室と元老院、共和貴族議会が統治する開発独裁国家である。共和貴族議会は、貴族院と呼ばれる。貴族院の議員になるためには、一定以上の爵位、一定以上の納税が必要となる。選挙? うちにそんなものは無いよ。
メレーヌ共和王国である政策が実行されるには、3つのプロセスが必要だ。貴族院の提言、王室の審議、そして元老院の確認である。
元老は私とその部下だ。そして王室も私には逆らわない。貴族院も王権派が多数派である。この国で私に逆らう奴はいない。
勝ったなガハハ。と笑いたいところだが、別に私は国家が欲しかったわけではない。良い環境を求めていたらこうなっただけだ。
統治者である私とその配下が狂わなければ、専制国家であるメレーヌ共和王国は繁栄するだろう。しかし、生涯を掛けて覇権国家を建設するより、スローライフがしたかった……
「ヌメ子、お前なんかやってるだろ?」
「なんのことかしら? このわたくしが、悪戯をするなんてエルはお思いなの?」
「思うね」
「そんな。なんて酷い人なのかしら?」
眼の前の黒髪で、ゴスロリっぽい服を着た少女はヌメ子こと、フィヌメリアだ。私の支配下にある元悪霊の死霊である。古メレーヌで王家に逆らい粛清された一族のお嬢様であり、
今は調伏して、元老院で働かせている。お嬢様でありメイドとしての能力は低い。しかし、事務作業がそれなりに出来て、知識が豊富なので文官の代わりをやらせている。
「ヌメ子、これ飲みなよ」
「そ、それは!?」
「飲んで」
「エル様のお飲物に口を付けることなど、畏れ多いことは出来ません」
十中八九、ヌメ子が私の飲みかけのコーヒーに何か仕込んだのだろう。しかしヌメ子が飲まないようなので、私はそれを一気飲みする。
「やったわ! ザマァ見ろですわ! わたくしをずっと働かせて!」
「うーん……わかんないな。ヌメ子、何入れたの?」
「ハバネロよ! 私は三日三晩苦しんだわ! なんであんたは苦しんでないの! なんでよ!」
「そう。あー。わからん」
精霊人は、精霊へと成る種族である。どうやら私もそれは避けられないようだ。神の一種である精霊は受肉しなければ、五感を持たない。食べ物の味も人の温かさも分からなくなるのだ。
私はまだ精霊には、成っていないつもりだったが、どうも精霊化が進行しているようだ。
「ヌメ子被告、殺人未遂及び障害未遂で有罪」
「なんでよ!? 私はほら、あんたのことを思いやって?? そうよ。精霊化が進むあんたのことを思いやったのよ!」
「うわ。嘘くさい」
「ホントよ!」
「スカート没収の刑に処す」
「はぁ!? はい! 提訴します!!」
「駄目でーす。私が法でーす。専制国家なので」
憤懣やるせないヌメ子からスカートを没収する。
白すぎる肌が露わになり、白地に小さな黒い星が散りばめられた綿素材の子供パンツが丸出しになった。
パイピングが鼠蹊部と子供パンツの境界線を黒ではっきりと隔てており、不健康な白い肌と合わさりそれなりの色気が有った。ヌメ子が宙を漂う度に、これまた黒いリボンがちらちらする。
「あー。ヌメ子、かわいいの履いてるね。ゴスロリっぽいしトータルコーディネートが出来てると思う。うん」
「へ……変態ッ!!!」
ヌメ子が必死にスカートを再構築しようとしているが、無駄だ。ヌメ子のような死霊はエーテル干渉が得意だか、純精霊人の方がもっと得意である。
「スカート返してよ!! ねぇ!!」
「めっちゃ怒ってるじゃん」
「当たり前よ! バカ!」
負エーテル受肉体で構成されるヌメ子は、正エーテル体に為りかけている私とは正反対の存在である。
正エーテル体に向かう状態を解除すれば良いのだ。つまり受肉すれば良いのだ。閃いた。私は天才だ。
「サンキューヌメ子」
真っ赤な顔をしたヌメ子のスカートを再構築した。
「死ねぇぇぇ!!」
しかし、正エーテルのことを考えていたせいか、逆の手順を踏んでしまったらしい。下半身がすっぽんぽんになったヌメ子に思いっきり殴られた。
元通りの状態に戻ったヌメ子の顔にはまだ赤みが差している。
「……もうお嫁に行けないじゃない」
「終わりだわ」
「エルと結婚するしか……」
なにやら呟いているが知らない。あーあー聞こえない。
「ヌメ子、いらない人間を知らない?」
「へ? し、知らないわ」
「私は精霊化が進行している。このままでは、いずれ人としての感覚を失うだろう。ヌメ子を見て思いついたんだ。人間じゃ無くなったなら人間を乗っ取れば良いって。そうすれば私は人を続けられる」
ヌメ子は唖然としていた。それから、喜色を浮かべゆっくり口を開く。
「それは悪いことよ。私たち死霊のすることじゃない。あっ、もしかしてエルも私と一緒に成りたいの?うふふふ。けっ、結婚式は何時にしようかしら……」
「いや。別に。この国、もう私いなくても回るからね。私の代役を立てればなんてこと無い」
「んみ゙っ!? えっ、いなくなるなんて、嫌よ!」
「ちょっとお出かけするだけだし問題ないって」
私は罪人を探すべく、ちょっと落ち込み、何やら考え込んでいるヌメ子を無視し部下を呼んだ。
「只今参上しました。我が主」
「ご苦労」
「して、御用命は?」
「君に死んでも良い奴を見つけて欲しいんだ。条件は女性でそれなりに容姿が整っているやつ」
「御意」
この堅苦しい全身鎧に身を包んだ金髪女は、アイギス。守護聖人の持つ盾に宿った武具精霊である。純精霊人である私は、将来的に大精霊となるらしい。
そのため精霊人でしかない私に、武具精霊アイギスは仕えているのだと。
「何故、この穢らわしい死霊がここに居るのです?」
「あんたこそ教会にでも飾られてなさいよ」
「主を悪の道に誘い込む汚点が」
「真面目ビッチのくせに。エルに使われたくてウズウズしてるくせに」
「ぬぅ……う、うるさい! 黙れ!」
「黙らないわ。このビッチ。淫売。二股女。前の聖人サマよりエルが良いんでしょ?」
「ぐっ、主の前でこのような暴言を……浄化してくれるわ!」
二人が戦闘モードへ入る前に仲裁に入る。そして理由を説明する。
「カクカクシカジカ。まるまるうまうま。というわけでね」
「私は反対です! 我が主は善性の大精霊と成られるお方。悪の道へと進ませるわけには行きません」
「あーアイギス。別に私は善人じゃないんだよ。お人好しなだけだし。そんな悪いことするわけじゃないからさ」
「……しかし、それは」
アイギスはめっちゃ反対する。まあ、それもそうなるか。
「アイギス、あんた正論だけしか吐けないのね。生前のわたくしは聖教会の真摯な信徒だったわ。でもあなた助けてくれなかったわよね? どうしてかしら?」
「それは、私が未熟だったからだ。私にもっと広い視野が有れば……そなたを救えた。今もそなたを苦しませている」
「勝手にわたくしが不幸だと思って救おうとする。あなたっていつもそう。わたくしもエルもそんな弱くないわ」
アイギスは項垂れている。ヌメ子は口が上手い。アイギスがヌメ子を救えなかったのは当然なのだ。遠くの街の話で、武具精霊の助けられる範囲には居なかった。ただそれだけのことなのに。
落ち込んでいるアイギスを私は丸め込めた。チョロい。これで、私はスローライフが送れるってもんよ。国家の重圧よ、さようなら。
ニコニコしながら、私はアイギスに罪人を連れてくるよう命じたのだった。