伊地知ママと後藤ママは雰囲気似てるよなって前々から思ってたのでこの話を書いてみました。
良くこの手の話って別のお母さんが「私をお母さんだと思って」とか言ったりするけど、それってかなり無神経だなって自分は思うので美智代さんには絶対言わせないって決めてました。むしろそれ言いそうなのはリョウのお母さんかなって。
ぼ虹要素は薄めにしてます。それが話のメインではないので。
ただやっぱり恋愛的な意味でイチャイチャしてる百合も好物ですが、自分で書く分にはこういう友情と恋愛の狭間のような百合が好きですね。
星歌side
今時刻は昼の15時。今日私と虹夏は金沢八景にあるぼっちちゃんの家まで来ていた。
「初めまして、いつも後藤ひとりさんにお世話になっております。STARRYを経営しております伊地知星歌です。本日はよろしくお願いします」
「あら~初めまして店長さん、後藤美智代と申します。いつも娘のひとりがお世話になっております。虹夏ちゃんもいらっしゃい。さあさあどうぞ上がってください。今日はゆっくりしていってくださいね~」
「お邪魔します。今日はぼっちちゃんもよろしくね!」
「は、はい……」
今日はぼっちちゃんのご両親に、と言ってもお父さんは仕事で不在だが、挨拶に来ていた。
何故今更になって態々金沢八景にまで挨拶に来たかというと、話は一週間程前に遡る。
~一週間前~
「ぼっちちゃん、虹夏、もうすぐ22時になるからそろそろあがれよー」
「あ、はい……」
時間は21時50分。営業時間は23時までだけど高校生のぼっちちゃん達は22時までしか働けないからもう退勤してもらわないとな。しかし今出来る範囲でやってもらってはいるが基本的にうちも必要最低限のスタッフしか雇ってないから閉店作業が大変なんだよな……。
「ねえお姉ちゃん」
「何だよ、バイト中は店長って呼べって言ってるだろ」
「もうタイムカード押して退勤したし。それよりぼっちちゃんのことだけどさ」
ぼっちちゃん? ぼっちちゃんがどうかしたのか? え、なんだ? もしかして辞めたいとか言ってるのか!? それだけは何としても阻止しなければ! ぼっちちゃんは貴重な戦力! ……としては少し弱いが私の心のオアシス! ぼっちちゃんがシフトに入る日をいつもどれだけ心待ちにしているか!
「碌な事考えてなさそうだけど……、ほらぼっちちゃんって家遠いじゃん?」
「え? 家? あーまぁ金沢八景だし遠いよな」
片道2時間、往復で4時間だっけか。金沢八景といえば神奈川県、そんな所からよく毎日通学できるもんだ。
「遠いよなじゃなくてさ、一度ぼっちちゃんのご家族に挨拶とかした方がいいんじゃない?」
「あ? 挨拶?」
「そうだよ。バイトするって決めたのはぼっちちゃんだけどさ、高校生の女の子を遅い時間まで預かってるんだよ? しかも今から帰るってなると日付を跨ぎかねない訳だし」
……確かにそうだ。
喜多やリョウ、大山も日向もそんな離れてないし、虹夏に至っては身内で家も真上。ぼっちちゃんだけが特別遠い。神奈川在住の子を雇うなんて欠片も想定してなかったからすっかり失念してしまっていた。
「前にぼっちちゃんの家に行ったときご両親と話した時はぼっちちゃんの今の状況を喜んではいたみたいだけど、やっぱり家に帰るのがすごく遅いことは心配してると思うんだよね」
そうだよな……。しかも下北沢なんて飲み屋やライブハウスも多くてガラ悪いのやつもチラホラいて治安が良いかと言われれば微妙な地域だ。心配してない訳ないよな。
前にぼっちちゃんのお父さんとはSTARRYに来てもらった時に軽く挨拶したことはあったけど、お母さんとは話したことないし一度ぼっちちゃんの家にお邪魔するべきかもしれないな。
「あ、店長さん、キリの良いところまで終わりましたので今日は失礼します。お、お疲れさまでした」
「あ、ぼっちちゃん悪い。少し待ってくれ」
「は、はははい。な、何でしょうか……?」
呼び止めたぼっちちゃんがビクビクしながら立ち止まる。雇ってからかなり経つんだが中々慣れてくれないな……。
「今度ぼっちちゃんのご家族に挨拶させてほしいんだ。お母さんに都合の良い日を聞いといて貰えないかな?」
「え、え? うちに来るんですか?」
「ああ、虹夏と話し合ってさ。今更だけど挨拶しておくべきだってなってな。ご両親に安心してほしいし」
「そ、そんな気にしなくても……」
「頼むぼっちちゃん、親御さんには安心してほしいんだ」
「う、うぅ……」
顔が崩れるぼっちちゃん。
まぁ私にビビってるのを差っ引いても家にバイト先の店長が来るなんて緊張するよな。
「ぼっちちゃん、私も行くからさ」
「あ? 虹夏も来るのか?」
「ぼっちちゃんもその方が少しは気が楽でしょ? ふたりちゃんにも久しぶりに会いたいし」
あー確かにそれもそうか。
ぼっちちゃんも虹夏が来るってなって安心したのか、スマホを取り出して電話をかけ始めた。
「あ、お母さん? 今度店長さんが挨拶したいから都合の良い日を教えてほしいって……。うん……、うん、わかった。伝えておくね」
「お母さん何だって?」
「あ、はい。次の土曜日なら大丈夫だそうです」
「土曜日だな。じゃあお昼にはお邪魔させてもらうからそう伝えておいてもらえるか?」
「あ、はい。分かりました」
それから時間をすり合わせて今に至る。
虹夏はぼっちちゃんとふたりちゃんに連れられてぼっちちゃんの自室に向かい、私はリビングに案内してもらいぼっちちゃんのお母さんと座って向かい合っていた。
それにしても優しそうなお母さんだ。ほわほわしてるけど雰囲気からして慈愛に満ちた性格なんだろうなっていうのが伝わってくる。
……なんか、似てるかも。
「今日は遠いところ態々来ていただいてすみません。お疲れでしょう?」
「あ、い、いえそんな」
やべ、ちょっとボーっとしちまった。
「本当はもっと早くに挨拶に来るべきだったんですけどすっかり遅くなってしまいすみません」
「気になさらないでください。あのひとりちゃんを雇ってくださっているだけでも有難いことですから」
「あーいや、ははは……」
確かにぼっちちゃんの性格と要領の悪さを考えたら本来なら雇ってくれるところは中々無いだろうな。今でも新人にあっという間に追い抜かれるレベルだし。
「でもすごく真面目に働いてくださってとても助かっていますよ。とても良い子ですし。ライブハウスで働く人間は癖が強いのが多いので。サボったり無断欠勤する人間もいますし」
クズベとかヒモとかリョウとか。
「それよりも本日お伺いさせて頂いたのは、普段ひとりさんの帰りが遅くなっている件を謝罪させて頂きたくてお伺いいたしました。本当に申し訳ありません。ご心配されてましたよね……?」
「そうですねぇ……。確かにそこは心配でしたけど、働き先が虹夏ちゃんのお家って聞いてましたし、夫からも楽しそうにしてたとは聞いていましたので。本当に遅くなった時には泊めて頂いたりもしたみたいですし」
良かった、意外と信頼してもらってたみたいだ。
「それにひとりちゃんからも、店長さんはちょっと怖いけど優しいって聞いてましたので」
「そ、そうでしたか」
マジか。ひたすらビビられてると思ってたけど嫌われてる訳じゃなかったのか。嬉しすぎて小躍りしそうだ。
「うふふ、今話したことはひとりちゃんには内緒にしててくださいね」
「ははは、分かりました」
それからぼっちちゃんの普段の働きぶりやライブの様子、私が盗さ……、隠しど……、撮影していた中でぼっちちゃんの様子が伝わるものを抜粋して写真を見せたりしていた。
ぼっちちゃんのお母さんからも普段の家でのぼっちちゃんの様子や、私がぼっちちゃんを可愛がっているのを悟られたのか小さい頃の写真も見せてもらえた。鼻血出そう。
すっかり話に花が咲いてしまい時刻は18時近くになっていたが、その事に気付いたのは急な雷と大雨の音が聞こえてからだった。
「あらあら、今日の天気は晴れって聞いてたのだけれど、土砂降りですねぇ」
「す、すみません、すっかり長居してしまいまして。もうお暇致しますので……」
「あら、こんな雷と大雨の中帰るなんて危ないわ。虹夏ちゃんもいますし、天気が落ち着くまでゆっくりしていってください。良かったら晩ご飯も食べていってくださいな」
「そんな、ご迷惑じゃ……」
「二人分増えるくらい大丈夫ですよ。あ、でも二人のお母さんがご飯の準備してるかしら?」
「あ……」
そうかぼっちちゃん、私らの事は話してないのか。口の軽い娘とは思ってなかったけど、やっぱり良い娘だよな。
「その、うちは昔に母を亡くしてから父子家庭で……。今は妹と二人暮らしなんですけど料理は妹が作ってくれてまして……」
「えっ、あ……、私ってば知らなかったとはいえ、ごめんなさい……」
「気にしないで下さい。もう昔の事ですし」
もうあれから10年、寂しくないとは言わないが二人の生活にもずいぶん慣れたしな。
……でもぼっちちゃんのお母さんを見てると不思議と、母さんの事を思い出してしまう。顔は別に似てないし髪型も違うけど雰囲気というか、優しげでおっとりしてるけど、子供の事をとても愛していて、しっかり考えているところが母さんとダブって見える。
「……良し、今日は腕によりをかけてご飯を作っちゃおうかな。てんちょ……、星歌さん、二階のひとりちゃんの部屋にいる虹夏ちゃんと一緒に待っていて下さい」
「うん……。あ、いえはい」
うふふ、と笑ってぼっちちゃんのお母さんはエプロンを付けて台所へと向かい、私も言われた通りぼっちちゃんの部屋へと向かっていった。
ぼっちちゃんの部屋に入ると、ふたりちゃんと虹夏、ペットのジミヘン? が遊んでいた。ぼっちちゃんは隅っこで体育座りしている。どういう状況だ。
「虹夏、今日は天気が落ち着くまでぼっちちゃんの家に世話になることになったから」
「あ、そうなんだ。雨酷いしね。あれ? ってことはご飯は……」
「ぼっちちゃんのお母さんが作ってくれるってさ」
「ホント!? 私ぼっちちゃんのお母さんに料理教えてほしかったんだ! ちょっと行ってくる!」
そう言うなり虹夏はぼっちちゃんの部屋を飛び出していった。
なんだあいつ。そんなにぼっちちゃんの家に遊びに行ってるって話は聞いてなかったんだけどな。
「星歌おねーちゃんあそぼー!」
「ワンッ!」
「お、いいぞー。ところでぼっちちゃん……、お姉ちゃんはどうしたんだ?」
「んー良く分かんない。何か『私は妹にも嫉妬する駄目な姉です……』ってさっきまで呟いてたよ?」
ああ……、おそらく虹夏をふたりちゃんに取られたとか思ったんだろうな。気持ちは分かるぞぼっちちゃん。私もぼっちちゃんと仲良くしてる虹夏に嫉妬する事もあるし。
「そっとしといてやるか。さぁふたりちゃん何して遊ぼうか?」
「おえかきー!」
「お絵描きか。なに描くんだ?」
「えーっとね、そこで落ち込んでるおねーちゃん!」
……話に何度か聞いてはいたけど、やはりふたりちゃん容赦ないな。
虹夏side
「わぁ……、やっぱりぼっちちゃんのお母さん料理上手ですね!」
「うふふ、長年専業主婦やってるもの。でも虹夏ちゃんも手際が良くてビックリしちゃった。高校生とは思えないわ~」
褒めてくれながらぼっちちゃんのお母さんはどんどん料理を仕上げていく。私も料理には自信はあったんだけどやっぱり家庭を守るお母さんは違うなぁ。
「でも虹夏ちゃんもひとりちゃん達と一緒に待っててくれて良かったのよ?」
「いえ、ぼっちちゃんの好きな味付けとか覚えたかったんで」
「ひとりちゃんの?」
「はい。ぼっちちゃんが家に泊まった時に好きな味を知ってたら喜ぶかなって思って。それに……」
ぼっちちゃんのお母さんと一緒に料理したかったんだよね。
家事は全部独学で覚えて、料理も動画を見たりしながら少しずつ出来るようになって、でも色々出来るようになった時にお母さんと一緒に料理してみたかったなってずっと思ってた。
だからどことなく雰囲気が似てるぼっちちゃんのお母さんと一緒に料理してみたかったんだ。
「……えへへ、何でもないです」
「……そう。ちょっと遠いけど虹夏ちゃんさえ良かったらいつでも来てね。お料理でも何でも教えてあげる。虹夏ちゃんには返しきれないご恩もあるもの」
「恩……、ですか?」
何のことだろう。ぼっちちゃんのお母さんとは初めてお家にお邪魔したとき以来会ってない筈だけど。
「……ひとりちゃんにはずっと友達がいなかったことって知ってるかしら?」
「えっと、詳しく聞いた事は無いんですけど少なくとも中学時代はいなさそうだなとは何となく……」
ぼっちちゃんが2時間かけて県外の高校まで通ってる理由が過去の自分を知ってる人がいないからって、出会ったばかりの頃に言ってたもんね。あまりに不憫な話で深堀しない方が良いかと思って今まで詳しく聞いたことは無かったけど。
「ひとりちゃんは今まで虹夏ちゃんと出会うまで一度も友達が出来たことが無いの」
「一度も!?」
「ええ、幼稚園の頃から引っ込み思案な子で、勉強も運動も努力しても人並み以下で自信も何一つ持つことが出来なくて、だからギターがどんどん上達していって何か変わるかと思ったんだけど、でもその頃にはすっかり人を怖がるようになってて友達が出来なかったの」
「……」
「ひとりちゃんって虚言癖があるでしょ?」
「え? ええまぁ。時々バレバレな嘘をついたりしますね」
「あれね、ひとりちゃんに友達が出来ないことを心配する私たちに『学校に友達がいる』って嘘をついたことが始まりなの」
「え……」
「でも虹夏ちゃんが言った通りすぐばれるような嘘しかつけないんだけどね。あの子は素直だから。でもその優しい嘘に騙されたフリをして、ひとりちゃんはすっかり嘘をつくようになっちゃって……」
……そういう事だったんだ。へったくそな嘘ばかりつくからそこは若干呆れてたんだけど、そういう事情があったんだ。明らかに嘘つくの苦手なのにあの虚言癖は一体なんなんだとは思ってはいたんだけど。
「学校に行くときいつも辛そうにしてて、それでもいつかは友達が出来ると信じて何とか学校に通わせて。……でも結局高校生になるまで出来なくて。もう義務教育も果たしたんだしこれ以上辛い思いをさせない方が良いんじゃないかって思ったわ。高校辞めたいって言われたらその通りにしようってお父さんともお話しして……」
そういえばぼっちちゃん、私の夢を話した時に売れて学校中退したいって言ってたっけ。状況は違うけど学校を辞めたい意思は持ってた辺りもうかなりギリギリのラインまで来てたのかも。
「でもそんな時に高校に進学してから暫くして友達が出来たってすごく嬉しそうに言われたの」
「それって……」
「ええ、あなたよ。最初はちょっと疑ったけど普段の嘘とは様子が違ってたから判断に迷ってたんだけど、そしたらお家に虹夏ちゃんと喜多ちゃんが来て……、あの日の夜はようやくひとりちゃんの頑張りが報われたんだって、お父さんと一緒に泣いちゃったわ」
「……」
「……こんな話してごめんね。重いと思うし、ひとりちゃんも話してないのに話すべきじゃないんだけど、虹夏ちゃんと話す機会って中々無いからお礼を伝えるなら今日しか無いと思ったの」
「いえ……」
正直何と言っていいのかは分からない。助けたつもりなんてないし、何なら助けてもらってると思ってる。
でも私だってぼっちちゃんにお母さんの事、夢の事を話して、一緒に背負ってもらってる。なら私だってぼっちちゃんの事、背負うべきだ。
「あの娘を見つけてくれて本当にありがとう虹夏ちゃん。あなたはひとりちゃんだけじゃない。私達家族の恩人よ」
「はい」
「私達に出来ることがあればいつでも頼ってね。それに……」
「可愛い娘と一緒にお料理をしたいって夢も叶えてくれたんだもの。ありがとう、虹夏ちゃん」
そう言って笑顔で私の頭を撫でるぼっちちゃんのお母さんの手は優しくて、暖かくて、本当にお母さんに撫でられてるみたいだった。
「……星歌さんから少しだけお話を聞いたの。虹夏ちゃん達のお母さんの事」
「そ、そうなんですね」
「こんな事言うと無神経だって思われちゃうかもしれないけど、寂しい時はいつでも声かけて? 私に出来る事はきっと少ないけれど……」
「いえ……、こうして頭を撫でて貰えるだけで充分すぎるくらいです。あ、でもまたこうして一緒に料理をしてくれるとすごく嬉しいです」
「うふふ、そんなの私からお願いしたいくらいよ。娘が増えたみたいで嬉しいわ、これからもよろしくね。虹夏ちゃん」
「はい!」
それからぼっちちゃんのお母さんに料理のコツやぼっちちゃんの好きな味付けを教えてもらいながら料理を作って、作り終えた頃にちょうどぼっちちゃんのお父さんも帰ってきたから皆で食卓を囲んでご飯を食べた。
お父さんがいて、お母さんがいて、妹がいて、お姉さんがいて、笑顔の絶えない食卓。人数は違うけどまるであの頃に戻れたみたいで、ぼっちちゃんのお母さんのご飯はもちろんすごく美味しかったけど実際の味付け以上に美味しく感じた。お姉ちゃんも同じことを思っていたのか普段よりも美味しそうに、楽しそうにご飯を食べてる。
ご飯を食べ終えた後帰ろうかと思っていたけど天気は酷いままで、しかも電車もかなり遅延してるとの事だったので結局この日はぼっちちゃんのお母さんのご厚意に甘えて泊めてもらうことになった。お姉ちゃんも明日はSTARRYは営業日だけど午前中に向こうに戻れば問題ないらしい。
それからふたりちゃんとお風呂に入ったり、ぼっちちゃんのギターヒーローの動画編集を見せて貰ったりしながら過ごして、ぼっちちゃんの部屋で私とお姉ちゃんとふたりちゃんとぼっちちゃんの4人で寝ることになった。
ただお客さん用の布団が一つしかなかったから私はお姉ちゃんと寝ようと思ったんだけど、お姉ちゃんがふたりちゃんと寝たいって言いだしたから私はぼっちちゃんと寝ることになった。
ちなみにお姉ちゃんがふたりちゃんと一緒に寝たかった理由は寝る時のぬいぐるみ代わりになってほしかったらしい。……まあ抱き枕代わりにぼっちちゃんを指定しなかった辺り理性が働いたんだと評価しよう。
「ぼっちちゃんごめんね、落ち着かないでしょ?」
「い、いえ! わ、私は虹夏ちゃんとならう、嬉しいっていうか……。それよりも私のような下賤な者と一緒の布団だなんてこっちの方こそ申し訳ないというか……。な、何だったら私は雑魚寝でも……!」
「そんなことさせる訳ないでしょ!? ほらほら早く寝るよ。ふたりちゃんも眠そうだし」
電気を消して布団に潜ってはいお休み。
とはいかず私は消灯してから実に1時間経っても眠れていなかった。お姉ちゃんとふたりちゃんはぐっすり眠ってる。多分背を向けてるぼっちちゃんも眠ってるだろうな。
そう思ってぼっちちゃんの方へ寝返りをうつと、全く同時に寝返りをうったぼっちちゃんと目が合った。
「あ、え、に、虹夏ちゃん起きてたんですね」
「あーうん。何だか今日は目が冴えちゃってさ。ぼっちちゃんさえ良かったらお姉ちゃん達が起きないように小声でお話ししない?」
「あ、はい」
まさかぼっちちゃんが起きてるとは思わなかったな。どうしたんだろう。
「ぼっちちゃんやっぱり私と一緒の布団だと落ち着かなかったかな?」
「ち、違います。そ、その確かに虹夏ちゃんと一緒の布団だと良い匂いがしてドキドキはするんですけど……」
……そんなこと言われたらこっちがドキドキするんですが? え? 私ちゃんと体洗ったし臭いって意味じゃないよね?
「け、結果的にですけど虹夏ちゃん達がお泊りに来てくれてすごく楽しくって、何だか眠くならなくって……。に、虹夏ちゃんはどうしたんですか?」
「私も似たようなもんかな。今日はすごく久しぶりの家族の団欒が楽しくって、目が冴えちゃったんだ」
お母さんが死んじゃってずっと長いことお姉ちゃんと二人でご飯を食べてきた。何ならお姉ちゃんが仕事で忙しくて一人で食べる日も多い。まぁ野良ペルシャが乱入してくる日もたまにあるんだけどそれはさておいて。
でも今日はすごく賑やかで、お母さんがいて、お父さんもいて、お姉ちゃんが意地悪を言ってくるあの日々に戻れたみたいにすごく楽しい一日で、その興奮が覚めずに一向に睡魔が来なかった。
「今日は思いがけず最高の一日になっちゃった。ぼっちちゃんのお母さんには本当に感謝だよ」
「お、お母さんですか?」
「うん。お母さんに料理を教えてもらいながら一緒に作りたいっていう叶わないって思ってた夢が、少しだけ叶ったからさ」
「あ、そ、そっか、そうでしたね……」
「そんな悲しそうな顔しないでよ。言ったでしょ。楽しかったって」
私の話を聞いて泣きそうな顔をしたぼっちちゃんの髪を撫でる。
「ぼっちちゃんのお母さんって似てるんだ。私のお母さんに」
「虹夏ちゃんのお母さんにですか? 前に写真を見せてもらった時はそんなに似てるようには見えませんでしたけど……」
「顔とかじゃなくて性格がね。あ、でも笑顔は似てるかも。すごく優しくて、暖かくて、でもノンビリしてるようですごく家族の事考えてくれててさ、前に会った時に何となくそう思ってたんだけど今日改めて会ってそっくりだなって思ったんだ」
「……」
「そんなぼっちちゃんのお母さんと料理してみたいなって思ったの。そしたら頭撫でてくれてさ、何だか本当にお母さんに撫でられてるみたいですごくうれしかった」
「虹夏ちゃん……」
「ぼっちちゃんのお母さんにぼっちちゃんの好きな味付けも教えてもらったから、今度ご飯作ってあげるから楽しみにしててね?」
「あ、はい、で、でも……」
「?」
「私、虹夏ちゃんが作ってくれる味も好きなので、いつも通りに作ってもらえると嬉しいです」
ちょっ、そういうこと言うのズルくない?
「まったく、そんなこと言われたら教えてもらってる意味なくなっちゃうじゃん」
「うっ、す、すみません……」
「でもありがと。嬉しいよ」
「へ、へへへ……」
ぼっちちゃんがいつものだらしない笑顔を見せる。いわゆる女の子らしい可愛い笑顔じゃないんだけど、これを可愛いと思える辺り私もぼっちちゃんにやられてるな。
「そういえば気になったことがあるんですけど、虹夏ちゃんの事はリョウさんのお母さんも知ってるんですよね?」
「リョウのお母さん? もちろん知ってるよ」
「そういうことだったらリョウさんのお母さんでも良かったんじゃ……。優しそうだし、リョウさんの事すごく大好きみたいですし」
「あーリョウのお母さんはなー……」
あの人は確かに子供の事をすごく大切にはしてるんだけど、優しいっていうよりはただただ子供を甘やかすだけで親としては全然尊敬出来ないんだよね。
親友の親だしあんまり悪く見たくはないんだけど、結束バンドの為とはいえ留年ギリギリの成績のリョウが学校サボってるのに叱るどころか、これ幸いにと医者の業務を放り出してるリョウのお父さんと一緒になってベタベタに甘やかしたりするし、とてもお母さんの面影を見出すことは出来なかったんだよな。普段のリョウの素行を考えたらもっと叱ってあげないといけないと思うんだけど。
そういう部分を昔から見てるからとてもとてもお母さんと重ねて見ることは出来なかった。
それにお母さんが亡くなってる事を知った時に『私をお母さんだと思っていつでも甘えてね!』とか涙目で言われたことがあったんだけど気持ちだけ頂戴して甘えることは無かった。というより無神経すぎて何ならムカついたまである。見ての通りのお嬢様育ちなんだろうなあの人は。
とはいえ私も最近はリョウに対して厳しくしきれてないから気を付けないとな。意外に自立心の高いぼっちちゃんでさえ腑抜けにしそうになったこともあるし。ああはならない様にしなければ。
「私はお母さんにするならぼっちちゃんのお母さんになってほしいかな」
「そ、そうですか。そういって貰えると嬉しいです。えへへ」
ぼっちちゃんがさっきみたいに自分が褒められた時みたいに笑う。……お母さんのこと大好きなんだな。
「あ、そ、それなら虹夏ちゃんと店長さんも家に来ますか? ご、後藤虹夏ちゃんとか意外と良いと思います」
「お? それは楽しそうだけどどっちの意味で言ってるのかな?」
「え? どっちっていうのは……」
「私たちが養子として後藤家に来るのか……」
ぼっちちゃんの手に指を絡める。
「私がお嫁さんとしてぼっちちゃんと結婚するのかって事だよ」
「わ、私と虹夏ちゃんが!? け、けけけ……!」
「ほら、静かにしないと起きちゃうよ?」
ぼっちちゃんの指に人差し指を当てて抑える。柔らかいなー、ぼっちちゃんの唇。
「冗談だよ。最近はすっかり話す機会も減っちゃったけど私達にはお父さんもいるからさ、気持ちだけ貰っておくよ。でも本当に嬉しかった。ありがとうぼっちちゃん」
「い、いえ……」
ふぁ……。何だか色々気持ちを吐き出してスッキリしたのか眠くなっちゃったな。でもぼっちちゃんともう少し一緒に過ごしたい……。
「ねぇぼっちちゃん。今日少し肌寒いからもう少しくっついて眠ってもいいかな……?」
「……はい。私も少し寒いので、そうしてもらえると嬉しいです」
ぼっちちゃんに了承を貰って、私はぼっちちゃんの首元に顔をうずめる様にくっついて、そんな私をぼっちちゃんは背中に手を回して抱きしめてくれた。
本当は誰かと一緒に寝るのって好きじゃないしリョウくらい気兼ねしない相手じゃないと落ちつかない。ましてやくっついて寝るなんて有り得なかった。でもぼっちちゃんが相手だとむしろ一緒にこうやって寝たくなるのは何でなんだろう。
胸が少しだけ高鳴りながらもぼっちちゃんの落ち着く匂いに包まれながら私は眠りについた。
星歌side
「んぁ、何か温い……? あぁそっか、ふたりちゃんか……」
そういや昨日はぼっちちゃんの家に世話になったんだった。久々に家族の団欒に触れて楽しかったな……。
時間は……6時か。ちょっと早いしまだ眠いけどトイレに行きたいし起きるか。
ふたりちゃんを起こさないようにゆっくり布団を抜け出して隣の布団を見てみると、そこには抱きしめあって眠ってるぼっちちゃんと虹夏がいた。
え、ヤッ……てはないか流石に。かけ布団から見える範囲でだけど服は着てるっぽいし。けど虹夏がこんな風にベッタリしてるのって珍しい。こいつ一人でいるのが好きって訳じゃないけど付き合い方は結構ドライなんだけどな。
取り合えず天使二人の寝顔を撮っておこう、パシャリっと。
下に降りてトイレを済ませると味噌汁の良い香りがしてきた。
匂いにつられて寝ぼけた頭でフラフラと歩いていくとそこには背を向けて朝食を作っている母親の姿があった。
「……母さん?」
母さんが朝ご飯を作ってる……? そんな、訳……、でも母さん。私、聞きたいことが……。
「……あら? 星歌さん、もう起きたんですね。起きるの早いのね~」
私に気が付いたのかこちらの方を振り向くと、当たり前だけどそれはぼっちちゃんのお母さんだった。
……寝ぼけ過ぎだ。眠気も吹き飛んでしまった。
「もう少し寝ていても大丈夫ですよ。出来上がったら起こしますから」
「……いえ、何だか目が覚めちゃったので。それよりあんま役に立たないでしょうけど手伝いますよ」
「そう? なら丁度ご飯が炊けたから混ぜて貰ってもいいかしら?」
ぼっちちゃんに言われて炊きあがった白ご飯を混ぜる。しかし私マジで役に立たないのに何で手伝うなんて言っちまったかな……?
いや、理由なんて本当は分かってる。母さんが生きてる間に出来なかった親孝行をきっとしたかったんだ。馬鹿だな、私は。
「昨日はありがとうございました。妹もすごく楽しそうでした」
「お礼を言われることなんて何もしてないわ。虹夏ちゃんもとっても良い娘で一緒にお料理作ってて楽しかったもの」
「はは、そう言って貰えると嬉しいです」
あいつは私に似ずに本当に良い娘に育ってくれた。……時々出る口の悪さは私に似てしまったが。
「本人には言わないけど、自慢の妹なんです」
「……うふふ、やっぱり姉妹なのね」
「? どういうことです?」
「昨日一緒にお料理をしてる時に虹夏ちゃんも言ってたの。普段ぶっきらぼうだけど、自分がセンター試験の時なんか料理がすごく苦手なのにかつ丼なんか作ってくれるとても優しい自慢のお姉さんだって」
黒焦げで味はアレだったって言ってたけど、ってぼっちちゃんのお母さんがクスクス笑う。……虹夏のやつめ余計なことを。
てかぼっちちゃんのお母さんは私が料理苦手なの分かってて何も言わずに朝飯の手伝いをさせてくれたのか。本当、優しい人だな。
「本当はもっと優しくしてやれたら良いんですけど私は素直じゃなくて。本当、私には勿体ないですよ」
「そんなことないわ。虹夏ちゃんくらいの年齢であんなにお料理が上手なのは、きっと美味しいお料理を食べさせてあげたい大切な人がいたからだもの」
「二人を見てて思ったわ。きっと二人は世界一仲の良い姉妹なのねって」
私はその言葉を聞いて固まった。
その言葉は、その、言葉は……。
「……そう、見えますか? 私たちは世界一仲の良い姉妹に、見えますか……?」
「? ええ、ひとりちゃんとふたりにもそうなってほしいわ」
ずっとその言葉を聞きたかった。母さんとしたあの日の約束を、私はちゃんと守れているのかずっと不安だった。
母さんとした大切な約束。でも私がその約束をした時には母さんはもう星になってしまっていて、私が約束をちゃんと果たせているのか私には分からなかった。
でも、そうか。私はちゃんと約束を果たせていたんだ……。
「……ぐすっ」
「星歌さん……?」
「す、すみません……。すぐに泣き止みますので……」
でも涙は全然治まるどころかどんどんあふれ出てくる。勘弁してくれ、こんなのぼっちちゃんのお母さんだって困っちまうだろ。
耐え切れなくなってしゃがみ込んだ私を、ぼっちちゃんのお母さんは優しく頭を撫でてくれた。
「……詳しいことは聞かないわ。でも、ずっと頑張ってきたのね」
こうして撫でて貰うなんて本当にいつぶりだろう。母さんが生きている時だって頭を撫でて貰っていたのは本当に子供の頃で、大きくなるにつれてその回数はどんどん減っていっていた。
「まだ朝も早いし、虹夏ちゃん達もまだぐっすり眠ってるから。だから、今は、ね……」
泣き止まない私をあやす様に、ぼっちちゃんのお母さんは頭を撫でながら抱きしめてくれた。
「……落ち着いたかしら?」
あれからひとしきり泣いた私はぼっちちゃんのお母さんが淹れてくれたコーヒーを飲んでいた。
「す、すみません……、いい年した大の大人が……」
「そんなこと関係ないわ。私だっていつかお母さんが亡くなったら絶対泣いちゃうもの」
し、しかしいくら母さんに雰囲気が似てたからとはいえ親子なんていうほど歳も離れてないのに……!
「うふふ、虹夏ちゃんの事ももう娘みたいに思ってるし、それならそのお姉さんだって娘みたいなものよ~」
「う、うぅ……」
恥ずかしすぎて顔があげられない……。
「でも大人になるほど泣く事が難しいのは分かるわ。特に心配を掛けたくない大切な人がいると、ね」
「……そうですね」
私も母さんが亡くなった事に向き合ってからは悲しくて、寂しくて、泣きたくて仕方なかった。
でも虹夏に心配掛けたくなくて、昔は虹夏が母さんの事を思い出して泣く事が多かったから一緒に寝ていたし、いつも泣くのを我慢してた。
気が付けば泣く暇もなくここまで来てしまって、それが今日母さんと同じ雰囲気を持つぼっちちゃんのお母さんと会って、当時の感情を思い出した所に母さんとの約束を果たせていた事をやっと実感出来て涙を堪えることが出来なかった。
「でも、ようやくずっと胸に溜まってたものが出し切れたと思います。本当にありがとうございます」
「お礼を言われるようなことなんて何もしていないわ。思ったことを言っただけだもの」
確かにそうだけど、だからこそぼっちちゃんのお母さんにああ言って貰えたことは何よりも心に響いた。他の人や、もしぼっちちゃんのお母さんが私たちの約束を知っていたらこうも響かなかっただろう。
「もし良かったら今度ご家族で遊びに来てください。私の家で持て成すには狭いんでSTARRYにですけど」
「あら、じゃあその時はひとりちゃんの晴れ姿も見たいわね。学校の文化祭の時に見た切りだから楽しみだわ」
「ええ、きっと喜びますよ」
「おかーさん星歌おねーちゃんおはよー!」
お、ふたりちゃんも起きたのか。まあ気が付けばもう7時だもんな。
「あらおはよ~。お姉ちゃん達は?」
「まだ寝てたよー。あのね、おねーちゃんと虹夏ちゃんがぎゅーってくっついてて幸せそうだったから、それならもっと幸せになるかなって思っておくちをチューってくっつけておいてあげたの!」
「あらー……」
ふたりちゃんすげぇな……。
「おかーさん髪の毛きれーにしてー」
「はいはい。じゃあお椅子に座ってねー」
「はーい!」
椅子にピョンッ、っと飛び乗ったふたりちゃんの髪の毛をぼっちちゃんのお母さんが優しく櫛で梳いていく。
ふたりちゃんはショートボブだからそれほど髪の毛をいじったりは必要なさそうだけど、多分お母さんに髪の毛を触ってもらえるのが嬉しいんだろうな。虹夏もそんな感じだったし。
「……そうだ。ぼっちちゃんのお母さん、ちょっとお願いがあるんですけど」
「あら? 何かしら?」
私は髪を梳いてもらってるふたりちゃんを見て思いついたことをぼっちちゃんのお母さんにお願いした。
折角色々と懐かしい思いをしてるんだ。それなら最後まで思い出に浸りたい。
その思い付きをぼっちちゃんのお母さんに話し終えると同時に、二階から虹夏の悲鳴と、ぼっちちゃんの人類が出したものとは思えない悲鳴が家中に轟いた。……ああ、そういやそうだった。
しばらくして顔を真っ赤にして呆けた虹夏と、顔を真っ青にして崩れたぼっちちゃんが一階に降りてきた。……表情真逆すぎだろ。
ぼっちちゃんのお父さんも降りてきて皆が揃ってから朝食を食べ、食べ終えた食器はぼっちちゃんのお父さんが纏めて洗っていた。
「すみません、髪の毛整えたいんで洗面所お借りしてもいいですか?」
「あ、虹夏ちゃんそのことなんだけどちょっとこっちに座って貰ってもいいかしら?」
「はい?」
虹夏は促されるままにぼっちちゃんのお母さんの前の椅子に座った。
「今日は私が虹夏ちゃんの髪の毛をセットしてもいいかしら?」
「え! そ、そんな良いですよ! 私の髪型結構めんどくさいですし!」
「髪の毛を一部三つ編みにしてそれで髪の毛を横に纏めてるのよね? 大丈夫よ。いつかひとりちゃんやふたりの髪の毛で色んな髪型にしたくて色々練習したもの」
「で、でも……」
「お願い虹夏ちゃん。ふたりは髪が短いし、ひとりちゃんは髪型変えるのにかなり拒否反応示しちゃうから。私を助けると思って、ね? お願い」
「は、はい……」
ぼっちちゃんのお母さんに押し切られて虹夏は恥ずかしがりながら髪を櫛で梳かれていく。
これがさっき私がお願いしたこと。虹夏の髪のセットだ。
ふたりちゃんが髪を梳いてもらってるのを見て、虹夏がセットしてもらってる姿をまた見てみたいって思ったんだ。
「虹夏ちゃん髪の毛綺麗ね~。ちゃんと手入れされてるわ~」
「そんな、普通の事しかしてないですよ」
「うぅん。ひとりちゃんなんてシャンプーやコンディショナーにも拘り無いし、美容室にも行ってくれないからボサボサなのよ?」
「うぐっ!!」
不意打ちに流れ弾が来たぼっちちゃんがダメージを受けてる。ぼっちちゃんも今でも十分可愛いけど、手入れしたらもっと可愛いだろうな。
「じゃあ梳いたら三つ編みにするんだったわね」
「……そうなんですけど、今日はこれで結んでもらってもいいですか?」
虹夏がぼっちちゃんのお母さんに赤い水玉模様のリボンを渡す。昔私が何となく選んだ、初めて私が結んであげた、お菓子に付いていたリボン。
髪型が三つ編みで結ぶようになってからは身に着ける形で使ってたんだけどな。
「分かったわ。お借りするわね」
「はい、お願いします」
ぼっちちゃんのお母さんに髪の毛をリボンで結んでもらいながら虹夏がこちらをチラチラと見てくる。なんだ?
「さぁ出来たわ。どうかしら?」
「はい、バッチリです。ありがとうございます!」
「虹夏ちゃんかわいー!」
「ありがとふたりちゃん。ぼっちちゃんはどうかな?」
「は、はい。ふ、普段の髪型も可愛いですけど、リボンで結んでるのも似合っててすごくか、可愛いです」
「えへへー、ありがと!」
虹夏がこちらを見る。さっきからこっちをチラチラ見てたのはそういうことか。
そういや昔は意地悪ばかり言ってたから、ちゃんと言ってあげたことなかったな。
「……ああ、似合ってるよ。虹夏」
「……うん!」
昔から、ずっとな。
ちなみに裏設定として起きた時にキスしている事に寝ぼけていたぼっちと虹夏はお互いすごく幸せな夢を見てると思ってそのままチュッチュし続け、舌を絡めた辺りで感触がリアル過ぎる事に気付いて目が覚めて叫び声を上げました。