| ユキ | |
| ……申し訳ありません | |
| わざわざ医務室まで運んでくれるとは…… | |
| ……ひとまず、検査は問題なかったので引継ぎ書類を連邦生徒会に提出しに帰ります、それと仕事もまだ残っていますので | |
| ダメ | |
| 原因不明だけど倒れたのは事実だから | |
| 今日は帰って休んで | |
| ユキ | |
| ……前にも一度作業中に倒れたことがあります | |
| その時も何も問題はなかったので | |
| 特に危惧すべきことではないかと | |
| それでもダメ | |
| これはシャーレ顧問としての指示 | |
| ユキ | |
| そういうの職権乱用って言うんですよ? | |
| ……はあ、まあいいです。15連勤でしたし、先生がそう指示するというのなら大人しく休ませてもらいましょう | |
| ……しかしなんで倒れたんでしょうね、私 | |
| ……まあ、難しく考えないでいいと思うよ | |
| ユキ | |
| そうします。どうせ過労とかでしょうし | |
(……覚えて、ない?)
1日目の補習授業部顧問としての活動を終え、手短に無事起きたらしいユキとの会話を済ませる。さっきユキが倒れた時、彼女は「SRTの英雄」という言葉に酷く動揺していた。それは確かなはずだ。……ただ、今のログを見る限り、恐らくユキは自分が倒れた原因を忘れている……やっぱり、過去になにか原因があるのだろうか。彼女が英雄と呼ばれていた、その時期に。
「……」
……私はユキの過去に何があったかを知りたい。いや、知らなきゃいけない。手早く鞄に荷物を詰め終えた私は、ハナコの待つ補習授業部の部室に再び赴くのだった。
「ごめん、待たせた」
「いえ、どうせお暇だったのですし、全然大丈夫ですよ……放課後の部室に生徒と先生で二人きり……ふふ……」
「……いやぁ、そういう雰囲気じゃないかなぁ」
「こういうのは勢いが大事なんですよ、勢いが」
「なるほど勢い……って、そうじゃなくて」
「はい、わかっています。「SRTの英雄」についてでしたね?」
……そういえばこの子、本当に補習を受けなきゃいけないくらい成績悪い子なのかな?凄い知的に見えるけど……
「ではまず、先生は「SRT特殊学園」について何処まで知っていますか?」
「……軽く調べたっきりだけど。確かキヴォトスの法執行機関の最高学府で、連邦生徒会長直属のエリート、だったっけ」
「はい、大体そんなところです。この前キヴォトスに来たばかりだと聞いたのですが、よく知っていますね」
「……ちょっと前に、ね」
以前彼女が言っていた「SRTは閉鎖が決定した」という言葉。それを追求するにはまだまだ何も知らなかった私は空き時間を何とか見繕って(まだ時間の余裕があった頃なのもあったけど)調べてみてはいたんだが、生憎これ以上の情報は一般的には公開されていなかった。シャーレの権限を使えばもう少し詳しく調べることもできるだろうけど、そうすると怒られる内容が増えるからなぁ……
「……SRTは連邦生徒会長の権限の元、あらゆる自治区での活動が認められた特殊部隊の養成校です。権限の強さだけで言えば、シャーレの前身と言えるかもしれませんね」
「……うん、でもSRTは」
「はい、連邦生徒会長の失踪後、責任者不在を重く見た連邦生徒会による会議の結果、閉鎖が決定した……ここまでは一般的に公開されている情報です。先生も知っての通りですね?」
「流石にね、それで「英雄」っていうのは……」
「そうですね、そろそろ本題に入りましょう」
SRTの英雄、特殊部隊『WOLF』、どちらも初めて聞く言葉だ。ユキの動揺からするに相当大きな意味を持っている気がする、しっかり覚えておかなくては。
「基本的にSRTの部隊は4~5人からなる1個小隊で構成されています。例をあげると以前災厄の狐の捕縛に成功したFOX小隊などですね」
「あのワカモを……」
「ですが基本的にということは例外もあるということ。……2年前まで、SRTにはたった二人で構成された特殊部隊が存在したのです」
「それが……」
「はい、特殊部隊『WOLF』。かつてユキさんが所属していた当時のSRTの最高戦力です」
たった二人で、最高戦力……確かにユキは強いけど、そこまで……?
「任務達成率100%を誇ったWOLFはその名を轟かせ、全盛期はキヴォトスの生徒なら少なくとも名前だけは聞いたことはある。というレベルでした」
「そんなに……!?」
「はい、と言っても実名報道などはあまりなかったので、詳細は各学園の生徒会など一部の生徒しか知りませんでした。私がユキさんを知っていたのは過去のそういう伝手からですね」
「……ハナコ、君本当に補習授業が必要な生徒なの……?」
「あらあら、それとこれとは話が別ですよ~」
おっといけない、今知りたいのはユキの過去についてだ。
「……そこまで有名だったのなら、なんで今は名前を全く見かけないの?」
「いい質問ですね、先生。確かにWOLFは有名でしたし、その活躍は連日ニュースで取り上げられるほどのものでした」
「ですが、私は『2年前まで存在した』と言いましたよね?」
「……まさか」
「はい、2年前のある日、突然ニュースの速報でWOLFの解散が発表されたのです。原因は不明ですが、恐らくは部隊を維持できないほどの大きな問題が発生したのでしょう。」
「……」
「それから今までの盛り上がりが嘘のようにWOLFについての話題が出ることがなくなり、次第に大衆からはそんな部隊が存在したことは忘れ去られていきました……ブームの終焉、とでも言いましょうか」
「そういうことだったんだ……」
「今でも聞かれれば名前は覚えている、という人はちらほら居ますが、具体的に何をしていたか、というのはあまり覚えてない人が大多数です」
「……じゃあ解散から今までの2年、ユキは一体何をしていたの?」
「わかりません」
「え?」
「ですから、わからないのです。私は伝手から聞いたので多少の知識はありますが、表向きに報道されたのは解散決定の一報のみ。ユキさんも、もう一人の方もそれから今日まで何をしていたのか、何もわからないのです」
「……ごめん、知らないことまで聞いちゃって……もう一人?」
「いえ、構いませんよ。……はい、言ったでしょう?WOLFはたった「二人」で構成された特殊部隊。当然ユキさんには「相棒」が居ました」
「……その「相棒」の名前、わかる?」
「はい。と言ってもユキさんと同じようにわかるのは名前とかつてWOLFの一員だったということだけです、あまり力にはなれないかと……」
「大丈夫、名前がわかれば後はこっちでなんとかしてみる」
「わかりました、では、お伝えします」
「ユキさんの相棒の名前は「篝ホムラ」、彼女の1年先輩にあたります」
「……ありがとう、ハナコ」
「少しでもお力になれたのなら幸いです。……ですが、今日のあの反応を見るにしばらくはユキさんの前で彼女の、いや、そもそもWOLFの話をすることはやめた方がいいでしょう。恐らくは、それほどあの人の記憶に残る何かが起きたのでしょうから……こほん、ひとまず私から話せることは以上です」
「長話させてごめんね」
「いえいえ、たまにはこういうのもいいですね~、ピロートークみたいで」
「それはなんか違うんじゃないかな……よし、時間も時間だし、送るよ」
「牢屋にですか?」
「あっ」
「……ふふ、まさか先生がそういうシチュエーションのプレイがお好みとは……見かけとは裏腹に」
「ストップ、ストップ!ストォォォォォップ!?」
結局、情報代代わりとでも言えばいいのだろうか、ハナコを送り届けるまでずっといいように揶揄われてしまった……
『先生、ホムラさんについてなのですが……』
「調べられるの、アロナ?」
『はい、このシッテムの箱にできないことはあんまりありませんから!』
トリニティからシャーレへと向かう電車の中で今日あったことについて思い返していると、アロナが不意に話しかけてきた……ユキの先輩、か。もしかしたら何か手がかりがあるかも。
『ちょっとバレたらユキさんにお小言を貰うかもしれませんが……まあバレなければ大丈夫ですよね!』
「まあやらなくても他のことでお小言をもらってるから……」
『自慢できることではありませんよ、それ……ともかく、少しホムラさんについて調べてみます!』
「うん、よろしく」
……篝ホムラ、ユキの先輩で相棒。ユキはこうしてシャーレで働いているけど、先輩である筈の彼女は、一体どこで何をしているのだろうか。
『……えっ?』
『せ……先生!』
「あ、終わったの、アロナ?」
『はい、ですがこれは……ひとまず、ちょっとこれを見てください!』
「え、ああうん……」
アロナに急かされるようにしてシッテムの箱に映し出された資料を読み込む。見たところは篝ホムラの学籍情報のようだが……!?
「……アロナ」
『……はい、多分ユキさんが倒れたのも、倒れた時の記憶がないのも……』
「……これが、原因なんだろうね」
学籍情報の最後には、2年前のとある日付と共に、
『殉職』の2文字が記されていた。
曇らせがアップを始めました
番外編、いります?
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コラボとかしろ