「ティーパーティーホストのヘイローが……壊された?」
『うん、と言ってもミカから聞いただけなんだけど……』
「……なるほど、そりゃあ補習授業部なんてものが生まれるわけです」
グラニに容疑者2名の調査を頼んでから数日、先生との定期通信の中で『裏切者』が何をしたかが判明した。……なるほど、補習授業部は比較的マシな処置だったわけだ。本来ならば容疑者を全員拘禁の上尋問とかしてもおかしくない大事件だぞ、それ。最重要秘匿事項なのだからバレないように特定したかったのだろうか……にしては補習授業部なんてものを作った時点で何かあったのではと予想されることは想像に難くないが。せめてカモフラージュのために部員もう少し多めで良かったんじゃないか?
「で、その上怪しすぎて一周回って怪しくなさそうな白洲アズサとやらはティーパーティーの聖園ミカが『アリウス』とやらから転校させてきた訳アリ生徒……と、事情を聞くに『裏切者』とやらはそのアズサさんでほぼ確定じゃないです?」
『んー……』
「……まあ、まだ証拠もないですしそうと決めるのは早いですね、もう少しこちらでも探ってみます。……こういう面倒くさいのは私に任せて、先生は補習授業部の皆さんを合格させれるよう専念してください」
『あ、バレてた?』
「キヴォトスで一番先生と付き合いが長いのは私ですよ、そろそろ数か月も経つんだし貴方の考えてそうなことなんかすぐわかります。それに貴方、生徒の味方を謳ってるんだから裏切者を見つけたとしてもその時点では何もしないでしょう?」
『……うん、私の仕事はあくまで『補習授業部の顧問』だし、それにその子にも、何か事情があったんだと思うから』
「……はあ、相変わらず甘いですね、甘々です。具体的には書類確認の詰めくらい甘いです」
『今日のノルマか何か?』
「もう説教も飽きたのでこうやって紛れ込ませることにしました」
『やっぱり』
「先生、一応言っておきますがそれが事実だった場合『裏切者』が犯したことは殺人未遂です。決して許されることではありません」
『それはわかってる』
「先生が裏切者を特定した上で引き渡すようなことはしない、というのは別にいいのですが」
「『何もしない』は間違いです。許されることも罰されることもないのなら、その子は自分のしたことが正しいことなのか悪いことなのか一生悩みながら生きていくことになります」
『……そうだね』
「なのでしっかりとお話をしてあげるように、生徒を導くのが先生の仕事ですから。途中で投げ出さないでくださいよ?」
『うん、ユキとの約束だしね』
「わかればよろしい、では今日の所はこれで、合宿楽しんでくださいね」
『ユキもあんまり無理しないように。聞いたよ?書類の下敷きになったとか……』
「なんでそこだけ伝わってるんですか、はあ……切りますよ!」
いやなんでそれだけ伝わってるんだ、アリスちゃんが無邪気に書き込んだか?……まあいいか。にしても『アリウス』か、ドヴェルグとして活動している時ですら聞いたことがない名前だ、後でグラニに探りを入れてもらおう……それとアズサを転校させた聖園ミカもついでに。先生の話ではアリウスと和解したかったから、らしいが……どうにも引っかかる。手遅れになってからでは遅い、早めに手を打たねば。
集中力を維持するためにコーヒーを飲み干し、頭をスッキリさせた私は先生から聞いたことを脳の片隅に置きつつ、引き続き本日の業務へと勤しむことにした……ん、ゲーム部から新作テストプレイのお願い?……予定空いてたかな……やっぱりあいつが居ないと支障がかなりでるな、とっとと学力試験を合格させてもらって早めに帰還してもらおう。裏を探るのはこっちの仕事だ……
「グラニ、あれから二人については?」
『白洲アズサについてはサッパリです。深夜に何処かへ向かっているという話は耳にしたが、どうにも情報が少なすぎます』
「そうか、なら阿慈谷ヒフミは?」
『過去数回に渡ってブラックマーケットの滞在記録が。ペロロ様なるモモフレンズキャラクターのグッズを買い漁っているという情報のみで、違法品や武器などに手を出した記録は見られません』
「……勘違いの無駄骨だったか?」
『一概にそうとも言えないかと、探りを入れるためにブラックマーケットを徘徊していたところ妙な事に気付きまして』
「妙?」
『はい、ここ数日かなりの量の弾薬がブラックマーケットから流れています。何処に行っているかは不明ですが、何か大規模な軍事作戦の前触れではないかと』
「……わかった、グラニ。追加で探って貰いたいことがある」
『何についてですか?』
「……『アリウス分校』についてだ」
『かしこまりました、マイマスター。……ただ、此処まで表にでない学園となると相当難航しそうですが』
「構わない、最悪噂とかそういうのだけでも良い。とにかく情報が必要なんだ。白洲アズサも聞けばそのアリウスとやらの生徒だったらしい」
『なるほど、そういうことなら謹んで承りましょう。何か情報が入り次第お伝えします』
「ああ、待っているぞ」
「……合格させないようにするとは聞きましたが、此処までくると最早桐藤ナギサ本人がエデン条約を締結するうえで問題行動起こしてません?」
『うーん……正直此処までやるか、って感じだったね……』
「逆にその程度で済んだんですか貴方。下手したらトリニティとゲヘナの全面衝突もあり得るレベルのやらかしじゃないですか」
数週間後。数日前の第二次学力試験が解答用紙紛失で全員不合格になったと聞いて正気か?と聞き返したら危うく退学どころか命の危機レベルの事になっていたと聞いた私は遠い目でコーヒーを飲みながら先生と通信をしていた。……そろそろこの味も飽きたな、豆を変えるか。
『……多分今のナギサは、疑心暗鬼に陥ってる。本当は信じてあげたいんだけど、信じられないんだ』
「……相変わらずのお人好しですね、ほんと」
『まあね。先生の役目は生徒を導くこと、でしょ?』
「……そうですね。貴方のスタンスが変わらないようで何よりです」
『それどっちの意味?』
「褒めてますよ、珍しいことに」
『そっか、ありがとう』
「……それで、話は変わりますが。『アリウス』について少しだけ伝手を使って調べてみました」
『うん、何かわかった?』
「何も。不自然なくらいに情報がありません、徹底的に秘匿されています。普通ならどんな組織でも少しばかりは情報が転がっているものですが、『アリウス』はSNSどころか都市伝説、果てはブラックマーケットまで捜査網を拡大しても何一つわかりませんでしたよ」
『そこまでか……ごめんね、無駄骨折らせちゃって』
「いえ、元々手掛かりが聖園ミカの証言のみだったので想定はしていました。……ですが一つだけ、アリウスに繋がるかもしれない手掛かりがあります」
『というと』
「以前カイザーローンの強制捜査、その事前調査を任された話はしましたよね?」
『うん、それはもう終わったんだよね?』
「はい……その上で現在連邦生徒会の強制捜査の真っ最中なのですが興味深い資料を見つけまして」
「ここ最近、カイザーがブラックマーケットから買い上げた大量の弾薬が何処かへと流出しています。カイザーローンがカイザー系列の企業である以上企業内での受け渡しなら資料に明記するはずなのですが、それすらないということは……」
無論これは真っ赤な嘘、カイザーローンの事前調査でも強制捜査でもそんな資料は出ていない。グラニがドヴェルグとして手に入れた情報をそれっぽく理由を付けて先生に開示しているだけだ。カイザーには冤罪を被ってもらうが、そもそも余罪が多すぎるので1つくらい増えても問題ないだろう。
『その弾薬の流出先が『アリウス』かもってこと?』
「その可能性があります。近々大規模な軍事作戦が開始されるかもしれません……無論、聖園ミカの言っていたことが本当なら『エデン条約』を阻止するために」
『……わかった、一応頭に入れておくよ』
「そうしてもらえると助かります。最後の学力試験、明日なんでしたっけ?」
『うん、前回と違って会場はトリニティ敷地内だし、今度こそ合格させてみせるよ』
「頑張ってくださいね、一応また桐藤ナギサによる妨害の恐れもありますので、念頭に置いておくように」
『わかってる、それじゃあね』
……さて、桐藤ナギサは今回どのような妨害をけしかけてくるのだろうか。流石に前回のような条約締結が揺らぎかねない行為はしないと思うが……ん、グラニから?
「……仕事がひと段落したので少し昼飯を買ってきます。アカネさん、任せていいですね?」
「ええ、いってらっしゃいませ、ユキさん」
「ありがとうございます、すぐに戻りますので」
「私だ、遅れてすまない」
『問題ありませんマイマスター。それで要件なのですが』
『本日未明、トリニティへと向かう武装集団の姿が確認されたとのことです。恐らくは『アリウス』かと』
「……なるほど、ここで仕掛けにくるか」
『如何しましょうか。ドヴェルグとして介入するのは不可能です、理由がない』
「わかっているさ。それに関しては問題ない、私が行く。適当に先生に渡さなければならない資料があるとでも理由を付けるさ」
『……装備は?』
「弾数が欲しい、サブマシンガン……そうだな、試作品のアレがあったはずだ。2つ頼む』
『かしこまりました。それで出発時刻は?』
「22:25。トリニティ内部に侵攻するであろうアリウスを後方から奇襲する。バイクは対銃撃戦用にカスタマイズした物、ルートはT2を使う」
『ルートT2ですね、了解しました』
「恐らく物量戦になる、準備は任せたぞ」
なんかこのシャーレ部長いっつもメインストーリーの裏で謀略繰り広げてんな?
番外編、いります?
-
いる
-
いらない
-
コラボとかしろ