Rusted Dáinsleif   作:暁真

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ここまで長かったような、短かったような。


■■■■のユキ

 

 

「……あれか、アリウスとやらは」

 

 23:25、トリニティ総合学園前現着。既に正門は開け放たれており、同時に内部に侵攻中のガスマスク付きの部隊を確認。該当する特徴の制服はトリニティには存在しないためアリウスの生徒と断定し、交戦のためにサブマシンガンを装備。……こちらまでは注意が行っていないか、行けるな。

 

「なんだ、こんな時間にエンジン音など……っ!?」

 

最高速でバイクを突入させアリウス部隊に接敵、すれ違い様にぶつかって1人吹っ飛ばし数を減らす。……まあ気付くか、ここからは速度重視で行こう。

 

「あれはなんだ、事前情報では影も形も、おぉ!?」

「チッ、敵であることには変わりない。とっとと無力化しろ、殺しても構わん!」

「全員で奴を包囲しろ!機動力を封じてしまえばこちらの物だ!」

 

……舐められたものだな。いや、聖園ミカの言うことを信じるのならそもそも私の存在を知らないか。……恨みはないが、これもシャーレのため。大人しく倒れてもらおう。

 

「無闇に近づくな、吹っ飛ばされたいか!」

「遅いですね」

「なっいつのま、に……」

「隊長!?」

 

長々と指示を出している隊長らしき生徒に急接近し腹部に7発。無力化した後念のためドリフトで銃を弾き、頭を失った残りの対処に回る。

 

「あ、あんなのを想定した訓練なんか受けてないぞ!?どうやって対処すれば、ガッ……」

「ええい我々の目的は桐藤ナギサだ!奴は裏切者が何処かに運んで行ったらしい。それを回収すれば我々の勝利だ!」

「ならば足止めに専念する。任務を確実に遂行せよ」

 

なるほど良いことを聞いた。「裏切者」とやら、アリウスも裏切ったか。……まあいいさ、こっちは少しでも先生の負担を減らすのが目的だ。足止めはこっちもなんだよ。

 

『チームⅣ、状況は』

「未確認の増援と交戦中、既に半数以上が戦闘不能。包囲を試みているが、このままでは……っ!」

『おい、チームⅣ!応答しろ、おい!』

 

馬鹿の1つ覚えのように囲もうとしてくるが、こっちからすれば一人一人ばらけてやりやすい。わざわざ各個撃破できるようにしてくれるとは有り難い話だ。

 

「ええいタイヤを撃て!機動力を奪うんだ!」

「ダメだ、さっきから何発も撃っているが全て弾かれている!おまけにあいつは曲芸のように弾を避け、あぐ……」

「作戦会議もいいですが、現状に目を向けた方がよろしいかと」

「があっ!?なんて、そく、ど……」

 

器用にバイクを回転させて弾丸を躱し、返す発砲で一人行動不能にした後突進でもう一人無力化。……だいぶ減ってきたな、この分ならすぐ先生たちに合流できそうだ。問題は何処にいるかだが……まあ合宿の宿舎辺りだろう。

 

「……貴方で残り3人」

「馬鹿な、こうも簡単に……」

「2人」

「ぞ、増援は、まだか……」

「取ったぁ!」

「させるとでも思いましたか、ラストです」

「なっ……ああああ!?」

 

銃口を向けている隙に背後から強襲してきた最後の一人を無力化し、ひとまずチームⅣとやらの無力化には成功した。早く先生と合流しよう。

……にしても、こうして「鞘野ユキ」として派手に戦っているとどうしても昔を思い出してしまうな。……悪い癖だ、記憶で思考が鈍る。

 

 

(3時方向に増援!)

(しつけーな、あいつら意地でも資料を持って行かせないつもりかよ)

(そりゃあそうでしょう!早く行きますよ!)

(いんや、ここで全員黙らせる)

(先輩!?ああっもう……!)

 

 

「……っ」

 

右手を見れば、グリップを握る手が心なしか震えていた。……交戦中に思い出さなくてよかった、もし発症していたら確実にやられていたのは私の方だっただろう。

 

……ああ、さっさと眠ってくれよ、「鞘野ユキ」。

 

っと、いけないいけない。今はとにかく先生と合流することが即決。早く宿舎に「なーんだ、やけに人手が足りないと思ったら君も居たんだ。『SRTの英雄』サマ?」……っ!?

……やっぱり、お前、か……

 

……聖園、ミカ……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

爆発音と共にアリウスの増援が体育館内に雪崩れ込む。

 

「……数が多い、大隊単位だ。多分、アリウスの大半が……」

「まだ、正義実現委員会が動く気配がない……?」

 

コハルの連絡もあったはずなのに、ハスミ達正義実現委員会が動いた様子はない、一体何が……

 

『せ、先生!』

「アロナ?」

『何かがこちらに飛んできます!避けてください!』

「っ、皆!」

 

アロナの警告を聞いてすぐに指示を飛ばし、飛んでくる何かに当たらないよう退避させる。

すぐに体育館の入り口から飛んできた何かは先ほどまで私たちが居た場所を通過し、派手に壁にぶつかった。あれは、バイクと……っ!

 

「っあ、ぐ……」

『ユキさん!?なんでこんなところに……!』

 

バイクに乗っていたのだろうか、崩れ落ち、派手にヘルメットが割れた傷だらけのユキの姿があった。一体誰が……「うーん、英雄サマと言ってもやっぱり2年前の栄光だったね。ちょっと期待外れ」っ、この声は……!

 

「ミカ……?」

「やっ、久しぶりだね先生。また会えて嬉しいな。貴方の大切な部長が邪魔してきたから手を出しちゃったけど、それは謝らないよ」

「なんで、君とユキがこんなところに……」

「んー、ユキちゃんの方はなんでかわからないけど、邪魔だったからとっとと無力化させてもらっちゃった。「SRTの英雄サマ」って言っただけで面白いくらいブルブル震えちゃって可愛かったな~」

 

アリウスの軍勢を従えるミカが、此方を見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

怖い、怖い、怖い。

戦うのが怖い、失うのが怖い、思い出すのが怖い。私は英雄なんかじゃない。ただ物弄りが得意なだけの、ただの生徒なんだ。英雄っていうのは、先輩みたいな明るくて、優しくて、皆を守れる強さで……

……そうだ、私は守れなかった。先輩も、皆も。皆が託した物も、何一つ。

 

「そうだ、お前は守れなかった」

 

……だれ?

 

「……やっぱり死に切っていなかったか」

 

……ああ、そうですね。私は、死ななくちゃ。

見上げれば、私を見下ろす赤い瞳。紛れもない私。鞘野ユキ(ドヴェルグ)が私を見下ろしていた。

 

「死に損ないが生き続けるのは酷だろう?」

「……はい。ちゃんとあの時、死んでおくべきでした」

「だろうな。何もかも失ったんだ、生きている方が地獄だろう」

「……ねえ、(ドヴェルグ)

「なんだ、(鞘野ユキ)

「……貴方は、行くんですね。あの人たちと」

「そうだな、お前(鞘野ユキ)の最期の願いを、(ドヴェルグ)が叶えるために」

「……そうですか、ならやっぱり(鞘野ユキ)は邪魔でしょう」

「ああ、邪魔だ。眠れ、(鞘野ユキ)。全部終わってお前の願いを叶えるその時まで」

「敢えて殺すとは、言わないのですね」

「壊れたお前が(ドヴェルグ)を生み出した以上何処まで行っても大本はお前なんだ。完全に殺せば私も消えて、鞘野ユキという器は完全に死ぬ」

 

「だから眠れ、深く、深く、私が三度目の槌を打つまで。起きようとするな、私の邪魔をするな、死んだように、眠れ。SRTの英雄(過去)は、もういらない」

「……はい、それじゃあ、最期はせめて貴方の手で寝かせてください、ドヴェルグ」

「ああ」

 

(ドヴェルグ)は気づけば私の姿から武器商人ドヴェルグへと姿を変え、私の眉間に銃を突きつける。

 

『さようなら、私』

「ええ、さようなら。頼みましたよ」

『無論だ』

 

一発の発砲音と共に、私の意識は深く沈み。

 

 

ばきん、と。何か大きく罅が入る音がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なるほどねぇ、そっかそっかぁ。そりゃみんな「シャーレ」「シャーレ」って言うわけだ。厄介だね、大人って」

 

あの後すぐに気絶してしまったユキを庇いながら、私は補習授業部の皆を指揮してミカが率いるアリウスの部隊となんとかやりあっていた。ただ……このままじゃ、ジリ貧だ。

 

「変に邪魔しないでほしいかなぁ、そこの英雄サマを庇いながら戦うのもそろそろ限界でしょ?」

「……ユキは、こんなところで終わらないよ」

「へー、「英雄サマ」って囃し立てるだけでまともに戦えなくなるあの子が?」

「どうかな、油断させるための演技かもよ?」

 

なんとか虚勢を貼るが、ユキが目覚める根拠も何もない。だけど、それでも彼女を信じたかった。

 

「じゃあ、試しに一発撃ってみちゃおうかな?」

「っ……!」

 

無邪気に笑うミカは銃口をユキに向ける。まずい、どうやっても間に合わない……!

 

「眠り姫のままなのか白馬の王子様なのか、その目で確かめてよ、先生」

 

無意識にユキを庇おうと走り出すが、無慈悲にも放たれた弾丸はユキに向かって進み……

 

 

 

 

 

「……ええ、舐められた、ものですね」

「……ユキ!」

「おっと、本当に白馬の王子様になっちゃったのかな?」

 

届くはずだった銃弾は目覚めたユキが横に振るったサブマシンガンに弾かれ、あらぬところへ飛んで行った。

 

「ユキ、動ける!?」

「私を誰だと思ってるんですか……余裕です」

「……やっぱりさっきまでのは演技だったの?」

「そういうことにしておきましょう」

 

起き上がったユキはボロボロになったバイクからもう一丁銃を取り出し、右手の銃口をミカに向ける。

 

「ふーん、でもやっぱりトラウマからは逃げられないんじゃないかな、「SRTの英雄」サマ?」

 

当のミカはと言えば余裕そうに挑発し、再びユキを動揺させようとしてくる、が

 

「……トラウマ?なんのことです?」

「……あれ?」

 

ユキは特に動じる様子もなく、銃口を構えたままミカに歩み寄っていく。

 

「なんで?さっきのは確かに演技じゃなくて、本当に……」

「それに一つ訂正させてもらいましょう」

 

呆れたと言わんばかりに目を閉じジェスチャーをして煽り返すユキには先ほどまでの弱々しい印象は全くせず、それ以上の頼もしさを感じた。……?気のせいだろうか、少し寒気が……

 

 

「此処に居るのは「SRTの英雄」鞘野ユキ、ではなく……」

 

彼女は目を閉じたまま再び銃口をミカに向け、

 

 

 

 

 

 

 

 

「『連邦捜査部部長』鞘野ユキです、間違えないように」

「っ……!」

 

()()()()()()瞳を開け、好戦的な笑みを浮かべて威嚇した。

 

 

 

 

 

 




曇らせ「シフト入りまーす」

番外編、いります?

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