① 正しい道理。正しいすじみち。人として行なうべき正しい道義。
② 正しい意義。正しい釈義。
③ 人間の社会行動の評価基準で、その違反に対し厳格な制裁を伴う規範。
「……WOLF2……はもういいんでしたね。鞘野ユキ、戻りました」
「うん、お帰りユキ」
「お疲れ様です先輩。……まさか先輩の協力があったとはいえ、生活安全局の生徒だけで制圧に成功するとは……」
ひとまず後輩達を無力化、拘束した後ヴァルキューレに引き渡した私はとっとと先生たちの元へ帰還し、シャーレの服に着替えなおしてから後輩たちが連行されてくるのを待っていた。……んー待てよ、もう一回SRTの制服を着なおした方がいいのか?いや、むしろ神経を逆撫でするだけか。
「あ、帰ってきたね、フブキとキリノ」
「……忘れずに狙撃手も連行できているか。よし」
「ひとまず一件落着、ですかね?」
「ええ、この後は取り調べから……」
カンナと彼女らの今後について話した後、さっさと帰って残りの仕事を済ませるために準備をしていると、ギャーギャー騒いで喧しかったRABBIT小隊の一人、鉄帽を被った奴が私を見て呆気に取られているのが目に入った。……無線が傍受されたわけでもないし、今年入学したばかりの1年生が私、それと秘匿されていたWOLFの詳細について知っているのは普通あり得ない筈だが……一応聞いておくか。
「……どうかしましたか、其処のSRTの生徒さん」
「待ってくれ、貴方が何故、こんなところに……」
……ふむ、私のことを、知っている?何処かで会ったわけでもないのに。
「……サキ、あの人はシャーレの部長ですよ。知り合いなんですか?」
「はぁ!?お前知らないのか?この人は……」
「え、そんなに有名なの?」
「だ、誰なんです……?」
うん、やっぱり君以外知らないようだ、人違いじゃないか「SRTの英雄、WOLFの片割れ、鞘野ユキ先輩だぞ!?」……うん?
「……WOLFの情報は二人組であること以外徹底的に秘匿されていたはずですが、何故貴方が知っているんです?」
「やっぱり……っ、そんなことはどうでもいい。どうして貴方がシャーレなんかに……!」
「そんなことどうでもいいよ、シャーレにいるってことはこの人はSRTを見捨てたんでしょ?だったらただの敵じゃん」
「……SRTの英雄、WOLF……」
「私はもうSRTの生徒ではありませんよ。『元』後輩達」
「私は「連邦捜査部シャーレ」の鞘野ユキ、それ以上でもそれ以下でもありません」
「っ……何故だ、なんで貴方のような人がシャーレに!?SRTの『正義』を捨ててまで、なんで「黙りなさい」……っ!」
はあ、やっぱり甘いな後輩共。組織に正義を求めるなんて愚かなことを。
「SRTに個人の『正義』は無い、あるのは規律と力だけです」
「そんなこと……!」
「なら逆に聞きましょう、『正義』の定義とは?」
「……」
「……正義とは、理に叶った道理のことです」
……はあ、突っかかってきた割に何も返せないのかよ、代わりに小隊長様が答えてるじゃあないか。
「SRTには確かに『正義』があります、時と場所を選ばず、相手が誰であっても同じ基準で、ひとつの正義を「ならあなたはSRTが『正義』と定めることなら何も言わず従うのですか?たとえそれが人殺しでも」……っ、それ、は……」
「……まるでなってませんね。『正義』とは、個人の掲げる理想を力によって実現するものです」
「理想だけではただの夢想家であり、力だけではただの暴力に過ぎない」
「理想なき正義はただの非道であり、力なき正義は妄言である。真の正義とは己の理想に見合う力を持った個人のみに存在するのです、まあ与えられた『正義』に盲目的に従うようでは理解できるとは思えませんが」
「……なら、貴方はどうなんです!『英雄』と呼ばれた貴方には、『正義』はあるんですか!」
「
「っ……なら、貴方に正義について語る資格は「勘違いしないでもらいましょう」な……?」
「言ったでしょう?理想なき正義はただの非道、力なき正義は愚者の妄言。私の正義にはまだ「力」が足りない。故に「正義」はありません。あるのはただ、理想だけです」
「……」
「……話は終わりです。最後に言わせてもらいましょうか」
「今私の『正義』に『力』が足りないように、貴方たちの『正義』には『理想』がない。それを自覚していない貴方たちこそ、正義を語る資格はありません」
哀れみを込めた瞳で睨みつけ釘を刺した後、私は今度こそ帰るべく先生の元へと向かう。
「先生、それでは戻りましょうか。放り投げた書類仕事が笑顔で出迎えてくれますよ」
「あーそれがね……」
「ちょっとあの子達の取り調べをすることになって。今日のシャーレは店仕舞いかな、ははは」
「それ絶対書類仕事サボりたいだけですよね?」
「違うからね!?いやちょっとそれもあるけど!」
「自白しないでください。で、サボり以外の理由は?」
「んー、そうだね……」
「私は『生徒』の味方だから、あの子達の話も聞いておかなきゃって」
「……そうですか、相変わらずそこが変わらないようで何よりです」
「あ、いいの?」
「貴方がそう決めたことであるのなら止めませんよ、私と貴方の「約束」でしょう?」
「そうだね、それじゃあ行ってくるよ」
「ええ、貴方の『正義』を曲げないように」
「うーん、正義っていう程高尚なものじゃあないけどね」
「少なくとも先生はその理想に伴う力を癪ですが持っているようですので、一応」
「癪ですがって何!?」
「気にしないでください。あ、そうそう。明日はちゃんと書類片付けてくださいね」
「善処します……」
「そろそろ聞き飽きてきましたね善処って言葉。まあそれでは」
「うん、また明日」
相変わらず書類仕事は異様に苦手だし面倒くさがるんだよなこいつ、さっさと慣れてくれればいいのに……まあいいか、今日の仕事は終わったし早めに帰るとしよう。商売用の武器もそろそろ新しいのを作っておかないとだしな、カスタムは現在お断りしているからまだ鞘野ユキ=ドヴェルグということはバレていない筈だ。……しかし、今後その時が来たらどうやって穏便にシャーレを辞めようものか……
少し今後のことを考えて憂鬱になりかけたが、流石にシャーレ部長としての業務に支障が出るため深く考えないことにした。……あ、帰りにカラコン買わなきゃ。
「は?公園を占拠した挙句デモまで起こし多大な被害を出したというのに無罪放免?」
「無罪放免というか……処遇を任されたというか……」
「つまりは保護観察処分みたいなことですか、訳がわかりません」
翌日、出勤した私は後輩たちがどうなったのか先生に聞いてみたのだが、帰ってきたのはまさかの無罪放免という処罰。一体何がどうなっているんだ、連邦生徒会の介入でもあったのか?
「カヤから任されたんだよ、あの子達の事」
「カヤ……ああ、防衛室長の」
成程、あの腹黒ピンクの差し金か。確かに彼女の権限であれば処遇は好き勝手決めれるだろうが……わざわざ先生に任せることに何の意味が?まあいいか。
「で、どうするんです?わざわざ公園に戻らせただけじゃまた同じことの繰り返しになるだけだと思いますが」
「それなんだけどさ……」
「ユキ、ちょっと一緒に来てもらえないかな?あの子達の様子を見に行きたいんだ」
「理由を」
「ユキは元SRTだし、あの子達に私より深く寄り添えるんじゃないかって」
「貴方それ昨日のやり取り聞いた上で言ってます?」
「あーっと……」
ダメだこいつ、絶対聞いてない。
「少なくとも私はSRTの生徒として彼女らRABBIT小隊とは面識すらありませんし、今の状態では根本的に相いれません。行ったところで神経を逆撫でするだけでしょう」
「そこをなんとか!」
「なんとかで済みませんよ。もし何かのきっかけでRABBIT小隊と私が全面衝突したとして、貴方責任取れます?」
「それは当然、責任を負うのが『大人』の仕事だから」
「……」
そうだった、こいつはそんな奴だったよ……
「……わかりました、ですが今日だけ、今日だけですよ。貴方が処遇を任された以上これから先貴方だけでRABBIT小隊をどうこうするのは大変結構ですが、私がわざわざ付き合って様子を見に行くのは今日だけです。そもそも正規の人員が両方出払ってて当番だけって相当不健全な職場ですからね?そこはしっかり理解してください」
「それは勿論」
「後彼女らの面倒を見ることを口実に仕事をサボらないようにお願いしますね。またリン会長代行に絞られたくないのならいい加減書類の書き方を覚えてください」
「善処「その言葉もう何十回と聞いています」……ガンバリマス」
「はあ……それじゃあ行きますよ、先生。さっさと行って終わらせて仕事を片付けましょう……ああそうですね、私のバイクの後ろに乗って貰って構いませんよ」
「いいの!?」
「うわあ食いつきようが凄い……何の変哲もないただのバイクですよ?」
「憧れてたんだ、二人乗り」
「ははあ……わかりました。ロマンスもへったくれもありませんが、快適な移動であることだけは保証しますよ」
「それじゃあ準備してくるね……あれ、目の色戻った?」
「今更ですか、カラコンですよこれ。昨日みたいに知り合いに会った時かなり面倒くさいので」
「なるほど……あ、ヘルメットないや。買って来なきゃダメ?」
「そりゃあ付けないとダメです。私の予備を貸しましょう」
「やったー!」
「……はあ、お下がりを貰って喜ぶ子供じゃないんですから……」
「……先生、其処トラップが仕掛けられてます。引っかからないように「うわっ!?」……遅かったか」
子ウサギ公園に到着して早速なのだが、先生が罠に引っかかった。恐らくはRABBIT小隊が仕掛けたものなのだろうが……本当に処遇をこいつに任せてよかったのか?あの腹黒ピンク。……あ、昨日の鉄帽。確かサキとか言ったか。
「……なんだ、先生か、何か変な動きしてるから野良犬か不審者かと……ユキ先輩?」
「ああ、誠に遺憾ではありますが其処で罠に引っかかってる先生の要請で本日限り付き合うことになりました」
鉄帽の後輩に何か抗議している先生を後目に公園を見渡す。……おい待て、あちこち掘り起こした跡があるんだが、さては地雷埋めやがったな後輩共、ここ公園だぞ!?
「……何やってるんですか貴方たちは。一応此処公園ですよ?利用者のこととか考えてます?」
「最小限の自衛手段ですよ先輩。正直これでも足りないくらいです」
「少し油断したらまたあのワンコみたいな警察がやってくるとも分からないし「少し座りましょうか、其処の二人」……は、はい」
睨みつけて怖気づかせ、無理やり座らせる。こういう時には便利だなこの力、制御できればもう少し応用も効くだろうし今度鍛えてみるか。
「いいですか、そもそも貴方たちは防衛室長の判断で先生に処遇が委ねられた身であり……」
「せ、先輩。先輩は先生の付き添いで来たんですよね、ならやるべきことは「それとこれとは話が別です」は、はいぃ!?」
「サキ、モエ、何か問題でも……」
「一応公園は公共の施設です、私有地じゃあないんですよ。先生の権限で特別に使わせてもらってるだけで本来は一般開放された施設であり……」
(ね、ねえサキ。SRTの英雄ってこんな高圧的な人だったの……?)
(……少なくとも私が助けてもらったあの時にはこんな「説教の最中にこそこそ話とはいい度胸ですね?」ひゃいいぃ!?」
「……あ、先生。おはようございます」
「何事もなかったかのように見捨てた!?」
先生と二人でツーリング……最早これは既成事実なのでは?
番外編、いります?
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いる
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いらない
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コラボとかしろ