Rusted Dáinsleif   作:暁真

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(展開が)超スピード!?


武器商人と公安局長

 

 

「グラニ、先生の端末の逆探知は?」

『……ダメです、なんとか時間を遡って探っていますが、なんとも……』

「……電波妨害か、ただ単に電源が切れたのか……」

『21:00現在小規模なものであっても電波障害が起きた報告はありません、恐らくはなんらかの要因で電源が切れたものかと』

「……そうか、小さいことでもいい、何かあったら報告を」

『イエス、マイマスター』

「……カイザーめ、やってくれたな」

 

 21:00、行方不明の報告から急いで帰還し行方を全力で捜索しているが手掛かりはなし。現在シャーレと連邦生徒会の存在するD.U.地区全体にはカイザーPMCによる戒厳令が敷かれどう見ても奴らの仕業であることは想像に難くないが、先生の行方が分からないことには何もできない。こうしてグラニと共同で行方を探っているが……クソッ、何もわからん。

 

『……っ、マスター!』

「どうしたグラニ」

『D.U.地区内部の監視カメラをハッキングしていますが、14:00頃シャーレから飛び立つヘリを確認しました……先生が乗り込んでいます』

「何だと!?」

『モニター、映します。これは……』

 

グラニがようやく手に入れた映像を見れば、確かにヘリに乗り込む先生の姿が確認できた……流石に定点カメラ一つだけでは何処に行ったのか特定までは至れないな、だが手掛かりは掴めた。

 

「グラニ、このヘリを追え。恐らくは……」

『イエス、マイマスター。分かり次第』

「私はいつでも出れる準備をしておく、お前も特定が済み次第ミズガルズで待機を」

『かしこまりました』

 

……先生とは道を違えた、もう助ける理由も義理もない。……だが、あんなポンコツでも居なければこの問題を解決することは叶わない。今回私が先生を助けるのはカイザーにキヴォトスを好き勝手させないため、転じて私のためだ。そう自分を納得させ再び黒コートに袖を通し、少し改造したバイザーを展開した。

 

彼女(鞘野ユキ)が望んだ正義は、そんなものだったか?

 

……頭の中によぎる違和感に、顔を顰めながら。

 

『マスター、特定完了しました。場所はD.U.地区、ヴァルキューレ第3分校。最短ルートはD.U.5です』

「わかった、行くぞ」

『イエス、マイマスター。ルートD.U.5ハッキング開始、同時にD.U.地区を警備中のカイザーPMCと最低限の遭遇で済むルートを計算します』

「今回は時間が惜しい、無理やり突破するぞ」

『……かしこまりました。ルートD.U.5、ハッキング完了。15分後に再閉鎖を行います、遅れないように』

「ああ……行くぞ!」

 

開いた地下道へとアクセルを踏み込み、最高速で駆け抜ける。……待っていろよ、先生。さっさと叩き起こして、キヴォトスをどうにかしてもらう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なっ、こいつ何処から現れた!?」

「生憎時間が無いんでな、押し通らせてもらおう」

 

21:25、ルートD.U.5を抜けると早速カイザーPMCによる包囲網が出迎えてくれていた。……先生の監禁場所付近だからな、そりゃあ厳重にするか。まあ、突破する以外選択肢はないが。

銃撃を急加速で躱しつつハンドルを回転させガトリングを展開、射撃と共に突撃し無理やり突破口を切り開く……久しぶりだな、こいつに頼るのも。

 

「こいつ、確か都市伝説の……!」

「まさか化けて出たわけでもあるまい、この先には通すな!バイクから引き摺り下ろせば後は数で制圧できる!」

「しかしこいつ、馬鹿げた速度でぇっ!?」

『ヴァルキューレ第3分校まで後3km』

「ああ、振り切る」

 

どうにか落車させようと銃を乱射してくるが、当たらなければどうということはない。進路を塞ぐ兵士は轢いて強引に突破し、目的地へと急ぐ。

 

「アンノウンはヴァルキューレ第3分校に向けて移動中、支援を要請する。繰り返す、アンノウンはヴァルキューレ第3分校に向けて移動中、支援を要請する」

『そちらはそもそも警備を厚めに敷いていたはずだが?』

「はっ、ですがそれでも奴を止めきれず……」

『それをどうにかするのが貴様の仕事だ』

「はっ……はぁ!?」

 

……おっと仲間割れか?まあいい、こちらとしては好都合だ。

 

「グラニ、第三分校に侵入後ミズガルズはオートパイロットでPMCを陽動しろ、必要になったらこちらで呼ぶ」

『イエス、マイマスター。装備は万全に』

「当然だ」

 

侵入直前に外部フレームからサブマシンガンを引き抜き、オートパイロットに切り替える。

 

「予定合流時刻は22:00、それまで頼んだぞ」

『お気をつけて、マイマスター』

「ああ、行ってくる」

 

ミズガルズが第3分校を通り抜けると同時に跳躍し、私は先生が捕らわれているであろう場所へと転がり込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「支援を、ようせ、ガッ……」

「……居るとすれば留置場、か」

 

やはりというべきか静まり返った第3分校もD.U.地区と同じようにカイザーPMCが蔓延っており、バレずに侵入するのは至難の業だった……これならサブマシンガンではなくショットガンを持ってくるべきだったな、失敗だ。……しかし何処に居ると仮定したものか……やはり留置場を探すべきだろうか、地図を……「……動くな」っ……この声は。

 

「カイザーPMCでないな……何者だお前は……」

「……誰かと思えば公安局長様か、わざわざ不審者の検挙でもしにきたか?随分とボロボロのようだが」

「減らず口を……いいから答えろ」

「全く釣れないな、武器商人ドヴェルグと言えばわかるか?」

「……お前が、あの……?」

「して、公安局長様がこんなところに何用だ。わざわざこんなところに足を運ぶ理由などないはずだが」

「それは……こちらの台詞だ。滅多に姿を見せないお前こそこんなところに何の用だ」

 

……おっと、ヴァルキューレはほぼカイザーと繋がっていると思っていたが様子を見るに違うのか?

 

「生憎カイザーにキヴォトスを牛耳られては商売あがったりなのでね、噂の先生様をちょっと手助けしに来たのさ」

「……なるほどな、お前もか」

「……お前も?ヴァルキューレの上層部はカイザーと繋がっていると聞いたが」

 

わざとらしくしらばっくれる。少しでも情報を引き出せればいいが……

 

「……それは否定しない。だが、これは上からの命令ではなく私の独断だ。私の『正義』のために、先生を助けにきた」

「……正義、か」

「……笑い話だと思うなら笑え、それでも私は「いいや、笑わんよ」……そうか」

「それで、お前は知っているのか?先生様が何処に居るのか」

「……推測ではあるがな」

「そうか、ならば此処は公安局長、お前に任せよう」

「お前は?」

「……露払いでもしておくさ」

「……恩に着る」

 

何処かへと駆けていくカンナを見送り、すぐさま分校内のPMCを排除すべく駆け出す……やはりサブマシンガンは失敗だったな。後で入れ替えておこう。あいつが先生を救出する間はなるべく隠密にやらねばいけない、CQC頼りにはなるが……やってやろうじゃないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こいつ、どこか、ら……」

「おい!?一体何、が……」

 

……これでこのフロアは全員か。重要地点だし精鋭を置いているものだと思ったが、思ったより大した事なかったな。さて、カンナの方は「……こんなところに居たか、ドヴェルグ」……無事成功したようだな。

 

「ああ、さっきぶりだな公安局長、それに……いつ以来だったかな、先生?」

「……多分ブラックマーケット以来かな、ドヴェルグ」

「そうか、そんなに前だったか。時が経つのは早いな」

「……ついてこい、ドヴェルグ、ひとまずは此処から出る」

「確かにそれが先決か。わかったわかった」

 

先生、変わったな。一見正常だが、よくよく見れば目が濁っているぞ。……原因は、分かりきっているが。

 

彼女(鞘野ユキ)が望んだ正義は、誰かを悲しませる物だったか?

 

……また、違和感が襲ってくる。……わからないよ、『鞘野ユキ』はもう、居ないんだから。

頭を掻きむしりたいが二人が居る前で素顔を探す訳にもいかず、違和感を抱えたまま二人に続いて第3分校内部を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……少し休んでいろ、公安局長。時間はないが、倒れられては、困るのでな」

「……すまない、な……荷物になるつもりはないと言ったが、結局……このザマだ」

「カンナ局長……」

 

21:55、第3分校の裏門に到達したはいいものの警備が厚く、増援として駆けつけた生活安全局の二人と共に一時的に射撃訓練場に避難し、一旦カンナを休ませることになった。……計算通りならそろそろミズガルズの弾薬が怪しい、早めに先生を連れて離脱したいところだが……そうも言ってられないか。

 

「……にしても武器商人さん、貴方何者?なーんか初めて組んだ気がしないんだけど……」

「気のせいだろう、そもそもお前とは初対面の筈だ」

 

……戦い方でバレかけたか、あまり人前で戦う物ではないな。私の戦い方をしっている奴なら癖を理解している可能性も考慮しておくべきか……カンナが動けるようになり次第ミズガルズを「私は此処までです……先生」……流石にあの傷では無理があったようだな。……仕方あるまい、ここは私が「嫌だ、カンナは置いていかない」……ん?

 

「何故です、先生……私がこれ以上同行しても、私は足手まといになるだけなのに……」

「足手まといでも構わない、一緒に付いてきて、無事でいてくれるだけでいい」

 

「もう二度と、助けることができた筈の手を掴まないなんてこと……したくない!」

 

「……はは、貴方らしいですね。先生……」

 

……二度と、か。……そうか、私の、二の足は踏むまいと……すまない、先生。私は背負わされた者、誰かに背負わせることなどあってはならない筈なのに貴方にも一つ、背負わせてしまったようだ。……何をやっているんだろうな、私は。

 

彼女(鞘野ユキ)が望んだ正義は、誰かを守るものではなかったのか?

 

……そろそろカイザーPMCが此方にやってきても可笑しくない。ならせめて、手助けくらいはしてやろう。

 

 

 

「……先生、其処の公安局長は私が責任を以て送り届ける。だから先に行け」

「ドヴェルグ……」

「……信じて、いいんだね?」

「当然だ。商人とは需要と信用で成り立っている。契約違反など以ての外だ」

「……なら、任せたよ」

「ええっ!?先生こんな如何にも胡散臭い奴の言うことを信じるの!?」

「確かにドヴェルグさんは先ほど私を助けてくれましたが……」

 

まあ、そういう反応をされて当然だろうな。傍から見ればただの不審者なのだから。

 

「大丈夫」

「ドヴェルグがその気なら、そもそも私達を助けない」

 

……っ、先生、貴方は……変わらないな……

 

「わかったならさっさと行け、此処は私が引き受ける」

「うん、任せた」

 

カンナを庇うように前に立ち、迫りくるカイザーPMC達を待ち構える。

 

「居たぞ!だがあれは……」

「報告にあったアンノウンだ!あいつも先生が目的か……」

「先生は確保しろ、他は……倒して構わん!」

 

「わわ、来ちゃったよ大丈夫!?」

「……責任を以て、と言っただろう」

 

 

「来い、ミズガルズ」

『イエス、マイマスター』

 

指令を出すと同時、陽動を行っていたミズガルズをこちらに誘導、最高速で最前線のPMCを吹っ飛ばしながら私の横で急停止させる。

 

『現在時刻は22:00、マルチギミックアーセナル『ミズガルズ』及びオペレートシステム『Grani』、予定通りマスター、ドヴェルグと合流しました』

「手早く済ませるぞ……何をぼさっとしている、行け!」

今の声、ユキのに……うん、行こう、フブキ、キリノ」

「わかりました!任せましたよ、ええと……」

「ドヴェルグ。ほら、行くよ!」

 

先生が生活安全局の二人と離脱していくのを確認しながら、壁にもたれているカンナをむりやりミズガルズに乗せ、彼女を背負うように跨る。

 

「運転は荒いが少なくとも一番安全な場所だ、耐えろよ」

「……言われなくても……耐えてやるさ……」

「その意気だ……行くぞ、グラニ」

『イエス、マイマスター』

 

威嚇代わりにアクセルを吹かしながら、私とカンナを乗せたミズガルズはPMCの部隊へと突撃した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……報告があった、RABBIT小隊とやらが救援。先生御一行は無事離脱に成功し現在は子ウサギタウンだと。お前が行くべきは病院だが、どうする公安局長」

「……子ウサギ公園まで、頼みます……」

 

 22:35、無事PMC部隊の掃討には成功し、第3分校を離脱した私とカンナはミズガルズに乗ったまま裏道を走っていた……ん、敬語?

 

「……敬語を使われる程信用されるとは、随分と懐かれたものだな」

「ご冗談を……後ろでこのバイク捌きを見せられれば流石にわかりますよ……」

 

「……生きていたんですね、『ユキ先輩』……」

「……」

 

そうか、そうだったな。仮にも『鞘野ユキ』はカンナの先輩だった人間だ。当然彼女の癖は知っている。ドヴェルグになってから1回しか会っていないが、それだけでバレるとはな……

 

「……カンナ、私が生きていることは、先生達には秘密にしておいてください」

「何故ですか、先生は貴方のことを……!」

 

カンナの言葉を聞き、一旦バイクを止めバイザーを格納する。

 

「先輩、一体何を……っ!?」

「……他にも理由はありますが、こうなってしまった以上、私はもう『鞘野ユキ』とは名乗れません。先生が探しているのは『ドヴェルグ』である鞘野ユキではなく、『連邦捜査部部長』鞘野ユキなのですから」

「っ、そんなこと……!」

「もう、戻れないんです!私はもう、二度と……!」

 

……やっぱりこの顔は『鞘野ユキ』とは到底似つかないらしいな、困惑が見て取れる。

 

「……貴方の事情は、理解しました。ですが……」

「すみません、カンナ……せめて、私が私の目的を果たすまでは、頼みます……」

「……わかり、ました。他でもない、貴方の頼みです……しっかり……」

「っ、カンナ!?……グラニ、子ウサギ公園までは!」

『7分ほどです』

「わかった、行こう」

 

気絶してしまったカンナを落ちないよう背負いながら再びバイザーを展開し、子ウサギ公園への道を急ぐ。

……もう二度と、誰にも背負わせない、背負わせて、溜まるものか。

 

たった今、正義(自分)のために背負わせたのに?

 

……急ごう、自分が、自分でなくなる気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「契約通り、ちゃんと届けたぞ……安心しろ、生きてはいる」

「カンナ!」

「うわぁ、こりゃあ酷い……入院一歩手前レベルじゃないこれ?」

「あの狂犬が、ここまでして先生のために……?」

 

 22:45、子ウサギ公園に到着。カンナを寝かせた後、立ち去ろうと「待ってドヴェルグ」……先生?

 

「貴方は、どうして私を助けに?」

「……確かに、ただの武器商人が先生を助ける理由はありません」

「……簡単なことさ」

「カイザーにキヴォトスを牛耳られては武器商人も商売あがったりなのさ、だから助けてとっととカイザーを追い出してもらいたかった。それだけの話だ」

「違う、それだけなら騒ぎが起きてから駆け付ければいいだけ。なのに貴方は最初からカンナと一緒に居た」

「偶然だ、私以外にも居場所の分からないお前を助けに向かう奴が居るとは思えなかったが……まさしく意外、という奴だったよ」

「それに、そのバイクのシステム音声、それはユキの……!」

「他人の空似だろう、死人を追い求めるロマンチストなのかお前は?」

 

……すまないな先生。『鞘野ユキ』はもう死んだんだ、此処に居るのはただの抜け殻、ドヴェルグなんだよ。

 

「っ……」

「まあ今回は私の独断だ、気にしないでくれ。それじゃあな」

 

先生たちに背を向け、ミズガルズに跨る。……此方に呼びかける先生を引き留める声が聞こえる、恐らくはRABBIT小隊か……そうだな、先生は任せたぞ、後輩達。

 

 

 

 

 

 

 

もう、私が先生にしてやれることは、何もないから。

 

 

 




鞘野ユキ(ドヴェルグ)
・先生が探しているのは、『連邦捜査部部長』の鞘野ユキ。『ドヴェルグ』の私は必要ないし、私の正義が完成する時までまた会うこともないだろう。
……正義が完成すれば、間違いなく先生と相まみえることになるから。

番外編、いります?

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