Rusted Dáinsleif   作:暁真

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多分あと数話で終わります。


終章 カルバノグの兎編 VOl2
動き出す『正義』


 

 

 

「……ついに動いたか、あの腹黒ピンク」

『表向きには会長代行の交代、ですが……』

「十中八九クーデターだろうな、ヴァルキューレとカイザーが繋がっていた以上裏で糸を引いていたのはヴァルキューレの上層部……防衛室長以外にあり得ん」

 

 ……あの日、カイザーPMCによるD.U.地区への戒厳令から起きた一連の騒動から数週間が経った。子ウサギ公園にカンナを送り届けた後私は事態が収束するまで地下に潜伏、黒服(何故か顔面が酷いことになっていたが)からの技術提供を受け「とあるもの」……『鞘野ユキ』の正義を遂行するための装備を完成させるべく外部との接触を一切絶っていた。その間に何やら空が赤くなるわ塔が生えてくるわ色々あったらしいが、我らが『先生』がどうにかしたらしい……うん、あの時助けに行ったのは正解(間違い)だったようだ。あいつは間違いなく今回の騒動―――不知火カヤによるクーデターをどうにかしようと動くだろうし……

 

……その過程で、『正義』のために衝突することもまた、想像に難くない。

 

『……マイマスター、如何しましょうか』

「ああ、丁度良い機会だ。まずはあの腹黒ピンクがどう動くかを見定める」

『まだ動かないのですか?』

「見定めるだけだ。もし大衆が腹黒ピンク―――不知火カヤの行動を『悪』と断定するのなら」

 

 

 

 

 

「私は(鞘野ユキ)の『正義』のため、不知火カヤを止める」

『……そう、ですか』

 

……そうだ、これでいいはずなんだ。彼女(鞘野ユキ)の望んだ『正義』は圧倒的な『力』、悪をのさばらせないための力。間違ってなど、ない筈なんだ。そうでなければ私は……

 

彼女(鞘野ユキ)が思い描いた、理想の『英雄』ではないのだろうから

 

……違うんです、私が望んだ『英雄』は……!

 

……気のせいだろうか。何故か増えてきた白髪が揺れると共に、私の身代わりとなって消えたはずの、あの声が聞こえた気がした。……馬鹿だな、もう彼女は消えたはずなのに。ただの幻聴だろう。

 

「それで今日の取引先は……見慣れん場所だな」

『……ほぼほぼ廃墟のようですね、余程慎重なのか、それとも……』

「万が一がある、あれを……『Dáinsleif』と『Svalin』を、持っていく」

『まだ検証実験も行っていないのにですか?危険です、せめてテストを行うべきかと』

「理論上は何の問題もない、まあ一発撃ってみろ、というのは同意だ」

 

作業を行っていたデスクから立ち上がり、厳重に保管していた一本のアサルトライフル……黒服からの技術提供を受け完成した私の最高傑作『Dáinsleif』を手に取り、訓練用の的に銃口を向ける。

 

「……どうにも、これは……」

 

両手で銃を構えると、何かが銃に吸われていく感覚がする。黒服は『古の技術』とだけ言っていたが、随分と使用者に優しくない技術だな、これは……

 

『マイマスター、バイタルが……!?』

「許容範囲だ……!」

 

吸われていくと言ったが別に立てなくなるとかそういうものでもない、ただ少し力が抜ける感覚がするだけだ。……早く、撃つか。

しっかりと的を狙って放たれた弾丸は、あまりにも軽い撃ち心地だったのにも関わらず。

 

まるで紙屑かのように、簡単に的を粉砕した。

 

「……こりゃあ、すごい……」

『……マスター、バイタルは正常に戻りつつありますが……やはりその銃は危険です。緊急時以外の使用は控えてください』

「わかっている、使いすぎて動けなくなる可能性は想定済みだ。こいつを使うのは確実にやらねばならない時と……私が、『英雄』にならなければいけない時だけだ」

『……そう、ですか……』

「……さて、行くかグラニ、今日は遠出になるぞ」

『イエス、マイマスター……』

 

Dáinsleifを外部フレームに収納し、同じように厳重に保管していた小型端末……『Svalin』をコートに忍ばせミズガルズに跨る。……前回と違ってちゃんと銃器の注文か……いい機会だ、もし武力行使に出るようならSvalinの試運転でもしてみよう。

 

『ルートS4、ハッキング完了。40分後に再閉鎖を行います。遅れないように』

「……行くぞ」

 

17:35、今日の取引場所へ向けて、走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……見事に廃墟だな」

『そのようです、サーモグラフィーの使用を推奨します』

「わかっている、奇襲の可能性も充分あるからな」

 

 19:25、本日の取引場所に到着、見事なまでに廃墟だが……少し人が入った跡がある。……待ち伏せか?

 

『装備は如何しましょうか』

「……取り回しが効く者がいい、アサルトライフルと……『Dáinsleifは許可しません、危険です』……わかっている、拳銃で行く」

『……お気をつけて』

 

外部フレームからいつものアサルトライフルと拳銃を引き抜き、内部へと赴く。……Dáinsleifは触るだけで何か持っていかれる感覚がした、本当にあれを使うのは最終手段にしておこう。

やはりほぼほぼ手入れもされていない廃墟だが、僅かに人が居た痕跡が残っている……ひとまず指定された場所まで向かおう。今の所サーモグラフィーに反応も……いや、一人……こちらを見ているな。だがこの位置、既視感が……

……まさか、FOX小隊?何故私を……いや、恐らくはあの腹黒ピンクの部下だ、先日の一件で私を危険因子と判断したんだろうな。そういうことなら前と同じように……「待っていましたよ、武器商人ドヴェルグ」……ユキノ?

 

「丁寧なお出迎えご苦労、お前が今日の取引先で合っているな?」

「……ええそうです、後、しらばっくれるのも大概にしてください」

「何をだ、私はただの武器商人であり何もやましいことは……」

 

……おいおい、お前らにも気づかれるのかよ、そこまで私のことを……いや、そうか、FOXはWOLFから良く扱かれていたしな。

 

「……生きていたのなら一報くらいくれてもいいでしょう、ユキ先輩」

「……これを『生きている』と判断するのなら、考えていましたよ」

 

念のためこっそりSvalinを起動し、バイザーを格納する……動揺しているな、正常な反応だよ。

 

「……その姿は、一体何が……?」

「生憎私にもサッパリですよ……それに今は再会を喜ぶ時間ではありません、取引の時間です」

「……そう、ですね。……安心してください、此処には私一人です。他の隊員は別の場所に」

「そうですか。では書類にサインを、決済は後で引き落としが」

「……ええ」

 

書類にサインを書かせ、アタッシュケースごと商品を引き渡す……そういえばこれ、ユキノが昔使っていた物とよく似ているな、それで気づけただろうに。

 

「……契約成立です、もう私には用事はありませんが……そちらにはあるのでしょう?」

「……っ、はい……シャーレを離れた貴方に、もう一度「だろうと思いましたよ」……やはり、此方に来ては、くれないのですね」

「ええ、私は私の(託された)正義のために動くだけ、武器商人ドヴェルグとして活動していたのも、すべてそれだけのためです」

「……先輩、貴方の『正義』とは一体何なんです、我々の正義と、一体何が違うのです!」

 

「……『正義』とは、『悪』を罰するためにあるものです」

「……はい?」

「ですが、いくら『正義』を掲げようと、『悪』とは大本を潰さない限り際限なく湧いてくるもの。終わりなどないのです」

「待ってください、貴方は、何を……」

「故に私は『力』が必要だった。『悪』の大本を潰し続ける力、キヴォトスの『英雄』になり得る力を」

「……英雄とは、『悪』を滅ぼす者。何度も、何度も、終わりが来るまで」

「何を、言っているん、ですか」

「私の『正義』は大衆の望む『英雄』、須らく『悪』を滅ぼす者へと至ることです」

「……滅ぼす、とは」

「文字通り」

 

……これが、『英雄』としての正義。彼女が求めた力の、使い方。

 

「改心させるなど生温い、息の根を止め、恐れを抱かせる。それを続ければ何れ『悪』は私を恐れ、『悪』足りえなくなる」

「それが私の『正義』、『悪』の抑止力足り得る『英雄』になること」

「……先輩、冗談なら、やめてください。そんなこと、先輩には「これが冗談じゃないとでも?」……っ」

「本気ですよ、ユキノ。そのために私はドヴェルグとして力を貯め込んで来たのです。シャーレに居たのも各自治区の技術を盗用するため、全て、全てこの『正義』のために、今まで動いてきた」

「先輩、我々は『正義』のため振るわれる武器なんです、自分で考える武器など「振るう側が大衆にとっての『悪』だとしたら?」……まさ、か」

 

「ええ、今はまだ様子見の段階ですが、大衆が彼女を『悪』と断定するのなら……」

 

 

 

 

 

「私は、現連邦生徒会会長代行、不知火カヤを――――殺します」

「っ……なら、貴方をこのままにしておくわけには行かない!」

 

私の独白を聞き終わったユキノは切羽詰まった眼で銃を構え、銃口を此方に向ける……いい機会だ、試してみよう。

 

 

「Svalin、展開」

 

音声認証と共に私の周囲に張り巡らされた電磁バリアはユキノの放った弾丸をいとも簡単に弾き返す。

 

「なっ、その技術は……!?」

「ミレニアムから頂戴したものをベースにあれこれ改造しています。その程度の銃を防ぐことなら至極容易いこと……おっと、此方からは何もしませんよ、ユキノ。いや何もする必要がないと言い換えたほうがいいでしょうか?」

「……本気なんですね、先輩」

「ええ、確か『全力で止める』とか言われましたっけ。……この体たらくではとても止められるとは思えませんね。まあいいでしょう、今日は取引に来ただけです。『また後日』」

「……クソッ!」

 

恐らくは、不知火カヤは大衆にとっての『悪』と断定されるだろう。

ならばそれを殺すことで……

彼女の『正義』は、ようやく始まるはずだ。

 

ちが、私の求めた『正義』は、守るための……!……ごめんなさい、ドヴェルグ……!

 

……これでいいんだ、これでいいはずなんだ。

鞘野ユキの『正義』、彼女が望んだ『英雄』になることが、私の存在意義なんだ……そうでなければ。

 

私は、何のために生み出されたんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……先生、貴方に一つ、頼みがある」

「頼み?」

 

 FOX小隊は投降し、子ウサギ駅の爆発は回避された……後はカヤの所へ行くだけ、というところで、ユキノに声をかけられた。

 

「……ああ、会長代行―――不知火カヤを、守ってほしい」

「不知火カヤを―――守る?」

「あいつを?どういうことなんだ先輩」

「守るって……一体どうして?」

 

私達はカヤを止めに向かう。守るとは、真逆の行動の筈なんだが……

 

「―――今、不知火カヤは、命を狙われている」

「!?」

「い、いのちを……?」

「どういうことです先輩!?一体誰から!?」

「―――先生、信じられないと思うが、聞いてほしい。彼女の命を狙っているのは……」

 

 

 

「―――――武器商人ドヴェルグ、いや、『鞘野ユキ』だ」

「……は?」

「ドヴェルグってあの時の……待って!?」

「ユキ、が?」

 

……ドヴェルグの、正体。

私が追っていた物に、最悪の形で答え合わせが成された。

 

「頼む……ユキ先輩を、止めてくれ……」

「あの人が、戻れなくなる、前に……!」

 

 

 

 




・Dáinsleif
黒服の技術提供を受けた上で完成させたドヴェルグの最高傑作。使用者の神秘及び生命力を変換して弾丸の威力に変える力がある。
・Svalin
ミレニアムから盗用した技術をベースに独自改造を加えた電磁バリア。

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