「Svalin、展開」
音声認証で電磁バリアを展開し、仕掛けてくるRABBIT小隊を待ち構える。……手早く終わらせるためにDáinsleifを抜いたが、この体たらくだと10分持つかどうか怪しいな……いや、それでいいのだが。
「グラニ、お前は退避しろ」
『……イエス、マイマスター』
念のためグラニは避難させておく。……もしもの時、私を何処かへ運べるように。……ダメだな、こいつを持っているとかなり持っていかれる、サブマシンガンなら時間稼ぎくらいにはなるか……?
「あのバリア、ユウカと同じ……」
流石に気づくか、先生。これに生半可な攻撃が通ると思わないことだ……まあ独自の改造が入りまくって最早別物だがな。
「……こっちの弾が、全部弾かれて……」
「ならCQCに移行するまで!」
「良い判断です、ただしそう簡単に持ち込ませると思いますか?」
バックステップで距離を取り、引き撃ちでサブマシンガンを斉射。……まあ避けるだろうな、まずは、一人。
「fire」
「あれは昼の……サキ!避けて!」
「わかってる!」
「……避け、た?」
Dáinsleifによる一発で確実に捉えた……筈なのだが、屈まれたせいでギリギリ当たらず……先生の指揮を甘く見すぎていたか、何回も見てきたはずなのに。
「……あまり撃ちたくは……ないんですがね……」
「っ、バリアが消えた……今の内!」
「ちょっと痛いけど我慢してくれよ、先輩!」
「そんなのに当たるわけないでしょう……っ!?」
吸わせる間はどうもバリアが途切れるらしい、その隙を突かれて一気に距離を詰められる。そんなブレブレの狙いで当たるわけ、が……!?
「……やっぱり、装置はポケット……」
「ありがとうミユ、ミヤコ、サキ、そのまま攻撃を続けて!モエは準備をお願い!」
「よーし、あのバリア、何処まで耐えるんだろうねぇ……うへへ……」
「あの一発で、発生装置の位置まで……!?」
「ウチの狙撃手は優秀ですから、これくらい造作もありませんよ」
囮だったらしいサキの弾丸を躱した後、間一髪貼られなおしたバリアでどうにか狙撃手の一撃を防ぐが……まさか素振りからバレたのか?もしそうだとすれば大した観察眼だな、だがバレたところで隙はDáinsleifに吸わせてる間だけ、撃ちさえしなければ何の問題……も……?
「っ、足が……!」
「……あの銃をこれ以上使わせちゃダメ、多分ユキの身体が持たない……!」
……どうも1~2発だけなら支障はないが、3発を超えると少々身体に来るらしいな……丁度良い、自分の武器で死ぬのも悪くないだろう。
装填を終えたDáinsleifを腰に下げ、バリアを切らさないようサブマシンガンで馬鹿の一つ覚えのようにCQCを仕掛けてこようとする二人を足止めする……もう一丁あればよかったな、一丁で二人相手は無理がある。……いや、そちらがその気なら……
「なっ、自分から……!?」
「CQCの心得がないとでも思いましたか?」
「まさ、か……!」
バリアを一瞬消してサキの懐に入り込み、再度展開。周囲と隔離した上で回し蹴りを放ち、電磁バリアに叩きつける。普通ならこれでKOだが……
「流石にこのくらいで、やられてたまるか……!」
「……でしょう、ね……」
起き上がりすぐさま銃のストックを叩きつけようとしてくるのを手で捌こうとするが、足がよろけて滑ってしまう。結果的に回避こそできたがこの隙は……
「モエ、今!」
「クヒヒ……耐久性テストと行きましょうか、せんぱぁい!」
「仲間ごと……!?正気ですか……!」
「まさか、信頼してるんだよ。このバリアの耐久力をな」
上空から爆薬が降り注ぐ。……このバリアがそうそう壊れることはないだろうが、問題は……!
「貰ったぞ、先輩!」
「やら、せるか……!」
爆撃の隙にSvalinの端末を破壊しようとしてくるのをなんとかストックを掴んで防ぎ、逆に引き金を握る。
「迂闊ですよ……後輩……」
「なっ……!?」
無防備に自分に銃口を向けている引き金を引き、サキの右腕に5発ほど撃ち込み、手放させる……っ、バリアが……!
「……マジ?あの量で少し綻びができるだけなの?ちょっと先輩ずるくないですかぁ!?」
「どの口が、言いますか……!」
爆撃の終わりを見計らって銃ごとサキを突き飛ばしバリアを再展開するが、完全には耐えきれていなかったのか少し隙間が発生していた……やっぱりテストは怠るべきではなかったか……
「……斜め上、隙間!」
「わかりました、先生!」
「随分と、信頼関係を築いたようで!」
「先輩ほどじゃ、ないけどな!」
「ただ利用してただけと言っているでしょう!」
挑発も全然効かないか、成長したな……って、何を感慨深くなってるんだ私は。
爆撃で発生してしまった隙間に近寄らせないように牽制射撃を行いつつ、Dáinsleifを撃つべきタイミングを見計らう。さっきは間一髪先生の指揮で躱されたが、今度こそは……「ミユ、今!」っ!?
「……外しません」
完全に不意から放たれた一撃はバリアの隙間を通ってコートを直撃し、電磁バリアに亀裂が走る……端末を、あの距離から狙い打っただと……!?
「これでバリアももうなくなりました。後は無力化するだけです……!」
「年貢の納め時だぞ、先輩!」
「バリアさえなければ勝てるとでも!」
「勝てます、だってこっちには……」
「仲間がいるからな!」
……仲間。仲間、か。鞘野ユキが失ったもの。そして私が得た上で、捨てたもの。……そうか、やっぱり、一人じゃ、英雄にはなれないんだな。
「仲間など、いなくてもぉ!」
「っ、CQCを!?」
「懐ががら空きなんですよ!」
急加速して小隊長、ミヤコの懐に潜り込みサブマシンガンのストックで突き飛ばす。せめて一人は、持っていく……!
「これで……!「FOXTROT......!」っ、閃光弾を!?」
Dáinsleifをミヤコに向け構えた瞬間、待っていたと言わんばかりに閃光弾が投げ込まれる。バイザー展開は……間に合わ……いや……!
「通るとでもぉ!」
「なっ、バイザーを自分で下ろして……!?」
「ですが……隙だらけです、先輩!」
「っ……!」
どうにかバイザーを下ろして直撃は回避するが、その隙は余りにも大きい。右腕に数発撃ちこまれ、痛みでサブマシンガンを思わず手放す。拾う時間は……ない、か。
「……これで『詰み』です、先輩」
「……どうも、その、ようですね……」
二人に銃口を向けられ、完全に制圧される……これが年貢の納め時、か。
「……先輩、手加減してましたね?」
「何を根拠に……」
……流石に此処まで露骨だとバレるか、いや、それだけRABBITが成長したとみるべきか。
「先輩の戦法はバイクによる高機動戦です、なのに貴方は使わなかった」
「それに最初からバイザーを展開していれば閃光弾で致命的な隙を晒さずに済んだ」
「……はは、よく研究していることで」
「……ユキ……」
「……どうかしましたか、先生」
もう安全だと判断したのか、先生が此方に向かってくる。……何のつもりだ?
「ユキは……本当は止めてもらいたかったんじゃないの?」
「……理解できません、確かに手加減はしましたが……」
「……銃を撃つたび、泣きそうな顔をしてた」
「……」
「いやだ、やりたくないって、そんな顔をしてた」
「……は?」
……そんな馬鹿な、私はそんなこと……思ってなんか……
「……それに、貴方に託した鞘野ユキはきっとそんなやり方、望んでないよ」
「急に、何を言い出すんです……なら力を求めた理由は……」
「……鞘野ユキは、そんなことを望む子だったの?」
「それ、は……」
……英雄になるための、『力』……いや、それよりもっと、前に……ああ、そうか。
……貴方が望んだ力は、『抑止力』としての力じゃなくて、『誰かを守るため』の……力だったんだな。
「……馬鹿だなぁ……今更、気づく、なんて……」
「……ユキ、手を。今ならまだ戻れる。ユキはユキのままで居れる」
「私は、もう『SRTの英雄』でも、『連邦捜査部部長』でも……ないんですよ……」
「……そんな肩書も、見た目が変わったことも、関係ない」
「私はFOX小隊とサキの知る『SRTの英雄』鞘野ユキは知らない」
「『武器商人ドヴェルグ』としての貴方も少ししか知らない」
「私が知ってるのは、世話焼きで優しい……」
「ただの、『鞘野ユキ』っていう生徒だよ」
……ああ、先生。
お前は、ほんと、馬鹿だなぁ……
「……なら、せめて、その思い出は、綺麗なままにしておくとしましょうか……」
「っ、ユキ、何を……!?」
先生を突き飛ばし、なんとか動くだけのバリアを展開。……持って5秒か、なら、充分だ。
「……もう、一度でも踏み込んでしまった以上、私は戻れませんよ」
「っ先輩、やめろ!」
既に吸わせ切ったDáinsleifの銃口を自分のヘイローに向けて構える。恐らくは狙撃も間に合わないだろう。
「言ったでしょう、全部終わらせるって」
「っ!」
「ダメ……間に合わない……」
……これでいいんだ。抜け殻にしては、良くやった方だろう?私。
……先生、何をする気か知らないけど、今から隙間に一発撃ちこんだところでこの手はびくともしないよ。……だから。
「……さようなら、先生」
「……!」
廃工場に一発、銃声が鳴り響いた。
次回、エピローグ。
番外編、いります?
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いる
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いらない
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コラボとかしろ