Rusted Dáinsleif   作:暁真

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ひとまず1話。


その後の話
戻ってきた日常


 

「先生」

「……ナンデショウカユキサン」

「なんで片言になってるんです……まあそれはどうでもいいとして、私の言いたい事わかりますよね?」

「こ、これでも前に比べたらだいぶ仕事は捌けるようになってきたから……」

「ええ、それは認めましょう。私が居た頃に比べてかなり効率よく書類を終わらせているようですし」

 

「ですがそれはそれとして」

 

 

 

 

「一向に書類のミスが直ってないのはどういうことです?未だに漢数字で書くべきところアラビア数字じゃないですか。報告書の書き方も相変わらず日記みたいですし……」

「い、いやぁ……一応仕事のペースは上がってるから、許してもらえないかな……」

 

「許されるわけがないでしょうこのすっとこどっこい!いくら作業ペースが上がったとてその作業がミスばかりなら大した違いはないんですよ!」

 

「か、返す言葉もない……」

「……ほんっとうにこれがキヴォトスを救った先生なんですか……?肝心な時には役に立つ分昼行燈よりはマシだと思いますけど普段がこれでは……私の今までの苦労はなんだったんです……?」

「あはは……」

「愛想笑いで済ませようとしない!とっとと書類の訂正!」

 

……シャーレ部長として正式に復帰してから数日、少しはマシになっているだろうと思った先生の勤務態度が相変わらずだったことに久しぶりにキレつつ私はデスクワークに勤しんでいた。……いやまぁ確かにある程度はペースも上がってるし改善もされているがそれはそれとして細かいところのミスがとにかく多い、これじゃあわざわざあの時遺言遺した私が馬鹿みたいじゃないか。しっかり書類仕事どうにかしろって言ってたはずなんだがなぁ……ん?このファイルは……

 

「先生」

「な、なんでしょうか……今書類の訂正を……」

「ああ、ちょっと後回しにしてくださいそれ。一つ聞きたいことが」

「なんか怒られる気配しかしないんですが」

「自覚はあるのですね。まあすぐに終わるのでご安心を、もうこんなことで長々説教する時間はないので」

「暗に仕事貯めすぎって言われた?」

「直喩です。さて、では聞きたいことなんですが……」

 

 

 

 

「このファイルとテキスト、私の眼がぼけてないなら受信日が1か月前と記載されているのに開かれた形跡すらないのですがこれは一体どういうことです?」

「あっそれ仕事量多すぎて余裕がなかったからそのまま放置してたやつ……」

「当番の皆さんにやってもらうという手は?」

「当時は忙しすぎて頭から抜け落ちてました……」

「……事情は納得できかねますがひとまずわかりました。こっちでやっておくのでさっさと訂正を済ませるように」

「申し訳ございません……」

「なんで私に謝るんですか……謝るなら終わった後でこの書類の送信者に謝ってください」

 

いくら仕事が忙しいとはいえ目を通す時間くらいは捻出できるだろうに……まあいいか、とっとと済ませよう。えーっと中身が……ああ、連邦生徒会からの書類不備の連絡か。そりゃあ仕事の依頼とかそういうのだったら確認の連絡来るだろうし放置して問題ないファイルってことはそんなもんだよな……いや問題ないじゃないが、大問題だが。で、肝心の不備内容は……ははあ、ミレニアムで一騒動あった時の奴と、なるほど。……私は不在だったから代わりにやることはできないし、書類済ませ終わった後に連邦生徒会まで行ってもらうとするか。可哀そうだがこれも仕事をサボったツケだ、苦労してもらうとしよう。

 

「……あーこれ私には処理できませんね先生、余裕ができ次第連邦生徒会まで行ってください」

「えっ」

「えっ、じゃありませんが。私が居ない時に書いた報告書の不備らしいのでこっちでは処理できません。話は通しておいてあげるので書類の訂正が終わり次第行ってください、いいですね?」

「……わかった」

「何ですかちょっと笑顔になって、書類が多すぎてついに壊れましたか?」

「いやぁその、ね」

 

「本当にユキが戻ってきたんだなって」

「……なんですそんな感傷に浸るような事言って。貴方まだ若いでしょう心は老人とでも言いたいんですか?」

「違うけど!?」

「ちょっと揶揄っただけですよ……正直、私も此処に戻ってくるとは思ってませんでした」

 

……一度死んで蘇ったあの日、私は『鞘野ユキ』としての人生を捨てたつもりだった。今までやってきたことをなかったことにして表舞台から姿を消した筈だったのだが……思えば先生を助けに行ったのは少し『鞘野ユキ』としての自分に少し未練が残っていたのだろう……情けない話だ。結果的には良かったのかも知れないが、あの時の私は心を捨てきれないただの半端者だった。先生に止められるのも必然……だったんだろうな。

 

(別に悪いことではないと思いますよ?心のない人間なんてただの兵器と同じなのですから)

 

……其処じゃありませんよ私。あの時の私は『鞘野ユキ』にも『ドヴェルグ』にも徹しきれなかったのです。結果的にはハッピーエンドで終わりこそしましたがやったことだけ見れば何をしたいのかよくわからないどっちつかずなんですよ。鞘野ユキに徹するなら先生の味方であり続けるべきでしたし、ドヴェルグに徹するならあの時先生を助けに行くべきではなかったのです。

 

(……それは否定しませんよ。ですが間違えた、というわけでもないでしょう?)

 

どういうことです?

 

(鞘野ユキに徹していたのなら貴方は自分の存在意義を疑っていたでしょうし、ドヴェルグに徹していたのなら自分のやるべきことへの違和感で一生苦しんだままだった筈です。……どっちつかずだったからこそ、ああして先生に止めてもらったことで貴方は貴方として生きていけるようになったんじゃないですか?……私がどうこう言える立場ではありませんが)

 

……そんなものでしょうか?

 

(難しく考えなくていいんですよ私。そんなことで悩むくらいならこれからを考えるべきです。過去は過去、考えたところで何か変わるわけじゃないのですから)

 

なーんか上手い事はぐらかされた気がしますが……そういうことにしておきます。ところで私、いい加減紛らわしいので何か呼び方ありませんか?

 

(……じゃあこっちがシロ、貴方はクロで、見た目ここまで変わっちゃいましたし)

 

シンプルでいいですね、採用。……じゃあ仕事に戻りますね、シロ。

 

(ええ、頑張ってくださいクロ。私はまだ表に出れる程馴染んでないらしいので、万が一何か起きても変わることはできないので気を付けてください)

 

2年間ずっと寝てたのに良く言いますね、私一人で充分です……では。

 

 

 

 

 

 

「……ユキ?なんかボーっとしてたけど大丈夫?」

「ああ失礼、ちょっと考え事をしてました。……ボーっとしてるように見えましたか?」

「わりと、暑さでバテたのかと思うくらいには」

「そんなわけないでしょうクーラー効きすぎてるくらいですし、ちょっと室温上げていいです?3℃くらい」

「暑いから勘弁して……」

「長袖でよく言いますね、シャーレの制服半袖ないんです?」

「リンちゃんに頼めばワンチャン……」

「仮にも上司に近い立場の会長代行をちゃん付けするんですか……まあいいか、仕事に戻ります」

 

この前の時といいやっぱり本来のユキ……シロと会話している間は周囲からボーっとしているように見られるらしい。彼女曰く「馴染み切っていないから」らしいが、馴染み切ったら会話しながら仕事とかそういうこともできるのだろうか……そうであるのなら早めに馴染んでもらいたいものだ。……っとそんなことは今はどうでもいいんだ、仕事に戻ろう仕事に……にしても毎度のことながらほんっとよく此処まで仕事を貯め込んだものだよ。……まあ貯めこんでる量が仕事があまりなかった初期と比べてほぼ変わらないのは業務速度が上がっているということで褒めるべきところなのだが……相変わらず私や当番の生徒が居ないとこの様だ。私が居ない間の当番の負担が伺えるぞ……

 

「で、先生。書類の訂正どこまで終わりました?」

「よ、四割……」

「……」

「真顔になった!?」

「信じられません……昔の先生なら2割も終わってなかったというのに……」

「そっち!?まだ終わってないとかじゃなくてそっち!?」

「……成長しましたね、先生……」

「なんか複雑な気分……」

「この分なら昼までには一段落しそうですね。昼飯を食べに行く時間も取れそうです」

「……じゃあさユキ」

「なんです?」

「一緒に食べにいかない?」

「……んー、そうですね」

 

 

 

「いいですよ、特別拒否する理由もないので」

「よし、それじゃあ決定」

「じゃあしっかり仕事を終わらせてくださいね」

「はーい……」

「露骨にやる気ない声になるのやめてください」

 

……うん、やっぱり「シャーレ」が今の私の居場所だ。

 

 

(やっぱりホの字じゃないです?)

 

だから違いますってシロ……

 




イベント書くか幕間書くか悩みますね、番外編

何とは言いませんが、先生の性別ってどっちで読んでます?

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