Rusted Dáinsleif   作:暁真

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いきおいの ちからって すげー!


対策委員会編
ユキと先生の出張


 

「アビドスに出張する!」

 

「出勤早々何を言ってるんですかこの顧問は」

 

 なんだこいつは、昨日ようやく溜まりに溜まった書類仕事(といってもほぼ連邦生徒会や自治区の予算に関するものだったが)を終わらせて明日からようやく仕事ができると思ったらこれである。やっぱりこいつクソボケでは?……というかアビドス……アビドス?どっかで聞いたことあるような……

 

「あ、おはようユキ、突然だけど私出張することにしたから」

「突然が過ぎます、ひとまず何処に行って何をするかだけ簡潔に教えてください」

「アビドス?ってとこに行って暴力団に襲われてるらしい生徒の皆を助けに行く」

「簡潔にありがとうございます、ひとまず落ち着いて準備と手続きをしてください」

 

 こいつの頭にはいったん落ち着くとかどうすべきか考えるとかそういう機能はないのか?……はあ、まあいいか。自治区に赴くということはここからシャーレの活動が本格的に始まるということ。私の目的のためにはシャーレが自治区に頼られる存在になってもらわなくては困る、ならば手伝わぬ道理はあるまい。……ああ、あそこか、アビドスって。

 

「準備って言っても……特別に持っていくものとかもないし、あんまり気にしなくていいんじゃないかな?」

「あそこは町の中心でも迷うレベルの規模を誇る巨大な自治区ですよ、地図くらい持って行ってください……いや、ちょっと端末の地図を開けてもらえますか?」

「あっ、うん……はい」

 

確かアビドスの本校舎は……ダメだ、とっくの昔に砂に埋もれてる。となれば残ってる他の校舎を……お、あったあった。

 

「アビドスの校舎と思わしき場所の位置情報を登録しておきました。これで少なくとも迷うことはないでしょう」

「ありがとう……って、思わしきってどういうこと?」

「あそこは気候変動であちこち砂嵐に埋もれてしまっているんですよ。本校舎はとっくの昔に砂の底だったので、現存してる校舎の中からまだ使われていると思わしき場所をマークしました。……もし間違っていたらその時はすいません」

「大丈夫、多分私だけだったら間違いなく迷ってただろうし、ありがとう」

 

……こいつ、さては重大な勘違いをしているな?

 

「いや、私は行きませんよ?同行するなら自分の端末にマークしてます」

「えっ、これは普通一緒に行く流れでは?」

「何馬鹿なこと言ってるんです、貴方が出張している間シャーレの業務はどうするんです?他の学校から当番で生徒が来てくれるとはいえ居ない日は完全にほったらかしで滞りますよ。シャーレは実質貴方のワンマン経営だってこと自覚してます?」

「……返す言葉もございません」

「わかったならよろしい。では簡単に引継ぎの書類の作成だけお願いします。ああそうだ、アビドスで何か困ったことが起きたのなら日中であればいつでも私を呼んで貰って構いません。通信越しになりますが対応はできるので」

「ありがとう、困ったら遠慮なく呼ぶね」

「そこはなるべく呼ばないように心がけて欲しいのですが……こほん、ともかく。出張中の業務は私がしっかりとやっておくので。しっかりとお仕事をやり遂げてくるように」

「よし、じゃあ行ってくる!」

「引継ぎの書類を書けって言ってるでしょうが!」

 

 なんだこの……なんだ?しっかりしてはいるんだが所々抜けている……天然とでも言えばいいのだろうか。一応仕事に対しては真面目に取り組むし、ふざけているわけでもない。……まあいいか、大事なのはこいつがしっかり仕事を終わらせてシャーレの評判を上げること。故に私は私のために全力でサポートさせてもらおう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、こちら連邦捜査部シャーレ」

『ちゃんと……出てくれた……私だよ……』

「御用の際は本名と件名を言ってもらえると助かります……という冗談はさておき、三日ぶりですね先生。何の用でしょうか」

 

あれから三日、特にこれといった事件もなく当番の生徒達と業務をこなしていた私の元に先生から電話がかかってくる、ずいぶんと疲弊した様子だが、何かあったのだろうか。

 

『単刀直入に言うとね……』

「はい」

 

 

 

『ごめん、迷った』

「わざわざマークまでしたのに何をどうしたらそうなるのか理解に苦しみます」

 

嘘だろ?なんで目標地点を記して警告までしたのに迷うんだこいつ?

 

『いやぁ、タップミスでマーク消しちゃって……色々手間取ってたらいつのまにか……』

「天性の馬鹿ですか貴方は?」

 

こいつ天然じゃない、ただの馬鹿だ。

 

「ひとまず今から私の言う通りにマップを操作してください、マーカーを再配置します」

『わかった……あ、ダメだ、お腹すいた……』

「食料品の補充さえしてないんですか貴方!?……先生?先生!?」

 

 ダメだこいつ、救いようのない馬鹿だ。ああっくそどうしたもんだこれ。シャーレの先生はアビドスで行き倒れになって死にましたとか笑い話にもならないぞ?こんなことなら私も一緒に行っておくべき……いや、それはそれで業務が滞るんだよな。……ええい今考えるべきはあの馬鹿をどうやって救助しに行くか……電話の信号を逆探知すれば位置はわかるが問題はどうやってそこまで行ったもんか、ああでもないこうでもない……ん、また電話?

 

「はい、こちら連邦捜査部シャーレ」

『おはようございますユキさん、セミナーのユウカです。この前の弾薬費の支払いについて少し確認したいことがありまして……』

「わかりました。ではまず書類の方を確認しますね」

 

……あんたが死んだら私がシャーレの業務を全部請け負うことになりかねないんだ、死ぬなよヘイロー無し。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……ありがとうございました。やっぱり先生の厚意だったんですね』

「そのようです、正直なところ支出管理に問題が出るので程々にしてもらいたいのですが……出張から帰ってきたらきつく言っておきます」

『そうですね、仮にも連邦生徒会の機関なのだしそこらへんはしっかりとして貰わないと。では私はこれで』

「本日はありがとうございました。また困ったことがあればいつでもシャーレをご利用ください……ふぅ」

 

 あんの馬鹿、お人好しなのはいいが過払いは支出管理に支障がでるからやめてくれ……というか今どうなってるんだあいつは。そのまま野垂れ死にとかしてるんじゃあないだろうな。こうなったら私自らアビドスに……ん?今日はやけに電話が多いな……

 

「はい、こちら連邦捜査部シャーレ」

『やっと繋がった……私だよ、先生』

「4時間と23分ぶりの電話ですね、今度は何の用ですか。というか空腹はどうにかなったんですか?」

『えっとそのことについてなんだけど……こっちの映像を繋ぐから、ユキも映像通信に切り替えて貰っていいかな?」

「別に構いませんが……」

 

 今度は一体なんなんだ。先生の疫病神ぶりに少しため息を吐きながら、電話から映像通信に切り替え先生の端末(シッテムの箱というらしい)に繋ぐ。切り替えてすぐに視界に入ったのはどうにか生きていたらしい先生と、机を囲うように座っていた複数人の生徒の姿だった。……なんだ、ちゃんとアビドスには着いていたのか。

 

『紹介するよ。シャーレの部員で、SRT学園所属のユキ、なにかアドバイスが貰えないかと思って連絡してみた』

 

……おっと、なにやら争い事の気配がする。勘が良いなあいつは、確かにこと戦闘においてなら私以上の適任はいるまい。……ふむ、私がSRTと聞いてちょっと表情が動いたなあのピンク髪、かなりできると見た。

 

「……どうやらウチの顧問が多大なご迷惑をおかけしたようですいません。代わってお詫び申し上げます」

『なんで私が何かやらかしたって断定するの!?』

「……様式美のつもりでしたが、まさか本当にやらかしたのですか?」

『……ええと、やらかしたと言えばやらかした……のかな?』

『ん、大丈夫、気にしてない』

「本当に何をやらかしたんですか貴方は!その子ちょっと顔赤いですよ!?」

『誤解だからぁ!?』

 

……よし、帰ってきたら一発殴ろう、そうしよう。うら若き乙女の純潔を奪った罪は重いぞ。

 

「……こほん、まあ冗談はここまでにして、アドバイス、とは?」

『それについてはこちらから説明させていただきます。申し遅れました、私はアビドス対策委員会オペレーターのアヤネと言います』

「ご丁寧にどうも」

『現在私たち対策委員会は不良集団カタカタヘルメット団に連日襲撃され、弾薬すらままならない状態です』

「それについては引継ぎ資料作成時に存じております。それで改めて、アドバイスとは、どういう?」

『そうですか、ありがとうございます。それで、アドバイスというのは……現在私たちは先生の指揮によってヘルメット団をなんとか撃退、前哨基地まで退却させたところなのです』

「ふむ、その様子を見るに追撃を仕掛ける魂胆と見ますが」

『……鋭いですね、その通りです。今からヘルメット団の前哨基地まで乗り込み、制圧を行う予定です……』

『そういうわけで、ユキならなにかこういう時の戦い方を知ってるんじゃないかって思って、連絡したんだ』

 

……特にあれからSRTについて私は何も喋っていない……なるほど、調べたか。いいことだ、自分から知ろうとするのは上手くやっていくための基本だからな。

 

「……そうですね、見たところそちらはオペレーターと先生を除外して総戦力は4名……前哨基地の構造については?」

『流石にそこまでは……今まで防衛戦ばかりだったので、攻め込むとなると何もわからず……』

「なるほど、であるのなら下手に戦力を分散させるよりも盾役を先頭に陣を組み、一点突破で行くのが最適かと」

『そういうことならおじさんの出番だね~』

「詳しい敵の配置などが分かってない以上私から言えるのはこれだけです。あまり力になれず申し訳ない」

『いえ!アドバイスありがとうございました!』

「シャーレはどんな要件でも受け付けていますので、これからも気軽にご利用ください」

『それじゃあユキ、留守の間、改めて任せたよ』

「ええ、任されました。それはそれとして帰ってきたら少々お話があるので、覚えておくように」

『なんでぇ!?』

「なんでと言われましても、そういうところですとしか……はあ、では、また何か要件がありましたらシャーレまで。お疲れ様でした」

 

 念のため先生に釘を刺しつつ、映像通信を切る。……カタカタヘルメット団か。似たような名前の奴らがあちこちにいる数だけは多いチンピラ集団だった記憶があるが……それが生徒数が極端に少ないとはいえ学園を襲える規模の戦力を有するだと?……妙に引っかかるな。

 ……本日の書類仕事は終わり、電話相談もかかってくる気配はなし。うん、大丈夫そうだ。

対応が終わった書類を仕舞い、身支度をして標識を「closed」に返してからシャーレを後にする。

 

「鞘野ユキ」の仕事はここで終わり、ここからは「ドヴェルグ」の仕事だ。

 

 

 




勢いが続くなら続きます。感想と評価があるとやる気が出て勢いがあがります、多分。

番外編、いります?

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