Rusted Dáinsleif   作:暁真

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イベントストーリーが思ったよりも長い。


夏の特殊作戦!RABBIT小隊と消えたエビの謎 3

 

「というわけで先生……説得はしたのですが止めきれず……」

『ああうん、お疲れ様ユキ……実際RABBITの皆が意固地になるくらい八戸浦村って怪しいの?』

「なわけないでしょう、一応話は聞きましたが出てきたのは証言とも言えない証言のみです。物証や客観的証拠の一つでもあればまだ納得は行きますが……現状憶測にしか過ぎない推理のためにわざわざ住民の警戒度を引き上げる夜間捜査に走るなどというのは流石に想定外ですよ……」

 

 ……まぁ、実際にはこれにドヴェルグとして手に入れた確固たる証拠という裏付けも入るわけだが。

時刻は日没30分前。あの後ミヤコと押し問答になった私は結局彼女らを止めきれず(グラニ曰く死んだような目で)先生に定時報告を行っていた……なんだろう、今ならあいつの出張中の苦労が少しわかるような気がする。

 

『お疲れ様……ユキの方では何か掴めたの?』

「今のところは……まだ憶測にしか過ぎませんが現地住民はあくまで排他的なだけで疑うに値する要素は皆無でした。仮に彼らが海老を止めていたとしても海老を独占できる以外の利は皆無ですしね、海老自体の単価はブラックマーケットでもたかが知れたものですし。となると疑うべきは」

『レッド・フック・エキスプレス……?』

「ええ、とはいえいきなり訪問、というのも怪しまれるでしょう。もう2日ほどはただの観光客のフリ……をしたいところだったのですが……まあはい」

『……うん、お疲れ様……帰ったら休みとっていいよ……』

「先生がちゃんと書類仕事を終わらせられるなら、という枕詞が付きますが……3日ほど取らせてもらいましょう』

 

これも真っ赤な嘘。代表がペラペラ喋ってくれたおかげで証言による証拠はバッチリ、後はどうにかして密輸船を抑えられれば晴れて確保、というわけである。

 

(もうドヴェルグなのは先生にはバレてますし素直に言ってしまったほうがよかったのでは?)

 

言ったら言ったであいつのことだから色々と面倒になるのが目に見えてるので嫌なんですよ……使えるものはなんでも使えの精神ですがそれはそれとして事は穏便に済ませたいので。

 

(都合の悪いことは隠そうとする小学生ですか貴方は……何かの拍子で全部バレたとしても擁護はしませんよ)

 

グラニがうっかり口を滑らせない限りはそんなこと起こりえないのでご安心をシロ。

 

(はあ……なんというか、最近はもう一人の私というより手のかかる妹を見ている気分です……)

 

妹とはなんですか妹とは。妹に全部丸投げして2年間爆睡してた姉が何処にいるんです。おまけに色々丸投げして1回勝手に消えてますし……

 

(うぐっ……わかりました、この話は終わりです、終わり!)

 

はあぁ……これだからシロは……

 

『ユキ……ユキ?聞こえてる?』

「……あぁすいません、ちょっと眠気が」

『今夜は早めに寝たら?明日にも差し支えそうだし』

「ご冗談を、後輩たちが何をしでかすかわからない以上有事に備えて待機してますよ……前科もないわけではないですし」

『あぁ……ねえユキ、今更だけどやっぱり私が行った方が良かったんじゃ』

「終わらせるべき書類が終わっているならば検討していました。で、そっちの進捗はどうなんですか?えぇ?」

『……リンちゃんに今月2回目の呼び出しを受けました……』

「でしょうね、そういう訳でこっちのことはこっちで終わらせます、ご安心を。先生はさっさと雷が落ちる前に終わらせるべきことを終わらせてください……ああいえ、雷は既に落ちた後でしたか」

『このままじゃ焼け野原になりそう……』

「だったらそうならないように上手いことやりくりしてください、では切りますよ」

 

先生を早く残業させるべく通話を切り、旅館の布団に寝転んで今後どうすべきかを考える。後輩共がやらかすかやらかさないかで言えば間違いなくやらかすだろうし、規模にもよるが事後処理で今日は眠れなそうだ。つまりは……

 

「今のうちに仮眠を取るのが最優先ですね」

 

(どうしてそうなるんですか!?)

 

「睡眠不足はパフォーマンスに直結します。流石に私でも寝不足の状態で後輩共4人を制圧できる実力はありませんし、有事に対応できない可能性だってあります」

 

(だからといってなにもしないというのは……)

 

「何の備えもないわけないでしょう……グラニ」

『マスター、どうしました?』

「ミズガルズのドローンを飛ばしてください。場所は……後輩達を追跡するように」

『了解、追跡モードで偵察用ドローンを起動、バッテリー残量は残り約12時間。有事の際はお伝えします』

「……あってよかった偵察ドローン、という訳です。沿岸部の撮影に使う予定だったのですがまさか後輩共の監視に使うことになるとは……彼女らのことを悪い意味で甘く見ていました」

 

(……バレたら余計事が拗れません?)

 

「……その時はその時です。ミユ以外にバレることはないと思いますが……最悪レッド・フック・エキスプレスの所為にでもしましょう」

 

(カイザーの時と言い冤罪で余罪を増やすのが好きですね貴方は)

 

「責任転嫁が得意、とでも言ってもらいましょうか」

 

(誇るべきことじゃありませんよそれ)

 

「知ってます。でもこうした方が1番穏便に済むので」

 

(……はぁぁ、クロの将来が心配ですよ……)

 

「だから姉面しないでください……そういう訳で、おやすみなさい」

 

ドローンの制御はグラニに任せ、この蒸し暑さなので毛布は掛けずそのまま瞳を閉じる。願わくばこのまま朝になって欲しいものだが……あの後輩共のことだ、どうせ厄介ごとが起きるんだろうなぁ……

 

(分かりきってるならさっさと寝てください。寝不足どうこう言ったのは貴方ですよクロ?)

 

そんなシロの言葉に返答する間も無く、私の意識は微睡の向こうに一時的に沈んだのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…スター……マスター……』

「んむ……」

 

 恐らくは深夜、案の定というのだろう、グラニの電子音声を合図に目を覚ます。

 

『現在時刻は3:45です、お目覚めですか、マスター』

「丑三つ時を少し過ぎて早朝ですか、で、何がありましたか?」

 

どうせ碌な報告じゃあないだろうが、覚悟を決めて端末の前に胡座を描いて座り込む。

 

『悪い報告が3つ』

「よく3つで済みましたね」

『不幸中の幸いとでも言いましょうか。まず一つ目、RABBIT小隊の再調査について。やはりというべきか……裏付けのない客観的証拠ばかりです』

「まあ想定内です、問題はそれを元に暴走しないかですが……」

『二つ目、3:30頃……偵察用ドローンがRABBIT4、霞沢ミユに感知され、撃墜されました……幸いカメラ部分のみの損傷であるため応急処置は可能です』

「……一応想定内です。寧ろ全損するものだと思って居たので割と嬉しい誤算ですね、はは」

(声が死んでますよ、クロ)

「だまらっしゃいシロ!」

『シロ……?私はグラニですが……』

「ああいえこっちの話です。……ひとまず3つ目を」

『……了解しました。では、3つ目ですが……』

 

『撃墜されたドローンの指向性マイクからの情報です、3:47現在八戸浦村現地住民とRABBIT小隊が一触即発の状況……いえ、音声から見るに既に交戦を開始した模様ですね』

「……」

 

なるほど、どうやらこれは白昼夢らしい。いくらなんでも調査に来たくせに現地住民とドンパチやり始めるSRT生なんて実在するはずがないもんな、な!

 

『マスター、マスター。流れるように二度寝の姿勢に入らないでください。これは夢ではありません、現実です。今からモスキート音を流しても良いのですよ』

「なんでピンポイントに良い感じで不愉快な音声データを所有しているんですかねぇ!?」

『尋問用にマスターがインストールしました』

「そういえばそんなこともありましたね畜生!」

 

どうやらシャーレ部員には現実逃避というものは許されないらしい。はあぁ、どうしよう、これ……いや、やるべきことは1つではあるんだが。

 

『今のところ損害は軽微です。今のうちに現場に突入、事態の収束を測るべきかと』

「同意見です。グラニ、ミズガルズは」

『すでに旅館前の道路で停車済みです。マスターが搭乗次第目標地点まで急行できます』

「了解、すぐに行きましょう。装備は……時間が惜しいですね、このままでいいでしょう」

『マスター、その浴衣は旅館の衣装ですよ?万が一破損した場合には……』

「金ならあるので弁償は幾らでもします、行きますよグラニ!一応ヴァルキューレに連絡も!」

『……イエス、マイマスター』

 

(……本当に大丈夫なんですか?)

 

今は時間が惜しいんです、後輩共が2度目の前科持ちになる前に止めなきゃ色々とまずいんですよ、主に世話役を任されてるシャーレの信用が!

 

(……やっぱり素直じゃないですねぇクロは)

 

だまらっしゃい!兎に角善は急げって奴です!

 

最低限の身支度を整えて部屋を飛び出し、勢いのまま旅館をドタバタ駆け降りて外へ。

待機していたミズガルズに飛び乗り、流れ作業でいつものARを引き抜き発進、手遅れになる前に間に合えと若干祈りながら私は現場へと急行した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 現在時刻3:55、グラニの提示した目標地点はもうすぐ。道中念の為指向性マイクをグラニ経由で聞いて見れば明らかに現地住民を敵と判断した後輩共が躊躇なくドンパチやっているのが聞こえてきて私はオート操縦中のミズガルズで頭を抱えていた。

 

「あぁぁぁぁ胃が痛い……先生はともかく前の公安局長の気持ちが今ならわかる気がします……途轍もなく……」

(まぁホムラ先輩の巻き添えとはいえ当時はとんだ暴れ馬でしたからねぇ私)

「誇ることじゃない!ええと今あっちはどうなってるんだ……!?」

『……HE弾……空中……炸裂……』

「は?」

 

おいちょっと待て、聞き間違いじゃなければ今ミヤコの奴HE弾って言ったよな?あれを?漁港付近で?近くに漁船も停泊してるだろうに?

……正気か?

 

(明らかに正気じゃないに決まってるでしょう、しっかり止めてくださいよクロ!)

『目標地点到達まであと10秒』

「ああっくそこうなったらもうヤケです!」

 

ミズガルズを手動操縦に切り替えてアクセル全開、どうにか後輩共と現地住民の間に割り込むように急加速して。

 

「指定座標は……」

 

「なぁぁぁぁぁぁにをやってるんですか貴方達はぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

「この声は……」

「……先輩?」

 

どうにかHE弾投下直前に滑り込みセーフと言った所だろうか。敢えて現地住民に背を向ける形でミズガルズを停め、銃と圧をこめた睨みを後輩達に向ける。

 

「はぁ……また朝からトラブルですか?懲りない人達ですね……」

 

……ちょうどいいタイミングでヴァルキューレも到着したようだ。今のうちに事態を収束させてしまおう。

 

「ひとまず貴方達は武器を仕舞いなさい、従わなければ実力行使に出ます……で、すみません。これはどういう状況ですか?」

 

マイクが拾った音声から大方何があったかは理解しているが、とりあえずさも偶然来ました〜、なんて雰囲気を出しながら現地住民の纏め役的人に声をかける。後輩共も睨みの影響か大人しく銃をしまってくれたようだ。

 

「どういうって……見りゃわかるだろ。そこの奴らが人様の調理場に忍び込んで魚を盗もうとしてたから応戦した、それだけじゃよ」

「調理場……?腐敗した魚を並べてるコレの何処が調理場なんだ!?」

「サキ、話が拗れるので少し黙っててください……っておや、これは……」

「じゃから、これは腐った魚ではなく……!」

 

硝煙の匂いが薄れ、漂ってきた形容し難い魚の香り、これは……

 

「……くさやとはまた珍しいものを」

「くさ、や?」

「……ほう、知ってるのか、お嬢さん」

「一時期先輩がハマってた時期がありまして、それに付き合わされたことが……」

(あぁ、ありましたねそんな時期……)

 

 

 先輩、入りますよ……っ、な、なんですか、この匂いは……

 おーユキ、丁度いいところに。これこの前の事件の礼で貰ったくさやっていう干物なんだけどさ、せっかくだから食べてみようと思って。

 いやいやいやいや食べれるんですかその物体X!?食べ物の匂いじゃないんですけど!?

 くれたお婆ちゃんが食えるって言ってたんだから食えるだろ。ほら、今から焼くぞ。

 此処でですか!?匂い籠って大変なことになりますよ!?

 

 

(……結局大惨事になって局長に絞られたのはいい思い出です)

 

せめて止める努力はしましょうよシロ……って今はそういう思い出話をしてる場合じゃなかった。

 

「……はあぁ、何を勘違いしてたんですか貴方達は」

「で、でも先輩!怪しい点はまだあるぞ!?」

「一応聞きはしましょう……本当に申し訳ございません、この子達刑事ドラマの見過ぎで……」

「……お嬢さんも苦労してるんだな」

「何か被害等があればこちらで弁償しますのでどうか今回の件については一旦目を逸らしていただきたく……」

「……幸いにも船や器具には被害は出とらん、心配することはないわ」

「ありがとうございます……さて、改めて怪しい点とやらを聞きましょうか、サキ?」

 

それっぽいことをでっちあげて元SRT生であることをどうにか隠蔽しつつ、サキの言う「怪しい点」とやらの聞きに徹する……まあ結果的に偶然耳にした証言を勘違いして怪しい、と決めつけてしまっていたようで大体は村の些細なトラブルについてだった。ファクトチェックくらいしろっての全く……

住民の不信感もどうにか頭を下げて敵対から若干不信くらいにまで取り持ち、なんとか事後処理は上手く行った。

 

「……全く、貴方達は報連相というものを知らないのですか?SRTの任務とは部隊単独で完結するものではないのですよ?」

「申し訳ありません先輩……調査を続けるうちに冷静さを見失ってしまって……」

「反省ができているならよろしい。本来であれば始末書物ですが今回は村の皆さんの温情に免じて不問としましょう……まあ今までメンタルケアも碌にできていなかったでしょうし、些細というには大きすぎますが今回のようなミスをしでかすのもある意味仕方ないのかもしれませんね」

「メンタル……?」

「ええ、SRTの任務は常に危険と隣合わせです。かつて私が先輩とJACKALの皆を失ったように。だからSRTには専属のカウンセラーも居たのですが……貴方達は多分お世話になったこともないでしょうし、メンタルケアの重要性をそこまで理解できていなかったのでしょう」

「……」

 

……おっとホムラ先輩達の話をしたら皆黙ってしまった。この雰囲気で話すことじゃなかったか。

 

(内容に合ってはいますが……いかんせん内容が重いですから)

 

……そうですね、私達の中では割り切った事とはいえ彼女たちからすれば私が狂った原因ですもの、あの事件は。

 

「……まあ捜査を続けるにしろ、断念するにしろ、今の貴方達では真実には辿り着けないでしょう。という訳でシャーレ部長としてRABBIT小隊に指令を通達します」

「指令……」

 

「明日1日は本件に関する一切の捜査を禁ずるものとし、各々自由に過ごすこと」

「……あの先輩、それってどういうことですか?」

「まあ回りくどい言い回しをやめて言えば……」

 

 

「海水浴なり海釣りなりでリフレッシュしろってことです、後輩共」

 

「「「「……了解!」」」」

 

「よろしい」

 

……まあそれとは別に勝手に動くな馬鹿野郎という意味もあるのだが、これは言わないでおこう。




書いてて多分冬コミ辺りでぐへへされるユキの本とかありそうだなぁって思ってました。

何とは言いませんが

  • 先生(男)
  • 先生(男)、ミヤコ
  • 先生(女)
  • 先生(女)、ミヤコ
  • ミヤコ
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