「クリスマスパーティーをシャーレで、と」
「うん、ユキも帰ってきた事だし折角だからさ」
「ええまあ、それ自体は特に異論はありません、仕事も何故か終わっているようですし」
「仕事が終わっていないのが正常みたいな言い方やめない?」
「実際正常な平常運転なのでやめません、さて本題ですが……」
「
「やっぱり各々でパーティーやるみたいでさ、無論あっちこっち誘われたけど一応私たちはRABBIT小隊の身元保証人みたいな立場じゃん」
「まあそうですね」
「だからパーティーするならあの子達とかなって断ってきた」
「納得はしました、後が怖いですが……」
「なんで!?」
「自分の胸に聞いてみてくださいこの天然人たらし」
「そこまで言う!?」
「言いますとも……さて、そういうことなら今のうちに準備をしましょうか。少し買い出しに行ってきます」
「あ、行ってらっしゃい。私は行かなくていいの?」
「今日はまだ勤務時間ですよ?緊急の仕事が入ったらどうするんですか」
「……それは……確かに……」
「残業に追われたくないなら対応の準備をしておくように。ラミニタウンまで行くので3時間程で戻ります」
世間はすっかりクリスマス。かくいうシャーレでも後輩共を招待してクリスマスパーティーをするらしく、私は1人食材の買い出しに出ることにした。あいつが緊急の仕事に対応できるかは少し心配だがあれだけうるさく言ったのだ、多分なんとかなるだろう。
「……さて、チキンとサーモンはどっちにしますかね」
(どちらもという選択肢もありますよ)
「後片付け的な観点で言えばサーモンですが……まあせっかくのクリスマスです、両方というのも……ん?」
シロと呑気にメインの食材について話しながら駐車場に出ようとすれば見知った人影。
「珍しいですね先輩、こんな時間に外出なんて」
「クリスマス用の買い出しです、貴方こそ1人でシャーレに来るとは珍しいですねミヤコ」
「廃棄弁当を貰いに来ただけなのですが……買い出し?」
「ええ、よかったら同行します?貴方達が何を食べたいかとかも聞いておきたいですし」
RABBIT小隊の1人、ミヤコ。こんな寒い日にわざわざ徒歩で廃棄弁当を貰いにくるとは大したものである。
「……じゃあせっかくなので、話したい事もありますし」
「なら行きましょうか、どうぞ」
ヘルメットを渡し、ミヤコを背に乗せてミズガルズに搭乗。
『マイマスター、今日は何処へ……おや、珍しいですね、2人乗り』
「ラミニタウンまで、ナビゲーションを頼みますよグラニ」
『了解しました』
エンジンを噴かし、ラミニタウンへ向けて発進。
「さて、話とはなんですかミヤコ?」
「……多分先輩にしか話せないことです」
「ふむ……」
私にしか話せないこと……なんだろうな。
「成程、やはりあの人は相当罪な人のようで。これでもう何人目ですかね……」
「……やっぱりそうなんですね」
「そういう事です。早めにアプローチするのは悪くないとは思いますよ」
ミヤコの言う私にしか話せないこと……まあ薄々想定はしていたが、先生についてだった。聞くにどうもミヤコは先生に相当お熱なようだ、それもlikeではなくloveの方向で。あのツンツンしてた後輩共がよくも此処までデレッデレになったものだ、あいつからは何か変なフェロモンでも出ているのか?
(人の事言えないんじゃないですかクロ?)
私は……うーん、なんなんだろうな。
「……その、先輩」
「なんです」
「先輩は、その、先生にそういう感情はないんですか?随分と冷静な様子ですけど……」
(ほら、言われてますよクロ)
煩いですよシロ。
「……あーその、どう言えばいいんでしょうね……私の先生への感情はそういう恋愛方面よりは「手間のかかる上司」です」
「上司……?」
「ええ、書類はミスする引き継ぎはしない独断専行当たり前勝手に仕事を増やして出張すれば必ずトラブルに巻き込まれ結局仕事の大半は私が……」
「……恨み言が凄いですね」
「当然でしょうこれまで何回私があの人のせいで残業する事になったと思ってるんですか……まあこうやって悪い事ばかり羅列しましたけど、決して嫌いというわけではありません」
「知ってます」
「でしょうね。そもそもあの人が嫌いだったら今も部長なんてやってませんし、シャーレを居心地の良い場所だとも思えてません」
これは本音だ。あの何処までいっても手間のかかる天性の巻き込まれ体質に頭を抱えながら日々の業務をこなすあの時間が……どうにも愛おしい、理解され難いとは思っているが。
「とはいえ恋愛的な意味で好きかと言われればノー、私とあの人はあくまで職場の上司と部下の関係です。立場が逆転しているのは否めませんがそれ以上にもそれ以下にもなることはないでしょう……少なくとも現状は」
「何かのきっかけで先輩が先生を好きになるかもってことですか?」
「いえ、想定しているのは先生が私に対してそういう感情を抱いていた場合です……ないとは思いますが」
「……」
「なんですかミヤコ、その無言の間は」
「いえ、2人揃って朴念仁なんだなって」
「何がですか」
あいつの同類扱いは勘弁願うぞ。
「だって2人とも自分の抱えている思いには素直なのに他人から向けられる感情には鈍感にも程があります。だからこそ相性が良いと言われたら否定できませんけど」
「……つまりミヤコは先生が私を好き、と言いたいわけですか?」
まさか、あってlikeだろ。
(……)
なんでそっちも黙るんですかシロ。
「そういう可能性もあると言う仮定の話です。……先生に告白した時、先輩をダシに逃げられたらイヤですから」
「そうなったら私が先生をしばきましょう」
「……止めないんですね、告白」
「むしろ私としては何処かの鞘に収まって欲しいと思っているんですよ、このままだと変なトラブルに発展しかねませんし……」
「そうですか……じゃあ先輩。クリスマスパーティー、良いところで私と先生の2人っきりにすることってできますか?」
「望むのならば。先生次第ではありますがね」
「……ありがとうございます」
「利害の一致というやつです……話しすぎましたね、そろそろラミニタウンです。荷物持ちをしろとはいいませんが食材の吟味は手伝ってくださいね?」
「勿論です、私の味覚を舐めないでもらえますか先輩」
「あんまり期待はできませんがね……」
告白あれこれは一旦置いておこう、今はクリスマスの準備だ。
「それじゃあ……」
「「「「「「メリークリスマス!!!」」」」」」
「お、おお……なあ先輩、こんな巨大な七面鳥、本当に食べていいのか?」
「私が作ったものです、構いませんよ」
「すっごい本格的な料理ばっかり……お、ローストビーフもらい」
「それも私が作りました」
「じ、じゃあ私はサーモンを……」
「夜戸浦村から送られてきたものです、イクラも別途ありますのでどうぞ」
「……先輩、もしかしてなんですが」
「どうしましたミヤコ?」
「……もしかしてこの料理、全部先輩が?」
「8割は」
「昨日キッチンに籠ってたのはそういうことだったんだ……」
「逆になんだと思ってたんですか貴方は」
「……こんな手の込んだ料理もできるんですね、先輩」
「やってみたらできました」
「そんなそこに山があるからみたいな……」
……クリスマスイヴ、夜。予定通りシャーレでは後輩共を招いてクリスマスパーティーが行われていた。料理はもうラミニタウンで完成品を調達する手もあったがやってみたら案外できたので私がほぼ作った。どうも私は何かを作る事に対しては天性の才があるらしい。
(私もそんなものでしたし多分神秘とやらの影響なんでしょうね)
神秘とか恐怖とかいまだによくわからないがまあ多分そういうことなんだろう……ん、この匂いは……
「先生、開けたんですか、ワイン」
「た、たまにはいいかなって」
「はあぁ……まあたまにはいいでしょう、けど酔い潰れないでくださいよ?主に私が面倒です」
「私以外と酒強いから大丈夫だって」
「貴方の大丈夫が大丈夫だった試しは数えるほどしかありません」
「手厳しいなぁ……」
さて何杯でダメになるかな。
(酔い潰れるのは確定事項なんですね……)
いいことを教えましょうシロ、あいつは調子に乗っている時必ずやらかします。
「ああ、貴方達は当然ダメですよ?飲酒。ノンアルコールのスパークリングで我慢してください」
「我慢って……これ普通に美味しいから私は別にいいぞ?」
「でもなーんか足りない感じが「変なものいれるなよモエ」えー、なんでさ」
「……」
「……心中お察しします、先輩」
……先生の提案は正解だったようだ。誘ってなかったら今頃彼女達はどんなものを口にしてたのやら……
「……まあ現状特に問題もないようですし、私も素直に楽しむとしますか」
せっかくのクリスマスだ、不機嫌そうな顔をしてては他の皆が楽しめないだろう。
……とりあえずあいつが酔い潰れるまでは笑顔でいよう。
「……さて、何杯目ですか先生?」
「んぅ……7、いや8……?」
「ダメですね、ちょっと寝かせてきます」
「行ってらっしゃい先輩。もしかしてあんなことやこんなこと……」
「するわけないでしょう……ミヤコ、ちょっと手伝ってください。2人で担ぎますよ」
「先輩1人で充分で……いや、そういうことですか、わかりました」
案の定先生は酔い潰れた。そうなるだろうなとは思っていた分手際も早い、私はミヤコと共にこいつを寝かせることにした。
「……最初からこれが狙いだったんです?」
「全部という訳ではありませんが……まあちょうどいいだろうとは思ってました。酔いが覚めてからにはなるでしょうが」
「ありがとうございます……でも、本当にいいんですか?」
「この人はいっつも仕事塗れですからね……こうして生徒と2人っきり、な状況になれる日は限られます」
「んぅ……何処、行くの……?」
「まあ今はこのザマですので酔いが覚めた時にどうぞ……と、着きましたよせんせい、とりあえず横になってください」
「あ……ありがと……」
べろんべろんになった先生をベッドに寝かせ、ミヤコにアイコンタクトで待機を合図。酔いが覚めて目覚めたところでゴー、という訳だ。料理の方はあらかた食べ尽くされてるし腹拵えは大丈夫だろう。
「それじゃあ私は後片付けに行ってきますので……」
お膳立ては整えた。後は2人ごゆっく……
「待って……」
「ん?」
り……なんだ、急に手を掴んで。
「行かないで……ユキ……」
「……なんですか急に、片付けをしてくるだけですよ」
「……やっぱり」
部屋を出ようとしたのだが、急に手を握られた。それとミヤコ、やっぱりってなんだ?
「……ユキには……行ってほしく、ない……」
「酒の所為で語彙が乏しくなってますよ、片付けに行ってほしくないってことですか?」
「……先輩、先生は多分……」
「ミヤコ?」
「……もう、私の手の届く場所以外に、行ってほしく、ない……」
「……」
……ああ、成程。
酒の影響だろう、無意識に本音を垂れ流しているようだ……そうか、私が消えたことがそこまでトラウマになっていたのか、お前は。
「……先生、もう私は勝手に消えたりしませんよ、手間のかかる貴方と、同じくらい手間のかかる後輩達が何をするかわかりませんから……だからこの手を離してください」
「やだ」
「やだじゃありませんよ、ほら、ミヤコも……ミヤコ?」
気づけばミヤコもベッドに寄ってきていた、待機って指示した筈なんだが……
「先輩、少しだけ先生の我儘に付き合ってくれませんか?」
「……理由は?」
「……先生は貴方が調印式の一件で失踪してから少しの間、屍が動いているような状態だったんです。それくらい先生の中で先輩は大きな存在だったということ」
「……」
それほど、か。当時は生徒1人、そこまでだろうと考えていたが……随分と愚行だったようだ、ほんと。
「……やっぱり私は先生の特別にはなれないみたいですね、ちょっと悔しいです」
「ミヤコ……?」
「……恋愛的な意味とは、違うと思いますが」
「先生のことだからきっとそうです……だから、我儘を一つ言ってもいいですか?」
「我儘……」
……何を言うつもりなんだろう。
「……先生、私は貴方が好きです。likeでも、Loveでも」
「……」
「けど先生の特別はユキ先輩です……でも、この思いを秘めたままにしておくことなんて、私には……できません」
「ミヤコ……」
「今日、今日一日だけでいいんです……私も、私も先生が好きだっていう証明を、させてください……」
「それは……」
……本来なら戒めるべきなのだろう、それを。
「……ごめんね、ミヤコ……」
「謝らななくていいんです、先生……謝るのは私の方なんですから」
部屋に漂うアルコールの香りの所為もあるのだろうか、止めることができなかった。
「……今日、だけだよ、2人とも」
「先生……」
「……はあぁ……2人?」
気づけば先生が私の腕を握る力が強くなっている。
「先輩……」
「ユキ……」
……シロ、ちょっと寝ててください。
(……何も見てないし聞かなかった、そういう事にしておきます)
「……私の我儘、付き合ってもらえますか?」
「……今日だけ、ですよ」
休憩室にロックをかけ、ミヤコと共に先生の横たわるベッドへ座る。
「……2人とも、本当に、いいの?」
「はい……」
……メンタルケア、という名目にしておこう。
「……ミヤコの思い、受け止めてあげてください」
「じゃあユキも……私の……」
「……夢にはしませんよ、それは安心してください」
一夜の過ち、ではない。これは過去の……そして私達2人のこれまでの精算。
監視カメラのないこの部屋で何が起きたかは……私達3人だけの秘密にしておこう。
(これRでじゅうはちなのも書いた方がいいんだろうか……)
何とは言いませんが
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先生(男)
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先生(男)、ミヤコ
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先生(女)
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先生(女)、ミヤコ
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ミヤコ