「……ふむ」
あの後対策委員会とやらは無事に前哨基地の制圧、及びヘルメット団を退却させることに成功したらしい。日が暮れた頃に先生から電話がかかってきたので「日中はって言いましたよね今明らかに日が暮れてますよね?」と説教したのはついさっきのことだ。まあタイミングがよかったのも事実でそのまま前哨基地に残っている兵器の画像を要求しておいたのが32分前、残念なことに大体は制圧時に破壊してしまったらしくあまり手がかりと言える手がかりは入手できなかったが辛うじて残っていた拳銃の画像が送られてきたのが5分前。それからの5分間はずっとその画像を自宅で解析中……というのが現在の状況だ。
「この型番は……確か7年前に絶版になった相当古い型だな。マニア向けの需要が高くて一般流通はまずしてなかったはずだが……」
『オークションにかければ最低でも150は下らない代物ですね、やはりヘルメット団程度が入手できる物ではありません』
間違いなくカタカタヘルメット団とやらのバックには何かが付いている。……しかしこれはコレクション需要が高いだけで特に性能が良い訳でもないごく普通の拳銃だ。わざわざこんなものを支給して……いや待て、確かこれが絶版になった理由は売上不振による製造ラインの停止。大量の不良在庫は会社がそのまま抱えて負債になっていた……つまり提供しようと思えば無駄に数だけはある銃ってことだ。その提供がないから高騰しているわけだが、となると……
「グラニ、販売会社の系列を調べてくれ、私は流通ルートを探る」
『かしこまりました、2分で終わらせます』
すぐに終わる企業の確認はグラニに任せ、ここ最近の拳銃の出品、出荷記録を漁る。……うん、やっぱり闇オークションで出品された偽造品や超高額で現在も落札がないボッタくり価格の販売しかない。となると残った可能性は……
『照合完了しました。大方予想通りだと思いますが、カイザーコーポレーション傘下の企業です』
「だろうな。あいつらのやりそうなことだ」
しっかりと市場価格は落とさないように流通は最低限に抑えつつ、こっそり不良集団に武器の貸与という名目の在庫処分をさせて恩を売る。利益しか見てないカスどもがいかにもやりそうなことだ。申し訳程度に最新鋭の兵器も多少は使わせているだろうが、恐らくは支援という名の在庫処分が大半だろう。……体の良い捨て駒だな。
『いかがしましょうか、マイマスター。スキャンダルとしてリークすることもできますが』
「証拠が足りない。この拳銃だけなら販売企業を切り捨てて証拠隠蔽を図る筈だ……もう少し先生に探りを入れてもらうとしよう」
生憎武器商人ドヴェルグとしてもシャーレ部員鞘野ユキとしてもこれを追求するには立場が不自然だ。最悪ドヴェルグとシャーレがグルだと思われかねん……そうなればシャーレはともかく、私の仕事のほうに支障が出る、流石にそんなリスクを冒してまで自分で探りに行く利はない。……アビドスを落とすことが目的ならヘルメット団は間違いなくこのままでは終わらない筈、そうなった時に回収を頼もう。
「……にしても妙だな」
『というと』
「わざわざあのカイザーが暴力団に武器を貸与してまでアビドスを落とそうとしていることだ」
『ヘルメット団から協力を取り付けた可能性もあり得ますが』
「それはないだろう、あんな不毛の地を襲撃するくらいならもっと割の良い仕事なんかざらにある。なのにわざわざアビドスに拘るということは……あいつらのことだ、何か企んでいる筈」
……だめだ、全く関連性が見えてこない。奴らがアビドスに拘る理由はなんだ?生徒数があれだけの自治区は確かに落としやすいだろうが、落としたところで砂嵐のせいでほぼほぼ砂漠と化した不毛の地を手に入れることに何の意味が……?
……まったくわからん。やっぱり先生に探らせてから考えたほうがいいな……明日連絡ついでに頼んでおこう。
「今日はここまでだ、グラニ。……ああそうだ、私が寝た後でいいから部品の発注先への振り込みを頼む」
『了解しました、おやすみなさい』
眠気覚ましに淹れていたコーヒーを飲み干し、今日は眠気が来るまで商品の手入れをすることにした。……思えばこの数日、シャーレの仕事が忙しくてまともに時間が取れなかったからな……昔に戻ったみたいだ。
……いや、何を考えてるんだ私は、そんなことどうでもいいだろ。はあ……
「……そういうわけで、あの拳銃は本来流通が限られているマニア向け商品です。詳しいことはまだ調べていますが、少なくともそこらの不良集団が気軽に手に入れることができる代物ではありません」
『誰かが裏にいる……ってこと?』
「恐らくは。ただ物証が現在あれ1つである以上これ以上の捜索は厳しいです。もう少し証拠があれば裏に潜む何かに近づけそうですが……」
『うへ~、だいぶ面倒な話になってきたねぇ』
『あいつら雇われだったってこと!?一体何のために……あっすいません店長!すぐ戻ります!』
「……ところで先生」
『どうしたのユキ?』
「何をどうしたらこんな大事な報告をラーメン屋で聞くことになるのか、私には全く見当がつかないのですが」
『いやぁこれには深い事情が……』
「どこに深い事情があるんですか昼飯のついで感覚で報告を聞かないでください、というか対策委員会の皆さんもこんなんでいいんですか!?」
『いやぁ、まあちょっと先生の言う通り深い事情がね……』
『セリカちゃんを追っていたらこんなことに……』
「どういうことなんですか……」
意味が分からない、先輩を追っていたら何をどうしてラーメン屋で昼飯を食べることになってそのまま報告を聞くことになるんだ。どう考えても休憩にしか見えないんだが。
『……はーい、味噌ラーメンと特製味噌ラーメンお待ちぃ……』
「テンション低いよ、セリカ。ほら、笑って」
『こんな授業参観みたいな状況で笑えるかーっ!』
……ああなるほど、バイト中なのね。いやそれにしたって昼飯ついでに報告を聞くのはだいぶおかしいだろ。盗み聞きの可能性とか考えとけよ漏れたら隠蔽されかねないんだぞこれ。
「はあ……ともかく、何か証拠になりそうな物を確認したらしっかり保管したうえで私に連絡を。武器の型番なら全てわかりますし、最悪現地に赴いて解体もできますので」
『うん、頼りにしてる』
『全部わかるって……マニアって感じには全くみえないんだけど……』
『いんやぁ、意外と隠れオタクかもしれないよ~?』
失礼な、私には銃を愛でる趣味はないぞ。
「……SRTでは部隊の整備担当でしたので、その影響です」
『……帰ってきたらSRTの話、ちゃんと聞かせてね』
「まだ諦めてなかったんですか……はあ、考えてはおきます、それでは」
『うん、また連絡するね』
「ちゃんと証拠を押さえた上で頼みますよ……はあ」
……なんかどっと疲れた。なんだろうな、先生一人ならともかくあのピンク髪(確かホシノと言ったか)までいるとこちらのペースがかなり乱される。私の苦手なタイプだ。しかしこんな平日の真昼間にアルバイトとは……アビドスはそこまで資金難なのか?次の連絡の時に確認してみるか……そろそろこちらも昼休憩を取るか、目の前でラーメンを見せつけられたせいで妙におなかが空いた。いっそ今日はラミニタウンまで外食に……
……
「はい、こちら連邦捜査部シャーレ」
『先生の出張中お疲れ様ですユキさん。連邦生徒会長代行のリンです。急用で申し訳ないのですが先日先生が提出した資料及び請求書の数字記入が全てアラビア数字になっていまして……』
「……わかりました、今から資料を受け取りに連邦生徒会室まで向かいますので、お待ちください」
『……その様子だとまだ昼食を取ってないようですね。本日午後の予定は空いているので取ってきてから向かってもらっても大丈夫ですよ』
「ご配慮感謝いたします……では、13:35を目安にそちらに向かいますので。……」
あんのアホンダラ、資料まともにできてないじゃないか!!!!!!!!!!やっぱりシャーレに残っておいて正解だったな……はぁ。
……つ、疲れた……全てとは言ったけど数枚程度だろうと見積もってたら余裕で書類の束が出てきた時は流石に頭を抱えたぞ……帰ってきたらまず説教だなこれは……
シャーレに戻るころにはすっかり日が暮れてしまった。時間的に飲食店もラストオーダーが終わり始めているだろうしこれは……ん?
「はい、こちら連邦捜査部シャーレ。本日の営業時間は終r」
『ごめんユキ!緊急事態!』
「急に大声を出さないでください先生、それで何の用ですか」
『セリカがヘルメット団に攫われた。場所は特定したんだけど……念のためにサポート、お願いできるかな?』
「……なるほど、確かに緊急事態ですね、わかりました。状況を把握したいのでまずは位置情報の共有をお願いします」
『あー、いや、その……』
「なんですか歯切れの悪い。変な場所に居るとかじゃないですよね?」
『情報元が連邦生徒会のセントラルネットワークだから、なるべく内密にお願い、ね?』
「今すぐリン会長代行に報告して始末書を書かせてあげましょうか?」
そもそもバレたらまずいって話ならシャーレの固定電話にかけてくるなこのバカ!!!!!!!!!!
思った以上に感想と評価がモチベに影響するので感想乞食になってしまいそう
番外編、いります?
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いる
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いらない
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コラボとかしろ