Rusted Dáinsleif   作:暁真

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狂気の更新ペースを維持できてる不思議


ユキとヘルメット団

 

『……なるほど、大体把握しました。要するにセリカさんは例のカタカタヘルメット団の本拠地真っただ中と』

「うん、そうみたい」

 

 あの後しこたまユキに怒られたけど、なんとか始末書は回避して彼女の協力を取り付けることができた。また夜に連絡してしまったことについてはそこそこ小言を言われたけど『まあ非常事態ですので』ということで納得してくれた……聞けば今日は私が提出した書類の修正作業をやっていたようで、本当に頭が上がらない。

 

『……それで、いつ仕掛けるんですか?早めにやらないと人質に使われますよ』

「勿論迅速に、明日の明朝に仕掛ける予定」

『わかりました、では私は……いや、そうですね』

「どうしたのユキ?」

 

ユキには戦術支援をお願いする予定なのだが、それを頼む前に彼女は少し考えこむ素振りを見せた。何か気になることでもあったのだろうか?

 

『恐らくセリカさんの救出後にはヘルメット団の本隊と接敵する可能性が高いですね?』

「うん、多分隠密に……とはいかないかも」

『当たり前です。隠密にやるなら今から行ってください。……それで、今私はカタカタヘルメット団に武器を貸与している誰かさんを追っているわけです』

「うん」

『本隊を襲撃させれば回収した武器の照合も簡単ですよね』

「うん?」

 

えちょっと待って、まさかとは思うけど……

 

『私も出ます。明日の5:30に現地で合流しましょう』

「待って!?それ大丈夫なの!?」

『大丈夫とは?』

「シャーレの仕事とか、ユキの睡眠時間とか……!」

 

ただでさえ出張中のシャーレの仕事を押し付けてしまってる上に、そんな時間に来るとなれば本当に彼女は徹夜だ。無理をさせるわけにはいかない。

 

『シャーレの業務に関しては明日はユウカさんに任せています。睡眠時間に関しては連邦生徒会の仮眠室をありがたく使わせてもらったので平気かと』

「うわぁ、見事な社畜根性」

「本当に大丈夫なんですか……?」

『アビドスの皆さんは私の心配よりまずはセリカさんの心配をするべきです。それでは準備があるので一旦これで』

「まって……あっ……」

 

口をはさむ暇もなく淡々と通信は切れてしまった。……どうしよう、過労で倒れたりしないだろうか、大丈夫かなぁ……

 

「アロナ……」

『どうかしましたか?先生』

「ユキをなんとかして休ませてあげれないかな……?」

『うーん……今ユキさんは先生が本来行うべき業務をほぼ代わりにやってくれていますから……少なくとも先生がアビドスから帰るまでは、難しいと思います……』

「だよねぇ……」

 

ごめんユキ、ほんっとごめん……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 4:45。現在私は急いで準備を終え、ミズガルズではなく市販されているオートバイ(と言っても私のカスタムが入っているが)に跨り急ぎ目標地点に向かっていた。出発したのが2:00……わりと近いな、アビドス。なんで先生はこんな近所で迷ってるんだ全く……

 

 

 

「……人影?」

 

 身を屈めて速度を出し先を急いでいると遠方に人影を見つけた。位置的にはもう当該エリアに着いているはずだしヘルメット団と考えるのが自然か。グラニがいればもう少し早く気づけただろうが生憎今はカイザーの流通ルート捜索と私がドヴェルグであることを隠すために置いてきてしまった。無いものを嘆いていても仕方がない、考えるべきは今あるものでどうすべきかだ。……進行ルートから考えて避けて通るのは不可能か。しょうがない、少し散らすとしよう。

 

「……ユキです、先生。今何処に?」

『もうすぐ着くけど……ユキは?』

「既に侵入していますが……予期せぬアクシデントです。すみませんが合流予定時刻より10~20分程遅れることになりそうです」

『別にそれは大丈夫だけど……何があったの?』

「ヘルメット団の野営部隊と鉢合わせました。今から交戦に入るので一旦切ります。では」

『ちょっ!?』

 

何か言ってきそうなので先んじて通話をブツ切りし、改めてバイクのエンジンを吹かす。無理やり突破するよりは全滅させてあいつの負担を少しでも減らしたほうが得策と見た。よし、とっととやってしまおう。

 

 

 

「なんか聞こえない?」

「こんな時間に人が来るわけないし、鳥の鳴き声とか……待ってエンジン音?」

「あっちからだけど……誰か照明持ってる?」

「あるぞー、ったくこんな時間に誰、がぁっ!?」

 

 のこのこ懐中電灯を持って現れたヘルメット団をすれ違い様に蹴りを入れて吹っ飛ばしまずは一人。流石にこれ以上奇襲は通用しないと見て背中に携えていたサブマシンガンを構え、吹っ飛んでいった仲間の方に目線を向けている隙だらけの団員に数発。これで二人。

 

「て、敵襲~!」

「アビドスの奴の護送に使ってる奴らをこっちに向かわせろ!あっちが多少薄くなっても構わん!」

 

 おーおー、これはまたぞろぞろと、先日の脱獄集団に負けず劣らずの規模だ。にしてもわざわざあっちの警備を手薄にして大丈夫か?そっちはあいつらが向かってるんだが、と言ってもまだ知らないか。

まあこっちに戦力を回してくれるなら上々、ちょっとばかし時間稼ぎさせてもらおうか。

挑発と言わんばかりにエンジンを吹かすと簡単に乗ってくれたようで数人がかりでこちらに走ってくる……所詮不良集団だしそんなもんか。売られた喧嘩は素直に買ってくれる、これなら至極やりやすいね……!

 

……あ、遅れが10分20分どころじゃなくなったの、伝え忘れてたな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……にしても、思ったより護衛が手薄だったね」

「まあ簡単にセリカちゃんを救出できたしいいんじゃないですかー?」

「……うーん、そういえば来るって言ってたユキちゃんは?」

 

 結局10~20分遅れるとは言ったもののそれを過ぎてもユキが合流することはなく、私と対策委員会の皆だけでセリカの救出に臨んでしまった。なぜか警備が手薄だったため簡単に救出自体は成功したけど……もしかして今度はユキの身にもなにか……!?

 

『カタカタヘルメット団、徐々に包囲網を構築しています!ユキさんは野営部隊と交戦していると先生が言っていましたが、無事なんでしょうか……!?』

「……いまはあの人のことより自分たちのことを考えて、あいつら、改造した重戦車を使ってる」

「わかってるって。それに……」

 

ホシノ達が包囲網突破のために陣形を組んでいると前方に見える重戦車の後ろから何かエンジン音が聞こえてくる。あれは……バイク?

 

「ユキちゃん、そこまで心配しなくてもいいんじゃないかな?」

 

 

 

 

 

 

「だってあの子、『あの』SRTだよ?」

『先生!あのバイクに乗っているのは……ユキさんです!』

「本当アロナ!?」

 

 どうやら心配は杞憂だったようだ。ユキは多分こっちに合流できなかった代わりにヘルメット団達を陽動してくれていたのだろう。少し服が傷ついているが、なんともない様子で彼女はヘルメット団達を気絶させながらこちらに向かってきてホシノ達の前で急停止し、多分誤射を避けるためだろう、ヘルメットを取った。

 

「遅れて申し訳ありません。鞘野ユキ、ただいま現着しました」

「ほうら、おじさんの言った通り」

「……あの軍勢を一人で突破してきたんですか?」

「突破……というよりは時間稼ぎをしていました。弾も随分と使ってしまったので長居はできません……あの、先生。今は抱き着く場面ではありませんし私はあなたとそんな関係になった覚えもありません。一昨日のあれといい浮気性かなにかですか?」

「違うから!それに一昨日のは誤解!」

 

……おっといけない、無意識に抱き着いてしまっていた。慌てて離れるとユキは書類をさぼっていた時のような目線をこちらにまた向けていた……辛い。

 

「……ひとまず皆さんは離脱を最優先に考えてください。援護はしますので」

「援護って……あんたは一緒に来ないの?」

「私は私の仕事があります、先生、ちゃんと撃たれないように気を付けてくださいよ?」

「そこは大丈夫……ユキの仕事って?」

 

彼女に何か頼んだだろうか、と思案するとユキは「お前馬鹿か?」とでも言うような目でこちらを射抜いた。……仮にも顧問だよ?私の扱い酷くない?

 

「私言いましたよね?」

「なんか言ったっけ……?」

「ええ、言いましたよ」

 

 

「やつらが貸与されてると思わしき武器の回収です」

 

それだけ言うとユキはまた陽動のために脱出ルートとは真反対の方向に突っ込んでいってしまった。……本当に大丈夫なのだろうか。

 

「先生、無鉄砲に見えるけどSRTは連邦生徒会長直属の精鋭中の精鋭。あんな不良どもに負ける子じゃないよ。大丈夫」

「そうならいいんだけど……」

 

まだ少し不安を抱えたまま、私は脱出のためにホシノ達の指揮に専念することにした。……大丈夫だよね、ユキ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……まあ上々でしょうか」

 

先生からの報告で無事当該エリアからの脱出は成功したらしい、まあ当然か。こちらも撤退までにそこそこ証拠になりそうな武器は確保できた。後は離脱するだけ……っ

 

 

「……掠りましたか」

 

右頬に違和感を感じてなぞってみれば血が滲んでいた。おそらくは何処かで弾が掠めたのだろう。別にこの程度の怪我、なんてことはないのだが……

 

「……どう言い訳しましょうかね」

 

恐らく帰ったら連絡してくるであろう先生にどう対応するか、頭を悩ませることになるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




先生ってこんな変態だったっけ?

番外編、いります?

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