「……このショットガンはカイザー系列の最新型。値段は定価40......こっちの弾薬は3年前にキヴォトス全域で使用が禁止された特殊弾……これはもう元会社が倒産しているな……」
10:35、あの後無事アビドスから帰還した私はヘルメット団から奪い取ってきた数々の武装の照合を行っていた。流石に戦車等のパーツは大きさ的に持ち帰れなかったがあれはアビドスの方で解析するらしいので問題はないだろう……正直私が一人でやった方が早い気がするが、流石に身体が持たなそうだ。過労で倒れでもしたら先生に何を言われるかわからないしな……っと、これは……
「……以前カイザーPMCの正式装備だったアサルトライフルか。機密保持のために一般販売はおろかオークションでも滅多に出たことがない代物だぞ……クロだな」
『マイマスター、こちらも流通ルートがある程度特定できました』
「そうか、どうだった?」
『ひとまずあの拳銃の入手方法についてですが、ブラックマーケット内に数店舗、会員制の銃器店で扱っているのを確認しました』
「ソースは?」
『店内サーバーをハッキングしました。他にも過去キヴォトスで違法になった兵器やカイザー系列の銃器等が取り扱われていますね』
「なるほど、出せるか?」
『勿論』
確認のためにグラニを取り付けた端末からカタログを出力し、一通り目を通す……おっと、これは……
「随分と格安価格でのご提供だな。小学生でも買えそうだ」
『おまけに廃盤兵器は数がしこたま多く、最新鋭兵器は極端に数が少ないと来ました』
「……ブラックマーケットの店を通すことでもしもの時の足切りと流通ルートの不明瞭化を同時にこなすか。方針の割には随分と慎重だな、カイザー様は」
『現在会員リストも開示を試みていますが……恐らくは』
「ほぼほぼカタカタヘルメット団の面子だろうな、ここまでくればクロ以外ない」
……さて、にしてもこの情報、どう共有したものか。間違っても「サーバーをハッキングした」とは言えないが、「ブラックマーケットの店舗にて販売を確認」じゃ曖昧過ぎて伝わるはずもない。「カイザー系列のものが殆どである」くらいならなんとか伝わるには伝わるか……?
……いや、待てよ。発想を逆転させろ。
シャーレの「鞘野ユキ」では真実を伝えられない。「鞘野ユキ」はただの一般生徒であり裏社会の知識を持ち合わせているはずがないからだ。ならば「ドヴェルグ」ならどうだ?少なくともあいつは「ドヴェルグ」については武器商人であることしかまだ知らない。「鞘野ユキ」と「ドヴェルグ」が同一人物であることも、グラニのことも、何もかもあいつは情報として持ち合わせていない。しかしドヴェルグとして情報を開示するとしてどうあいつに吐き出させる……?
……ああ、そうか。簡単な話だな。
「グラニ」
『何でしょうか』
「明後日、私の代役を頼む」
『……なるほど、かしこまりました。私は完全再現とは行きませんが貴方の思考ルーチンをコピーしたAI、できなくはない筈です』
「元々そのために作ったんだお前は……よし、そうと決まれば準備をしよう。素体はいつものを使え」
『わかっています』
念のため明後日のシャーレの当番が不在であることや特に予定もないことを確認し、二人がかりの狂言回しの準備に取り掛かる。……ドヴェルグとしてあいつにはこれ以上関わりたくなかったが、恩を売れると考えれば割と損ではなさそうだ。……上手く乗ってくれよ、ヘイロー無し。……ん?
「はい、こちらユキですが……」
『わざわざ休日に申し訳ありません。リンです、実は先生の提出したデータに一部誤りがあったことが判明しまして……』
「……わかりました、でも流石に今日は休ませてください。明日必ず取り掛かりますので……」
『いえ、本来ならば先生がやらなければならない事です。……別に先生が帰ってくるまで放置してもよいのですよ?』
「流石に業務を引き継いだ以上サボりは面目が立ちませんので……はい、では明日。11:00を目安にそちらに伺います。では」
……紙一重だったな。実行を明日にしなくてよかった。本当によかった……それはそれとしてあいつが帰ってきたら書類の作り方をきっちり教えてやる……!
『先生、件の兵器の照合が終わったので報告をしたいのですが、よろしいでしょうか?』
「ああうん、大丈夫だよ。皆、ブラックマーケットに行く前に少しいいかな?」
「おじさんは大丈夫だよ~、急ぐことでもないしね」
「問題ない、ユキ、お願い」
あれから二日。ようやく仕事が一息ついたらしいユキから連絡がきた。こっちで拾った戦車の破片は廃番と確定したけど、あっちのはどうだったんだろうか……
『わかりました。ではまずこちらから』
映像通信に切り替えたユキはいつも通りの様子で、説明用に4つほど銃器の画像が表示される。これは……?
『これらの銃はいずれも数年前に廃番となった機種です。流通数も年々少なくなっていて市場価格は右肩上がり、最低でも30は下らない代物達です。前のあれと同じように不良集団程度が簡単に手に入れられる代物ではありません』
「そんなのを惜しげもなく……」
「価値を知ってるならまずやらないよねぇ」
「そうです?私は遠慮なく使っちゃいますけど……」
「それはノノミちゃんだけじゃないかなぁ……」
……あれ?仮にヘルメット団たちがブラックマーケットでそれを手に入れていたとして、そんなに数を用意できるものなの?
『……そして、極めつけはこれです』
「……何これ、普通のアサルトライフルに見えるけど」
「……!」
「どっかで見たことあるような……」
アビドスの皆は何か心当たりがあるみたいだけど、私にはサッパリだ。なんかすごいものなのだろうか。
『これは過去にカイザーPMCが正式採用していたアサルトライフルです。完全グループ内製造の他一般流通はおろか限定販売などもないため、本来手に入るはずもない装備なのですが……回収した装備の中にこれが』
「……確かに妙だねぇ」
「やっぱりブラックマーケットじゃなくて、何処かから武器を貰ってるんじゃないの?」
「でも、手掛かりがない」
「……やっぱり一度ブラックマーケットに行ってみた方が良さそうですね……」
『こちらももう少し探ってみます、それでは午後の仕事が残っていますのでこれで』
「うん、ありがとうユキ…………ん、カイザー?」
少し光が消えた目をみるにそこそこ仕事が溜まっているのだろう、早く消化したいのかユキは通信を切ってしまった。……それにしても、カイザーって……
「カイザーって、さっきの金融業者も……」
「『カイザーローン』ですねぇ」
「ん、名前が似てるだけじゃない?」
「系列企業なのかもよぉ、まあ今気にすることじゃないよね、さっさといこっか」
「私は一応部室に待機しておきますね、何かあったらすぐに伝えます」
「よし、それじゃあ行こうか!」
……ひとまず、今はブラックマーケットとやらで情報を集めてみよう。一応アロナにカイザー何某について調べてもらいながら、ゆっくりと向かうことにした。
『ふぅ……終わりました。なんとかカイザーに焦点を当てさせることには成功しましたよ、マイマスター』
「OK、上出来だグラニ。……後は私が役目を果たすだけだ。ゆっくり休め」
『そうしたいのは山々ですが、本日は貴方の代わりにシャーレの業務を代行しなければならないので』
「……そうだったな、すまない」
『いえ、「シャーレにはこの日鞘野ユキが居た」という偽装工作のためには必要なことなのでお任せを』
「……居た。先生とアビドスの生徒に……一人増えてる?」
15:25、グラニが無事狂言回しを終え今度は私の番と気を伺っていたところ、予測の通りカイザーローン近辺で先生たちを発見した。……一人トリニティの生徒がいるな。何処かで拾ってきたのか?まあいい、接触を図ろう。なるべく自然に、すれ違う程度で……
「……ドヴェルグ?」
「……なんだお前か、ヘイロー無し。しぶとく生きているようだな」
おっと先生の方から接触を図ってきたか、案外覚えられているものだな。
「ふ、不審者……!?」
「……先生、知り合い?」
「うん、キヴォトスに来た初日に助けてもらったから」
……随分と好感度が高いな、あれだけ言葉をきつくしたのに。
「あれは単なる利害の一致と言っただろう。それでヘイロー無し、いや、シャーレの先生だったか。こんな無法地帯にぞろぞろ生徒を引き連れて何の用だ?校外学習の引率じゃあないんだぞ」
『先生、下手に刺激するのは……』
「いや、大丈夫」
……ん?
「……ドヴェルグは確か、武器商人だったよね?なら教えてほしいことがある」
「……ほう、面白い。だがただで情報を渡す訳にはいかんな、此処はブラックマーケット、何事にも暴力か対価が必要な場所だ」
「へぇ、やる気?」
「返答によっては、だ」
『な、なにか一触即発の気配が……!』
……そこまで覚えているものなのか。正直記憶力を侮っていたぞ、書類の内容を3分で忘れるやつだというのに……
「……君の武器、何か一つ買う、それでいい?」
「そ、それで納得してもらえるんですかね……?」
「……は、はは」
……こいつ、ほんとさぁ。
「ハハハハハ!これは面白い!情報の対価が私の武器!なるほどなるほど!」
「うわ、こいつ急に笑い始めたんだけど、キモッ……」
「セリカちゃん、ちょっとお口チャックですよぉ……」
ほんっと、馬鹿だよお前は。交渉が上手いんだか下手なんだか。
「ふぅ……久しぶりに笑わせてもらった礼だ。その取引、乗ってやろう。サービスで代金は半額にまけてやる」
「そりゃあどうも。それで、聞きたい事ってのはこれ」
理想通り先生はグラニが送付した武器の画像を見せてくる……まさかここまで上手くいくとは思ってなかったぞ。
「これを取り扱っている店、知らない?」
「ちょっと良く見せろ……ああ、知っているぞ」
「っ!本当!?」
「探し物、見つかっちゃったっぽい?」
「生憎喜ぶべき情報ではなさそうだがな」
「こいつらを格安で売っている店を知ってはいるが、あそこは一見お断りの会員制だ。欲しいというならあきらめるのが賢明だな」
『!!』
「……うん、ありがとう」
「……なんだ、買えないというのに妙な喜びようだな。まああの店は格安な代わりに品ぞろえは殆どがカイザー製な上に廃番になった骨董品だ。不良品を買わずに済んだと喜ぶ気持ちはわかるが……」
「カ、カイザー!?」
「ヒフミちゃん、何か知ってるの?」
「カイザーと言えば、かの有名なカイザーコーポレーションを中心とした企業グループのことです……!」
おっと、このトリニティ生随分と裏の世界に詳しいな?……まあいいか。これで私の狂言回しも終わりだ。
「……悪いが私もここでの用があるのでな、そろそろ失礼するよ」
「色々とどうも、ところでドヴェルグの商品は何処で売ってるの?」
……仕方ない、渡したくはないが、渡さなければ不自然だ、さっさとやってしまおう。
「……このメモのURLだ、さっさと受け取れ」
「随分と手際がいいね」
「私の商品を求める輩は多いからな、顧客増加のためにこういうものは常備している」
これに関しては事実だ、資金不足を極力回避するために顧客は常に増やしておきたい。……まあ、最近はシャーレ勤務の影響もあって仕事の効率がかなり落ちているが。
「適当に注文を済ませておけ、作り終わったら配送しに向かう」
「うん、後でね」
前と同じように最後まで不愛想な態度を貫きつつ、先生たちから離れて「ドヴェルグ」としての狂言回しを終わらせる……もう少し難航するものだと思っていたのだが、先生がこちらの理想通り動きすぎて呆気なく終わってしまった。正直過小評価していたが、ちょっと修正する必要がありそうだ……仕事ができないことは別問題として。
「……よし、帰るか」
盗まれないように工作しておいたミズガルズの隠し場所に辿り着き、とっととブラックマーケットを離れるべくエンジンを吹かし、急加速してブラックマーケットを外へ外へと走っていく。……この分なら余裕で睡眠時間は取れるだろう、帰ったら明日からの連勤に備えて仮眠を取っておくか……
『……マイマスター、なんでしょうこれは』
「……なにこれ」
翌日、「覆面水着団」なるどうみてもアビドスと昨日のトリニティ生徒な強盗集団の画像を目にした私は、軽く頭痛を覚えたのだった。
・先生は ユキからの評価が 上がった!
・「グラニ」
元々はユキがもしもの時に自分の代わりとして活動できるように思考ルーチンをコピーして組み込んだAI。とはいえ特に使うような時も来なかったため、紆余曲折会って普段はミズガルズのオペレートシステムとして組み込まれている。端末に保管されているため取り外し可能。
番外編、いります?
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いる
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いらない
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コラボとかしろ