Rusted Dáinsleif   作:暁真

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ユキと先生の約束

 

「……改めてなのですが、こんな時間にわざわざアビドスまで呼び出すとはどういう要件でしょうか。徹夜ダメ絶対と言っていた貴方にしては珍しいですね」

「……うん、それなんだけど」

 

22:00。アビドス高校の正門前で先生と合流。……本当に珍しいことに、予定時間丁度に来た。……目を見るに、余程大事な話のようだ。

 

「……ホシノが、カイザーに連れていかれた」

「……そうですか」

 

……カイザーの動向は逐一グラ二に調べさせているから大体の事情は把握しているが、敢えて自分の意志で行ったとは言わないあたり、余程生徒に信頼を置いているらしい。まあ、その方がお前らしいな。

 

「それでどうするつもりです?今回のシャーレの依頼は暴力団から学園を守ることです。確かにホシノさんはいなくなりましたがその依頼自体はカタカタヘルメット団の撃退で達成しています。……いや、言い方を変えましょう。これ以上の介入はシャーレのこれからの活動に支障を来す恐れがあります」

「……うん、それは重々承知の上だよ」

「わかっているのなら「でも」……なんですか、人が話している途中ですよ」

 

……いい目だ。やっと「背負った」か、先生。

 

「……私は大人だからね、請け負った以上、最後まで責任を果たさなくちゃ」

「再度言いますが、今回の依頼はあくまで暴力団から学園を守ることのみであり、それ以上、今の貴方の行動は貴方の独断によるものです……いや、それができるのがシャーレの特権ですが。その上で敢えて聞きます。それでもやるつもりですか、先生」

「うん、そのつもりだよ、ユキ」

「……ほんっと馬鹿ですね貴方は。実績のためなら最低限で良かったものを、こうも複雑な事情が絡み合う中飛び込んでいこうというのですから」

「……そうだね」

 

「間違えるのは、書類だけにしておきたいから」

「いや書類も間違えないでください何のために私がシャーレに残ったと思ってるんです?」

「じ、冗談です……」

「カッコいいこと言ったつもりなんでしょうがむしろそれ私には逆効果ですよ?毎日毎日誰が貴方の書類の手直しをしてると思ってるんですか」

「おっしゃる通りです……って今はそんな話じゃなくて」

 

……ああ、そういうことか。確かに先生が行動する分には何の問題もないが、私にその皺寄せが行きかねないことを心配しているのか。……普段あれなのに、そこらへんは本当に律儀なことで。

 

「ええ、わかっています。どうやら遊び半分で言っている様子はないし、本気なんですね。先生」

「……ごめんユキ、もう少し帰るの遅くなるし、君にも……」

 

「いいですよ別に。シャーレは元々私が望んで入った場所なのですから先生の行動に文句をつけるのはお門違いなのです。正直貴方のミスをほぼほぼ私が訂正していることに関してはかなり文句を言いたいですが」

「説教なら毎日のようにされてる……」

「それは文句じゃなくて叱責です……はぁ、ですが、それはそれとして一つだけ、私と約束してください」

「約束?」

「はい、約束です」

 

 

「貴方が本当に自分のやるべきと思ったことに対して最後まで責任を負う気なら、どんなことでも途中で逃げ出さず、しっかりとやり切ってください。貴方がいない間のシャーレは私と当番の皆さんで充分何とかなる範囲なのでご心配なく……まあそういうわけで、やる気というのなら、絶対に逃げないでください。それが私との約束です」

 

要するに「契約は満了しろ」ってこと。実際途中で投げたとなればシャーレの評判は間違いなくがた落ちするからな。ここまで自治区に介入するというのならちゃんとやること全部やってもらわなきゃ困る……主に私が。

 

「……うん、約束だね」

「ああ、でも邪なことをするための大義名分に使わないでくださいよ?貴方随分と浮気性なようですし、とっかえひっかえ生徒に手を出してた、なんてことになったら……おお、恐ろしい……」

「だから浮気性じゃないってぇ!」

「冗談です。一応そんな人ではないとは思いますが……念のため」

 

「もし先生が何か殺意や敵意を抱いたとして、誰かを傷つけるためにこの約束を逃げ道にするのであれば、私はそれがいかなる事情があろうと絶対に許しません。貴方は先生なんです。生徒の模範であってください……正直模範とは言えない行動ばかりですが」

「サラっと酷くない?」

「事実ですから」

「……ガンバリマス」

「何をですか。……まあいいでしょう、話したかったことはこれで全部ですか?」

「……ああそうだ、もう一つ、頼みたいことがあるんだ」

「なんです?」

「ゲヘナの風紀委員会にアポを取ってほしいんだ、行ける?」

「当然です、私を誰だと思っているんですか」

 

 

 

「(割と不服ではあるが)連邦捜査部シャーレ「部長」なのです、安心してお任せを」

「ありがとう、ユキ……部長?」

 

おっとこの様子だと先生もまだ知らないようだな。まあかなりてんてこ舞いだったらしいし当然と言えば当然か。

 

「知らなかったんですか、貴方がアビドスに長く留まってる所為で私がシャーレのほぼすべての業務を代行している都合上、このままでは運営に支障を来しかねないと判断したリン会長代行によって貴方がいない間臨時最高責任者としてシャーレを任されることになったんですよ。正直こんな役職いらないのですがどっかの誰かさんのせいで貰わざるを得ないんですよぉ、ねぇ?」

「た、大変ご迷惑おかけしております……」

「わかればよろしい。風紀委員会ですね、わかりました」

 

……用事はこれで全部か。さて、さっさと帰……あ。

 

「……そういえば送り主不明の荷物がシャーレに届いていたので持ってきたのですが先生、私の知らぬ間に何か買い物でもしました?」

「ギクッ」

 

まあその荷物の製作者は私だから全部事情は把握してるんだけどな、ちょっと揶揄うにしてはやりすぎたか。

 

「……わかりました、貴方が戻ってきた時にその他諸々を含めてゆっくりと聞かせてもらいましょう」

「その他諸々!?」

「はい、その他諸々です。……で、どうしますこの荷物?玩具とかそういう類なら持ち帰りますが……」

「いや、貰うよ。折角持ってきてくれたんだし」

「……わかりました。何に使う物なのかは皆目見当つきませんが、どうぞ」

 

バイクの収納スペースから注文品の入ったアタッシュケースを取り出し、先生に渡す。注文内容を見たときは結構驚いたが、まあ先生らしいというかなんというか。こいつがこれを抜くときは余程の時なんだろうなという代物だった。……よし、今度こそ用事は終わりだ。

 

「それでは私はこれで。なんとかアポは取り付けてきますので気長に……はできないんでしたね。いつでも動けるようにお待ちください」

「うん、任せたよユキ」

「ええ、任されました」

 

手を振ってアビドス校舎へと戻っていく先生を見送り、シャーレへと帰路を辿る。……覚悟を決めたんだ。道の舗装くらいはしてやるさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「朝早くにすみません、こちら連邦捜査部シャーレ。ゲヘナ風紀委員会の方で合っているでしょうか?」

「ええ、ええ。先生がそちらに向かいたい、とのことでして、事前に予定を取り付けておきたく……」

「はい、ではその通りに、先生にもすぐに伝えますので、はい」

 

 

 

 

 

「はい、こちら連邦捜査部シャーレ……はい?」

 

「先生が、風紀委員の足を、舐め……?」

 

だ か ら 何をやってるんだあんのバカ!!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ、疲れた……また過労で気絶しそうだ……」

 

 それから数日、事前にアポを取り付けたのが功を奏したのかわからないがゲヘナと協力を取り付けることには成功し(ちょっとひと悶着あったが)、更にはなぜかトリニティも増援として駆け付けたらしく、無事ホシノの奪還には成功したらしい。まあそれは喜ぶべきことなのだが、今回の事件が表ざたになりカイザーローンの暴利が発覚したことで生徒会の強制捜査が入るらしく、事前調査を任された時は生きた心地がしなかった。なんで私に任せるんだ……

……さて、予定通りならあいつは今日帰ってくるはずなんだが……遅いな。当番の生徒も来てないし、今日も一人で書類仕事を……お?足音がする、3人分。……ああなるほど、道理で当番が来ないわけだ。

 

 

 

 

 

 

「ただいま、ユキ」

「ええ、お帰りなさい先生」

「よろしく、ユキ」

「おじさん頑張っちゃうぞぉ~」

 

……一皮剝けたな。これからもその調子で頼むぞ、先生。

 

「ひとまず書類のミス、謎の領収書、その他生徒へのセクハラ行為などについてお話が……」

「なんでぇ!?」

「いや前顔を合わせたときに言ったじゃないですか、覚悟してくださいね」

「へ、ヘルプ!ヘルプミー!」

 

だが、それとこれとは話は別だ、3時間コースは覚悟してもらおう……

 

 

 

 

「どうする、ホシノ先輩?」

「ん~……ほっといていいんじゃないかなぁ、先生の自業自得でしょ」

 

 

 

 

 

 




対策委員会編、完。

番外編、いります?

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