ユキと補習授業部
「補習授業部?」
『うん、まあ話すと長くなるんだけどそれにシャーレの権限を借りたいって話で……』
アビドスと言いミレニアムと言いどうしてこうもこいつは厄介ごとに自分から首を突っ込みに行くのだろうか。今日も今日とていつも通りな先生に少しため息を漏らしつつ、件の補習授業部について話を聞くことにする。アビドスの一件からシャーレの評判は波のように広がり気づけば依頼が止まない駆け込み寺。依頼がいっぱいということは仕事もいっぱいということで最近の先生と私は休みなし定時なし残業代なしの3なし生活に追われている。当番の生徒が増えたこともあり過労死するレベルではないが、先生はともかく私は未だキヴォトスに不慣れな先生の案内役や先生のミスの後始末、先生が居ない間の最高責任者としての作業指示などで絶賛グロッキー、武器商人ドヴェルグも休業という事態に陥っているのだった……あれ、原因8割くらい先生では?まあいいか、とりあえずティーパーティーから渡されたらしい資料を添付してもらおう。ふむふむ、なるほど……ん?
「随分と少ないですね、人数。補習という名目なのに4人……?」
『まあ少ない分にはいいんじゃないかな……みんな優等生ってことだし』
「にしても4人は流石にでしょう。それが三大学園のトリニティとなれば猶更。……正直何か裏があるとしか思えません」
『考えすぎじゃないかなぁ、なんかドタバタしてて時間がないってだけらしいし』
「逆に貴方には危機感が足りなすぎです、アビドス対策委員会の時といいミレニアムの廃墟でアリスちゃんを発見した時といいどうして毎度毎度出張したところで騒動に巻き込まれるんですか?」
『それは……そうだけど』
「まあいいです、ひとまず先生はしばらくこの補習授業部の顧問とやらで出張なんですね?」
『んー、一応シャーレには戻ってくるから出張と言われると……』
「立派な出張です、ということで引き継ぎ資料をお願いします。明日までに」
『早くない!?』
「いつから始まるかわからないんだからこっちだって余裕はないんですよ、逆にいつからなんです?」
『……そのぉ』
『今日の放課後から……なんだよね』
「ちょっと一発ぶん殴りに行っていいですか?」
『物騒!?』
「流石に冗談です。トリニティ側の都合もあるでしょうし……私がそっちに引き継ぎ資料を持っていきます。現地で書きましょう」
『わ、わかりました……(笑ってなかった。明らかに目が笑ってなかった……)』
「今日の私の業務は定時分までは終わりましたのでこちらの心配は大丈夫です。では15:20を目安に其方に向かいますね」
『わかった、多分補習授業部の教室にいるから着いたらメッセージを送って』
「ええ、そうします……ふぅ、そういうわけで私は今からトリニティに行かなければならなくなりました。今日の残りは任せましたよ、モモイ、ミドリ」
「まっかせてー!シナリオライターの筆の速さでパパっと終わらせちゃうから!」
「お姉ちゃん、いくら早くても不備があったらだめだからね……」
……うーん、本当に彼女たちに任せていいのだろうか。ちょっと不安になるな……いざというときに頼りになるのはわかっているんだが。
一縷の不安を感じながら引継ぎ用資料を鞄に入れ、ひとまずトリニティへと向かうことにした。……あ、忘れずに連絡しておかないと。正門前で止められたらシャレにならん。
「……やはり三大学園、大きいな……一般用の駐車場まであるとは……」
バイクから諸々の資料が入った鞄を取り出し、ひとまずトリニティの正門前へ。
「すみません、現在授業中ですので、部外者の立ち入りは……」
「連絡を入れておりましたシャーレ部長の鞘野ユキです。もし入っていないようであればもう照会をお願い致します」
「ああ、シャーレの……確認しています、お通りください」
「ありがとうございます、用を済ませたらすぐに帰りますので」
取ってよかったアポイントメント。あいつ毎回取り忘れて私が間に合う内にやっておくか学校の好意で通されてるからな、いい加減覚えろよ……いやひっろいな。補習授業部とやらの部室は何処だ……?
| 先生、ユキです。 | |
| 予定通りトリニティまで来て正門を通ったところですが…… | |
| 補習授業部とやらの教室は何処に? | |
| 先生 | |
| ごめんユキ! | |
| 補習授業部の皆を集めるのにちょっと時間がかかってて…… | |
| 場所は此処だから先に向かってて! | |
| (補習授業部部室の位置画像) | |
| 何か問題が? | |
| 先生 | |
| ……二人は問題なく集まったんだけど…… | |
| もう二人の内一人が水着で校内を歩き回ってて…… | |
| ……もう一人は現行犯で逮捕されてる…… | |
| 僕の考えた妄想小説の冒頭ですか? | |
| 先生 | |
| 現実だよぉ!!!!! | |
……???????
補習を受ける生徒達、なんだよな。
自分たちの立場をわかってる子達なんだよな?
うん、水着で校内徘徊はまだ……いやわからない。何をどうしたらそうなるんだ。露出狂?露出狂なのか?いや露出狂にしては水着はなんか違わないか?……だめだ、全くわからない。
そして現行犯逮捕……!?何がどうしたらそうなるんだ。此処は他自治区でもないし更にはあのトリニティなんだが。……最早補習どころではなく矯正局送りになるべき生徒ではないのだろうか、そいつ。
……はぁ、ひとまず部室、行くか……
「……」
「お疲れ様です先生。早速疲弊しているようですがそこまで難航しましたか、部員集めは」
「割と、否定できない……」
「だ、大丈夫ですか先生……?」
「あら、シャーレの人ですか?」
(シュコー……シュコー……)
「……」
……ああうん、そりゃあ難航するわ。カオスにも程があるぞこの光景。顔真っ赤にしてるわガスマスク付けてるわ水着だわ……おっと、水着のがこちらを見ている、ホシノといい、ピンク髪の奴はできる法則でもあるのか?
「ああ、申し遅れました。私連邦捜査部シャーレの部長、鞘野ユキと申します」
「これはどうもご丁寧に、ありがとうございます」
(シュコー……シュコー……)
部長に就任してから一応作っておいた名刺を配って回る。正直なんで大人はこんなものを常備しているのかいまいち理解できなかったのだが、今はなんとなくわかる気がする。第一印象大事。……ドヴェルグの時は名刺というより会員登録だしなぁ。
「さて先生、グロッキー状態のところ悪いのですが引継ぎ資料の作成をお願いします。とはいっても恐らくこうなっているであろうことを想定して後は担当者欄のサインを記入するだけですので」
「ありがとう、ユキぃ……毎度毎度ごめん……」
「一応釘を刺しておきますが、本来これは先生が全て書くべきものですからね?私が部長の権限を持ったことで多少は書類が楽になりましたからいい加減書き方を覚えてもらわないと」
「面目ありません……」
「あらあら、これではまるで先生も補習を受けているみたいですねぇ~」
「生徒もダメなら先生もダメってこと?ふんっ、実にお似合いね!」
「先生、大丈夫です……?」
(シュコー……シュコー……)
「へーきへーき、ほら、もう終わったから……」
「……多少字が汚いですがまあよしとしましょう。ではこれで」
流石に今回は同情しよう。サインを書き終わった(シュコー……シュコー……)書類をファイルにしまい(シュコー……シュコー……)部屋を出ようと(シュコー……シュコー……)……ガスマスクが五月蠅いな、此処別に化学テロの現場じゃあないんだが。……まあもう離れるし、いいか。改めて部屋を出ようと「……SRTの英雄の片割れが部長とは、シャーレは随分と豪華な組織なのですね~」っ!?
「SRTの……英雄?」
「あら、ご存じないのですか?かつてSRT史上最強と謳われたたった二人の特殊部隊『WOLF』を?」
「しらない」
「何よそれ、漫画?」
「聞いたこと、あるようなないような……」
「うーん、私が着任した頃にはSRTはもう閉鎖が決定していたから詳しくは……っ!ユキっ!?」
ダメだ、声が、聞こえる。私が、私が生き返って、しまう。わた、しが……
「ユキ!しっかりして!声は聞こえる!?聞こえるなら返事して!ユキ!ユキィ!」
……先輩、みん、な、が、私を……
……ん、でる……
「ユキ!ユキ!……ダメだ、起きない……」
「……どうしてしまったのでしょう、さっきまであれほど元気だったのに……」
いつも通りの様子だったユキが、「SRTの英雄」なる話を聞いた途端突然倒れ込んでしまった。疲労と捉えるにはあまりにも不自然で、何か別の理由があるとしか思えない。
「と、とにかく今は救護を!医務室に連れていきましょう!」
「……これも特殊訓練?」
「んなわけないでしょう!?ひとまず運ぶわよ!」
「……いや、ユキは私が運ぶ」
「先生?」
「ごめんね、今日は説明だけとはいえ少しサボる形になっちゃう」
「いえ、構いませんよ。身内、ですもんね?」
「身内……って言っていいのかなぁ」
「とにかく、行ってくるよ。後、ハナコ」
「はい?」
「……今日の説明が終わったら聞かせて欲しい。「SRTの英雄」の話」
「……はい、と言ってもほぼ人伝手でしかしらないので、ユキさんのことがわかるかと言えば、NOなのですが……」
「……それでも、お願い」
「いつも助けられてばかりの私でも、少しはユキを助けるための力になりたいから」
・『WOLF』
かつてSRT最強とまで言われたたった二人の特殊部隊。ユキは以前この部隊の片割れだったらしい。
番外編、いります?
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いる
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いらない
-
コラボとかしろ