【前日譚】ホーランドの勇者   作:赤いUFO

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今回は1日だけ公開します。


訓練期間

「ボッツ。お前、この村を出ろ」

 

「はぁ?」

 

 北側諸国にある小さな農村地域。

 そこで親子2人暮らしをしている家で突然の提案に不可解なモノを見るようにボッツは父を見る。

 

「あ〜。もしかして、隣町まで買いに行って欲しいモンでもあるのか? でも、今んところ足りてない物はないと思うんだけど」

 

「違う。しばらくこの村に帰って来るなってことだ。隣の国からうちの野菜を買い付けに来てくれてる商家のおじさんが居るだろう? 明日、あの人の車に乗せてもらって、この国を出ろと言ってるんだ。当面の生活はおじさんがなんとかしてくれる」

 

 父親の言葉にボッツはますます混乱する。

 

「訳わかんねぇよ! ガキの頃から家を継ぐ以外の将来(みち)は許さんって散々怒鳴ってきたのは親父だろ!」

 

「そうだな。だが、そうも言ってられなくなった」

 

 険しい表情をする父にボッツは思い当たる事を口にする。

 

「そんなにヤバい状況なのか?」

 

「……帝国に対する北側の防衛ラインが破られたらしい。この国は小さい。時間を置かずに首都も戦場になるだろう。首都が落とされれば、この国も終わりだ」

 

 1年前から各国に喧嘩を吹っかけてる帝国を名乗るテロ集団。

 そのせいで、自分達の生活にも色々な影響が出ている。

 

「それに、帝国の進行に触発されて各国も荒れてきている。これまではなんだかんだで戦うのは兵隊や傭兵だけだったが、これからは俺達にも被害がないとも限らん」

 

 そこまで危険な事態になってたのかとボッツは頭を掻く。

 

「それじゃあ、早く荷物纏めようぜ。2人分となると……」

 

 大きな鞄を探すボッツに父親は首を横に振る。

 

「村を出るのはお前だけだ。俺はここに残る」

 

「なに言ってんだよ親父! アンタ馬鹿か!」

 

 あれほどこの国の状況が悪いと言っていたのに、残るとはどういう事か。

 納得出来ずに問い質す息子に父親は窓の外に視線を向けた。

 

「若い連中はとっくにこの村を見捨てて他所に行っちまった。まだ残ってるのは、身体の弱い年寄り連中と、他所に行く余裕のない貧しい連中ばかりだ。放っておく訳にはいかない。それにここで畑を捨てたら────」

 

「ここの食物を買ってる人達は、どこの食料を買えばいいんだ、だろ? 耳にタコが出来るくらい聞いたっての。たく……」

 

 それは、ボッツの父親の口癖だった。

 北側諸国は農業に適した土地というのは全体に比べて少ない。

 だから農家には国から特別な補助金が支給されるし、その食料を他国に卸す事で経済を回している。

 しかし、各地で戦争が始まり、この村の畑も半分以上手放された状態でその影響は既に出始めている。

 特にこの村から食料を買っている隣国の町では食べ物が足りずに値上がりし、餓死者を去年より多く出てるらしい。

 そんな人達を見捨てられない父親を言葉にせずともボッツは尊敬していた。だからこそ自分もこの村を離れるのは抵抗がある。

 

「ボッツ。お前はまだ若い。他の場所で、新しい職に就く事も出来るだろう。だが俺は、この村で畑を耕す生活しか知らん。今更他の生き方など出来ないんだ」

 

 ボッツは今年で16になる。この世界なら親元から巣立ってもおかしくない年齢だった。

 生まれてからずっと畑を継ぐ事だけを望まれてきたボッツは初めての自由に戸惑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日、簡単に荷物だけ持っていつも野菜を買い付けに来てくれるおじさんにこれからお世話になる礼を言うと、父親はボッツに話しかける。

 

「あまりおじさんに迷惑をかけるなよ」

 

「分かってるよ」

 

「そういえばお前、子供の頃は都会へ行って兵士になりたいとか言ってたな」

 

「……いつの話だよ」

 

 子供の頃、魔力資質が周囲より高かったボッツは将来この村を出て国や市民を守るカッコいい兵士になりたかった。

 農家を継ぎたくなかった、という理由もある。

 父にそれを話したら大反対されてぶっ飛ばされたが。

 

「俺もな。小さい頃は傭兵になって国中を旅するのが夢だったんだ。だが親になってお前が生まれて、初めて親父とお袋の気持ちが分かったよ。親ってのは、子供に叶うか判らない夢を追いかけるより、側で安泰な職に就いて、孫の顔を見せてほしいもんなんだって気付いたよ」

 

 ボッツは父はこんな弱気な態度を見せる男だっただろうか、と不思議に思う。

 もしかしたら、息子と離れる事に感傷的になっているのかもしれない。

 

「オレ、しばらくしたらこの村に戻ってくるよ」

 

「ボッツ……」

 

「帝国のやつらなんて、この国の軍隊が追っ払うかもしれないだろ? 安全だって分かったらちゃんと帰ってくる。だからそれまで、留守を頼んだぜ、親父」

 

 息子の言葉に嬉しいような照れたような表情をする。

 

「生意気だ」

 

 そう言ってコツンと額を殴られた。

 

 ボッツが卸した野菜を載せた車に乗って村を離れると、老婆が話しかけてくる。

 

「アンタ、意地なんて張らずにあの子と一緒にこの村を出て良かったんだよ?」

 

「こんな年寄りばかりなのに、どうやって生活してく気だよ」

 

 もうこの村の人口の7割が爺婆ばかり。

 働ける男手は1人でも必要なのだ。

 そんな彼の言葉に老婆は嬉しそうに目を細める。

 

「バカだねぇ。こんな年寄りなんて放っておけばいいのに……」

 

「ふん」

 

 そっぽを向いて仕事に戻ろうとすると、村の爺さんが慌てた様子でこっちに走ってくる。

 

「大変だ! 空から知らない旗を持った飛竜が大量にやって来るっ!?」

 

「首都の軍人さんとかか?」

 

「いやっ!? あの旗は────っ!?」

 

 話していた爺さん胸が魔法によって貫かれた。

 驚く間もなく血を吐いて倒れる。

 同時に空から拡声器越しの声が響く。

 

『みなさ〜んっ! 我々は先日この国の代表の首を討ち取ったストレイ帝国の者で〜す!!』

 

 声からしておそらくは十代後半から二十歳くらいの楽しそうな女の声だった。

 その女は乗っていた飛竜から飛び降りると、難なく地面に着地し、スカートを摘んでお辞儀をする。

 

「この村も、我々帝国の支配下になります。命が惜しかったら懸命な判断をお願いしますね〜?」

 

 ニコリと女は笑う。

 この数時間後、北側諸国にある1つの農村から村人が1人残らず姿を消した。

 これが、現在の北側諸国の日常である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最南に位置する大国のホーランドは大陸全体から見ても平和であり、今のところは大きな戦火に巻き込まれてはいない。

 ホーランドに召喚された勇者達も今は────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「日本語の勉強がしたい……」

 

「珍しいね。渚ちゃん国語苦手なのに」

 

「国語っていうか、全部の科目で成績が下から数えた方が早かったじゃない」

 

「だっておかしいよ! なんで言葉は通じるのに文字が全然違うの!? 覚えきれないよ〜」

 

 参考書を見て泣き言を叫ぶ渚の頭を彩那がよしよしと撫でる。

 

「確かに……いきなり別の言葉を勉強させられてもね」

 

「でも、覚えないと困りのわたしたちだし」

 

 日本語とはまったく違う文字の勉強をさせられて戸惑う彩那と自分達が困らないようにしないとと参考書とにらめっこする璃里。

 勉強に四苦八苦していると、パンパンと手を叩く音がした。

 

「勇者様方! お喋りばかりしてないで、勉強に集中して下さいませ!」

 

「は〜い……」

 

「すみません、マーサさん」

 

 注意したのはマーサという名の50代の教師役に就けられた女性である。

 そして、彼女は勇者達の世話役も兼任している。

 

「アヤナ様。何度も申し上げますが、従者である私にそのような態度ではいけません。もっと立場に見合った振る舞いを身に着けなさいませ」

 

「は、はぁ……」

 

 勇者達は立場上、この国の最高位貴族であるアーツ・オク・ルギアが後見人となっており、上位貴族ではないが、それに近い立場を与えられていた。

 しかし、つい先日まで一般家庭の子供でしかなかった彼女らに貴族らしい振る舞いを求められても困るのが本音だった。

 それから少しして座学の時間が終わる。

 

「次は魔法の授業でございますね。お急ぎ下さい」

 

 パンパンと手を叩いて移動を促された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 不謹慎ではあるが、本来彼女らの世界では物語の産物でしかない魔法の勉強に4人共少し高揚していた。

 

「それではまず初めに、昨日と同じ魔法理論の勉強をしつつ、念話での練習をしてください」

 

 授業を受けつつ、会話や質問は全て念話で行われる。

 念話はこの部屋にいる全員に届けつつだ。

 もしそれを破った場合、練習用に渡しているデバイスが鳴る仕組みになっていた。

 

『う〜。やっぱり念話(コレ)、頭に電波が飛んでくるみたいでなれないよぉ……』

 

 基本的に口での会話を好む渚は電話での意思疎通に難色を示す。

 

『そう? 便利だと思うな、わたしは』

 

 逆に璃里は念話での会話を気に入ったようだ。

 

『利点は内緒話に便利な事と、舌っ足らずな子には気に入られそうよね。反面、念話に慣れると、直接コミュニケーション取る人は少なくなりそうね』

 

 冬美は念話の利点と欠点を洗い出そうと思考する。

 

『彩那は?』

 

『私は時々かなぁ。親しい友達とは直接話したいけど、相手によっては念話で済ませたいかも』

 

 彩那は可もなく不可もなくと言った感じだ。

 まだこの世界の文字に慣れてない4人に教師は魔法理論を口頭で説明しつつ、黒板に絵などで解りやすく説明してくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「新しく身体強化の魔法を教える!」

 

 如何にも熱血体育教師というか、鬼教官というか。そんな感じの講師が説明する。

 

「リンカーコアで生成した魔力を全身の筋肉や神経に流すイメージをしてみろ! 慣れれば独自のイメージでもやれるだろうが、今はとにかく身体の中の魔力を流すイメージを掴め!」

 

 言われて4人は体内で生成した魔力を全身に行き渡らせる。

 

「う〜ん。難しいよ……」

 

「そうね。油断してると外へ流れちゃって」

 

 璃里と冬美は少しばかり手こずっていた。

 

「え、と……こんな感じ、かな……」

 

 彩那は取り敢えず形にはなっている。

 そんな中で渚は。

 

「うおっ!? はっやっ!」

 

 身体強化の魔力をまるで最初から使いこなしているかのように成功させ、訓練場を走り回る。

 自転車並の速度で走る渚に講師は、ほぉ、と感心したように顎を撫でた。

 

「ナギサ殿は身体強化の魔法に向いているのかもしれんな。なら、私を1発殴ってみろ。どれくらい強化されてるのか見てやろう」

 

 と、魔力で盾を作る講師。

 

「いいの?」

 

「ハッハッ! 構わん! 全力で来い!」

 

「お言葉に甘えて?」

 

 そう言うと、渚は握った拳にはぁ〜っと息を吹きかけて、講師のシールドを殴りつける。

 

「なっ!?」

 

 すると講師のシールドは硝子細工のように破れて腹に直撃した。

 同時に後ろへと吹き飛び、何度かバウンドして訓練場の壁に激突する。

 

「……」

 

 それを見た4人は開いた口が塞がらない様子だ。

 

「引くわ〜」

 

 渚は拳を開いたり閉じたりしながらジッと見つめた。

 

 

 

 

 

 

 

 その日は射撃魔法の訓練だった。

 少し離れたところにある的に魔力を放って当てる訓練。

 璃里は射撃魔法の威力は申し分ないが、命中率に難あり。

 渚と彩那は真ん中は射抜けないものの、的自体には当てている。

 そんな中で────。

 

「冬美ちゃんすごいね。百発百中だよ」

 

「えぇ。思った以上に簡単ね」

 

 指先から射撃魔法を撃ち、固定されている的や動いている的も関係なく真ん中を射抜いていく。

 

「ちょっと試したい事が出来たわ」

 

 冬美は練習用に渡された剣型のデバイスを起動させて、的に向ける。

 魔力を数秒溜めて撃ってみた。

 大きな炎が真っ直ぐと多くの的を巻き込んで破壊を撒き散らした。

 

「ちょっ! 火が着いてる!? 消火! 消火ーっ!?」

 

 彩那が唖然としている講師に向かって叫んだ。

 それが、射撃魔法の上位に位置する砲撃魔法だと教えて貰ったのは、その日の訓練の終わりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日は防御魔法の訓練だった。

 シールドを展開して複数の新兵の射撃魔法を防ぐ訓練。

 訓練校を卒業したばかりとはいえ、本物の兵隊の攻撃に最初は委縮していたが。

 

「これなら避けた方が早ぇ」

 

 渚は殆ど防御せずに身体強化で回避し、偶にシールドで防ぐくらいだ。

 

「撃ち落とす方が楽ね」

 

 冬美は逆に射撃魔法を撃ち、相殺してやり過ごしていた。

 彩那と璃里は────。

 

「ごめんね、彩ちゃん」

 

「大丈夫。私の後ろに隠れてて、璃里ちゃん」

 

 彩那は微動だにせず、相手の攻撃を全てシールドで受け止めていた。

 

(ゴムボールを当てられてるみたい)

 

 そんな感想すら抱く。

 時折砲撃魔法も飛んでくるが、特に脅威は感じないのだ。

 彩那は最初の位置から1歩も動かずにその日の訓練を終えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日の拘束魔法であるバインドの訓練。

 動き回る兎のような魔法生物をバインドで拘束する訓練だ。

 

「だぁ! 発動遅ぇ!! 捕まえるのも遅すぎっ!! もうこれ直接捕まえた方が早いよ!」

 

 渚はバインドの発動に手間取って上手く捕まえられずにイライラしている。

 

「あ、出来た」

 

 逆に璃里は視界に入ったと同時に兎に似た魔法生物をバインドで拘束した。

 他の魔法の成績があまり良くないと感じていた璃里はホッと胸を撫で下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、勇者達の教育はどうじゃ?」

 

 召喚された少女達の訓練を始めて1ヶ月が経ち、アーツはマーサからの報告を受けていた。

 やや興奮気味に語り始める。

 

「4人共、素晴らしい素質をお持ちです。既にそこらの新兵よりは卓越した魔法技術を身に着けています」

 

「ほぉ?」

 

 アーツは興味深そうに顎髭を撫でる。

 

「先ずはナギサ様ですが、身体強化の魔法に優れた才を見せています。既に1対1なら中堅の兵にも引けを取りません。ただ、学問全般の覚えるのに苦労している事と、講師達に反抗的なのが悩みですが」

 

 つい先日、剣の指導をしていた講師と揉めて喧嘩騒ぎになったのは記憶に新しい。

 他の勇者が責められていると、必ずと言って良い程に介入して庇ってくる。

 それはそれとして魔法戦闘の伸びが1番高いのも渚だった。

 

「次はフユミ様ですが、ナギサ様とは逆に、射撃魔法や砲撃魔法などの、遠距離攻撃に才を発揮しています。それに、魔力変換資質に炎が有しているのも確認されました。学問に対する覚えも早く、4人の中で1人、簡単な範囲ですが字の読み書きを習得しています」

 

 冬美は遠距離魔法の才能を見出されている。

 問題と言えば、渚同様に他の勇者が揉めた際に介入して口で負かそうとしてくるところか。

 

「アヤナ様は殆どの科目で平均以上を叩き出してます。ですが、防御魔法に関しては素晴らしいですね。そこらの兵ではあの鉄壁を破るのは難しいと思います」

 

 一芸では他の勇者に劣るが、全体的に高水準というのがマーサを含めた講師達の意見だ。

 苦手そうにしていた剣術や体術も、最近は伸び始めている。

 

「最後にリリィ様ですが、魔力量は1番高いものの、戦闘能力の伸びは他の勇者より成長は遅いです。ですが、年齢を考えれば充分に平均以上と言えます。それにバインドや結界魔法を得意とし、魔法理論への理解も高い。戦闘以外なら研究者としても大成しそうです」

 

 璃里は本人の性格もあり戦闘は苦手そうだが、サポートには充分な才を見せていた。もしかしたら敵の魔法の解析などもその内、可能になるかもしれない。

 

「ふむ。面白いくらいに才が分かれとるのぉ。まるで1つの絵を4つに切り分けたかのようじゃ。これは偶然かのぉ」

 

 面白そうに考えるアーツ。

 マーサは懸念を口にする。

 

「ですが、急激に力を付けた結果、我々に反逆しないか懸念する声も上がっています。実際にナギサ様の反抗的な態度を問題視する方も居ますから」

 

 あくまでも彼女らは故郷に帰るためにホーランドに協力しているだけだ。

 強い力を手にした結果、力づくで帰還を要求しないとも限らない。

 

「だから今のところは練習用のデバイスしか与えておらんのじゃろう。アレでは、あの子らの魔力を十全に発揮するのは不可能じゃて」

 

「ですか」

 

「まぁ、お主らの普安も分かる。じゃから、反抗を思い留まらせる鎖は用意してある」

 

「鎖、でございますか?」

 

「そう。どれだけ優れた才を持とうと、あの子らはまだ子供。何か1つでも守りたい存在が出来れば、そう簡単にはこちらを切れん」

 

 クックッと悪い笑みを浮かべる老人にマーサは首を傾げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ホーランド第1王女であるティファナは今日この日を楽しみにしていた。

 先月召喚された4人の勇者。その人物らに会う許可がようやく降りたのだ。

 

「皆さん、わたくしと同い年の女の子と聞き及んていますもの。気にするな、というのが無理な話ですわ」

 

 彼女にしては珍しくソワソワとした様子に従者の者がクスっと笑う。

 立場上、親しい友人が少なく、新しい友人が出来るチャンスや、別世界の話が聞けるかもしれないという好奇心。

 普段は落ち着いているが、本来は好奇心旺盛な少女なのだ。

 

「勇者様達が御到着なさいました」

 

 待たされていた応接室の扉が開くと、4人の少女とお付きの者が中に通される。

 ティファナは立ち上がり、スカートの裾を摘んで礼をした。

 

「はじめまして、勇者様方。わたくしはこの国の第1王女のティファナ・イム・ホーランドと申します。この国の願いを聞き、この地に留まってくれた勇気に、感謝を」

 

 形式ばった挨拶をするティファナ。

 しかし、勇者の取った行動は完全に彼女の想像の斜め上を行っていた。

 

「わお! かわいい〜!!」

 

 真ん中に立っていた渚がティファナに抱きついてきたのだ。

 

「うわっほーっ! 肌スベスベ。羨ましいなぁ!」

 

 ハグしたり、ぺたぺたと王女に触ってくる勇者に誰もが硬直する。

 

「なにやってんだこの馬鹿がーっ!!」

 

「ふぎゅんっ!?」

 

 渚の頭に冬美が特大のゲンコツを落として引き離した。

 

「ごめんなさいごめんなさい!」

 

「悪気は無いんです!ちょっとコミュ力オバケなだけでぇ!!」

 

 彩那と璃里がペコペコと頭を下げ続ける。

 

「……」

 

 それを王女は茫然と固まったまま眺めていたのだ。

 

 

 

 

 

 これが、後にホーランド最大戦力になる勇者達と、彼女らの1番の理解者で親友となる王女の出会いだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




3話から5話投稿したら1日公開します。
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