その後の流れは実にスムーズだった。
シドが金髪のエルフに陰の実力者ムーブができると察してからやれ英雄の子孫だのその子孫にかけられた呪いだのあーだーこーだとよくありそうな厨二病設定を楽しそうに話し始めてしまった。
(誰が信じるんだよこんなの……)
いくら命の恩人の話であろうとなにそれ?で終わるだろうとこの時の俺は思っていた
「我が名はシャドウ!陰に潜み陰を狩るもの。そして彼は我が相棒のゼロ。全てをゼロに還す者だ。」
この腐れ厨二病は俺もディアボロス教団とかいう悪を打ち倒すというカスみたいな設定に巻き込みやがったのである。
(あーなんか嫌な予感がする……)
「……だから貴方たちが望むなら私はこの命をかけましょう!罪人には死の制裁を!」
俺が頭抱えてるうちに話進んでる。しかも信じてるよこれ。めちゃくちゃガチな顔であの子シドの手取っちゃってるよ。どなんすんこいつ
そこからの流れは早かったアルファと名付けられた少女は自分と同じように悪魔憑きの少女に苦しむ少女達を連れてきては、俺かシドがそれを治す。
そして中世ヨーロッパの倫理観で止まっているこの世界では悪魔憑きになってしまった子供たちは身寄りがないため厨二病設定の話を聞き行く宛てがないので、俺たちの仲間になるという負のループを繰り返していきちょっとした養護施設かと思うくらい人が集まってしまった。
そしてその子供たちが例のディアボロス教団の事をやけに事細かに報告してくるようになり、そこで俺の中に1つの仮説が出来上がった。
(あれ?これガチであるんじゃね?)
あった。
ゴリゴリにシドの設定まんまの組織があった。
アルファや他の子達がヤケに具体的な報告書を渡してくるもんだから自分で1度調べてみるとほんとにあった。
今更適当言ってたから俺ら知りませんでしたとかも言えないよねこれ絶対。だってめっちゃガチだもんこの子ら
なんか最初に出会った廃村拠点にしてシドが教えた2×4工法で世界観にあってない現代的な家とか出来てるし……俺らの事めちゃくちゃ慕ってくれてるし……
まあいっかどうにかなるでしょ(思考放棄)
そこから3年の時が流れどうにかなっていたのだがある事件が起きた。
シドの姉であるクレア・カゲノーが何者かに誘拐されてしまった。アルファ達によるとディアボロス教団による仕業だということが分かった。
「どこに攫われてるのかは分かってるのか?」
「ええ。シャドウによると恐らくこの地点に誘拐されているということがわかったわ。」
そう言いながらアルファが教団のアジトが複数記された地図のある場所を指す。
「シドが?」
「ええ。ベータからシャドウに報告に行った際にここだと1発で推理したそうよ。ここに隠しアジトがあるとすれば確かに色々と辻褄が合うわ」
シドが名推理??ありえないあいつが出来るのはせいぜい迷推理だけだ。
どうせ適当に言った場所をベータが深読みしてたまたま正解だったパターンだろう。てかいつもそんな感じだ。
「決行は今夜出そうよ。シャドウからは七陰と貴方も連れてくるようにと言われているわ。」
「……はぁ。了解」
「ふふ。頼りにしてるわ。ゼロ」
やめてくれ俺には痛すぎる……
----夜・隠しアジト----
バン!バン!と銃声が響く中2つの黒い影が銃弾を掻い潜り兵士たちを殺戮していく。
「デルタ。別に着いてこなくていいんだぞ。」
「いや!ゼロだけずるい!!デルタも遊ぶ!!」
「…………まあいいや。」
遊びってわけじゃないんだけど……まあデルタからしたら変わらんし何言ってもこの時のデルタはアルファくらいしか言うこと聞かせられんしなと諦めていると
「ゼロはわんちゃんに甘すぎだよ。」
それが少し気に入らないジト目のゼータが後ろから近づいてくる。
「じゃあ後で私の遊びにも付き合ってね♪」
「な!ゼータずるいのです!ゼロはデルタと遊ぶのです!」
「わんちゃんは今ゼロと遊んでるんだからいいでしょ!」
また始まった……
同じ獣人の二人だが犬と猫である2人はなにかと仲が悪い。だいたい意見が割れて喧嘩を始めてしまう。
「2人ともその辺にして起きなさい。幹部のお出ましよ」
二人が喧嘩を始めたタイミングでアルファや他の七陰達もあとに続き集まってくる。
そして前方から1人の男がこちらに向かって走って聞いてるが目の前にある大量の死体を目にしありえないという顔をしている。
「貴様ら……一体!!」
「あー俺らはシャドウガーデンっていうんだけど。おっさんはディアボロス教団の人で合ってるよな?」
「ディアボロス教団!!その名を!!何処で知った!!!!」
ディアボロス教団に反応した男は剣を構えこちらに向かってくる。
「俺がやるから手出すなよ」
七陰を後ろに下がらせスライムをガントレットに変化させ向かってくる男の剣を掴み攻撃を防ぐ。
「くっ!!離せ!!」
掴まれた剣を拳から引き剥がそうと力をいれるがビクともしないことに男は戦慄する。
(なんて力だ!掴まれた剣がビクともせん!しかもこいつ今どこからこのガントレットを取り出した!!なにかのアーティファクトか!?)
(この程度かよ。もしかしたら幹部クラスかと思ってまあまあ期待してたのによ)
戦慄する男とは反対に剣を掴まれた程度で身動きが取れなくなってしまった剣士にポールは興が冷めていた。
ポールはシャドウの無茶振りなどに振り回され常識人のような顔をしているがデルタの事が言えないくらい戦闘狂な一面がある。
(もういいや。終わらせよ)
そして空いている片方の腕で男の腹に思い切り拳を叩き込まれその衝撃に思わず男は剣から手を離し壁まで吹き飛びそのままバウンドしそのまま地面に倒れ膝を着きその場で血反吐を吐く。
「ガハァ!!!」
「殺しはしねぇ。知ってる事を吐いて貰わなきゃ困るからな。」
持っていた剣を投げ捨てポールは男の元に近づく。
「ちっ!」
勝てないと悟った男は懐から瓶を取り出しその中に入った錠剤を飲む。
すると男の魔力が急激に上昇し身体の傷も塞がっていた。
そして周りの死体から剣を奪いそのままポールへと再度攻撃を仕掛けるがポールは攻撃が自分に当たるよりも早く男の顔面に蹴りをいれそれを防ぐ。
「おもしれぇ手品だな?でも踏み込みが甘い。」
「シャァァァ!!!」
蹴りをいれられまた吹き飛んだ男は分が悪いと気づき剣を地面に刺しもはやまともな言葉すら発せれないまま床を割り地下へと逃げていった。
「あらら。逃げちゃった。」
「すぐに追います。」
「いいや。下にはあいつがいるし」
「はっ!だから別行動を!さすがシャドウ様!」
割れた床を覗き込みながらベータが男を追いかけようとするがポールがそれを止めガントレットにしていたスライムをしまう。
(相変わらずベータの深読みはすげぇーな。どうせあいつ迷っただけとかだぞ。)
「という訳で俺らは撤収。帰るぞ」
ベータのいつもシャドウへの心酔と深読みに若干引きながら俺は敵アジトを後にした。
それから2日後拠点にやってきたシドにそれからの事を聞くと教団の男を倒しクレアの拘束だけを解いて帰ると次の日にはクレアは自力で家まで帰ってきたらしい。
(弟が弟なら姉も姉だな……)
いくら拘束されていただけにしても普通15の女が自力で家に帰ってくるだろうか。と引きつつでもそんなまともな感性持ってるやつじゃなかったと思い出していた。
孤児であるポールは一応貴族であるカゲノー家とは普通関わることはないのだが、シドの友人として何度か会いその度に剣で試合をさせられていた。
だがシドのようにモブを目指していないポールは普通にクレアをボコボコにしており、負けず嫌いのクレアに目をつけられていた。そして姉弟揃って自分の頭痛の種であることを思い出し頭を抱えていたのであった。