1989年12月7日————五条悟・爆誕。
1995年某月某日————禪院直哉・自縛。
2005年12月22日————
2006年7月某日————夏油傑・覚醒。
2008年8月某日————虎杖悠仁・発見。
都合五回に渡り、呪術界に激震が走り続けた20年間。その最後を飾っていた虎杖悠仁の発見からしばらくは一応落ち着いていた筈の呪術界を久方振りに襲った大激震は、御三家のうち五条家と禪院家が乙骨憂太の祝言を以って正式に手を結んだ事————ではなく、その祝言の結果呪術界に現れた超新星の如き存在によるものだった。
2017年6月吉日————魔人『乙骨憂太』・変生。
祈本里香と乙骨憂太が互いに全存在を捧げる縛りを交わした結果、融合を遂げたその存在は半人間・半呪霊の肉体と一つの身体に強固に結合した2つの魂を宿した完全なる魔性のモノ。
平安の世に現れたというかの『両面宿儺』にも匹敵する理外の魔人と化した彼は、無尽蔵の呪力と模倣の術式を宿し、呪霊としての屈強さに人間として血の通った肉体を併せ持つ、『特級呪物の受肉体』に近い存在となっている。
そんな、乙骨憂太は現在————呪術高専のカフェテリアで、女子連中に囲まれていた。
いや、正確には囲まれているのは憂太ではなく……。
『————で、そのあとは憂太が優しくリードしてくれて————』
「へぇ、ヤるときはやるタイプなんだな憂太」
「そういう時に甲斐性って出るわよね。直哉の気遣いも嬉しいんだけれど、貴方達みたいな燃えるような若さっていうよりは大人の責任、みたいな感じなのよねウチの旦那」
「いやぁ、乙骨君と里香ちゃんには色々と興味深いものを見せてもらったよ。メロドラマ的にも、呪術研究的にもね。いやぁ、でももう歳かなー、甘酸っぱ過ぎるのを見ると羨むよりも微笑ましさが先に出ちゃったかな。————あ、それはそれとして是非! 夫婦共々あとで硝子ちゃんと私の共同身体検査を受けて貰うからね! ま、ブライダルチェックとでも思ってよ」
「呪霊と人間の後天的な融合は前例が無いからね。確かに保険医としては一度診ておきたいかな。……私は恋愛の機微とかはよく分かんないけど」
「妾もこのまま『
「おっと、聞き捨てならない発言だね理子ちゃん。でもガチで深刻な顔されるとツッコミ辛いからやめて欲しいな……」
「理子様! 大丈夫です! 私もどうにかなりましたし!」
「いや、美里さんはそろそろ自分の外見がおかしいの自覚したほうが良いんじゃねえの?」
「ウチの母親と似たような年頃なのに小皺一つも出来てないものね、美里さん。本当に42歳?」
「これで牛乳石鹸しか使ってないんでしょ? 美容パックしながら美里さんの事思い出すと世を儚んじゃうよね。————でも話戻すけど、金ちゃん私の事貰ってくれるのかなぁ? 里香ちゃん程じゃ無いけど私もハードル高いじゃん?」
「金次の甲斐性なら行けるだろ」
「むしろ反対者全員ブン殴って停学なり始末書なりになるんじゃ無いかしら秤先輩」
『愛があればハードルなんてぶっ壊しちゃえるよ! ね! 憂太!』
「そ、そうだね里香ちゃん————恥ずかしさで死にそう……」
そう。『呪霊だろうが男だろうが女の子として扱えば女のコになるんだよ。そういうもんだぜ、エヘヘヘヘ』と言わんばかりのおおらかさで『里香ちゃんも女子だし綺羅羅も女子!』との判定の元行われる女子会に『身体を共有している』関係で巻き込まれた憂太は現在、新婚初夜についてあれこれ聞かれてご機嫌な里香——受肉体である虎杖悠仁と同様に、融合した里香は憂太の体表に自由に口や目を出せる——によるあまりにも詳らかな新婚初夜レポートにより、精神的にノックダウンしていた。
そんな彼の元に、救い主が現れたのはたった今。
「しゃけしゃけ。行者ニンニク————おかか」*1
「待って狗巻くん! 行く! 任務行くから待って! 置いていかないで!?」
この機を逃すまいと脱出を図る憂太だが、わる〜い笑みを浮かべた真希が、その脱出を阻むべく茶々を入れる。
「おっと、腰振りで震度2を起こす憂太さんの御出陣か?」
「あらやだ、激しいのね憂太君」
「真希さん真依さん!? 誤解だよそれは!?」
真希がブチ込んだのは、ド下ネタ。それに乗っかる真依もからかい混じりのわる〜い笑顔を浮かべており、憂太はとんでもない風評被害を回避するべく反駁する。
確かに里香とアレした時に地震が起きたのは事実なのだが、その原因は憂太と里香の融合に伴う呪力爆発であって、憂太がとんでもなく激しく致したせいでは無いからだ。
だがしかし。そんな憂太の背を意外な相手からの言葉の刃が不意打ちする。
『でも私を激しく求めてくれたのは本当だもんね?』
「それは本当だけど語弊あるよ里香ちゃん!?」
下手人は、惚気られる隙を見せれば即惚気る新婚ホヤホヤ幸せいっぱいな乙骨里香ちゃん17歳。容疑者は『憂太の愛を自慢したくて』などと供述しているが、同時に憂太を振り回していたあの頃のイタズラな笑顔が憂太の脳裏に強く浮かんでおり、明らかにその発言はわざとであった。
そして、1年生のお祭り男代表が、こんなに面白そうなネタを逃がしてくれるわけもないわけで。
「真鯵!? 新香 落雁 木の芽!?」*2
「狗巻くん!? どうしよう五条先生の次くらいに悪ノリするタイプだったこの人!?」
「ずんだ〜!!!! 茹蛸 新香 マグロ 中華丼 きゅうり!!!!」*3
「何!? 憂太がチンコでユーラシア大陸を!? すげえ!!!!! 聞いたか金次!?」
「何!? 乙骨のチンコが特級呪具『妖刀星砕き』だと!?」
「違うからねパンダ君!? 秤先輩まで!? こんなに短時間で話の尾鰭が大きくなる事あるの!?」
なんて、狗巻の大声で寄ってきた
が、その後寮の風呂で『実際どんなもんなんだ?』と秤に腰に巻いたタオルを取られ、逆にしばらく『憂太さん』『憂太パイセン』『憂太の兄貴』などと呼ばれて風評がより悪化しつつ長期化することになるのは、もう少し先の話であった。