特級呪『縛』師 禪院直哉くん   作:黒山羊

11 / 143
第11話

 紺輝覇顕(ブルーレイ)

 

 その絶技が放たれた直後、薄暗かったトンネル内が真夏の蒼天の如き紺碧の極光に満たされ、遅れて広がった悍ましいまでの衝撃波が『黒い稲妻』を伴ってトンネル内の一切合切を破壊しながら巻き上げていく。

 

 台風、竜巻、核爆発。その全てを合わせて混ぜこぜにした様な破壊の嵐は、それでいてあくまで『余波』に過ぎない。

 

 その発生源、断熱圧縮され青く輝くプラズマと化した大気の壁に突撃し、その全身で『黒閃』を発動し続けながら疾駆する直哉の時速はおおよそ28Mm(メガメートル)

 

————黒閃。

 

————それは呪術ではなく、現象。

 

————打撃との誤差0.000001秒以内に呪力が衝突した瞬間、空間は歪み、呪力は黒く光る。

 

————つまり。

 

毎秒『240コマ』の投射呪法を重ね掛けし、0.000001秒の世界に突入した禪院直哉の一挙手一投足は全て、『黒閃』を生じさせるのだ。

 

そして、それは即ち、第一宇宙速度で疾走し、そのままでもマグニチュード3の地震を越えるエネルギーを帯びた直哉の放つ強大な運動エネルギーが『2.5乗』される事を意味している————! 

 

トップスピードに到達した直哉の黒閃が放つ総エネルギーは人類最強の核兵器ツァーリボンバ150万発分! 

 

地球が太陽から20日間に受けとる総エネルギーに匹敵する天文学的破壊力が、空間の歪みを伴って、一切合切を吹き飛ばす————! 

 

 トンネルも、ババァも、何もかもを『疾走』の余波だけで吹き飛ばし、直哉の走る先も、走った後もその全てを黒い稲妻と青い極光が消滅させる。

 

 ————直後、直哉の眼前に広がるのは、本来の廃トンネルの光景。その瞬間、直哉は投射呪法により一切のエネルギーを無視して周辺の大気ごと『停止』し、破壊的超スピードの影響を最小限に抑え込む。しかし、それが刹那よりもなお小さい極小時間であるとはいえ、『現実』に顕現した破壊の彗星は、帳に覆われた山をトンネル内から弾け飛ばし、とんでもない衝撃を受けた山は派手な崖崩れを引き起こした。

 

「やってもた……活断層の せいにしよ」

 

 などと苦笑しながら土砂崩れの中から飛び出して頭を掻く直哉は、先程まで音速の23倍で駆けていた人間彗星とは思えぬ程に『普段通り』の14歳。

 

 現代最強の術師が五条悟ならば、現代最速の術師は紛れもなく禪院直哉。

 

 その実力を如何なく発揮した『特級術師』は、一応見つけておいた『ババァの残穢』を口にして盛大に顔を顰めつつ、崩れた旧国道をテクテクと下っていくのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。