特級呪『縛』師 禪院直哉くん   作:黒山羊

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第112話

「大人しくしてたと思ったらまた湧いてきたんだあのゾンビ。憂太がやっつけたのは多分アレだね、斥候じゃない? 流石に10年前とキャラ変わってないのは怠慢すぎでしょ。在庫処分じゃなきゃ逆に引くわ」

「しかし……何故今になって『Q』が? 星漿体事件の時は確か、天元様を手中に収めて世界征服とかいう冗談にしてもセンスない感じのバカみたいな目的だったよね彼等」

「悟、傑、職員会議は議事録も取るんだ。もう少し真面目に話せ。……だがまぁ、2人の言う通りだろう。打倒した『ビッツ』と名乗る個体の似姿を憂太と里香の双方に『構築』させてみたが、10年前高専を襲った個体と全く同様の見た目だった。……おそらく、『Q』の本格的な動きはこれから起こる。そのターゲットは幾つか考えられるが……伏黒、日下部、九十九、お前達はどう見る? ベテランの意見が聞きたい」

 

 そう告げた夜蛾の声に始めに答えたのは、溜息を吐いた日下部篤也。教師歴11年の彼は確かにベテランではあるが、両隣の伏黒甚爾と九十九由基をチラリと見やるその顔にはうんざりとした表情が浮かんでいる。

 

「学長、そこでただのヒラ教師の俺をバケモノ共と一纏めにしないで貰えませんかね……」

「日下部センセーはシン・陰流最強の男なんだし別に良いじゃん一緒でも」

「それはお前らが言いふらしてるだけの奴だろ五条……で、見立てでしたっけ。まぁ、天元様狙い、呪物狙い、何かの儀式狙い、ざっくりこの辺じゃねぇんですか?」

 

 指を折りつつそう答える日下部に対し、首肯を返すのは、きっちり計画を練った上で有り余るフィジカルで全てを薙ぎ倒すスーパーゴリラ伏黒甚爾と、同じく平時はインテリ系なのに戦いになると泥臭いステゴロ格闘戦をしがちなスーパーメスゴリラ九十九由基。

 

 2頭の森の賢者の同意を得てホッと一息つく日下部だが、そんな彼に対し、まずは甚爾が意見を述べる。

 

「俺も大体同意見だが……日下部が並べた中なら呪物狙いがカタいだろ。天元を狙うにしちゃ10年もチンタラ待つ理由がねえし、儀式なら勝手にやってろっつう話だ。俺らに喧嘩売る旨みが無え」

「或いは全て、というのはどうかな? 高専から呪物を盗み出し、天元を抑え、儀式を行う、みたいな」

「いや、九十九。それは流石にハードルが高すぎじゃねえか? 組み合わせるなら現実見て2つまでだと思うんだが……」

「なら、天元を抑えて儀式、呪物を抑えて儀式、のどっちかだろうな」

「ならいっそ全てを警戒するのがやっぱり良いんじゃないかな? せっかく今は私も含めて特級が7人もいるんだ。一級術師の層も厚いし、手分けしても良いんじゃない?」

 

 そう述べた九十九の意見に、『まぁ確かに』と納得した様子の2人。それを見て、意見を聞いていた夜蛾は、その視線を今度は夏油と五条に向ける。

 

「成程。三人の意見はわかった。悟と傑はどうだ」

「手分けで良いんじゃね? 直哉も声掛けりゃ来るでしょ」

「まぁ私も同意見ですね。戦力に不足があるなら私の精霊である程度は調整できますし」

「ふむ————では、我々東京校は、天元様、呪物、儀式の三手についてそれぞれ手を分けて対策を講じる事とする。割り当ては————」

 

 そう言いかけた夜蛾に対し、スッと手を挙げるのは九十九由基。

 

「学長、それなら私は天元を担当しよう。コレでも元星漿体だ、天元の状態にはかなり敏感な自信があるよ」

「なるほど、道理だな。では天元様の守護については九十九を中心として組む事とする」

「なら俺も天元だな。理屈で言やぁ薨星宮にこん中で一番早く行けんのは俺だろ?」

「伏黒センセーは空性結界素通りだもんな。そりゃ一番早いわ」

 

 などと、ダブルゴリラが揃って天元の護衛を志願する事態に少しばかり思案を巡らせる夜蛾だが、まぁ2人の主張に妙な部分はなく、両者の意見は無事に承認された。

 

「では伏黒も天元様の護衛に回って貰おう。そして全国各地の高専が管理する呪物と忌庫の呪物の守護は、傑に任せる。頭数が必要な任務でお前に勝る者はないからな」

「夜蛾学長、そういう事なら私に加えて悠仁と冥冥さんも呪物担当に組み込んで欲しいんですが。『蠱螫飼』も『黒鳥操術』も数を頼みにした監視という点では私の『呪霊操術』より上ですから」

「無論そのつもりだ。そして、儀式の線は————悟に任せる」

「はいはい。まぁ俺っていうか俺と直哉でしょ? 五条と禪院の抑えてる霊地を含めて色々見て回ってはみるけどさ……あんまり成果は期待しないで欲しいかなー、儀式なんて術者のやりよう次第でどこでも出来かねない訳だし」

「その場合でも、お前と直哉なら日本全国何処にでも瞬時に駆け付けられるだろう?」

「いやまぁそうかもだけど……じゃあ伊地知は俺と直哉のパシリな!」

「えっ……!?」*1

「まぁ妥当か」

「え゛ッ゛!?」*2

「ではその他の人員の割り当てについては追って連絡する。今はまず、初動だけでも取り掛かってくれ! 以上!」

 

 

 * * * * * *

 

 

「とか、今頃高専のみんなはやってるんだろうねぇ。いやー、乙骨くんも思った以上に面白くなってたし、本当に楽しみだよ」

 

 なんて、地下深くのアジトで楽しそうに語るのは、『Q』の首魁であるウェッセン————の身体を随分昔に乗っ取った平安の呪術師・羂索。

 

 そしてニコニコと実にご満悦な彼に対し、不満そうな目を向けるのが、協力者としてなんだかんだで10年間羂索の計画に加担している万と裏梅だ。

 

「羂索、アンタ本当に大丈夫なんでしょうね? 私と宿儺の愛の結晶が掛かってるんだからちゃんとしてもらわないと困るわよ?」

「面白い冗談だな万。お前と宿儺様の間に愛などある訳がないだろう。……しかし、宿儺様について気掛かりなのは事実だ。私達の胎に宿儺様を授かるという話、忘れたとは言わさんぞ」

「忘れてないからこうして宿儺の指の確保に動いたんじゃないか。君達もそれは充分わかってると思ってたんだけどね。……君達の卵子を元に、保管してあった虎杖仁の精子を掛け合わせた宿儺の卵の準備は上々。宿儺の誕生を再現する為に喰わせる用の受精卵も用意したから合計20個! まぁなかなか大変だったけど、どうにか揃えた私を褒めてくれても良いんだよ? 並行して高専の目を盗んで強力な呪霊達と契約して死滅回游に組み込んだり、呪物用の受肉体になる胎児を産みまくったりで本当に大変だったんだから! いやマジで、君達が胎を貸してくれればもう少し早かったんじゃない? 見てよ私の予備の身体*3。卵子が切れるまで使いまくったせいで、もうお腹の皮ダルンダルンで戻らないんだよコレ。まだ使えるかなと思って一応取ってるけど」

「バカを抜かすな羂索。私が宿儺様以外を産む訳がないだろう」

「それは私も同じね。愛する夫の為ならまだしも他の呪物連中の受肉なんざ知ったこっちゃないわよ」

「ははは、さっきから冗談がキツイな万」

「ふふふ、さっきから一言も冗談なんて言ってないわよ? 裏梅」

「あ゛?」

「お゛?」

「全くも〜、我が強いんだから……。まぁでも、後は宿儺の指だね。天元はまぁ、もうどうでも良いかな。アイツ面白味ないし……死滅回游の起点は浄界じゃなく自作する予定だから、それについては同時変更で儀式を頑張らなきゃだけど、そっちは最新型のビッツ達でやっちゃう予定。宿儺の指の回収の為の陽動も兼ねて派手にやっちゃおう! 回収最低目標は10本、回収した指が集まり次第宿儺の受肉の為に2人には受胎してもらうから、そのつもりでヨロシク〜! じゃ、早速だけど————挑戦状を叩きつけに行こうじゃないか」

 

 そう告げてニンマリと笑みを浮かべる羂索。その命を受けて数名のビッツが敬礼と共に駆け足で部屋を去る中、裏梅と万のキャットファイトの音だけが、地下の穴蔵に反響しているのだった。

 

「……ねぇ、私がせっかく格好付けたのに締まらないからやめないそれ。鼻の穴にお互い指突っ込むとかガチの女の喧嘩じゃん。両方ともすげーブスだよ今」

「んぎぎぎぎ」

「ふごごごご」

「いや聞いてないし……」

*1
その時、議事録係として同席していただけの伊地知に電流走る。

*2
哀れ伊地知=サンの予定は爆発四散! サヨナラ! 

*3
可哀想な虎杖香織さん

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