特級呪『縛』師 禪院直哉くん   作:黒山羊

123 / 143
第123話*

 薨星宮に禪院真希*1を派遣して伏黒甚爾と九十九由基*2を呼び戻し、行われるのは高専上層部と御三家、そして特級術師と有力な一級術師を交えた大会議。

 

 その場に居る術師全員の傍らに浮かぶ『チビッツ』は『チーム外の泳者(プレイヤー)に他チームの情報を共有することは総則(ルール)に反する為不可能です! 総則(ルール)は死滅回游と泳者(プレイヤー)間に結ばれる『縛り』である為、ご安心ください!』という宣言をしている為、一応無害だろうとの判断の元無視する事で一旦落ち着いており、チビッツ達も話しかけられない限りは基本的に無言な為、邪魔にはなっていない。

 

 そんな、会議の議題は現在の情報共有。中でも現在までにチビッツを詰問して判明した『全10種の総則』は、最重要議題に挙げられる。

 

 その内訳は、下記の通り。

 

 ① 死滅回游の開始以後、日本列島に存在するすべての『呪術の才能を持つ生物』は死滅回游の泳者(プレイヤー)として登録される。この効果は死滅回游終了まで永続する。

 

 ② 死滅回游の開始から7日間を猶予期間に定める。この間コロニーの内外を問わず、全ての泳者(プレイヤー)間での戦闘は禁じられる。違反者からは術式と全呪力を剥奪する。

 

 ③ 死滅回游の泳者(プレイヤー)からは死滅回游維持のため、最大呪力出力の8割の呪力が常時徴収される。ただし、コロニー内の泳者(プレイヤー)は、この徴収の対象外とする。

 

 ④ 死滅回游の各コロニーに侵入する場合は、各コロニーの外縁から100m以内の位置で侵入の意思を表明する事で、内部に侵入できる。この際、侵入先は稼働中の全てのコロニーの中から任意で選択可能なため、泳者(プレイヤー)は最寄りのコロニーで参加表明を行うだけで良い。また、死滅回游開始時点でコロニー内にいる生物は、一度コロニー外へと転送されるため、内側に戻る場合は死滅回游に参加しなければならない。

 

 ⑤ コロニー内からコロニー外への移動は不可能である。内部から外部に移動しようとした場合、見えない壁に阻まれる。この移動不可能な法則には、物理的な弾丸や呪術によるエネルギーなども含まれる。一方で、コロニー外からコロニー内への移動は基本的に自由である。ただし、呪術の素養を問わずコロニー内に侵入した生物は自動的に泳者(プレイヤー)に登録される。

 

 ⑥ 7日目以降にコロニー内に存在する泳者(プレイヤー)勢力が1勢力以下になった時点、或いは死滅回游開始から49日が経過した時点で、コロニーの外殻は完全に封鎖され、内部に大敵(レイドボス)『両面宿儺』が顕現する。その後、内部の勢力が1勢力以下になった時点で、コロニーは稼働を停止する。

 

 ⑦ 全てのコロニーが稼働を停止した場合に限り、死滅回游自体は稼働を終了する。

 

 ⑧ 死滅回游側の用意した泳者(プレイヤー)である『受肉化術師』『契約呪霊』に関しては、本人の希望に従い死滅回游開始時点で日本国内の任意の地域へと転送される。

 

 ⑨ 泳者(プレイヤー)はヒト或いは呪霊の殺害により『点』を獲得できる。配点は呪力の才覚があれば5点、それ以外は1点である。泳者(プレイヤー)は100点を消費する事で、死滅回游に新たな総則(ルール)を追加できる。ただし、追加総則は基本となる10の総則に反してはならない。

 

 ⑩ 死滅回游の運営端末であるチビッツは特定の泳者(プレイヤー)のみに有利となる行動や泳者(プレイヤー)への背信行為を行うことはできない。ただし泳者(プレイヤー)によって追加された総則が特定の泳者(プレイヤー)にのみ有利な条件であった場合は、その総則を優先する。

 

 そんな風に明文化され、プロジェクターで映し出されるその条件に対してまず最初に口を開くのは、頭の後ろで手を組み、チェアをギコギコと漕いでいるお行儀の悪い五条悟。

 

「これアレだね。チームバトルも可能なんだろうけど、少数精鋭じゃないと不利になる一方じゃない? 弱い奴は得点源にしかならないでしょ」

「言い方が悪いよ悟。でも確かに、余計な人員の投入は記載されている『受肉化術師』や『契約呪霊』に得点を献上するだけになりそうではある。事前にチームをしっかり組んだほうがいいだろうね」

「ちゅうてもな チームワークや 連携が 出来るやつとか ほぼ居らんやん」

「呪術師って基本エゴイストだからねぇ。ま、僕と傑と直哉は単身でいいでしょ。本気出すなら味方が邪魔になるタイプだし僕ら」

 

 そうあっけらかんと『伝説(両面宿儺)』とタイマンを張ると宣言する五条と、ため息を吐きつつもその発言を否定しない夏油と直哉。その態度に思うところ*3が無いと言えば嘘になる夜蛾ではあるが学長という彼の立場からすれば彼らの意見を受け入れざるを得ない。

 

 何しろ、この儀式の内情が全て真実だとすれば、全国10ヶ所で両面宿儺の完全顕現を許すことになるからだ。

 

「……高専の忌庫に収容されていた宿儺の指を含め、高専側が所在を把握していた全ての指が消失している以上、宿儺の顕現は事実と仮定して動く他ない。悟の言う通り、特級術師には全力を行使してもらう必要があるだろう。……しかし、領域による必中効果を『窃盗』に応用するとはな」

「まぁ、大概の場合やろうとは思わないよね。で、その両面宿儺だけど……『チビッツ』、何かレイドボスのギミックとかあるわけ? ゲームみたいにさ」

 

 

【挿絵表示】

 

 

『はい、泳者(プレイヤー)の質問にお答えします! 死滅回游における両面宿儺は、10体の総体で『宿儺の指20本分』の両面宿儺として顕現します! ただしこの概念定義は両面宿儺が1人でも生き残っている限り有効な為、宿儺の討伐数が増えるほどに残存する宿儺が強化されます! 例を挙げると、初期は1体につき指2本分ですが、残り5体の時点で指4本分に強化されます! 加えて宿儺の1個体が死亡した場合、その経験と呪力は残存する全個体に共有されます!』

「はいクソボス〜。だいたい四人の公王*4かよ。いやまぁ厳密には動き方違うけどさぁ!」

「悟、ダクソネタは学長のお二人には通じないんだしやめたほうがいいと思うよ? お年寄りには優しくね。まぁでも、聞く限り確かに手強そうだ。最初は最も弱く、徐々に難易度が上がっていく。そう聞けばまぁ『ボス』としての配役的には妥当なんだろうけど、隔絶された他コロニーの状況が影響してくるのは読めなさすぎてどうしようもない」

「そうなると 最後の最後、最強の 宿儺の相手 誰がするんや? 取り敢えず、一番槍は 俺として。俺の後詰めは 誰か欲しいで」

「何で直哉が最強の宿儺の相手を最初にするの確定してんだよ。……いや、そうか。……直哉お前、大丈夫か?」

「正直な かなりキツイわ 状況が。ルールをな 聞いた時点で 選択肢 俺にないねん 残念ながら」

「……直哉を最強の宿儺に当てるために万全の状態で温存する、と僕達が判断しない場合、直哉はどうなる?」

「コロニーの 仕組み自体が 不向きやし 俺が一番 先に死ぬやろ」

「いちいち縛りに抵触するか判断しないと戦えないもんなお前。タイマンか、全員敵かの状態の方がいいってわけだ。……なら、直哉は温存だな。ま、僕達最強だし? 僕と傑で宿儺9体ぶっ殺して直哉が美味しいところ持っていって終わりでいいでしょ」

 

 なんて、気軽にそう告げる五条に対し、溜息と共にその案を却下するのは、夜蛾学長。

 

「悟。イラついた時に軽薄に振る舞うのは悪癖だぞ。……正体不明の泳者(プレイヤー)達の危険性を考慮すれば、最終コロニー以外は同時攻略を行うべきだ。両面宿儺を解き放つ事を目的とした者が存在しないとも限らない上、シンプルに泳者(プレイヤー)達の質が低く、両面宿儺が全てを鏖殺してコロニー外に放出される恐れもある。それ以前に、最悪の場合7日目時点で無人のコロニーが発生しかねない」

「あー、そうか。コロニーへの参加が自由参加な以上、戦いを求める泳者(プレイヤー)なら人数の多いだろう京都か東京を目指すよな……」

「無人コロニー問題が最も問題なのは言うまでもないな。そして、高専勢力しか侵入しない場合でも、7日目時点でコロニーに即座に両面宿儺が顕現する」

「コロニーが10、特級が7*5。そうなると自然、コロニーが3つ余る計算だ。どうする?」

「それについてはテロ平定同様、戦闘力において特級相当の一級術師を複数派遣する他ないだろうな」

「……なぁ夜蛾のオッさん。直哉の奴が攻め込む最終コロニーは鹿児島でも良いか?」

「……理由は?」

「鹿児島コロニーに適当に呪詛師と呪霊を放り込んで時間稼ぎ、あとは直哉の突入前に北朝鮮から核ミサイルをブチ込む。そんぐらいのお膳立ては許されんだろ。あとアレだ。死刑囚満載の護送車でも準備して『コロニーの外殻を越えれば』それだけで泳者(プレイヤー)の大量確保完了だろ?」

「……良いだろう。無期封印刑の呪詛師と、死刑囚、高専で調教している呪霊を鹿児島コロニーに投入しておく。しかし、ミサイルの工作は————」

「そこは任せろ。裏には顔が利くんでね。あの国がド貧乏なのは知ってんだろ?」

 

 などと、多様な意見が出される中で、徐々に纏められていく死滅回游への対応。両面宿儺完全顕現を阻止し、世界を救うべく頭を悩ませる彼らの話し合いはその後、夜遅くまで続く事になるのだった。

*1
空性結界を一走りで抜けられるため一番早い

*2
分身体。何かあったのは察した真希だが、取り敢えず大丈夫と主張する九十九を信用して深くは触れなかった。

*3
元担任教師としての心配的な意味で

*4
フロムの誇る名作『ダークソウル』の難関ボス。正式名は『四人の公王』なのだが大体四人と五条が言った通り、『群体としての総体力と個体ごとの体力が別個に存在する』影響で、総体力を削り切れるまで無限湧きする。

*5
五条、夏油、直哉、九十九、虎杖、伏黒、乙骨

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。