特級呪『縛』師 禪院直哉くん   作:黒山羊

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第124話

 多数の意見が飛び交い、ああでもないこうでもないと皆が頭を悩ませていた会議の翌日。

 

 持ち前の走破力で既に九州入りした直哉は、早々にコロニー入りし、拠点の確保を行なっていた。

 

 コロニーの外殻閉鎖を考慮して、核攻撃前からコロニー内に潜伏することを決め込んだ直哉が拠点に選んだのは、桜島山中。核攻撃は大丈夫なのか? と思われるかもしれないが、それについては直哉には秘策が存在していた。

 

 攻撃の時刻は死滅回游の戦闘許可開始直後。方法についてはあの後詳細を詰めた結果北朝鮮案を破棄し、甚爾*1と九十九*2と五条*3というドリームチームが協力してアメリカ合衆国から『強奪』*4した『B28核弾頭』を用いることが決定しており、甚爾の工作で時限爆弾に改造されたその爆弾は、コンクリートに埋める形で偽装され、五条のワープによって既に鹿児島中央駅の残骸の中に忍ばされている。

 

 呪術を一切用いぬその超兵器は、呪術知識しか持ち合わせていないであろう『過去の術師』にはおそらく効果覿面。だが、爆発するとわかっていれば、それをやり過ごすのはそう難しい話ではない。

 

 直哉が潜伏先に選んだ『桜島海軍基地跡』の様に地下壕を張り巡らせた軍事シェルターに引き篭もっていれば、まず間違いなく核爆発の爆風や熱波は回避可能。

 

 そうなればあとは放射線の影響だが、コレについては結局のところ『皮膚を貫通して体内に影響してくる火傷』に近い現象なので、常時反転術式を回している直哉であれば気にする程のものではない。

 

 それよりも直哉が重視しているのは、日課の『苦行』を壕の内部で行う為の下準備だが……コレについては、ガラ空きになっていたホームセンターから木炭や着火剤を拝借できた為どうにかなっている。食事については『蟲』を飲んでおり、この任務の最中なら気にする必要はない。

 

 かくしてひっそりとその時を待つ事になった直哉は、壕の奥深くで静かに身を潜めて宿儺討伐の機を伺うのであった。

 

 

 * * * * * *

 

 

 同時刻、仙台。本人たっての願いで地元仙台に展開されたコロニーへと侵入した特級術師『虎杖悠仁』は、荒れ果てた市街を眺めて気持ちを沈ませつつも、その無念を繰り返さぬ様にと、頬を張って気合いを入れていた。

 

 そんな彼に対して、実に気安く語りかける男が1人。

 

「お! その制服。お前が呪術高専の術師って奴か? 一騎駆けとは剛毅だな!」

「ッ!?」

「おいよせよ、今ここで事を構えたところで二人纏めて総則違反でくたばるだけだろ? ————俺は石流(いしごおり)(りゅう)。400年前、伊達藩に居たモンなんだが……仙台が400年経ってどうなってんのかを観に来てみりゃこのザマってわけだ」

「アンタが受肉術師……!?」

「意外か? ま、当世風の格好だもんな、無理もねえか。元々は月代剃って髷を結ってたんだぜ?」

 

 などと言いながら、「この髪も似合ってんだろ?」などと言いつつ立派なポンパドール*5をなでつける革ジャン姿の青年は、一見すれば現代人にしか見えない。

 

 だがしかし、術師としての悠仁の目は、彼から立ち昇る呪力量が『魔人化前の乙骨並み』であると即座に見抜いている。

 

 だが、確かに総則の影響で泳者(プレイヤー)同士での戦闘が禁じられている以上、構えは無用。一応気は張りつつも、情報を少しでも引き出すべきだと判断した悠仁は、彼との会話に応じるべく、言葉を紡ぐ。

 

「……アンタが受肉したのは、なんでだ?」

「ん〜。まぁ、一回目の人生も悪かねえモンだったんだがな。飯で言えば腹八分目。満腹には程遠いボチボチなモンだったのさ。……だから、俺は羂索の話に乗った。遠い未来に、惜しむ事なく全力を出せる戦場(いくさば)を用意するって約束でな」

「……両面宿儺復活が目的とかじゃないんだな」

「そういう奴も居るのかも知れねえが、少なくとも俺は違うな。俺は全力で人生を味わい尽くしたいんであって、呪いの王に喰われたい訳じゃねえ」

 

 そう言って、溜息を吐く石流に対し、根が善人な悠仁の脳裏に浮かぶのは、『共闘』の2文字。

 

 だが、それを見透かした様に笑う石流は、チッチッチと人差し指を振って、悠仁に1つの提案をする。

 

「今お前、俺と協力出来るかも、とか思っただろ」

「おう、思った!」

「いや素直かよ。……まぁ、そうだな。無理って訳じゃねえが、条件がある。————死滅回游の本戦が始まったら、全力で喧嘩して勝った方に負けた方が従うってのはどうだ?」

「タイマン勝負ってことか? ……なんか見た目通りだなある意味」

「そうか? 外をブラついてる時に草紙屋*6っぽい店でイカした男の絵があったんで真似ただけなんだがな。で、どうなんだ?」

 

 そう問いかける石流に対し、暫し瞑目し兄弟と相談した悠仁が返すのは、威勢のいい台詞。

 

「————いいぜ! ボコボコにしてやる!」

Sweet(スイート)! そう来なくっちゃな!」

「……でもさ、後5日もあるぞ?」

「ま、それまでは400年後の仙台を眺めるとするさ。何もかも吹っ飛んだ訳じゃ無さそうだしな。……丁度いい、お前案内してくれよ」

「なんでだよ!?」

「さっき、焼け跡見て渋い顔してただろお前。ありゃ、この街に思い入れがある奴の顔だ。詳しいんだろ?」

「……繊細なのか豪快なのかわかんねぇ奴だなアンタ。まぁ良いよ。無人だけど、見るくらいなら」

 

 そんな言葉を交わす悠仁と石流は、仙台の街を歩きつつ、言葉を交わす。そんな中、悠仁から齎された『受肉術師には個々人の目的があり、宿儺の関係者ばかりというわけではないらしい』という情報は、高専側にとって不確定要素でもあり、同時に希望ともなるのであった。

 

*1
兵器の知識担当

*2
神の視座による座標同定

*3
ワープによる強奪担当

*4
とりあえず弾頭を抜き取ったICBMに『偉大なる将軍様に栄光あれ!』とハングルで落書きしておいたので、1週間程度は欺瞞出来る予定。

*5
よく『リーゼント』と混同されがちな突っ張りヘア

*6
大衆向けの本屋のこと。石流が見つけたのはブックオフ

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