どういうことなの……?
「ぎゃはははははは! 真希がゴリラみたいなオッサン達の親玉になってるwww ボスゴリラだボスゴリラwww」
なんてクソデカい声で爆笑するのは、高専のスクリーンに投射された冥冥の使い魔からの映像を眺める五条悟。
彼が突入する前の下調べとして真希に偵察を頼んでいたのだが、曲者ながら明らかに『強者』である三代と大道を真希が図らずも従えたことで、彼は自身の担当コロニーを品川へと変更している。
そしてその横で腹を抱えて声にならない笑いを発している夏油の担当は京都。
どちらの場合も希望通り当該コロニー内の高専側勢力は五条と夏油のみ。死滅回游の猶予期間満了30分前にコロニー入りする手筈となっている。
つまり彼らは今、純粋に暇なのだ。故にこそ冥冥の実況を娯楽として眺めているのだが、そんな彼らが次に注目した場所は、盛岡だった。
* * * * * *
死滅回游。それは過去から現代までの呪術師達による呪い合いであり、大儀式。
だが————その触れ込みにあまりにも似付かわしくない外観の集団が、廃墟と化した盛岡駅で隊伍を組んでいた。
その総数、およそ600。身の丈3mに達する鋼鉄の巨人による
元より天与呪縛によって異常な運用効率を誇る彼の『傀儡操術』は、今この盛岡において最大最強の戦力となっているのだ。
街の残骸を回収し、分別し、加工して組み立て、新たな『呪骸』を隊伍に加えていく彼らは蟻の様に規則正しい動きで盛岡を制圧しつつも、決して『戦闘』を行わないというある種ハッキングじみた方法で死滅回游の攻略を猶予期間中に開始しており、生じた余力で陣地構築すら開始し始めているその働きぶりは、まさに『理想化された軍隊』のそれである。
そんな陣地に設けられた屯所にて、銃架の具合を確かめつつ満足げにしているのは、重機関銃を担いだ加茂憲紀と、呪具『エクスプレス』*2を担いで珍しく戦闘モードな家入硝子。
何やらもうこのコロニーだけ死滅回游ではなく第三次世界大戦を始めようとしている気がするが、今回の事態の平定に際して、高専両校学長と呪術総監の連名に加えて『御璽』を押された『死滅回游平定特例措置』が発効されたことで、今件にあたる呪術総監部麾下の全ての呪術師に『コロニー内に存在するあらゆる資材の徴発、接収、破壊』が許可されている為、盛岡を軍事基地に改造する幸吉達を阻むものは何も無い。
強いていうなら他のプレイヤーが『阻むもの』になるのだろうが、彼らは死滅回游そのものによる『猶予期間』の影響で幸吉が操る呪骸に手出しすることが叶わず、誇示されるその圧倒的な武力に対して服従の道を選ぶものもいる始末。
その代表例たる青年が、今家入の咥えたタバコに火をつけてヘラヘラとしている甘井凛。
体内の糖分を増幅させて外部に出力できるという、ちょっと面白い術式を持つ彼は、死滅回游の莫大な呪力に中てられて呪術に覚醒した現代人。仙台出身の彼が盛岡にいる理由はコロニー侵入時のワープ機能を利用して、壊滅した仙台から逃げ出そうとしてのこと。
東京や大阪の被害はニュースで見たので都会は回避、そしてある程度土地勘がある場所となると……という割とちゃんと手持ちの情報で考えた上で盛岡にやってきた彼は、盛岡も仙台並みに壊滅しているという事実に絶望。
そんな中、完全武装の戦闘ロボット軍団に発見されて速攻白旗を振り、現在に至っているというわけだ。
一方で、頭からプロペラを生やした男と髪がジェットパックになる女が上空からこちらを偵察してきているのも『エクスプレス』のスコープで硝子が把握済み。
その関係で、製造される呪骸のラインナップに新たに呪力ジェットエンジンを備えた飛行型が加わっており、更地になった盛岡駅周辺には離発着場も建造中。
かくして『戦いは数だよ兄貴!』とばかりに戦場における一つの真理を体現する幸吉の呪骸軍団は、着々とコロニー攻略に備えて歩みを進めていくのだった。