「本当に大丈夫なのか? お前は虎杖と違って
「大丈夫。私は必ず恵の役に立ちます!」
「そこは心配してねえよ。俺が心配してるのは————」
『私が華を傷つける事を恐れているのだろう? 愛されているな華は』
「な、何を言ってやがるんですかこのバカ天使は!?」
なんて顔を真っ赤にした来栖華の叫びが響くのは、ズタボロになった大阪の街。
特級呪術師である伏黒恵と、体内に封印されていた過去の呪術師が目覚めたことで『特殊な術式』に覚醒した来栖華の両名が投入されたこの街は、関西有数の大都会ということも相まって多くの術師や呪霊に溢れており、半ば魔界と化している。
だが、そんな魔界の魑魅魍魎どもも、恵達の周りに近づくことはない。
史上初の、完全な十種影法術使い。その威光が決してまやかしではないと証明するように、恵が己が武力を誇示するように展開しているのは、総数10体の式神達。
幼少期から、ある日は『恵が
その鍛え上げられた実力でもって全ての式神の同時顕現が可能になってからは、
まぁ、せっかくの機会を無駄にするのもアレなので適応の肩代わりは常時恵が発動しており、『天使』を目覚めさせた華の第一声が「恵とお揃いですね!」だったレベルで、彼の頭上にはいつも
とはいえ、エンジェル感マシマシなペアルックを喜ぶ趣味は恵にはなく。むしろ突然出現した天使の輪と『天使』本人への警戒が、その表情を渋いものへと変えてしまい、冒頭のちょっとギスギスした会話に至るという訳だ。
だが、恵とてわかっている。天使の術式は、対宿儺戦において強力無比なもの。『あらゆる術式の消滅』というバカ強いにも程があるその術式は、味方であればこの上なく頼もしく、そして敵であるなら想像したくもないほどに恐ろしい。
だからこそ、恵が出した結論は————。
「……信用に足る要素も、敵対するに値する要素もない以上、とりあえずはソイツを味方だと思う事にする。ただ、条件がある」
『私の術式を君の
「……お前がそこまで宿儺に拘泥する理由は?」
『1000年前の因縁、といっても曖昧か。いやなに、『神の理に反する! 堕天討つべし!』と決起したものの力及ばず、
「神の理ってのはなんだ。教祖でもやってたのか?」
『ああ、私の人生哲学のようなもので、別段宗教的教義などではないよ。そして難解なものでもない。隣人は尊重して然るべきだろう? 貪り食うなど言語道断だ』
「それはまぁ……道理だが……」
なんかこの調子狂う感じ既視感あるな……と思いを馳せる恵の頭に浮かぶのは、血の繋がらない真面目な姉の姿。補助監督見習いとして伊地知の指導の元、先輩である新田明の手伝いをこなしている彼女は、「当たり前のように他者を助ける」ことができるタイプの人間だった。
「————まぁ良い。
『了解。仮称『天使』の術式に対する解析と適応を開始します』
『準備は良いようだね。さぁ華、術式を————どうしたんだい?』
「————恵がまた津美紀姉さんに惚気をしてる気がします! 別に第二婦人でも良いですけど、平等に愛してください!」
「結婚以前に付き合ってないよな俺達!? というか津美紀は姉貴だぞ!?」
「血の繋がらない姉とか絶対結婚するやつでしょう!?」
「お前も津美紀も身内としか思えねえって言ってんだろ!?」
『……よくある痴話喧嘩なのかな、コレは。いやしかし、華にとっては手強い相手だな、伏黒恵』
『回答。同様の口論は通算184回目です。また、伏黒恵は来栖華、伏黒津美紀を目視した場合にオキシトシンおよびアンドロゲンの分泌量が有意に増大する傾向にあります。また、両者との接触時に視線を胸部および臀部に向ける回数は例年増加の傾向にあります。以上の理由から、両者を性的対象と見做さない発言は虚偽に当たるものと推測されます』
『ほほう?』
「
「ナイスアシストですよ
「絶対やめろよ!?!!?」
なんて愉快なやり取りを交わす恵と華。未だ中学生である彼等の青春は、まだ始まってすらいない。
己の未来を掴み取るべく奮起する彼等の目には、死滅回游平定への確かな熱が浮かんでいた。