高専勢力による、各コロニーの制圧作戦。順調に推移するその計画の内、最も早く制圧を完了しつつあるのは、意外にも真希のいる東京コロニーだった。
「刀ァーッ!」
「さっきくれてやっただろ!?」
「相撲やろう! 相撲!」
「何回目だよオマエ!? *1」
「真希ちゃんも大変だね!」
「はぁ……声のデカいやつしかいないんですかね、このコロニー」
なんて、ちょっと、いやかなりギャグめいた空気感ではあるが、ムチムチな魔法少女がムキムキな野郎4人*2を伴っているというちょっとヤバ目な絵面の彼らは、真希の『呪力から完全に脱却しているが故に
それでもなお、コロニーの中に宿儺が顕現して来ないのは、絶えず人が参加してくる東京という立地故のこと。
そんな訳で、彼らは残敵を掃討するべく、東京コロニーを隠れもせず堂々と歩いているのだが……。
そんな彼らの前に曲がり角から姿を現したのは、去年流行したワイドパンツに、同じく再流行したMA-1を合わせたおしゃれ女子。
だが、そんなおしゃれさに見合わずその手に握られているのは、金槌と五寸釘だ。そんな彼女が、真希達の方を向いて浮かべるのは、驚愕の表情。
「集団パパ活!?」
「失礼だなオイ!?」
「七海、パパだってさ」
「自分は童顔だから私に違いない、みたいな顔でこちらを見ないでくれませんか灰原。あとパパ活は援助交際の事で親子に間違われた訳ではないですよ……」
「……違うみたいね」
「そりゃそうだろ。こんな状況で援交とかどんな馬鹿だよ。私らは呪術高専。私は禪院真希、こっちが灰原先生でこっちは高専出身の呪術師の七海探偵。それでこっちがコロニーで捕まえた協力者の大道と三代。お前は?」
「呪術高専! しかも御三家! そっか、そりゃ居るか。————私は釘崎野薔薇! フリーの呪術師! クソ田舎から東京に飛び出して一旗上げに来たとこよ!」
「……灰原、どう見ます?」
「うーん、パッと見ある程度手解き受けてそうな呪力の運用ではあるよね。覚醒タイプの粗さも無いけど、受肉タイプほど洗練されても無い。普通に家業が呪術師タイプの子なんじゃない?」
「なるほど、同意見ですね。真希さんはどうですか」
「嘘を言ってる様な反応はねえし*3白で良いだろ。野薔薇さえ良けりゃ私らと来るか?」
「マジ? ぶっちゃけありがたいわ……さっきからビルが吹っ飛んだりしまくってて気が気じゃなかったのよね」
「あー。なるほど? *4」
「それは……災難でしたね*5」
「無事でよかったね! *6」
「肝の小さい
「まぁデカいもんが壊れりゃビックリするよな! ところでお嬢さん、俺と相撲しないか!? *8」
「…………なんか微妙な表情してるわね、アンタら」
よもや彼らがビルの粉砕を? いやでも真希は自分よりちょっと歳上ぐらいにしか見えないし、それは無いでしょ。
なんて、せっかくの正解から遠ざかる思考を挟みつつ、高専の面々に合流した釘崎野薔薇ちゃん(15歳)。
そんな彼女に対し、少しは先輩として時間を割いてやろうかな、と真希が仏心を抱いたのは、東京コロニーの現状が落ち着き気味な事と、時間を割く方法に心当たりがあったが故のこと。
「野薔薇。取り敢えず、付け焼き刃でも良いならちょっとだけ稽古つけてやろうか? 見た感じ、実戦の経験はあんま無えだろお前」
「うっ……呪霊相手なら少しは……」
「生憎と、このコロニーじゃ人間相手の方が遥かに多い」
「……そうよね。コソコソしてた時から思ってた。……頼んでも良いの?」
「まぁ後輩に稽古つけるくらいはな。————三代! 私と野薔薇で相撲するけど行司やらねえか?」
「やるぅ〜〜!!!!! *9」
そんなやり取りの直後、展開されるのは三代の簡易領域。内部時間が恐ろしいほどに加速されたその土俵に足を踏み入れた真希とよくわかっていない野薔薇の2人が、三代の簡易領域からでてきたのは、恐ろしい事にそれからなんと『1時間と少し後』のことだった。
「七海、三代さんの領域って何倍ぐらいに加速してたっけ?」
「スマホのタイマーでの簡易測定ですが、確か640倍ですね」
「ってことは……ざっくり27日くらい?」
「真希さんもなかなか後輩想いですね。おおかた、手っ取り早い強化方法として絶え間なく戦い続けて限界を越えた上で黒閃を体験させたのでしょうが……*10」
などと七海達が肩をすくめるそんな中で、真希におぶられてヘロヘロとしている野薔薇は、高専組に合流したことをちょっぴり後悔しかけているのだった。