死滅回游開始から9日。絶えず
「
なんてアナウンスが『チビッツ』達から行われたのは、金次がオッサン呪詛師を殴り倒して頭を蹴り砕いたその直後。
「締まらねえトリだな全く」
などと言いつつかつてオッサンだったものを路肩に蹴り寄せた金次は、根城に定めたホテルへと舞い戻ると、空調の効いたロビーでメンバーを集めて作戦会議の開始を宣言した。
「ま、ここまでは予定通りだよな。特級不在の名古屋と東京のどちらかから順に宿儺を出してモグラ叩きだろ?」
「そうだね。こっちのチームが先だったのはちょっと意外だけど、まぁ大体計画通りじゃない? で、あとは宿儺をどうするかだけど……」
「まぁ、此処が100点の使い所なんじゃないかしら」
などと告げる真依が示すのは、チビッツが空中に投映するコンソール。
そこに示される『105』という数値は、彼女がコロニー内で21の
同様に秤と綺羅羅、そしてシャルルでさえも100ポイントを稼いでいるが、ここまでのポイントを彼らが集められたのには種がある。
「ね、ねぇ! ポイントも十分なんでしょ!? 私頑張ったよね!? 化け物に追いかけられたり! オッサンに追いかけられたり! スクナってやつと戦わないでも良いわよね!?」
なんてヒステリックに叫ぶ麗美からも分かる通りその方法とは縛りで奴隷にした麗美を使った『釣り』。いかにも弱そうで実際弱く、それでいてそれなりに美人な麗美をエサに呪霊や呪詛師を誘き寄せ、それを美味しく頂くという若干非人道的な方法で効率的に狩りを行ったのだ。
「はいはいお疲れ麗美。まぁこのコロニー内で好きに隠れときなよ。多分地下鉄の桜通線のホーム下に隠れてれば死なずに済むんじゃ無いかな? コロニー解放後に名古屋駅前集合ね」
「だ、誰か送ってよ!? 1人で行けっていうの!?」
「うん」
なんてやり取りで一応宿儺戦からは逃してやっているものの、頭と股の緩い女術師という存在の危うさを冷静に値踏みした綺羅羅の脳裏では、既に麗美を呪術高専に所属させることは決定事項。
呪術師というのは人型の戦車の様なもの。麗美は覚醒しただけの一般人だからこそ今はまだ雑魚だが、彼女とて鍛錬を積めば人間兵器の仲間入りは確定なのだ。そして、兵器は専門家が取り扱うに限る。断じて場末のホスト崩れに扱わせるべきではないのだ。*2
が、そんな温情を掛けてやれるのは麗美だけ。レジィと黄櫨、そして針の奴隷3人組はげんなりした顔をしているが、彼らは楽しい地獄行きである。
「俺、綺羅羅、真依、んでシャルル。全員1回ずつルール追加が可能なわけか。呪霊が結構湧きやがったのは今となりゃラッキーだったな」
「僕は死ぬかと思ったけどね……*3」
「で、どうするのルール追加。みんなが有利になるルールの方が良いよねこの場合」
「悩ましいわね。正直言って普段はこういう戦術面は直哉任せだから私」
「アイデアなら一つ」
「お、漫画家先生のアイデアなら期待できるんじゃねぇか?」
「
そう言って、シャルルが切り出したその内容は、金次を爆笑させ、綺羅羅を感心させ、真依に『貴方、呪術師向いてるかもね』と言わしめるもの。
かくして死滅回游に加えられた複数の『追加総則』は、各コロニーに居る術師達にちょっとした笑いをお届けする事となったのだった。
* * * * * *
それからおおよそ1時間後。
コロニーを構成する結界の核となる名古屋駅に受肉のための核である『万の産んだ宿儺の子』が召喚され、コロニーからの莫大な呪力供給を受けて4つ目に四つ腕、腹に第二の口が開いた大男へと変貌する。
呪いの王、両面宿儺。平安から長きを経て再び地上に降臨した圧倒的自我はコキリと首を鳴らしつつ腕を組み、コロニーから与えられた情報を元に考えを巡らせる。
現在の宿儺のコンディションは、指2本。それでも並の受肉体では全く及ばぬほどに強力ではあるのだが、宿儺からすればたったの10%だけ。本調子には程遠い数字となっている。
そして何より————。
「なんだこれは?」
そう言って目を細めて眉間に皺を寄せる宿儺が『見上げる』先にあるのは、『見えるが存在しない』緑の棒と青い棒だった。