特級呪『縛』師 禪院直哉くん   作:黒山羊

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第137話*

 視覚に割り込む無数の数字。それが総則の悪用によるジャミング攻撃であると瞬時に理解した宿儺はしかし、その一瞬の硬直により振り向いた先の女(?)*1へと斬撃を飛ばす間も無く、上空から落ちてくる重さ1.2トンの『鯱鉾(シャチホコ)』によって押し潰される。

 

 その攻撃は明らかにレジィ・スターによるものだが、一体全体何があったら彼が『鯱鉾』のレシートを手に入れられるのか? 

 

 その答えは、『死滅回游平定特例措置』*2にあった。

 

 ————名古屋コロニーのモンは全部俺等高専のもんだ。っつーわけで、お前に色々売ってやるよ、10円均一でな。

 

 などというとんでもない論理だが、間違いなく『契約は成立する』という術式を悪用するにも程がある秤の提案に『こりゃ勝てないワケだ』と改めて現代呪術師の『悪辣さ』を実感したレジィが苦笑いをしたのは言うまでもない。

 

 そして、そんな鯱鉾プレスの隙を突いて綺羅羅の手で投げられ、とんでもない速度で宿儺へと突き立てられるのは、一本のペン。

 

 グサリと狙い過たず宿儺の胸に突き立てられたその刃は致命傷には程遠いものの、宿儺を貫いたという事自体が、この場においては重要だった。

 

「よし来た! インクは充分だッ!」

 

 そう叫ぶシャルルが瓦礫の影から飛び出すと同時に、宿儺の胸に刻まれるのはシャルルの術式による『コマ』。

 

 そして、そのコマは、否、シャルルの術式は、ここ数日の高専の面々との交流により、新たな段階へと至っている————! 

 

「そのコマの名は、『瞬間連載』! 作画は私! 原作は君! 君の心血(インク)を注ぎ、僕の手で描かれて『読者』へと公開される君の未来だ!」

 

 術式の開示と共に、そのコマを目視している全ての泳者(プレイヤー)が認識するのは、5秒後にシャルルへと放たれる宿儺の斬撃。

 

 それについて認知していないのは、『作者』である宿儺自身とシャルルのみ。

 

 ————自分自身が未来視の権利を放棄する。

 ————必ず術式対象に術式を開示する。

 

 以上2つの『縛り』によって『自分以外の味方全てに対象の未来を公開する』という形で組み上げた『瞬間連載』は、シャルル自身が術式の恩恵を受けられないという、あまりにも大きなリスクを抱えたもの。

 

 だが、シャルルは尊敬する様々なクリエイターと同様に、自らの『読者』を信じている。

 

 即座に宿儺に対して行われるのは、レジィによる2体目の鯱鉾*3の追加、秤によるシンプルながらフルパワーのヤクザキック。そして窮地にあるシャルルを守るのは綺羅羅の『星間飛行(ラヴランデヴー)』。シャルルに素早く付与されたGacruxは真依と同じ星であり、呪力量が圧倒的に多い真依に向かって勢いよく吸い寄せられたシャルルは真依の特殊胸部装甲でポヨンと怪我なく受け止められ、それを見た綺羅羅は手早くシャルルの星を解除する。

 

 結果、空ぶった宿儺の斬撃。その現象に歯噛みする宿儺の少し先の未来に映るのは、憤怒の形相で印相を組むその姿。

 

 だが、()()に対して高専生たちが無策で挑む訳はない。

 

「領域展開ッ!」

 

 宿儺より尚早く、そう叫んだのは————。

 

 

 

領域展開 呪術少女マジカル真依ちゃん超劇場版! 〜きらめけ! マジカルプリンセス! 〜

 

 

 

 ————両の手でハートを作り、片足を上げてぶりっ子過ぎるポーズを取った、禪院真依その人だった。

 

 

【挿絵表示】

 

*1
居るのは綺羅羅だが、宿儺にはよく見えない。

*2
死滅回游平定にあたる呪術総監部麾下の全ての呪術師に『コロニー内に存在するあらゆる資材の徴発、接収、破壊』が日本国政府により許可されている。

*3
さっきのはメス、今度はオス。

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