特級呪『縛』師 禪院直哉くん   作:黒山羊

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第138話*

 禪院真依の領域展開『呪術少女マジカル真依ちゃん超劇場版! 〜きらめけ! マジカルプリンセス! 〜』。

 

 その領域の内側に広がる光景は、先程まで宿儺が存在していた名古屋駅前によく似た……というか、まさしくそれそのもの。

 

 術者の心象風景で世界を塗り潰す筈の領域展開において『あり得ざる』その光景は、両面宿儺をして『様子見』を選ぶほどに不気味であり、『確実に領域内に囚われている』という術者としての宿儺の『勘』が最大限の警戒信号を発している。

 

 そんな中、先に動いたのは禪院真依。「両面宿儺! 今から真依ちゃんがやっつけてあげる! 覚悟しなさい!」などと喉に綿菓子でも突っ込んだようなアニメ声で叫んで襲い掛かってくる彼女に対し、宿儺は反射的に斬撃を叩きつけ————そのあり得ないほどの『硬さ』に目を剥いた。

 

 鋼鉄をバターナイフで斬ろうとしたかのような、その感覚。その正体が尋常ならざる呪力出力によるものだと即座に看破した宿儺だが、彼が直接触れての斬撃攻撃『捌』を見舞おうとするより『解』の飛ぶ斬撃を正面突破した真依による攻撃が炸裂する————! 

 

「みんなの思いを光に込めて! 必殺! マジカル真依ちゃんバニッシュ!」

 

 そんな裂帛の気合いと共に、真依が振り抜いた『マジカル真依ちゃんメイス』から放たれるのは、極太かつ超高出力の呪力砲。宿儺をして全力防御を選ばせるほどのその攻撃は、先程の『異常な硬さ』と同様に『無限かつ無尽蔵の呪力』によるものとしか思えないもの。

 

 そのタネは割れていないが、なんにせよこの領域による術式効果に相違ない。そう判断した宿儺は、己も領域展開を行うべく、その手で印相を結び、獰猛な笑みと共に呪力を練り上げる。

 

「領域展開————!」

 

 その言葉と共に顕現するのは、無数の牛骨を組み上げたような姿の両面宿儺の領域『伏魔御厨子』。『閉じない領域』という空に絵を描くが如き超高等技術で構築されたその領域は、半径400mという超広範囲に及び、外殻を構築しないがゆえに相手の領域を外側から破壊可能な、領域戦における鬼札。

 

 だが————己の領域の性能を誰よりも良く知るがゆえに、両面宿儺の表情は困惑の色に染まる。

 

「外郭が捉えられん————!?」

 

 射程範囲内の全てを『解』と『捌』で粉微塵に切り刻む、両面宿儺の最強領域。その内側で、全身を切り裂かれながらも同時に全身から反転術式の煙を噴き上げ、ボロボロのドレスとメイスを『構築し続ける』事で修復する化け物のような女。

 

 そんな彼女の領域の『外側』を捉えられないという事実に瞠目する宿儺に対し、血みどろのオペラグローブで殴りかかる禪院真依。

 

 歯を食いしばって痛みに抗うその眼光は、従兄弟であり夫である何処かの馬鹿によく似た狂気じみた執念を孕み、黒い火花と共に宿儺の脇腹を恐ろしいまでの威力で殴り抜く————! 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 禪院真依の領域展開『呪術少女マジカル真依ちゃん超劇場版! 〜きらめけ! マジカルプリンセス! 〜』。その領域範囲は、日本列島全域。

 

 異常なまでのその効果範囲は、その領域が『一切の攻撃的な機能を持たない』が故のものであり、更に言えば、この領域の効果は『禪院真依にとって不利益』ですらある。

 

 その内容は、『発動後、禪院真依を中心とした周囲の様子を非術師にも認識可能な映像として領域内のあらゆる映像機器で強制的に放映する』というもの。

 

 

 スマホ、携帯ゲーム機、PC、テレビに限らず、映画館のスクリーンから駅の広告スクリーン、果てはパチンコの演出用画面まで全てをジャックして行われる、『禪院真依の晒し上げ』には、それだけでは何の意味もなく、効果もない。

 

 

 だが————。

 

 

 彼女がその身に課している、()()()()()()()()()()()()によって、その『晒し上げ』は『自らに課された超重量級の縛り』へと変換される————! 

 

 顔も、声も、破れた服から溢れる乳も、何もかも晒されているという自覚は本来慎ましやかな性格である真依に取っては発狂ものの心理的ストレスであり、死滅回游を平定したとて一生後ろ指を刺されて生きる事は必定。

 

 

 だが、特級には程遠い彼女の身では、己の未来をかなぐり捨てる事でしか、両面宿儺には対抗し得ない。

 

 

「マジカル真依ちゃんは! 皆の力がある限り! 絶対に! 負けない!」

 

 そう吼える真依の現在の呪力出力は、宿儺の指に換算しておよそ8本分。そして重みを増し続ける縛りの効果によって、その呪力総量は無尽蔵と言って然るべき領域へと足を踏み入れている。

 

 その力の全てをその身に宿し、伏魔御厨子によって切り刻まれながらも果敢に宿儺へと挑み掛かる真依は、四肢を幾つ飛ばされようとも怯む事なく、斬られた腕の骨の断面で宿儺を刺殺する勢いで襲い掛かり、次の瞬間にはその身を再生させている。

 

 その異様な再生速度は、秤金次の『大当たり』すら一時的に凌駕しうる程のもの。

 

 加えていまだに有効なシャルルの『瞬間連載』は両面宿儺の未来の動きを事細かに真依へと伝えてくれており、伏魔御厨子の斬撃を除けば完全に宿儺の動きを抑え込む、一方的な格闘戦が可能となっている。

 

 加えて先程の『黒閃』の後押しを得た彼女の攻撃は、まさに苛烈の一言だ。

 

 ゴリゴリの格闘戦に交えて宿儺が呪詩を唱えようと口を開けば即座にその口内に『マジカル真依ちゃんピルム』が構築されて喉笛を抉り抜く。

 

 その暴威に抗う宿儺は、その異常な再生能力が彼女の『構築術式』による副次的作用——構造把握能力により、完全に己の肉体構造を把握している——と極めて練度の高い反転術式によるものであると看破しているが、それが分かったところで出力差はどうしようもないわけで。

 

「指2本では足りんか————!」

 

 結局は、それが結論。負け惜しみのつもりはないが、眼前の女を殺し得るだけの出力が今の宿儺には存在せず、受肉体という我が身の不便さを呪いながらも、両面宿儺は素直な賞賛を口にする。

 

「中々どうして、1000年経ってもやはり厄介だな! 呪術師どもめ!」

 

 そう告げる宿儺の肉体へとマジカル真依ちゃんメイスが叩き込まれ、放たれるのは溜め込み続けられた、呪力の奔流。

 

 

「みんなの思いを光に込めて! 必殺! マジカル真依ちゃんバニッシュ!」

 

 

 裂帛の気合いと共に放たれたその一撃は、全てを桃色の光のなかへと飲み込んでいく。

 

 だが、そんな中、ただでは死なぬとばかりに宿儺が放つのは、彼の術式に秘められた最大火力。

 

「置き土産だ、くれてやる————■ (フーガ)

 

 直後、放たれるのは赤い豪炎。咄嗟に渾身の呪力をドレスに込める真依だが、そんな彼女を一気に業火は包み込み、伏魔御厨子の最後の一撃が、そのドレスを焼き焦がす。

 

 その瞬間、真依が選んだのは、ドレスに『自壊の縛り』を課してこの攻撃から己の身体を全力で護るという判断。

 

 

 そして————。

 

 

 桃色と赤の極光が消え去った名古屋駅で、ボロボロの下着姿の真依が倒れ伏す光景を最後に、『呪術少女マジカル真依ちゃん超劇場版! 〜きらめけ! マジカルプリンセス! 〜』はその上映を終えるのであった。

 

 

【挿絵表示】

 

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