特級呪『縛』師 禪院直哉くん   作:黒山羊

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第14話

 こんにちは。相変わらずの直哉くんやで。

 

 腹いせに真依ちゃんにゴミカス以下の縛りを課したあの日からしばらく。

 

 パンツ一丁の真依ちゃんに変身ダンスと変身台詞を仕込んで無事に術式を起動し、とりあえず一張羅の『マジカル真依ちゃんドレス』を構築させた後は、基本的な呪力操作と、術式への慣れを目的に『変身モード』の漲る呪力が赴くままに遊ばせとる。

 

 呪術の修行するんやったら流石にもう普通の生活は無理やろ、という事で幼稚園を盆休み中に家庭の事情で卒園した真依ちゃんと真希ちゃんは、今日も今日とて修行に励んどる。まぁ俺も今のところの最終学歴無卒*1やしね。

 

 ようやるわ、と思わんでもないけど、なんかいっそコレぐらいのアニメっぽさの方が修行に気合い入るんやろか? とりあえず皆試すもんな、かめはめ波とか水見式とか。

 

 まぁ、俺の修行は火炙りとか水垢離とか刃渡り神事に五体投地とかでVシネっぽいねんけどな……。

 

「みんなの思いを力に変えて! マジカル真依ちゃん、メイクアーップ!」

「やっとるね。振り付けとかも 出来とるか? ……うん出来とるね、呪力練れとる。ドレスのな 洗い替えとか 作れとる? 呪具やいうても 汚れはするで?」

「つくった! いっぱい!」

「見せてみぃ。えらい多いな 何枚や? 洗濯ずっと サボるつもりか?」

「これねー、真希のぶんと、津美紀のぶん」

「なるほどな? まあ一応は 着用に 制限ないし あげたらええわ。ドレスなら ショボい呪具やし 平気やろ」

 

 うん。やっぱり四歳児はアホやね。毎日シコシコ変身してはなんかウンウン唸って作っとると思うたら、ドレス量産しとったとはな。

 

 ……真依ちゃんの縛りにも組み込んだ『マジカル真依ちゃんドレス』は、縛り込みでの真依ちゃんの呪力効率やら呪力出力やら術式効率やらの兼ね合いを厳しめに弾きつつ設定を練った3級呪具。呪具としての効果は『変身モード以外の時は色を着用者の自由に変えられる(変身時はピンク固定)』、『羽より軽い着心地』、『その辺の布の服よりはよっぽど強い』、『ある程度は着用者に合わせてサイズが調整される』ぐらいのもんで、まぁ面白いだけのジョークグッズに近いもんや。

 

 フリッフリの服を着て踊っとる真依ちゃんの姿はしこたまビデオ*2で撮ってブルーレイに焼き増しして、真依ちゃんのオカンに送りつけとる。将来、実家のオカンに黒歴史を握られてる事実を知った時が楽しみやね? 

 

 で、そんな真依ちゃんやけど、まぁ縛っただけのことはあって、本来ならビー玉ひとつ作ってヒーヒー言わなあかんレベルのゴミカス術式やったんが、調子に乗ってお裾分けするほど呪具を作れる程には強なっとる。

 

 この縛り、年嵩が増える程に社会的デメリットが累積する筈やから、まだまだ此処から才能が伸びるかもわからんね? 

 

 ……とまぁ、ここまで将来の悶絶をお膳立てしたら、流石に日頃のウザさの溜飲も下がるいうもんで。

 

 一応、俺に言われる通りに頑張っとる真依ちゃんを、真面目に弟子として育てたってもええかな、と思える程度にはストレスも解消できた。

 

 何せ、俺の日常いうたら呪霊殺して金稼いでガキの世話してちょっとウトウトしよと思うたらパチに負けた甚爾くんに金せびられて起こされて、ようやく出来た自分の時間は術式の研鑽と縛りの件で消える日々。イライラも溜まるっちゅうもんや。

 

 まぁキッカケはともかく、それを多少スッキリさせて貰ったんは事実。ちょっとぐらいは、真面目に師匠っぽいことやったってもええ。

 

「真依ちゃんな 『真依ちゃんメイス』作れるか?」

「んー……多分?」

「そしたらな、一本『メイス』 作ってや。ちょっとええモン 教えたるから」

「わかった! えーっと……みんなの思いを形に変えて! マジカルメイク! 『マジカル真依ちゃんメイス』! ……やった! 出来た! 可愛い!」

 

 そう言うて喜ぶ真依ちゃんの手の中にあるんは、2尺ぐらいの『魔法の杖』。これも一応しっかり3級呪具で、『呪力の通りが非常に良い』『呪力を先端の宝石にチャージして保存出来る』『戦闘用鈍器として使うに十分な強度を持つ』というシンプルながら便利な呪具や。重心バランスもそれなりに考えたから、振り心地も快適な筈やで。

 

 一応、この杖とドレスが『幼少期の真依ちゃん』の主力装備として想定したモンになる。ショボいなりに呪具やから鍛錬に気兼ねなく使えるし、それでいて使い勝手は悪くない筈や。

 

「ようやった 上出来やんか。そしたらな、ちょっとメイスを 持って構えて」

「こ、こう?」

「ええ感じ。ちょっと待ってや その辺に……おった蝿頭(ようとう) コイツでええわ。真依ちゃんな ちょっとこっちに 来てくれん?」

「わかった」

「頭にな ちょい触るけど 気にしなや。蝿頭が 逃げへんように 見張ってて」

「うん」

 

 そんな返事と共に、蝿頭の首を躊躇なくギュッと握る真依ちゃんは、呪術の才能はカスでも呪術師の才能はあるかもわからんね? 普通、見た目がキショいとはいえ生き物の首掴んで素手で締め上げるんってもっと抵抗あるんちゃう? 

 

 さすがは腐っても禪院生まれ。しっかりと人間のクズなところが出てきとる。

 

 っと、危ない危ない。真依ちゃんにご褒美やるっちゅう話忘れるとこやった。ほな————術式反転。

 

「とっておき『録我呪法』を 見せたるわ。————『水面月』『現と虚』神憑(かみがかり)

 

 一応軽く、呪詩を詠唱することで正確性をアップさせた俺の『術式反転』。

 

 俺が打った『コマ』を対象に流し込み、俺が事前に決めた動作を強制的になぞらせる『録我呪法』や。

 

 その効果を無防備な頭にブチ込まれた真依ちゃんは、四歳児では有り得ん流麗な呪力操作と身体操作で以って、『マジカル真依ちゃんメイス』に呪力を通し、刹那の狂いもなくその呪力を載せたメイスを、首締めから解放されて咽せる蝿頭へと叩き込む————! 

 

————黒閃。

 

————それは呪術ではなく、現象。

 

————打撃との誤差0.000001秒以内に呪力が衝突した瞬間、空間は歪み、呪力は黒く光る! 

 

 当然、ガキの力でも呪力を込めて本気で振った鈍器の一撃は瓦の10枚や20枚は簡単に砕く威力がある。それが、黒閃を伴うとなると、それはもう到底蝿頭に耐えられるレベルの威力やない。

 

 当然の様に綺麗さっぱり消し飛んだ蝿頭と、自分が今何をしたかも分からぬままに「すご〜いッ!!!!」と大興奮なアホの真依ちゃん。黒閃をキメてお脳がドアホになっとるこの子やけど、ちゃんと狙い通り呪力の流れの淀みが消えて、呼吸するかの様に呪力を身体に回せとる。

 

 完全にテンションが上がってラリっとる真依ちゃんには分からんやろけど、この感覚が有ると無いとで今後の呪術師人生、だいぶ変わって来るんやで? 

 

 

 まぁ、ガキが呪術師なんざ、目指さん方がええんやけどな。

*1
小中学校不登校の意

*2
金に物を言わせて買ったデジタルハイビジョンハンディカム

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