特級呪『縛』師 禪院直哉くん   作:黒山羊

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第140話

 一体目の両面宿儺討伐から1日。続いて平定されたのは、予定の通り東京コロニーだった。

 

泳者(プレイヤー)・『三代六十四』の一党により東京コロニーが制圧されました! これより1時間後、大敵(レイドボス)・両面宿儺が顕現します!』

 

 そんなチビッツのアナウンスに対し、呼ばれるとは思っていなかったのか、ビックリとしているのは三代六十四。

 

「ん!? 俺か!?」

「三代さんが代表者として認識されていたんですね、我々」

「年長の大道さんじゃないんだね!」

「恐らくは娘っ子と会った順だろうな! 此奴の方が儂より先だった!」

「なるほど、その可能性はありますね。死滅回游のシステム上では、三代さんが仲間を集めているように認識されているのでしょう」

 

 などと、しょうもない事ではあるものの改めて『そういえば真希は泳者(プレイヤー)じゃないんだよな』という事実を反芻している東京コロニー一行。

 

 だが、そんな中、話題の中心である真希は眉間に深く皺を刻んでいた。

 

「いや、リーダーなんぞどうでも良いだろ今は……それよか真依と金次が宿儺討伐後に仕込んだ『総則』。宿儺が把握していないこのルールを使って宿儺をどう狩るかでも考えるべきじゃねえのかよ」

「落ち着け娘っ子。そう剣呑な面をしては見えるものも見えんくなるぞ」

「…………」

「(灰原さん、なんで真希さんあんなにキレてるんですか?)」

「双子の妹の真依ちゃんが宿儺と戦って倒れたからじゃないかな!」

「灰原。声がデカいですよ。釘崎さんの気遣いを無碍にしてどうするんですか」

「真希ちゃんの聴力なら仮に超音波で話しても聞き取れるから隠す意味無くない?」

「……ハァ。……まぁ、灰原先生はそういうキャラだし気にしてねえよ。……悪いな野薔薇、気ィ使わせて」

「いや、私は別に! ……似てるとは思ってましたけど、双子なんですね、スマホに映ってた人」

「ああ。妹だ。……ったく、引っ込み思案の癖してガラにもねえ無茶しやがって。心配する姉貴の身にもなれっつーの。……ふーッ、よし。切り替えた。でもそれはそれとして作戦会議はマジで必要だろ」

 

 と、眉間の皺をほぐした真希が切り出せば、すんなり乗り気になるあたり、大人連中は真希のガス抜きというか、尖りまくった気勢を削ぐ為にわざと緩い空気を作っていたのだろう。

 

 それがわからぬ真希ではないが、蒸し返しても自分が恥をかくだけ。今は黙って作戦会議に集中する。

 

「追加された総則の内、宿儺に把握されているのは『HP・MPバーの表示と資産の開示』『術式発動タイミングの開示と泳者(プレイヤー)のHP・MPの開示』。コレはいまだに有効だが、既に知られている以上は必ず対策して来る筈だ。私は宿儺を五条先生と直哉を足して割らないやつだと仮定してる」

「そのぐらいの見立てでちょうど良いでしょうね。そして直哉の発想を宿儺も持ち合わせているなら、『目を瞑って戦う間は感覚を超強化する』程度の縛りは行って来る筈です」

「一応メリット扱いで視覚ジャミングを捩じ込んでるから、そのメリットを破棄する点でも縛りの威力は上がりそうだねそれ!」

「ありそうだな……。宿儺が縛りで既知の総則を突破して来るのは前提として考えた方が良いんじゃねえか?」

 

「今は宿儺の知らない総則2つの話だな。『双方同意のもとで泳者(プレイヤー)間でポイントの譲渡が可能』まぁコレは普通にただ便利なだけのモンだから別に良い。今回の鍵になるのは『大敵との戦いの際、泳者(プレイヤー)・大敵共に、『狙われている』際に『緊急地震速報』が聞こえ続ける。複数の敵から狙われている場合、敵の数に応じて音源の種類が追加され音量が増大する』の方だ」

「うん! 性格が悪い! 術師の鑑だね!」

「耳は目と違って塞げませんしね」

「むぅん。宿儺からすれば、出現直後から奇怪な音が鳴り止まぬのだろう? 目の玉と同じように縛って封じてしまうのでは無いか?」

「なら目も耳も聞こえねえんだし、そのまま押し捲れば寄り切れるんじゃねえか?」

「確かに三代さんの言う通りかもだけど、楽観はできないかな。多分、その場合宿儺は視覚と聴覚の制限と引き換えに、呪力の感知能力を引き上げると思うよ」

「だろうな。呪術師だからこそ、まずその発想に思い至り、そして実行する。そしてだからこそ————私が動き易くなる」

「なるほど確かに。真希さんを軸にする為のバトンタッチというわけですか」

「愛されてるね真希ちゃん!」

「……アイツは誰彼と気を回しすぎんだよ」

 

 などと言いながら、頭を掻く真希は、続いて泳者(プレイヤー)達に話を回す。

 

「で、泳者(プレイヤー)のポイントってのは私らの分はどうなんだ? 溜まってんのか?」

「交換総則追加の後すぐに僕らの分と名古屋の端数は全部七海に集約したよ!」

「合計、672ポイントですね。総則にして6つ分ですが……私は直哉と違ってこういった『嫌がらせ』については疎いので知恵を借りたいところです」

「俺は馬鹿だからパスだ!」

「うぅむ。目と耳を封じたならば、これ以上五感を封じる手は無駄だろうな。彼奴(きゃつ)が心眼に頼るのならば、むしろそこを突くべきだろう」

「えっと、はい!」

「どうしましたか釘崎さん」

「シンプルな泳者(プレイヤー)側の強化も欲しいです!」

「確かに。無闇に宿儺側に制約を課す事にこだわるのではなく、泳者(プレイヤー)に有利な条件も定めるべきでしょうね」

「よし、なら一回思いつくだけ案出しすっか。私は————」

 

 と、マジカル真依ちゃんポーチからメモとペンを取り出した真希が書き連ねるのは、皆から出た多様な意見。

 

 その後40分を掛けて6つの追加総則を考えだした彼らは、2体目の宿儺を討伐するべく各々の配置に着くのだった。

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