特級呪『縛』師 禪院直哉くん   作:黒山羊

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第142話*

 両面宿儺の最大火力。その一撃を見事に受け切った術師達が、反撃とばかりに襲い来るその中で、両面宿儺が選んだのは純粋な呪力操作による戦闘。

 

 平安の術師である宿儺にとって術式が灼き切れたところでその戦闘行動に支障はないのだ。

 

 灰原雄の六刀流を呪力で強化した右腕の1本で捌き、七海建人の十劃呪法は喰らえばマズイと判断して左腕2本を使ってパリィ。

 

 鍛え上げた相撲で以って低空タックルを試みる三代六十四は腹の口から呪力砲を放つ事で牽制し、呪力を込めた釘を放ってくる釘崎野薔薇に対しては、空いた右手の1本で二指真空把*1を披露して迎撃。

 

 だが、二面四臂を駆使した宿儺に対し、まだ術師達にはフリーの大道が存在している————! 

 

「ぬゥンッッ」

「チィッッ!」

 

 一息に首を刎ねようとする斬撃を、噛み付くことで食い止めたのは、さすが宿儺と言うべきバトルセンスの賜物。

 

 だが、それでも頬を深く切り込まれたその傷は決して無傷とは言い難い。何より————。

 

「この痛み————!? 魂を裂く呪具か!」

「ほほう。その(なり)でも人間か御主」

 

 大道鋼。天下無双の大剣豪が振るうその剣は、真希から貸されたフランベルジュ。『人間の魂を切り裂く』というイマイチな術式効果*2が付与されているその剣は、浅いとはいえ宿儺の魂を切り裂き、反転術式を以てしても裂けた頬は塞がらない。

 

 呪力量で優先順位をつけて対処していた宿儺が考えを改め、急ぎ間合いを引き剥がすべく大道を蹴り飛ばす程のその危険性は、宿儺の注意を一瞬とはいえ大道に集中させる。

 

 そして、その一瞬の隙は、彼に襲いかかる『最優世代』の術師達を前に晒すには余りにも大きなもの。

 

 呪具である『中央線』『常磐線』『京浜東北線』『宇都宮線』『高崎線』『東武東上線』の六振りをシン・陰流の『抜刀』を駆使して無限に振い続ける灰原は己を阻む宿儺の腕から指4本を斬り飛ばし、七海建人は『鈍』によるクリティカルヒットで宿儺の腕を大きく弾き飛ばすと、その隙をついて『殺生丸』を宿儺の腕に突き立てる事に成功する。

 

「毒か! つくづく厭らしいな術師どもめ————!」

「……その様子では、解毒自体は可能なようですね。コレで決まればありがたかったのですが————とはいえ、複数の毒素を解毒するには精密な反転術式を要する筈。戦闘への集中力を削ぐには十分でしょう」

 

 そう七海が述べた通り、宿儺の動きは少しばかり精彩を欠き、攻防の比重が先程よりも『防御』に大きく傾いているのは明白。

 

 そして、そんな宿儺の行動パターンの変化を真っ先に活かしたのは、東京で一旗あげるのだと意気込んで田舎からやってきた美少女呪術師、釘崎野薔薇。

 

「『黒薔薇』『薊』『丑参り』————芻霊呪法『共鳴り』!」

 

 呪詩を詠唱して完全な形で放たれるその呪術は、藁人形に『灰原が斬り飛ばした宿儺の指』を五寸釘で打ち付ける。その回数、都合4回。人差し指、中指、薬指、小指を見事な手際で四つの藁人形に縫い留めた野薔薇の『芻霊呪法』が齎す効果は、『相手の一部と藁人形と釘を用いた儀式』と『呪詩』という二重の手間暇によって強化されており、宿儺は腹と顔の両方の口から派手に血反吐を撒き散らす。

 

 状況は宿儺の圧倒的不利。だが、それ故にこそ、宿儺は裂けた口で獰猛な笑みを浮かべ、自身の閃きを即座に実行に移す。

 

 ————術式が刻まれた前頭前野を破壊し、即座に反転術式で治癒することで、術式を強引に修復する。

 

 ある種無謀なその試みはしかし、宿儺の知らぬことではあるが、五条悟にも可能な芸当。

 

 そして、現代最強の術師に可能な芸当が、歴代最強と称される両面宿儺に不可能な筈もない————! 

 

 血塗られた凄絶な笑みを浮かべ、組まれるのは『閻魔天印』。その印相を前に顔を青くする術師達を嘲笑うかのように両面宿儺は再び最強の領域の名を口にする————。

 

「領域展開、『伏魔————ガッ!?!!? 

 

 ————事は出来なかった。

 

 宿儺の術式の回復。術師達にとって最大のピンチにして、宿儺にとっての逆転の一手。そんな『勝利への確信』という最も大きな油断を突いたのは、この場における鬼札である天与の女帝、禪院真希。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 背後から強襲した彼女が振るう猛烈な斬撃の嵐は音速を超え、その衝撃で以て彼女が持つ短刀から封印札が引き剥がされれば、その内から現れるのは鍔に大量の『黒縄』を巻き付けてその性能を強化した特級呪具『天逆鉾(あまのさかほこ)』。

 

 あらゆる術式の強制解除という天逆鉾の効果にあらゆる術式を乱す黒縄の効果が掛け合わさり、対術師における最強の矛と化したその短刀で以て宿儺の脊髄を腰から首まで叩き切り、肋骨の隙間から肺を滅多刺しにし、肝臓と膵臓を叩き切り、トドメとばかりに脳天に深々とその刃を突き立て、そのまま力任せに宿儺の頭を割り砕く真希の姿はさながら地獄の悪鬼羅刹。全身を返り血で濡らし、血に倒れ伏す宿儺の頭を念入りに踏み砕くその姿は、下手な特級呪霊よりも恐ろしい。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 かくして、最愛の妹を傷付けられ、怒髪天を衝き修羅と化した真希による残虐殺戮ショーは知覚する事すら許さずに両面宿儺を惨殺し、東京コロニーの戦いは幕を閉じる。

 

 一手ずつ確実に死滅回游攻略に向けて動く高専勢力達の戦いは、いよいよ特級術師達の領域へとその段階を進めるのだった。

*1
北斗神拳奥義。飛び道具を人差し指と中指で挟み取って投げ返す技。

*2
大剣で斬られると魂云々関係なく人は死ぬので。

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