特級呪『縛』師 禪院直哉くん   作:黒山羊

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第24話

 世間から正月気分もそこそこ抜けた、2006年1月20日。

 

 今日この日、無事4歳を迎えた真希と真依は、誕生日ケーキを堪能し、家中や師匠筋である九十九からの誕生祝いに目を輝かせていた。

 

 まずは、実の母親である真理からのプレゼントである『靴』。直哉から『鞄や靴は定義的に衣類ではないので真依の縛りに抵触しない』とお墨付きを貰って2人に送られたそれは、仕立ての良い子供用のローファーであり、真希と真依が洋服——もといマジカル真依ちゃんドレス——を主に着るようになった事を受けてのチョイス。

 

『身体に気をつけて、花嫁修行を頑張りなさい』と書かれた一筆が添えられたその贈り物は、真希と真依にとっては初めて親からプレゼントとして贈られたものであり、言うまでもなく2人は酷く喜んだ。

 

 そして次に、あまり世話こそしていないものの、一応現在2人と直哉の保護者をやっている伏黒甚爾からのプレゼントだが……端的に言えば、コレはちょっとした呪具だった。ただ、入手方法が『仲介屋の孔に探させたその辺の懸賞金付き呪詛師をブッ殺して身包み剥いだ時の戦利品』なのは、2人には内緒にされている。

 

 内訳としては、真希には呪力で強度と切れ味が強化された短刀、真依には気配を少し薄くする首飾りという、両者共に3級呪具程度の小物ではあるが、間違いなく呪術的な品であるそれらに、ひよっこ呪術師である2人は随分興奮したのもまた事実。

 

 なお、真依に『気配を薄く出来る呪具』を渡した辺りに、甚爾の非常に分かりにくい気配りがあり、それに数年後気付いた真依が「そりゃ、甚爾くんがヒモで食っていけるワケだわ」と評価する事になるのだが、それはまた別の話である。

 

 閑話休題。続いて、真希と真依からすればもはや兄弟姉妹同然の恵と津美紀からは、お手製のクッキーを頂戴しており、コレはお料理に最近お熱な津美紀がメインとなって直哉に教わりつつ作った品である。シンプルにバターと砂糖がたっぷりな、昔ながらのその味わいは中々オツなもの。賞味期限は今日明日中とのことなので、ケーキに飽きたら早速頂こうと思っている2人であった。

 

 そして、真希の師匠である九十九由基からは、意外にも呪術とは全く関係のないプレゼント。昨年2005年のクリスマス商戦で満を持してSONYが世に放ったPSPの最新大型抱き合わせパック『プレイステーション・ポータブル ギガパック』が「みんなで仲良く遊ぶように!」というメッセージカードと共に4台も贈られた事で、伏黒家はちょっとしたお祭り騒ぎとなった。なんなら恵が一番喜んでいたのは、この一年ですっかり末っ子気質になったせいなのだろうか? 完全に自分も遊ばせて貰うつもりである。

 

 ちなみに、セットで贈られたソフトは『モンスターハンターポータブル』『ぷよぷよフィーバー チュー!』そして『ことばのパズル もじぴったん大辞典』。完全にみんなで仲良く遊ぶ前提の采配なので、無事に恵の願いは叶いそうだ。

 

 

 で、最後の最後。2人の未来の旦那さん——だと2人は割と無邪気に信じている——である許嫁(フィアンセ)の禪院直哉からのプレゼントなのだが————。

 

 直哉は何故か、ケーキを食べ終えた2人を結界を張った庭先に呼び出していた。

 

「真希ちゃんと、真依ちゃん宛の プレゼント————必殺技を 教授したるわ」

「必殺技? なんだよそれ、物じゃねーのか?」

「ちょっと真希、直哉に悪いでしょ」

「一年で、なんやすっかり ハキハキと もの言うように なったなホンマ。……モノはなあ ゲームに勝てん あれズルや。なんならな 俺も欲しいで 『ゼル伝』*1が」

「それは……そうかもな」

「滅茶苦茶嬉しかったもんね」

「そうやんな? せやから俺は モノやなく 身になるもんを やろうと思う」

 

 そう告げる直哉の表情は、いたずらっぽく笑っており、珍しく年相応なモノ。なまじ顔が良い直哉がそんな子供っぽい表情をするせいで、オマセな双子ちゃんに結構グッと来る感情を与えているのだが、直哉自身は自身の顔には存外無頓着なのか、それに気付いた様子はない。

 

「そしたらな まずは真依ちゃん こっち()い。頭触るで、力抜いてな」

 

 そう告げて、直哉が真依の頭に触れれば、そこから流し込まれるのは、反転術式『録我呪法』による肉体の精密操作。この呪術、抵抗の意思があればそれなりに抵抗もできるのだが、真依も真希もちょくちょく掛けられていることと直哉への信頼から、かなりすんなり掛かってしまっているのが現状である。

 

 それに対して、『催眠系の呪術でどえらいどエロい目に遭いそうやね』などという感想を他人事のように抱いているあたり、直哉の性根は相変わらずのクズである。

 

 さて、そんな録我呪法の結果、独りでに動く真依の身体は直哉が授けた『必殺技』を放つべく、実に華麗な『変身ダンス』と共に「みんなの思いを力に変えて! マジカル真依ちゃん、メイクアーップ!」と変身セリフを言い放ち、黒色に変えていたドレスの色も変身によって元の鮮やかなピンク色へと変化する。

 

 そして、その上で取り出されるのは、真依のメインウェポンである『マジカル真依ちゃんメイス』。その先端、ハート型の宝石部分へと呪力を流し込み、真依の身体が叫ぶのは、この日授けられる必殺技の名前。

 

「みんなの思いを光に込めて! 必殺! マジカル真依ちゃんバニッシュ!」

 

 その直後、振るわれるメイスの先端から解放されるのは、先程まで蓄積していた真依の呪力。一定時間を掛けて蓄えたそれを瞬時に解放するその威力は中々であり、少なくとも子供が放つ術式としては破格のもの。およそ2級呪霊であれば一撃で吹き飛ぶだろうその威力は、並のショットガンをはるかに越えている。

 

 一応、メイスの設定を組んだ際に必殺技的に想定していた使い方ではあるのだが、今回披露したのは真依の精神、身体的成長を加味しての判断である。

 

「すっご……」

「凄いやろ? 呪詛師以外の 人間に 撃ったらアカン 必殺技や。一応な、呪詩で威力も 上がっとる。自動車ぐらい ブッ飛ばせるで」

「スゲェな真依! プリキュアマーブルスクリュー*2みたいだったぞ!?」

「なんやそれ 知らんけれども 厳ついな……。まぁええわ、そしたら次は 真希ちゃんや。頭触るで 力抜いてな」

 

 そんな声掛けと共に、今度は真希の身体に『動き』を流し込んだ直哉。その直後、真希の身体が放ったのは、『高速で駆け寄って両腕の武器で十字に敵を裂き、最後に飛び蹴りで〆つつ、蹴りの反動で相手の間合いを離脱する』という一連の動き。

 

 ————空気の揺らぎ……例えば温度や密度みてぇなムラの、『面』を捉えりゃ、空中でも余裕で動ける。お前の空中歩行とか、あとはアレだ。水の上走る時と似たようなもんだ。

 

 という甚爾のクソバイス*3をどうにかこうにか参考にして構築したその連携は、まさにアニメじみた変態挙動。

 

 最終的には甚爾に術を掛けてダメ出しなどを受けつつ改良した、中々の苦労が籠った技なのである。一番苦労したのは『空気の流れを読む為に目を凝らす』動作なのだが、直哉自身は自分に同様の術を掛けても全く何も見えないあたり、フィジカルギフテッドはやはり機能的に人間を超えているのだろう。

 

 そして、そのお手本は、直哉が今まで見た中でも最も強力な『甚爾の技』だ。

 

「甚爾くん 使ってた奴 俺なりに アレンジしたら こんな感じや。武器とかは 真依ちゃんメイス 使ってな」

「私、今飛んだか!? 飛んだよな!?」

「飛んでた! 何あれ!? 真希どうやってんの!?」

「わっかんねー! くっそ、もう一回だ! ……痛って!? 

「気ぃ付けや? 練習なんか なんぼでも 付き合うたるし 無茶せんときや。お手本を もっかいやるか? 2人とも」

「「やるっ!」」

 

 そんなほのぼのとした会話を交わしつつ結界内で修行を重ねる双子姉妹。

 

 そんな姿に、大きくなったな、などとしんみりしている自分を自覚した直哉が『俺、老けた?』と15歳らしからぬ思考を巡らせる中で、彼女達の鍛錬はしばらくの間続くのだった。

*1
ムジュラの仮面がそろそろ中古で安いので検討中。

*2
初代プリキュアタッグの基本的な決め技……なのだが、馬鹿げた威力を誇り、敵幹部を一撃で消滅させた実績が3回もある。

*3
直哉「水の上 走る前提 やめようや。その話題、共感出来る 奴なんか イエスキリスト ぐらいのもんや」

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