どうも。世間がバレンタインやっちゅうのに、なんか知らんけど甚爾くんと恵くん諸共家を追い出された直哉くんやで。
まぁ薄々察しはつくけど、九十九さんは個人宅で家主追い出すとか自由すぎんか? 弟子可愛さなんやろうけども。
「どうするよ、連絡するまで暫く戻って来んなとか言われちまったが。パ*1、
「遊ぶとこ 賭博場しか 知らんのか? しゃあないな 折角やから ええとこに 連れて行ったろ 恵くんをな」
「俺は?」
「たまにはな 遊び歩かん 日も要るで? まあ大人でも
「……まぁ良いか。ガキの遊びもガキなりに面白えだろ。で、どこ行くんだ?」
「舞浜の ディズニーシーは どうやろか? 子供向け アトラクションが ぎょうさんな 遊べるねんて
「そうか……? ピンと来ねえが……。まぁ良いや、行ってみりゃわかんだろ。それで良いか、恵」
「う、うん……!」
ちゅうわけで、俺ら男3人は、折角やし恵くんを主役に舞浜まで遊びに出かける事になったんやけど……。
あんまり、男所帯で遊ぶ人らっておらんのやね? まぁでも、恵くんが色々楽しんどったし、甚爾くんもなんだかんだスタッフに恵くんの写真撮って貰うたりしてたから、ええ時間潰しになったんちゃうか?
結局、九十九さんから連絡来たんは夕方ごろやったから、早々に来といて正解やったわホンマ。
さて、そしたら、女の子らがなんぞやっとるのを見に行こか。
————どうせ、溶かして固めただけのチョコやと思うけどな? 何とも言えんショッボイ味の。俺、市販のチョコ喰われへんしどうでもええけど。
* * * * * *
「————と、直哉くん達は予想しているだろうから、此処はひとつ、ガチで作って驚かせちゃおうぜ!」
「「「おお〜!」」」
時刻は戻り、直哉達を家から締め出してから暫く経った頃。九十九由基の音頭で気炎を上げるマジカル三人娘達は、九十九が手配した様々な『果実』を前に、やる気に満ち溢れていた。
そして今日は、そんな彼女達に心強い味方が居る。
「やぁ、初めましてお嬢さん達。私は冥冥。まぁそうだね、君達の先輩にあたる者だよ。金か金目のモノさえくれれば、何でも教えてあげよう。料理でも何でもね。……ああ、こう見えて料理は得意なんだ。将来設計の一つに玉の輿も組み込んであるからね。手作り菓子類は原価率も低いし得意料理と言っても良い」
「と、いうわけで、フリーの呪術師の冥冥ちゃんに今回は協力をお願いしてみた。で、報酬なんだけど……一応、私からも払うんだけど、冥冥ちゃんが欲しいものがあるらしくてね」
「ああ。その通り。……禪院真依くんは、どちらかな?」
「え、私?」
「そうとも。君はなんでも、呪具を作れるそうじゃないか。是非1つ、私に用立ててくれないかい?」
「えっと……直哉が食べれるチョコの作り方、教えてくれるのよね?」
「もちろん。報酬分の働きは期待してくれたまえ」
「わかった。……みんなの思いを力に変えて! マジカル真依ちゃん、メイクアーップ!」
「おお!?」
「ははは、流石の冥冥ちゃんも驚くよね。めっちゃくちゃ魔法少女だし」
「いや、失礼。急に服の色が変わったものだから、ついね。なるほど、変身をトリガーにした縛りかい? 凄まじい呪力だね……!」
「冥冥さん用なら、大人の服の大きさで————みんなの思いを形に変えて! マジカルメイク! 『マジカル真依ちゃんドレス』!」
そんな真依の掛け声と共に、冥冥の眼前に生成されたのは、大人用サイズのマジカル真依ちゃんドレス。デフォルトカラーは相変わらずピンクなその服をしばし物色した冥冥は、それを大切に持参したスーツケースにしまうと、代わりにエプロンを取り出した。
「モノは3級だが、現代風のデザインなのが素晴らしい! これは変態趣味のコレクターに高値で売れる! ……あー、コホン。では早速だが、『木食』の行をこなしているミスター直哉向けのチョコレートを作っていこう。まずは原料として、発酵済みのカカオの実、シアの実、メープルシロップを用意し————」
などと、エプロンに着替えて手際よく指示を出し始める冥冥と、素直にそれに従うマジカル三人娘。何やら世界中の原材料を使いそうなそのレシピだが、原料調達に関しては、発起人の九十九由基がしっかりと準備済み。
玉の輿をガチで狙っていると豪語するだけあって本気で料理上手だった冥冥の監修の元、子供達が作り上げた100%オーガニックヴィーガンメイプルシュガーチョコレートは、丁寧なテンパリングを施され、売り物に出来るほどのクオリティで完成する事となる。
そんな彼女達の力作を、帰宅後に食べる事となった野郎3人組の感想は、非常に素直な恵くんの「ちょっと苦いけど良い匂いで美味しい」というコメントと、「これお前らが作ったんだってな、やるじゃねえか。下手な店売りより美味いわ」と味覚もフィジカルギフテッドな甚爾のお墨付きを賜り、「えらいまた 手の込んだモン 作ったな……」と呆れたような驚いたような一言を直哉に言わせる事となる。
だが、そんな素直ではない若干一名の表情が、かつてないほど綻んでいたのは、誰の目にも明らかなのだった。