さて、時刻は『拝乳ガンダム』、もとい直哉の入学から一夜明けた朝。高専制服——縛りに抵触しないように黒染めしただけのペラい木綿の着流しを制服だと言い張っている——に袖を通し、始業時間より少し前に登校した教室で、素焼きアーモンドを齧りつつジャンプ*1に目を通していた直哉が、『うーん、白一護って結局何なんやろね? 一護君の中の虚化の力っちゅうには卍解とかに妙に詳しいやん? 思うに、こいつが本物の斬月で、斬月のおっさんが虚化の力っちゅうミスリードなんちゃうやろか?』などと、一端のジャンプ読者っぽい脳内考察を繰り広げていると、ガラガラとドアを開けて、入ってくる男が1人。
「げ、真面目かよオマエ……」
「……教師とは 思えんような 言葉やね? 僕は禪院 直哉言います。先生は 日下部さんで ええんかな?」
「あー、そうだ。担任を予定してた補助監督の何某が辞退したらしくてな……だからって何で去年此処に就職したばっかの俺がお前みたいな特級の担任なのかはサッパリわかんねえが、俺は日下部篤也、一応一級術師をやってる。……くれぐれも、問題は起こさねえでくれよ? 頼むから。ウチの問題児は五条でもうキャパオーバーなんだよ。……まぁ、夜蛾さんからは『悟とは雲泥の差』とか聞いてるが……マイナス方面じゃねえよな? マジで頼むぞ?」
「……ご心中 お察しするわ ホンマにな」
そう告げて、苦笑しつつジャンプに栞代わりのアンケートハガキを挟み込んで机にしまった直哉は、朝食代わりにしていたアーモンドの残りを一気に口に流し込み、ボリボリと咀嚼してから、空袋を器用に教室隅のゴミ箱へと投げ捨てる。
「ところでな 他の生徒は いつ来るん?」
「……俺が早乗りしたのに、俺より先にお前がいるのが変なんだ。まだ暫くは誰も来ねえよ、始業時間30分前だぞ?」
「そうなんか? 悠長やなあ 学校て。だいぶ遅ない? もう8時やで?」
「いや普通にこんなもんだろ————って、ああそうか。呪術師家系なら自宅学習も珍しい話じゃないわな」
「そうやねん。そういう訳で イマイチな ピンと来てへん 全体的に。折角や 時間あるなら その辺を————」
と、直哉がこれ幸いと日下部に学校というシステムについて問おうとしたその直後。ガラガラと教室の扉が開かれ、2人の男子生徒が現れる。
「おはようございます! みんな早いですね!」
「……おはようございます。お待たせしてしまいましたか」
かたや、元気一杯日本男児。かたや異国風情のダウナー系。禪院には居ないタイプだが、強いていうなら前者が若干蘭太っぽいな、というのが直哉のファーストインプレッションである。
「————先生は さっき
「まだ暫くは誰も来ねえ、筈なんだけどなあ〜。何だお前ら、揃いも揃って真面目かよ? いや良い事なんだけどな? 今日なんざ、早く来ても自己紹介して親睦の為に術式の見せ合いと組み手するぐらいだぞ日程。いやまぁ、午後は在校生が歓迎会するとか聞いたが、それにしたって昼休み挟むんだから早く来る意味ねえしよ……まぁ良いや、揃ったしホームルームやっちまうか? 親睦の時間が長いほうがいいだろ、学生的によ。じゃあ、出席順に禪院、七海、灰原の順で自己紹介やってけや」
そう告げて、ボリボリと頭を掻く日下部の顔には露骨に『1年間コイツらの担任とか面倒臭ぇ』と書いてある。
が、直哉は敢えてそれを無視して、茶々を入れずに日下部の言に従う事にした。
「そうやなぁ 自己紹介か どないしよ。……とりあえず 禪院直哉 いう
「よろしく禪院君!」
「よろしくお願いします。……次は私ですか。七海建人です。階級は二級術師、術式は
「七海君 これから5年 よろしゅうな」
「よろしく七海君! じゃあ次は僕だね! 僕の名前は灰原雄、階級は三級術師! 術式は有りません! 生まれは一般家庭で妹が1人です!」
「この5年 灰原君も よろしゅうな」
「よろしくお願いします。……さて、ではこの後は術式開示と組み手でしたか?」
「まぁそうだな。そしたら全員グラウンドに————」
そう、日下部が言い掛けた直後。
三度ガラガラと開いた扉から入ってくる、筋骨隆々の男が1人。
「あ゛? 何で始まってんだよ。始業10分前だぞ」
「あ。……すまん、伏黒副担。忘れてた」
「帰っていいか?」
「駄目だ。俺が夜蛾さんにドヤされる」
「……貸し一つだな」
なんて会話を日下部と繰り広げるのは、そういえば昨日副担任だと言っていた伏黒甚爾。
その後、何とか無事機嫌を治し日下部から紹介を受けた甚爾と、疲れた様子の日下部を交えたピカピカの1年生達は、始業のチャイムと共に連れ立ってグラウンドへと移動するのであった。