特級呪『縛』師 禪院直哉くん   作:黒山羊

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第28話

 さて、親善のための組み手*1も無事に終わり、軽い擦り傷などを各々治療して迎えた昼休み。

 

 授業とは別に親睦を深めよう! という先程全敗したのを1ミクロンも根に持っていなさそうな元気一杯な灰原の発言により、昼食をご一緒する事になった新一年生3人は、学食で各々の食事に舌鼓を打っていた。

 

 直哉が持ち出したのは風呂敷に包んだ弁当箱、七海は購買で売っていたホットサンドを購入し、灰原は学食のカレーを特盛にして持ち寄っている。

 

「お、禪院君はお弁当なんですね!」

「そうやねん 俺食えんモン 多うてな。基本的には 自炊しとるよ。あとアレや 直哉でええで 禪院は アホほどおって ややこしいんや」

「直哉君の御実家は、呪術御三家の一角、でしたか。……呪術界には明るく有りませんが、『三菱』のような財閥じみたイメージで良いんでしょうか?」

「まぁそやね。金と権力 持っとるし まぁ似とるかな。ええ例えやね」

「なるほど……」

「ところでご飯なんだけど、食べれない物があるならシェアとかは避けたほうがいいかな?」

「俺のやつ あげる分には かまへんよ? でも俺の 野菜とキノコ ばっかやし。食べてもあまり 美味ないんちゃう?」

「ものは試しに一口ください!」

「かまへんよ そしたらコレを 分けたるわ マッシュルームの オリーブ炒め」

「いただきます! あ、コレご飯に合うやつ……!」

「そうなんか? 米食われへん もんやから その辺ちょっと わからんけども」

「米もダメなんですか? アレルギーとすると、かなり重そうですが……」

「そうやない アレルギーとは 違うんよ。……そうやなぁ コレぐらいなら バレやすい 範囲の奴や、別にええやろ。……俺は日々 『縛り』を掛けて 暮らしとる。例えば今の 食事とかやな。肉食と 十穀食うの 禁止して 『木食』 っぽい 感じにしとる。本物は 加熱も禁止 なんやけど 流石にそれは 死ぬ*2からやめた」

「なるほど、縛りによる呪術的強化……」

「ストイックなんだね直哉君」

「まあそやね 強くなりたい 思うてな ガキの頃から ずっとやっとる。……ところでな 灰原君は それ以上 声の音量 変わらへんのか?」

「あ、指摘するんですね。言っていいのか迷っていましたが……」

「え、聞こえにくかった!?」

「逆です」

「もうコレは そういうモンと (おも)とこか」

「えぇ!?」

 

 なんてやり取りで打ち解け始めた1年3人。彼らの談笑はその後昼休みの終わりを知らせる予定が響くまで続いたのだった。

 

 

 * * * * * *

 

 

「新入生の皆さん、この度はご入学おめ————」

「かんぱーい!」

「————悟? 怒るよ?」

 

 昼休みから少し後。高専の学寮にある談話室で開催されたのは、昨日未遂に終わった新一年生歓迎会。『若人から青春を奪うなんてよくないと思いまーす!』という主張をゴリ押す五条悟と、彼から事情を訊いて一応真面目に夜蛾に申請した夏油傑の企画により開催されたこの催しは、スポンサー・五条悟、レクリエーション企画・五条悟、買い出し・夏油傑&家入硝子という、アットホームなものである。

 

 が、ホワイトボードに書かれている五条が考えた企画は、中々に酷いものだった。

 

 ①適当になんか傑が挨拶

 ②菓子パ! 

 ③一発芸大会! 

 ④朝まで桃鉄99年! 

 

「悟君? 何処までガチや? この企画」

「全部ガチに決まってんでしょ〜? 何言ってんの直哉」

「……直哉、悟はこういう奴なんだ」

「バカでしょ? まぁ良いじゃん、適当にやろうぜ後輩。ジュースも買ってきたしね、五条の金で」

「ジュースには 普通度数は 無いんちゃう? 俺は飲まんで 『縛り』的にも」

「発酵葡萄ジュースの方なら飲めるっしょ」

「赤ワイン そない呼ぶ奴 オトンだけ(おも)とったけど 居るモンやなぁ……」

 

「……尊敬出来そうな先輩が、夏油さんしかいない気がするのですが」

「そうかな? 皆良い人そうだよ?」

「灰原君、人が良過ぎるのも考えものですよ?」

 

「大体な 俺だけ菓子が ドングリの 種なんやけど どういうワケや?」

「……硝子? 流石に可哀想じゃないか?」

「え、夏油じゃないの? 直哉用って書いたどんぐり置いてたの。私普通にカリカリ梅と酢昆布、メンマに茎わかめあたり買ったよ?」

「私もドライフルーツ系を買っておいたんだけどね……」

「すり替えておいたのさ!」

「悟君 ライン越えやわ 普通にな それなら俺も 考えあるで?」

「へぇ? やる気?」

「おい、2人とも、流石に喧嘩は————」

 

 そう、夏油が止めようとした直後、高速で印相を結んだ直哉が領域を展開し、それを迎え撃つべく五条は無限を展開————したのだが。

 

 五条や周囲の予想に反し、直哉の姿は一瞬でその場からかき消え、周囲には何の被害も及ぼさなかった。

 

「アレ?」

「……五条が虐めたから後輩帰っちゃったんじゃない?」

「マジで!? 弄りの範疇でしょ!」

「悟、普通にその範疇は越えてると思うが……」

 

 なんて、流石の五条も術式を解いて気まずそうな顔になり、彼以外の2年生と1年生も滅茶苦茶気まずい表情を浮かべてしまう。

 

 が、そんな中、消えた時同様に直哉が唐突に出現。その手には、先程まで持っていなかった1つの「プラケース」が存在する。

 

「————悟君 これが何かは わかるやろ?」

「!? おいマジでやめ————!?」

「————よし、悟は私が抑え込む! やれ直哉!」

「桃鉄の 為にプレツー*3 置いたんは 悪手やったな なぁ悟くん————ちゅうわけで 五条悟の ベッド下 漁ってあった イメージビデオ。今からは 予定変更 このビデオ 公開処刑 上映会や!」

「ふッざけんな馬鹿! マジでやめろ! 放せ傑ゥ!」

「あはははは! やるじゃん後輩、ウケる」

「『本邦初公開 魅惑の北欧ブロンド少女 鮮烈グラビアデビュー』……存外、俗っぽいというか、なんというか……」

「楽しそうだね! ところで七海君、イメージビデオって何?」

「!? ……灰原君、君はそのままで居てください」

 

 ガチトーンで絶叫する五条悟、趣味を活かした卍固めで五条を押さえ込む夏油、爆笑してワインを溢す家入、画面に映るタイトルに呆れる七海、よく分かっていなさそうな灰原。

 

 大盛り上がりの談話室の中で、上映される北欧美人なグラビアアイドルのイメージビデオをBGMに、生徒たちの爆笑と喧騒は、結局夜遅くになるまで響き続けたのだった。

*1
総当たり戦で、直哉は2勝。七海対灰原は七海が勝利という順当な結果に。

*2
食中毒と精神的な意味の両面で

*3
プレイステーション2

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