特級呪『縛』師 禪院直哉くん   作:黒山羊

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第33話

 さて、季節は未だ春。

 

 高専生にとって授業の他、呪霊を祓う『任務』もまた大切ではあるが、今の時期はまだ低級の呪霊しかおらず、人手はそれなりに回っているとのことで、呪術高専の生徒一同は、学生らしい『土日休み』を与えられていた。

 

 そんな中。

 

「直哉君! 五条先輩から秘密の修行してるって聞きました! 混ぜてください!」

「……灰原、私は普通に寝たいのですが……」

「ええ!? 七海もやってるって五条先輩が言ってたのに!」

「……私、そんな適当な嘘で叩き起こされたんですか?」

「なるほどな 事情は読めた。 七海君 灰原君も ちょい付いて来て。悟くん 今からちょっと いてこます」

 

 愉快な会話を土曜朝3時に行った1年生一行は五条悟の寮室を襲撃し、その室内に直哉の『第四乃壁』を展開する。

 

「うおっ!? 眩しッ!?!!?」

 

 結果、結界の気配に目覚めた直後にスポットライトを猛烈に浴びた五条悟の目は盛大に眩み、上記のセリフを吐くことになるのだった。

 

 

 * * * * * *

 

 

 で、一年生が寝直してから暫く。

 

 今度はちゃんと6時半というまだマトモな時間に目覚めた直哉と、彼から一応「日課のな 修行の後で ええんなら 相談乗って あげてもええよ」と起床時刻を知らされていた七海と灰原は、着替えて寮の玄関前に集合していた……のだが。

 

「悟くん、家入さんに、夏油くん……みんな揃って どないしたんや?」

「俺はお前らの修行を冷やかしに!」

「私は悟にそう誘われたから見張りに」

「私はバカ2人に巻き込まれた感じかな〜眠〜い」

「おお! みんなで修行! 良いですね!」

「……私はまぁ、なんでも構いませんが、直哉君は良いんですか? 大所帯ですが」

「まぁええよ。ただ全員に 『縛り』だけ 結んでもらう 『伝達不可』の」

「ああ、俺の家の事警戒してる感じ? 良いよ良いよ縛る縛る」

「悟……まぁ、良いか。私も縛ろう。直哉の『修行法』と直哉の『縛り』、それから直哉からの『教練』について伝達しない、という縛りで良いのかな?」

「いや違う 修行と縛り だけでええ。教練ちゅうか ほらアドバイス? それはまぁ 伝えてええわ 他人にも。後輩とかに 聞かれるやろし」

「なるほど。それなら尚のこと縛っても大した損はなさそうだ。御三家の次期当主に学ぶ機会なんてまず無いからね」

「えー!? 俺がいるじゃん傑!?」

「五条から修行法とか聞いたことないじゃん。『俺最強だし』以外言ってるの見たことないもん。あ、私もまあ、後輩のプライベート言いふらす気は無いから、縛っても良いよ〜」

「ほなええわ そしたら行こか 裏山に」

 

 

 * * * * * *

 

 

「「「「「何あの修行……」」」」」

 

「一通り 人の修行を 見た結果 ドン引きするん ちょっと(ひど)ない?」

「いーや、普通だね。俺流石にここまでやってるバカ見たことないもん五条家で」

「禪院家ではこれが普通なのかい直哉?」

「俺以外 やってる奴は 居らんけど」

「じゃあさ〜やっぱり後輩が異常なんじゃないの?」

「ああ、呪術師が皆ここまでストイックなわけではないんですね、流石に安心しました」

「でもまさに『修行』って感じだね! NARUTOとかBLEACHみたいな!」

「散々な 言われようやね ええけども。……本題行こか 灰原君の」

 

 修行を一通り見せた後、直哉が修行に使っている高専の裏山から寮の談話室に帰還した6人。

 

 その中心でやいのやいのと言われてちょっぴりげんなり気味な直哉が気を取り直してそう言うと、何故かビシッと『気をつけ』をした灰原が、しっかりした挙手と共に発言する。

 

「ありがとうございます! 直哉君、強くなるにはどうしたら良いと思いますか!」

「なるほどな? シンプルなんは、場数やね。戦う程に 慣れるもんやし。でもそやね。そういう事や 無いんやろ? 方向性の 話でええか?」

「うん、僕だけこの中で術式が無いからね!」

「私も術式無しだよ〜?」

「いや、硝子は術式がなくとも反転術式があるだろう? 灰原の場合は……」

 

 などと夏油が言葉尻を濁す通り、術式が無くその他に特異な才能も無い術師というのは、かなりの茨の道なのである。一年の担任を務める日下部篤也はかなりの例外だと言えるだろう。

 

「まぁそやね。ぶっちゃけ言うと キツいわな。それでも手立て 無いわけちゃうで? 一つはな シン・陰流や 知っとるか?」

「あ! 先生の流派だ!」

「進研ゼミで聞いたみたいに言うじゃん灰原」

「悟? 変な茶々入れは良く無いよ? ————でもシン・陰流なら確かに『弱者の為の技術』を謳うぐらいだし、術式のない灰原には向いているかもしれないね?」

「なるほど! でもどうやって勉強したら良いんだろ? 先生に聞くとかかな?」

「近いやん、手段は一つ 弟子入りや。シン・陰流は 門外不出。弟子だけに 伝承される モンなんや。ちょっとだけ 不便言うたら 不便やね。せやからそこで 第二の手段。————質問や。灰原君は 術式の 無い呪術師が 使える呪術。知っとるか? 思いついたら 言うてみて」

 

 そんな直哉の問いかけは、彼が曲がりなりにも『師匠』であるが故のもの。弟子の真依との交流が、灰原に思考を促す行動へと繋がったのだ。

 

 まぁ、同級生と五歳児を無意識に同格と看做しているあたり、その性格は悪いのだが。

 

「うーん……? 術式がないのに使える呪術……? あ、伏黒先生が使ってた呪具とか?」

「ちょいちゃうな。七海君なら 分からんか?」

「……結界術でしょうか。帳は呪力があれば誰でも使える技術の筈ですし」

「あ! 七海君賢い!」

「正解や 半分だけな 悟くん 残り半分 分かっとるやろ?」

「式神術だろ? 式神ってアレ、術式じゃない奴はクソ弱いじゃん」

「まぁそやね。正直言って 式神は その特性が ネックやねんな」

「というか正確には式神も結界もシン・陰流も、全部ひっくるめて『生得術式とは別に自己構築する術式』な。生得術式が無いからって術式が使えないワケじゃない……こんなもん常識だろ? バカ?」

「悟くん 補足説明 おおきにな。なんで最後に 煽ってまうん? 俺らはな 御三家やから 知っとるで? 他の術師は そうやないやん?」

 

 と、五条悟が余計なコメントと共に言及した通り、直哉が考える方針とは『生得術式以外の術式の開発』。直哉が考えるに、術式を持たない術師や戦闘に関係のない術式を持って生まれた術師が大成する方法はコレを抜いて他にない。

 

 が、そんなことよりも新入生2人の意識は、ロマン溢れる『式神』というフレーズが、割と粗略に扱われたことに向いているらしい。

 

「式神って弱いの!? 漫画とかだと強そうなのに!」

「確かに。創作物では便利な物として扱われますが違うのでしょうか?」

「その説明は私がしようか? 一番この中だと術式が式神使いに近いからね」

「夏油先輩! お願いします!」

「私からもお願いします」

 

 そう素直に答える可愛い後輩2人に鷹揚に頷いた夏油は、せっかくだからと談話室の隅にあるホワイトボード*1の前に立ち、式神の解説を始めるのだった。

*1
本来は寮内の自治会である寮生会の会議用。ただ学生が少なすぎて形骸化しており基本はメモ用に使われている

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