特級呪『縛』師 禪院直哉くん   作:黒山羊

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第39話

「ほないくで、しっかり受けや! 『音衝(インパルス)』!」

「術式反転————『透核呪法(とおかくじゅほう)』!」

 

 体育の授業冒頭に『今日は俺は馬の様子を観に行くから自習な。自主練メニューがコレ。サボったら殺す』という理不尽なメッセージを残して消えた不良教師の伏黒先生。

 

 その姿勢に反感を覚えないではないものの、散々ボコボコにされて調教されている生徒達にサボるという選択肢は無く、粛々と計画された自主練メニューをこなしているのが実情である。

 

 そして、今日この日のメニューでは、直哉と七海がペアを組まされ、直哉が攻撃側、七海が防御側で七海の術式反転について訓練するという内容になっている。

 

 その結果、冒頭の一幕が行われているわけだ。

 

 七海建人の術式反転『透核呪法』。その効果は、『対象を7:3に分割した点に無敵判定を発生させる』という、言葉にすればイマイチ分かりにくいモノ。

 

 しかし今、直哉の『音衝』を迎え撃つように殴り付けた七海の拳がカキーンと小気味良い金属バットで硬球を打ったような音を立てて音衝の空気弾を『打ち消した』のを見れば、それがどういうモノかはよくわかるだろう。

 

「ホンマにな 無法過ぎるで その無敵。ほらアレや 餓狼*1の奴や あの感じ」

「……ああ、ジャストディフェンスでしたか。確かに。……モノは相談なんですが、コレ、縛りでアレンジすれば本当にジャストディフェンスの様に扱えませんか?」

「そうやなぁ……いけるんちゃうか? 無敵をな 一瞬だけに 絞る感じで。通常の 無敵以上の 性能を 発揮出来ても おかしないやろ。そうやなぁ、例えば敵の 攻撃を 呪力に変えて 吸収とかか?」

「なるほど。ただしタイミングに失敗すれば無敵は無し、と。通常の無敵と織り交ぜて使えばかなり強いのでは?」

「格ゲーに 君がおったら 筐体に 瞬獄殺(しゅんごくさつ)*2を ブチ込むやろな。大体な。無敵自体も エグいねん。判定ちょっと 大きいやんか」

「気付きましたか。無敵部位より少し大きめというか、無敵を纏う様な感覚というか、ともかく部位から飛び出す様に無敵が存在しています。……ああ。指輪がイメージに近いかもしれません。先ほどは『指の先端から7、付け根から3』の位置に無敵を発生させたので、その位置に指輪状の無敵がありました」

「イかれとる それで攻撃 殴ったら 弾き飛ばすか 消し飛ばすとか。斬撃と 範囲攻撃 ぐらいしか 君に効く技 無いんとちゃうか」

「逆に言えば、それらには一切太刀打ち出来ないわけなので、インファイトでしか使えないでしょうね」

「なるほどな……そしたら次は ジャスガ版 試してみよか 縛りを掛けて」

「ええ、宜しくお願いします」

 

 などと、感想戦を交えつつ行われるその組み手の効率はかなり高く、七海は着実に自身の術式反転を物にして、メキメキとその実力を上げていくのだった。

 

 

 * * * * * *

 

 

 そんな真面目なペアもある一方、愉快なタッグを組んでいるのが、五条悟と家入硝子というマッチング。

 

 甚爾から『五条オマエ、その無限オートモードで貼れるようにしとけよ』という無茶振りを受けた五条悟が防御側、同じく甚爾から『サイドアームの扱いにも慣れとけ』と無茶振りされた家入硝子が攻撃側というその組み合わせは、『五条悟を家入硝子が滅茶苦茶に銃撃しまくる』というとんでもない絵面としてグラウンドに顕現していた。

 

「おりゃりゃ〜」

「うおぁああああ!?!!?」

 

 なんて、ギャグみたいな叫び声を上げている五条だが、彼の現況を見てその咆哮を笑う者がいれば、かなり人の心が無いと言って良いだろう。

 

 何しろ、今「おりゃりゃ〜」などと可愛い声を出している家入が手にしているのは、275発装填パンマガジンを組み付けたアメリカン180。22.ロングライフル弾を毎分1200発のキチガイじみた連射性能でブッ放すその銃は、僅か14秒でマガジンの中身を吐き出すというイかれた性能と、防弾チョッキ程度なら余裕でブチ抜き人間を挽肉にする破壊力を併せ持つ、サブマシンガン界の暴走特急なのである。

 

 そして、硝子はあろう事か、それを身体の呪力強化にものを言わせた2丁拳銃スタイルで運用しているのである。西部警察もケツをまくって逃げ出すとんでも女子高専生が、ここに爆誕していた。

 

 だがもちろん、甚爾も鬼では無い*3。今回家入に扱わせているのは曳光弾。マグネシウム・ストロンチウムタイプの弾道が赤く輝くタイプのそれは、通常弾より『よく見える』為、確かに防御側としては弾道が見えて防ぎ易い。

 

 だがしかし。対空砲火において曳光弾が『敵機パイロットへの威圧』の為にバラまかれたことからも分かる通り、真っ赤に輝く弾丸が超高速でブチ込まれるという見た目のインパクトは抜群。

 

 五条から見れば、もはや気分はガンダムに撃ちまくられるザクである。当たらなければどうということはないのだが、怖いものは怖いのだ。

 

 それ故の、先の絶叫である。

 

「あ、タンマタンマ。弾切れ〜」

「ヒーッ、ヒーッ、ヒーッ……い、生きてる? 俺?」

 

 弾丸に呪力がなく、六眼が視力以外で全く役に立たないその攻撃は、五条にとっては下手な呪霊より恐ろしいもの。

 

 かつて『術師殺し』として闇で名を馳せた甚爾の『対五条悟』戦術は、五条にバッチリと『死ぬかも』というストレスを掛けることに成功しており、彼の脳回路は焼き切れ寸前。ソレを無理矢理反転で治して運用する、というスタイルに行き着いてはいるのだが、それでもやはり、心理的ストレスばかりは反転術式ではどうしようもない。

 

 だが、だからこそ、五条の無限は生命の危機を前に飛躍的な進化を遂げ、体表からかなり遠くまでその影響範囲を無意識に増大させているのも事実。

 

 伏黒甚爾の教育センスは、戦闘者を育てるというその一点においては確かなモノがあり、五条悟も後に不服ながらにその功績を認めることになる程。

 

 だが、今の彼は脳が焼き切れ丹田がギリギリと痛む程に呪力を振り絞っており、とてもではないが甚爾に呪詛以外の感情を持てない状況だ。

 

 そして————。

 

「五条〜! 次はコレな〜!」

「おいバカふざけんなよ硝子!? そんなもん俺でも見たことあるわ! バルカンじゃん! お前いつからサイボーグクロちゃんになったんだよ!? 頭おかしいんじゃねえの!?!!?」

「あー、伏黒先生が『コレはマイクロガンっつってな』って言ってたから多分違うんじゃない? *4 反動がクソ強いけど呪力強化フルパワーなら撃てるって言ってたから大丈夫大丈夫」

「今、お前の心配は頭以外してねぇよ!!!!」

「いっきま〜す」

「ん゛な゛ぁあ゛あ゛ぁぁあ゛!?!!?」

 

 なんてやり取りと共に、全身を呪力で強化した硝子がジリジリと後退する程の反動と共にブチ込まれる毎分3000発の曳光弾が五条を襲うこととなり、彼の頭からはもはや生存本能以外の思考が叩き出され、その術式の強度は否応無しに上がっていくことになるのだった。

*1
プレステ2版 餓狼〜mark of the wolves〜の意

*2
殺意の波動に目覚めた者が用いる必殺技の意。

*3
自称

*4
実際はバルカンを歩兵携行用に出来ないかという試みで生まれた試作品なので五条もあながち間違いではない。




作者はお陰様で無事に過ごしております。
読者の皆様もどうかご無事で。
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