特級呪『縛』師 禪院直哉くん   作:黒山羊

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第41話

 梅雨が始まり、季節は6月。

 

 ジメジメとした空気に釣られてカビやナメクジに混じって呪霊も湧き出るこの季節は、高専生にとっていよいよ『学業』よりも『任務』を優先するようになり始めるシーズン。

 

 そもそも高専のカリキュラム自体、6〜8月の期間は基本的に問題集などの自習時間とされており、高専そのものが学生達に『仕事重視』を期待している面もあり、学生達は各地を忙しく飛び回る日々を過ごしている。

 

 そんな中、直哉はこの日、珍しい相手とチームを組んで、最近大阪で活動を活発化させているヤクザ系呪詛師集団『極咒會』の拿捕に関する打ち合わせを京都校の一室を借りて行なっていた。

 

「こんにちは お初にお目に 掛かります。特級の 禪院直哉 といいます。どうぞよしなに 庵先輩」

「硬いね〜禪院後輩。歌姫先輩良い人だから、そんなに畏まらなくても良いんじゃない?」

「挨拶は 大事やからね 人として」

 

 なんて、直哉が会釈して挨拶する先にいるのは、二級術師の庵歌姫。そして直哉の横に立つのは、最近四級術師として登録された家入硝子。

 

 両手に花な任務に、直哉のドブカスマインドも『まぁ乳はそこそこやけど、可愛い女の子はおるだけでええもんや。庵先輩はサポート系て聞いとるし、家入先輩も基本は後衛。余計な時にしゃしゃり出てこやん女は好きやで俺。乳はそこそこやけどな』と比較的ご機嫌なのだが、そんな事は縛りによって口が裂けても言えない直哉は、肉体の動くままに先の丁寧な挨拶を出力した次第である。

 

 そして。

 

 その結果、ガバッと庵歌姫に抱きしめられた直哉は、『紳士』の縛りのせいで抵抗も出来ぬまま、『この感触……Bや!』などと最低過ぎる感想を抱いている。そんな直哉だが、彼に対し、歌姫の評価は上々だった。

 

「何この子! めっちゃ良い子じゃない! 五条や夏油とは大違い!」

「あはは、先輩絶対気にいると思った。禪院は方言だから敬語は微妙だけど、態度はちゃんとしてる奴だし。中身はちゃんと男子っぽいけど」

「そうなの?」

「前に五条に煽られた時に、五条の私物のグラビアアイドルのビデオ談話室で上映してやり返してたくらいには」

「何それ詳しく!」

 

 なんてやり取りを自分を撫で回しつつされるものだから、直哉の直哉は若干大変な事になっていたりするのだが、『落ち着け! コイツは所詮Bや! お前そんなんで満足してええんか!? メッチャ身体やわこいしええ匂いもするけども! Bやぞ!?』というドブカスブレインからの必死の抵抗により、前屈みにはならずに済んでいる。

 

 そんな、ちょっと姦しい顔合わせだが、今回集まったのは呪詛師の討伐の為。対人かつ対集団という事で、念には念を入れての特級投入と相成っている。

 

「ごめん禪院。昔話に花咲かせちゃって。いやぁ、ダラダラとモラトリアムなんかやってられるか! って意気込んで呪術師デビューした身でアレなんだけど、やっぱ懐かしくてさ」

「歌姫先輩、本来なら4年終わって名ばかり5年のモラトリアムをやってるはずですもんね」

「そうそう。なんか前の世代は5年の時期にバックレた奴も居たって聞いたから、楽巌寺先生に頼んでとっとと卒業扱いにしてもらって……って、また世間話しちゃってるし。コレじゃ埒開かないし、とっとと打ち合わせしましょ!」

「賛成や。呪詛師相手は 危ないし。油断しとると 足掬われる。まぁそやね…… 先輩方は 後衛で 俺が前衛 コレはええよな?」

 

 そう確認を取る直哉に対し、歌姫は素直に首肯する。コレが五条のように『歌姫は弱っちいんだし下がっときなよ。てか帰れば?』などと言い始めた日には歌姫もカチンときてムキになるのだが、流石に純粋な能力特性による役割分担に否と言うほど愚かではない。

 

 そしてそれは、家入硝子も同様だ。

 

「そだね。私は銃だし、歌姫先輩も術式が戦闘向きじゃないし」

「まぁ場所は 割れとるんやろ? 連中の。一気にガッと 纏めてやろか。そういえば、庵先輩 術式は バフ系やっけ? どんなもんなん?」

「えーっと、影響範囲内の私含めた術師の呪力総量と呪力出力の一時的な向上って感じ。倍率は大体120%ぐらいね」

「無法やな。強すぎへんか? その効果。流石になんか 縛りあるやろ」

「そうね。呪詩、印相、舞、楽を用いて術式を儀式に昇華させる必要があるから、かなり時間が掛かっちゃうのがネックなの」

 

 そう告げて肩をすくめる庵だが、直哉の中のドブカス禪院ロジックが『凄まじく有用な術式なので禪院に嫁いでもらうべきなのでは?』と素で考える程に、その効果は破格そのもの。

 

 直哉が『嘗胆』の縛りによって呪霊喰いを行い、毎度悶絶しながら少しずつ増やしている呪力総量。それをノーリスクでポンと増やせるのなら、儀式が必要だろうと余裕でお釣りが来る。

 

「そうなると プラン変更 すべきやな。楽師には 当てが無いけど 最悪は 俺が弾いても 構わんのやろ?」

「ん? 禪院って楽器弾けんの?」

「いや別に 弾かれへんけど 術式で 無理矢理運指 させたらええし」

「大丈夫よ、そこは楽巌寺先生に頼めると思う。……私の術式で禪院の術式を強化して、敵アジトを強襲。そのバックアップを硝子がやる。そういうイメージで良いわよね?」

「流石やな 頼りになるわ 先輩は。ドンピシャやんか そのつもりやで 」

「フフン! まぁね! ————じゃあ、私は楽巌寺先生にお願いしてみるわ!」

「頼んだで 庵先輩。そうしたら 後は家入 先輩やんな」

「私はバックアップだしね。呪詛師の事務所、普通にビル街なんだっけ? じゃあ近くのビルでスタンバッとくよ。ライフルは結構使えるようになってきたし、逃げ腰の奴らくらいなら行けるっしょ」

「重々な 注意はしてや 背後とか。庵先輩 詰めてもらおか?」

「そだね、歌姫先輩はバフ掛けた後はフリーだし、一緒にいた方が良いかも」

 

 などと仔細を詰めて予定を立てる直哉たちに、歌姫に連れられた楽巌寺学長も合流し、呪詛師集団『極咒會』への襲撃計画は徐々に形を帯びていくのだった。




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すみません orz
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