さて、バーベキューで良い肉をたらふく食らった高専一行は、別荘の中で暫し食休みのスマブラ大会*1を楽しんだ後、水着に着替えて海へと繰り出していた。
男子の水着は言うまでもなく、誰も彼も色が違うだけで似たようなハーフパンツタイプの海パン。海難事故防止の為に蛍光イエローの海パンとオレンジのライフジャケットを着せられている恵が若干ダサくて不服そうだが、ソレ以外にはさして語るところもない状態だ。
強いて言うなら肉体面での差はあるだろうが、甚爾がとりわけバッキバキなものの、皆が皆、鍛えに鍛えている呪術師。ギリシャ彫刻並みの肉体美はデフォルト装備だ。
が、流石に女性陣は話が違う。
まずはちびっ子の真希、真依、津美紀。真希は動きやすいようにと黒いスポーツブラタイプのトップに恵同様の蛍光イエロー海パン。真依は『下着判定』の為という為もあるが、何よりも直哉の興味を引こうと*2ピンクのビキニに挑戦。津美紀はワンピースタイプの可愛いフリル付きの白い水着という、眺めてほっこりするような装いだ。
そして、子供達を着替えさせた後に自分達も着替えて出てきた大人の女性陣だが……。
「傑、今気づいたんだけど、俺らの年齢だとタメ以上が相手だと、どうコメントしてもナンパ野郎か謎の彼氏ヅラ野郎になるよなコレ」
「ソレはそうかもしれないが、無言もソレはソレでマズいと思うよ?」
「2人とも 似合ってるやん 素敵やね」
「確かにな。似合ってんぞ家入。……それと、まぁ、此処じゃ禪院の目も無ェんだ。アンタも普通に楽しめよ」
「……直哉や伏黒先生のこういうところは見習うべきかもしれませんね」
「女子の水着にコメントするのって難しいんだね……!」
「おい童貞ども、照れすぎだろ。乙女か?」
「私のような年増の水着など、お目汚しでは……?」
「真理さん、32で年増宣言はいろんな方面から怒られるんじゃない?」
なんて、割と思春期している男子達の前に立つのは、ラッシュガードの中にチューブトップとホットパンツタイプの水着を着込んだ家入と、ママさんらしくフィットネス仕様の、体型を隠すような水色の水着を着込んだ禪院真理。
チューブトップな家入は勿論のこと、体型隠し目的で運動着のような水着を着ている筈の真理も思春期男子からみればかなりセクシーなので、男子達の反応は無理もない。
ただ、両者に存在する『キョウイ的な実力差』によって、男子の視線はどちらかと言えば真理方面をチラチラしており、その辺も含めて家入の言う通り童貞丸出しであった。
特に夏油と直哉は性癖の関係*3もあって大変不利な状況に追い込まれており、ペルソナシリーズの主人公の如く『内なる自分』との対話に明け暮れている。
だがまぁ、童貞野郎どもとは言え、覚悟を決めればそれなりの態度は取れるもの。一応ちゃんと家入と真理の水着を褒めた男子達は、煩悩を禊ぐべく、遊び道具を手に海へと駆けていくのであった。
* * * * * *
それからしばらく。
ビーチで砂の城を作る真希、真依、真理の禪院母子。海で競泳する七海と夏油、変な顔の魚*4を見つけて爆笑する悟と灰原。津美紀と一緒に恵に泳ぎを教えてやる家入という平和な光景の中で、ビーチパラソルの下でビールを飲む甚爾とジュースを飲む直哉。
皆を遠巻きに見守る中で、ふと直哉が切り出したのは、ある『違和感』についてだった。
「甚爾くん 何ぞやりたい 事あんの?」
「あ?」
「甚爾くん 遊びに混ざる タマちゃうし、なんで来たんか 不思議に思て。皆はな ガキの為やと 思うとる。でも俺は 何か企み あるやろと 踏んどんねんな 正直言うと」
「あー。まぁな。考えが無くはねェが、悪いようにはしねえよ」
「『縛り』には 抵触しやん 事なんか?」
「おう、人助けだ人助け。そうカリカリすんじゃねえ……その内、普通にお前にも話行くんじゃねえか?」
「そうなんか。……嘘言うて無い みたいやね*5」
「……便利な体質だよなオマエも」
「甚爾くん ほどやないやろ コレぐらい。甚爾くんなら 素で判るやん」
なんて、苦笑し合う『呪われた』従兄弟同士の会話は、潮騒に呑まれて誰の耳に入る事もなく、穏やかな館山の海に消えていくのだった。