特級呪『縛』師 禪院直哉くん   作:黒山羊

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第49話

「担任の俺、そして一年担任の日下部に断りもなく動いた事、補助監督をPAに置き去りにした事、まぁ言いたい事は多々あるが……歌姫と冥冥の救出、ご苦労だった」

 

 なんて言葉を2年の教室で切り出したのは、2年担任の夜蛾正道。

 

 何故か1年3人と担任の日下部、副担の伏黒まで呼び出してのミーティングとなったその場において、夜蛾が切り出すのは、ここ数年で最大級の重要任務。

 

「天元様の指名により特級術師・五条悟及び禪院直哉、そして一級術師・夏油傑。特級術師九十九由基の名代として、特別一級術師・伏黒甚爾。加えて、高専からの追加要員として、二級術師・七海建人、三級術師・灰原雄、四級術師・家入硝子。以上7名に、特別任務を言い渡す。————正直言って、俺はこの面子でも完全に安心とは言い切れないと思っている」

「は? 俺と傑と直哉だけでも世界を七日で焼き尽くすぐらいはできるでしょ」

「巨神兵 言うにはタッパ 足らんけど。やろう思たら 出来るんちゃうか?」

「話が逸れているよ直哉。……で、先生、天元様の指名任務って、一体何事なんです?」

 

「————『星漿体』。天元様との適合者、その少女の護衛と、抹消だ」

 

少女(ガキンチョ)の護衛と抹消ォ? 硝子、コレは今度こそ発狂してんじゃない? 反転で治る???」

「私に振るなよバカ。当たり屋じゃん」

「次期学長って言われて浮かれてるんだよきっと」

「悟くん 夏油くんもな 先生の こめかみ見てみ ビッキビキやで」

「でも、確かに護衛するのに抹消って不思議だね……?」

「灰原、一昨日に座学でやりましたよこの話」

「そうだっけ!?」

「……灰原お前、今度補講な。人がせっかく伏線張ってやったのに……」

「日下部先生!? マジですか!?」

「大マジだよ……つーか、ふざけてないでちゃんと聞けって2年。今回はマジで面倒だぞ」

 

 そう、日下部が梃入れした事で一応は真面目に夜蛾の方を向く一同。そんな彼等の前で、こめかみを揉んで大きな溜息を吐いた夜蛾は、任務に関する詳細を語り始めた。

 

「天元様は『不死』の術式を持って居られるが、『不老』ではない。通常の人間の範疇に収まる老化であれば問題ないが……限界を越えて老化が進行した場合、術式が天元様の肉体を強制的に造り変えてしまう。人ではなくなり、より高次の存在へと進化するんだ」

「進化するなら良いんじゃねえの? ベトベターよりベトベトンの方が強えし」

「悟、例えに使うポケモンのチョイスどうにかならなかったのかい? ————天元様曰く、その段階の存在には『意志』と言うものが無いらしいんだ。天元様が天元様で無くなってしまうって事だね」

「そうだ。知っての通り、高専各校をはじめとした呪術界の拠点に張られた結界、多くの補助監督が用いる結界術。それら全てが天元様の力で強度を底上げされている。あの方の力添えがなければ、我々は任務は疎か、セキュリティすらままならない」

「……ふーん、弱っちいのに気ぃ使って大変だね天元サマも。で、その進化と星漿体のガキってのの関係は?」

「天元様の進化の方向性によっては、最悪の場合天元様が人類の敵となる可能性すらある。そこで、おおよそ500年に一度、満月の日に天元様は『星漿体』と呼ばれる天元様に適合する人間と同化し、肉体の情報を書き換えるんだ。肉体が一新されれば術式効果も振り出しに戻る。『進化』は起こらない」

「なるほど。ライジュウとシキガミが魔人合体してヘルズエンジェルになると困るからコダマと悪魔合体させてライジュウに戻すって事ね」

「メガテンで 例える意味は あったんか……? まぁええわ。任務の事は 知れたけど。この面子でも 不安て何が?」

「この星漿体の少女の所在が、漏れてしまった。————現在、彼女を狙う勢力は大きく分けて二つ! 一つは天元様の暴走による現呪術界の転覆を目論む、呪詛師集団Q! 天元様を絶対的な唯一神として信奉する宗教団体、盤星教『時の器の会』! 天元様と星漿体の同化は今日から二日後、8月9日の満月の夜! それまで少女を護衛し、天元様の下まで送り届けるのだ! 失敗すればその影響は一般社会にまで及ぶ! 心して掛かれ!」

 

 そう勢い良く告げる夜蛾の気迫を受けて、静かに首肯する6()()の術師達。

 

 そんな中、1人瞑目していた男が、静寂の中に言葉を放つ。

 

 

「補講かぁ……」

 

 

「いや灰原、お前マジでお前、マジかお前、今の話聞いてた???」

「聞いてましたよ日下部先生! 女の子を守れば良いんですよね!」

「あってるが不安だ————! 七海、禪院、頼むぞ!?」

 

 なんて、締まらない空気に日下部と夜蛾が頭を抱え、甚爾が鼻で笑い、五条と夏油と家入の2年トリオが灰原の背をバシバシ叩いて「サイコー!」と爆笑し、七海と直哉は日下部からのお願いに苦笑する。

 

 緊張とは無縁の始まりを告げたその任務はしかし、彼等の青春にとって忘れられない二日間となるのだった。

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