「でもさー、呪詛師集団の『Q』? はともかく、盤星教はなんで星漿体狙ってんだよ。天元の邪魔してんのに天元崇めてるとか謎じゃね?」
『星漿体』との待ち合わせに指定されたホテルに向かう道中、そんな事を言いつつ自販機でマックスコーヒーを買う五条。
しれっとメンバー全員に奢る気前の良さを見せている彼のご相伴に与りつつ、夏油傑は微糖コーヒーを手に自論を返す。
「唯一神と崇めてるなら、その天元様に不純物が混ざるのが許せないとかじゃあないかな?」
「ちゅうてもな 天元様が 千年を 越えて生きとる いうのはつまり 最低で 一回以上 同化した いうことちゃうの? おかしゅうないか?」
「盤星教はあくまで非術師の宗教法人だからね、500年前のアレコレは感知出来なかったんじゃないかな?」
「なるほどな そういう事か アホらしい……」
「まぁでも、非術師なら何も出来ないでしょ。やっぱり警戒するべきは『Q』って奴らなんじゃない?」
そう言ってヘラヘラと笑う家入。だが、そう楽観視する彼等を諌める様に、コーラを一気に呷った甚爾がバカにするような口調で言葉を放つ。
「ったく、コレだから術師サマってのは。非術師を哀れで無力な可愛い子羊とでも思ってんのか? バカだろ。非術師だろうが呪術師だろうが関係ない、宗教団体なら当然使える暴力ってもんがあるだろうが」
「————! 信者の寄進ですか?」
「流石は七海。よく考えてんな。そうだ、連中には金がある。つまり……こんなサイトが存在してる訳だ」
そう言って、甚爾が見せた携帯の画面には、星漿体と思しき少女に、1億円の懸賞金が懸けられているスクリーンショット。
「呪詛師連中が活用する、ダークウェブの賞金掲示板だ。そこに、盤星教からの依頼があった。非術師のガキをブッ殺して死体を持ってくだけで1億円。コイツは尋常じゃねえボロ儲けだ。美味すぎる。だから、コレに飛びつく有象無象のカスどもは必ず居る。呪詛師なんざアホばっかだからな」
「マジかよ……呪詛師なんてどうせ雑魚ばっかとはいえ、結構ウザいな」
「だろ? だからくれぐれも気を抜くんじゃねえぞガキども。呪詛師は一般市民の巻き込み上等なんだからな」
「まぁ、大丈夫っしょ。俺、傑、直哉、先生、4人も最強がいて勝てねぇわけが————」
そう、五条が言い掛けたその直後。
間近に迫っていた待ち合わせ先のホテル、その最上階の一室が爆発し、そこから少女が落ちていく。
その状況に、まず初めに反応したのは最速の術師である禪院直哉。
「白昼の 市街でやるか ドブカスが————!」
そう咆哮しつつ宙を駆ける直哉は瞬時に落下する少女を確保し、それが先程甚爾に見せられた懸賞金の少女と相違無い事を確認すると、気絶した彼女を抱えたまま、再び一瞬にして皆の元へと舞い戻る。
「外傷は 無さそうやけど 一応な 家入さんに 任せてええか?」
「はーい。じゃあ、治療中の護衛は七海と灰原宜しく」
「分かりました。灰原、結界をお願いします。私は周辺警戒を」
「了解! 臨兵闘者皆陣列在前! 防御結界!」
「直哉と傑は飛べるよな? あの爆破された穴から侵入頼めるか? 俺と先生は下から回る。確か、夜蛾先生からの話だと星漿体には世話係がいたはずだ」
「なるほど、殺されていなければ、人質にされているかも知れないね。直哉、私は『一反木綿』を出す。加速を頼んでも?」
「かまへんよ 録我呪法で やったるわ」
「俺と五条は一階からか。さっきの爆発だが、爆炎を見る限りありゃプラスチック爆弾だ。そう高いもんじゃねえし、まだまだ仕掛けてあってもおかしくねえ。五条は無限を切らすなよ」
「爆破喰らうの前提ってことね、了解。先生は?」
「俺は匂いでわかる」
などと、矢継ぎ早にやり取りを交わした高専メンバーは、それぞれの役割を全うすべく動き出す。
夏油と直哉は吹き飛んだ最上階、五条と甚爾は逃げ惑う宿泊客が溢れ始めたホテルのロビーへと突撃し、家入、七海、灰原は少女の治療と護衛。
そんな中、いち早くビルの外壁の穴から爆破現場にエントリーした夏油と直哉の前に立ち塞がったのは、『Q』というロゴが描かれた白い軍服を纏う、如何にもといった風体の男。
「その制服————呪術高専か! よくも邪魔立てを!」
「そう言うお前はどう見ても『Q』だな? 色々と聞きたいことがあるんだ、死んでくれるなよ?」
「————夏油くん 人質確保 完了や。ブービーも無し。チェック済みやで」
「なッ!? その女、今ここに居た筈……!」
呪霊を展開して夏油が威圧する隙に超高速の直哉が人質を掻っ払う、というシンプル故に手堅い作戦を決行した2人は、無事に小目標である人質回収を完了し、直哉は使用人と思しきその女性を抱えたまま、一旦彼女を家入に預けるべく、窓から外へと身を踊らせる。
だが、それを敵が座して見守る訳もない。
「行かせるかッ————!」
「お前がな!」
そんな短いやり取りで、直哉への銃撃を呪霊の盾で防いだ夏油は、自身も呪霊に身を守らせつつ、多数の使役呪霊を展開して、眼前の男へと挑み掛かるのだった。
おかげさまで50話!
いつもご愛読いただきありがとうございます!