某県某所、呪詛師集団『Q』地下アジト。
旧陸軍の秘匿された防空壕を改造して作られたその場所で、帳に覆われたホテルの監視映像を眺める男と、それに付き従う少年が1人。
「さて、そろそろ『コークン』『ソンヴィル』『バイエル』が高専生と戦っている頃かな?」
「『ウェッセン』様。先程、コークン様から『爆破完了』との報告がありました。既に星漿体を仕留められたのでは……?」
「それは無いかな。経験上、星漿体を殺害しようとすれば、ほぼ間違いなく六眼の持ち主による妨害が入る。そう簡単には殺せないんだよアレ。困っちゃうよね」
そう言って『たはは』と笑うその男は、自らに侍る少年から飲み物のグラスを受け取ると、
「試作タイプの3人で、どれぐらい『最強』達に追い縋れるか。楽しみじゃないか。君もそう思わない?」
「我々『ビッツ』は御三方の勝利を信じております」
「健気だね。まぁ、そう調整したんだけど、ちょっと面白みが足りない気もするなぁ。コレは要調整かな?」
などと笑うその目の奥に光るのは、カエルのケツに爆竹を捩じ込む小学生のような、無邪気で残酷な好奇心の光だった。
* * * * * *
「思ったより手強いね、君」
「貴様もな夏油傑……!」
そんなやり取りを交わすのは、軍刀を手に呪霊を切り祓う『コークン』を名乗った男と、呪力で強化した低級呪霊を用いてコークンの拿捕に臨む夏油傑。
その戦線は意外にも、膠着状態に陥っている。
無論、相手を殺す気であれば、夏油が圧勝できるのは揺るぎない事実。だが、夏油の目算で
————技量が優れる訳でも、術式がある訳でもない! 純粋なテクニックなら灰原の方が圧倒的に上!
————だが、なんだこの呪力出力は!?
そう。夏油が内心舌を巻く通り、コークンの呪力出力は並の術師の域を越え、夏油に迫る馬鹿げたもの。振るわれる軍刀から放たれる呪力の斬撃は明らかに技量以上の威力を発揮し、夏油の呪力で強化されている筈の呪霊をいとも容易く切り裂いていく。
流石に夏油が防御に回している虹龍の守りを貫く事は出来ていないが、それでもホテルの客室はもはや見る影もなく、上層の一角を吹き飛ばしての大怪獣バトルになってしまっているのが実情だ。
だが、そんな状況でも、夏油傑に敗北はあり得ない。何故ならば————!
「隙ありや 背中がお留守 間抜けやね」
などと声を掛けて、振り向いた直後のコークンの金玉袋を猛烈に蹴り上げたのは、拡張術式『
グボァッという、明らかに股の間から鳴ってはいけない音が聞こえ、夏油も思わず内股前屈みになってしまう痛々しい一撃に、コークンは白目を剥いて泡を吹く。
が、その一撃を放った直哉が浮かべているのは、何やら少し、解せないような表情だった。
「なんでやろ なんか足らんな? 感触が」
そう呟いて、首を傾げた直哉は、その疑問をさておきつつ、コークンを担ぎ上げて夏油の使役呪霊に乗せ、夏油と共に崩壊したホテルの一角を脱出するのだった。
* * * * * *
甚爾と共に、混迷を極める群衆の波を掻き分けホテルのエントランスに至った五条悟。
避難誘導を行うスタッフ達に軽い『暗示』を施しつつ、わざと派手に残穢をばら撒いて敵を誘う彼の元に、現れたのは2人の『Q』戦闘員。
「やあ、こんにちは。私は『バイエル』。君、五条悟だろ? 有名人だ。強いんだって? 噂が本当か試させてくれよ」
「で、そっちのテメエは術師殺しの禪院甚爾だな? 俺は『ソンヴィル』。俺はアンタとヤりたいね」
そんな言葉と共に立ち塞がるのは、ナイフを持った長髪の『バイエル』と、スキンヘッドの大男『ソンヴィル』。
だが、そんな彼らの登場に際して、五条と甚爾の反応は嫌そうな顔で話し合うというものだった。
「なぁ五条。相手交換しねえか? 俺は筋肉バキバキの男色野郎と遊ぶ趣味はねえ。見ろよあの頭、ベレー帽なんざわざわざ被ってやがるせいで、完全にシルエットがチンポじゃねえか」
「うわホントだ。なんか赤くなってるし血管バキバキで完璧にチンコじゃん。俺、未成年の良い子だから怖くて相手出来ねえって先生。でも隣もどう見てもロン毛のカマ野郎だし……ここは青少年の健全な心の発達の為に両方先生が倒してくれても良いんじゃね?」
繰り出されるのは、放送倫理コードに触れるどころか殴り掛かる勢いの罵詈雑言。
その言葉の暴力に、『Q』の両名が怒りの声を上げようとしたその瞬間。
五条の指鉄炮と甚爾がいつのまにかズボンのケツから取り出していたソードオフ仕様の『M79グレネードランチャー』がノールックで照準され、『蒼』と『40mmグレネード』が哀れな呪詛師を吹き飛ばす。
「「はい、残念」」
「つってもまぁ、アレで死ぬタマなら俺らに喧嘩売らねえだろ。指名通りになるのは癪だが分担すんぞ五条」
「りょーかい、早く捕まえた方が寿司奢りね」
「回らねえ奴な」
そんな言葉を交わしつつ、2人の『最強』は軽い足取りでそれぞれの相手の元に向かうのだった。